ハピエン教団(団員1名)信者の俺、魔法少女アニメの世界に招かれたのでハッピーエンドを死守するため戦っていたらいつの間にかクソデカ感情を向けられていた 作:pfk
真っ白な何もない場所にいた。
意識もどこかぼんやりとしていて、頭が回らない。
けれど、これは多分夢なんだろうなってことだけはわかった。
『
鼓膜を震わせるのとは違う、頭の中に直接響くような優しい声が俺の名前を呼んでいる。
『あなたの愛する世界が、あなたの渇望する結末が、変えられようとしています』
説明不足で、唐突で、脈絡がなくて、なんの話かわからない。
そのはずなのに、許せないという気持ちが心の奥底から湧き上がってくる。
『どうか、守ってください。あなたの愛するハッピーエンドを、幸せな結末を』
その言葉だけで俺には十分だった。
俺はハピエン教団(団員1名)の信者であり、バッドエンド改変を許さない男。
ハッピーエンドを守るためならば、この身を捧げても構わない。
『あなたならば、きっと』
その言葉と共に意識が急速に遠のいていき、思考もままならなくなる。
そして――
・
・
・
「ハッ!?」
目が覚めると、俺は人気のない小さな公園のベンチに座っていた。
キョロキョロと周囲を見渡した後、空を見上げてみれば燦々と輝く太陽が真上に昇っており、暖かな陽射しと涼しく吹き抜ける風が春の陽気を感じさせてくれる。
さっきの夢の内容はハッキリと覚えてる。なんとも不思議な夢だったけれど、白昼夢でも見ていたのか。
というか、俺はどうしてこんなところにいるんだろう。たしか学校で授業を受けている最中に寝落ちしそうになってたはずなんだけど……。
「尾張幸人、それはあなたが私の誘いに応じてくれたからです」
心の中であれこれ考え疑問を浮かべていた俺に、どこからか穏やかな声が聞こえてきた。
その声が聞こえた方に視線を向ければ、いつの間にかでっぷりした三毛猫が俺の膝の上で丸まっており、クシクシと顔をかいている。
猫が喋った……?
「猫ではありません」
「ね、猫が喋った~~!?」
今度は俺が見ている中で猫が口を開いて流暢に喋り出したものだから思わず驚いて大声をあげてしまった。
「ですから、猫ではありません」
「やばい、幻聴?」
薬物なんて身に覚えがないけど、ハッピーエンドをキメ過ぎた副作用か?
学校からここまで来た記憶がないのも、もしかしたら過剰ハピエン摂取による脳内麻薬の分泌が原因……?
「幻聴でもなければ幻覚でもありません。私は世界の意思です。てい、てい」
デブ猫としか言いようがない見た目とは裏腹に鈴を転がすような美しい声で喋りつつ、するすると俺の身体を身軽に登ったかと思えば、肩の上に乗っかって前足でペチペチとほっぺを叩き始めた。
肉球の感触が気持ちいい。あと重い。
「世界の意思、とは」
この感触は確かに幻とは思えず、俺がおかしくなったのではなく、何か尋常ならざる不思議な出来事が起きているのだと納得させられた。
「言葉通りです。あなたに意思があるように、世界にも意思はあるのです。てい、てい」
「ほーほー、それで世界の意思様が俺に何の御用で?」
「あなたの夢に語りかけたでしょう? ハッピーエンドを守って欲しいと。てい、てい」
「あ、あれ猫ちゃんだったんだ。あと肉球はもういいよ」
ほっぺたを押されると話しにくい。
そして夢の中では意識が朦朧としてたからすぐには気づかなかったけど、言われてみれば同じ声だ。
「あなたは私の要請に応じました。だから私の世界に招いたのです」
「ってことは、ここって異世界? ステータスとか、スキルとか、そういう系?」
今居る公園は凄い現代日本っぽいけれども。
「異世界ではありