異世界の英雄たち、赤ずきんチャチャの世界を修正します   作:hoyohoyo

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~決着、神の滅亡~

ロキの身体が変化する。

精悍な体格だった身体が歪み、膨れ上がり、異形の姿に変貌する。

盛り上がった肉、何本も生えた腕。

背中から飛び出る触手はまるで暴走したかのように蠢いている。

「まだ、足りぬ、足りぬぅ!」

絶叫を上げ、ロキはぬめりを帯びた身体を振り回す。

よく見るとその端は、己に耐えきれず崩壊していた。

 

「行くよ、アーリン!」

「任せなさいって!」

アーリンとアリーナが同時に踏み込む。

アークスレイヤーの一撃が、かつてロキだった化け物の身体に叩きこまれる。

腕が斬り飛ばされる。

村正の連撃がロキの触手を切り払い、胴体を薙ぎ払う。

「うぇっ、再生してる!」

アリーナが顔をしかめる。

ロキの身体が、斬られた場所が、再び結合していく。

肉が伸び、くっつき、そこから新たな腕が伸びる。

「ならば!」

ジョアンが今度は不死鳥の剣を構え、ロキの足だったものを突き刺す。

「ウイングクリス・バーニングフラッシュ!」

地面が紅く光り、ロキの動きが再び封じ込められる。

「この剣が『力を滅ぼすもの』の名を冠しているか教えてあげるわ!」

アーリンがアークスレイヤーを横に構え、一気にダッシュ。

動きが取れないロキの胸部に突き刺さる。

「がぁっ!ち、力が!」

青白い光がロキの生体エネルギーを『喰らいつくしている』。

「お前が暗黒魔界のエネルギーを喰らうように、この剣は―『私より力が上な存在を喰らいつくす』魔剣なのよ」

神殺し―そう言われる所以でもある。

「おのれ、人間の分際でぇぇぇ!」

狂気に満ちた言葉でアーリンに手を伸ばすが―

「さっきのお返し、だよっ!」

横から入ったアリーナの村正が一閃。

腕だけでなく、肩だった部分ごと綺麗に斬り飛ばす。

「これはアーヤハの分!」

思いっきり地面を踏み込み、跳躍。

顔面に回し蹴りを放つ。

「ぐぼっ!」

上半身が吹っ飛び、ジョアンによって縫い付けられた足はそのままに大地に叩きつけられるロキ。

「神の残り滓扱いしたことを、後悔するのね」

ルナはロキの上に乗っかり、燃えるような真紅の刃を心臓に突き立てた。

異世界の神と邪に憑りつかれた神。

お互いの力がぶつかり合い、激しい雷撃に覆われるルナとロキ。

しかし、ルナには傷一つなく、逆にロキの身体から焦げ臭い腐臭とともに、触手や複数の腕が炭化していく。

 

「リナ!特大の、やっちゃって!」

アーリンの言葉に、全員が一斉にその場を離れる。

強烈なダメージにロキの身体が動くまで―十数秒。

しかしその間だけで十分だった。

リナが出し惜しみ無しの、最高最大の火力を以った黒魔術。

彼女の口から混沌の言語(カオス・ワーズ)が流れだす。

空間が歪み、周囲が震える。

 

闇よりもなお昏(くら)きもの 夜よりもなお深きもの

 

混沌の海にたゆたいし 金色なりし闇の王

 

我ここに 汝に願う 我ここに 汝に誓う

 

我が前に立ち塞がりし すべての愚かなるものに

 

我と汝が力もて 等しく滅びを与えんことを!

 

「『重破斬(ギガ・スレイブ)』!!!!」

黒い闇が、リナの両手から放たれる。

漆黒、暗黒、破壊と消滅を司る、深い深い黒。

それはロキの身体を貫き―黒の中に沈み込む。

本来はそのまま闇に取り込まれ、周囲も全て飲み込み、喰らいつくす。

しかし、ロキの神の力がそれを辛うじて抑え込み、自らの身体のみが闇に飲まれるだけに留まる。

 

誰も、動かなかった。

いや―動けなかった。

「リナ!」

ルナの叫び声が、時を取り戻したかのように動き始める。

彼女はリナの元に駆け寄り、その場で崩れ落ちようとしているリナの身体を受け止めた。

魔力だけでなく、生命力の欠片も使ったリナの最強呪文。

彼女はルナに凭れ、ロキが闇に飲み込まれていく様子を見つめていた。

魔力が無くなったリナの髪の毛の色は銀に近い白髪になり、もはや火の玉ひとつ出せない。

 

「負ける…この、私が、負けるというのか…人間どもに?」

まだ認められないロキは、漆黒の闇の中でもがこうとするが、まるで沼に沈み込むかのように抜け出すことが出来ない。

辛うじて顔だけが、闇の中から出ていた。

 

その前に立つひとつの影。

「アーヤハ…」

そう、女神アーヤハは、悲しそうな表情でロキを見つめていた。

「ふっ、笑いにきたのか」

吐き捨てるロキの言葉にアーヤハの表情は変わらない。

「しかし所詮は人の力、またすぐに力を取り戻して天界を―」

「…終わりです、ロキ様」

アーヤハの指が、額へ。

少し、震える指が額の前で止まる。

「これ以上、貴方を『壊させたくない』」

威厳ある女神の姿が、そこに存在する。

「な、何を…!?」

「あなたの力を…反転させます」

「おい、やめろ!」

黒が、逆流する。

「あなた自身の力で、滅びなさい」

覚悟を決めたかのように、アーヤハの指先がロキの額に、触れた。

その瞬間、ロキの身体が急速に崩壊していく。

アーヤハは自らの神力を呼び水にして、ロキ自身の力を自身に『反転』させたのだ。

 

叫びも、光も、残らない。

かつて神だったものは―静かに、塵へと還っていく。

 

「…ごめんなさい」

(ロキ様…また、どこかで、会いましょう)

神は滅んでも再び蘇る。

ロキもまた、どこかで。

それを知るのは、アーヤハだけ。

 

静寂が訪れる。

風だけが、彼女たちを撫でた。

暫く、無言が続く。

アーリンは、赤黒く澱む空を見上げた。

(終わった…)

誰も、すぐに言葉を発さなかった。

生きている―それを噛みしめるように、息遣いだけが支配する。

 

「あー、もう駄目、動けない」

それも一瞬のこと、アリーナが軽口を叩きながら大の字になって倒れ込む。

他の面々もその場に座り込んで、脱力する。

「つ、疲れた…」

「本当よ…アーヤハ、報酬の件は頼むわよ?」

「ぜ、善処します…」

アーヤハの言葉にアーリンが笑う。

アリーナも、ルナも、リナも。

そして言い出したアーヤハも。

全ては―終わったのだ。

 

ジョアンは彼女たちの前に立ち、感謝の言葉を述べた。

「ありがとうございました。これで、魔法の国も本当の平和が戻るはずです」

「良かったぁ~、ボクたちも頑張った甲斐があったよ」

アリーナが笑顔を浮かべる。

「でも…チャチャたちとはもう二度と会えないのよね」

少し悲し気な表情を見せるのはルナ。

そんな彼女に声を掛けるジョアン。

「ひとつだけ、方法があります」

「え?」

ルナが顔を上げる。

「わたくしの力で、再び地上に戻してあげます。…しかし、暗黒魔界と地上世界とは時の流れが歪んでいて、どの年代に戻れるかは分からないのです」

「…ひょっとしたら、はるか未来や過去に戻る可能性も?」

「ええ」

その言葉に一同は顔を見合わせる。

「でも、少しでも可能性があるのなら…やってみる価値はあるかも」

「最悪アーヤハに頼んで天界に戻れるようにして貰うからさ」

「というか…わたし、まだ天界では罪人なんですかねぇ…?」

涙目のアーヤハ。

「そういえば、アーヤハって私たちの動向を見てたんだよね?」

アーリンが問いかける。

「はい…天界の水鏡で…って、ああ!スイッチ切るの忘れてた!」

何かを思い出したかのように慌てた様子のアーヤハ。

「スイッチ?」

「あれ天界の神力を結構使うので、使わない時に切ってないと神力料金が掛かっちゃうんですよ~」

「お金、取るんだ…」

少し呆れ気味のリナ。

「ん?ということは、水鏡はそのまま稼働してるってことよね?誰か見てるのかもしれない」

ルナの言葉にアーヤハが青ざめた顔になる。

「上司たちに怒られる…!」

「違う違う!今のこの状況を他の神様が見ていたら、アーヤハが無実ってことが証明されるの!」

「へ?」

アーリンの言葉にアーヤハは呆ける。

「怪我の功名ってやつね。水鏡は放置しないだろうから、切ろうとしたときにこの戦いを見ている可能性は高いわね。ロキが黒幕ってことも知れ渡ったんじゃない?」

「じゃあ決まりね、ジョアンさん、わたしたちを地上世界に戻して下さい」

ルナの言葉にジョアンが頷く。

「わかりました。わたくしは…この暗黒魔界を見守りながら地上世界の封印を強化します」

「短い間だったけど、すごく助かったよ、ありがとう」

アリーナがジョアンの手を握り、握手をする。

「皆様も…。わたくしの子孫にもし会えたら、こうお伝え下さい。『未来は貴方たちが作っていくのです』と」

同時にアーリンたちが光に包まれていく。

輝く、紅い光が。

 

(チャチャ…次は、守り切った世界で、会いましょう)

アーリンはそっと目をつぶって、天真爛漫なあの子の姿を想像するのであった。

その笑顔に、もう一度会えることを信じて。

 




ここまでお読み頂きまして、ありがとうございます。
本編はこれにて完結です。
この続きも思案中で、もしかしたら続きを書くかもしれませんが、その時はよろしくお願いします。
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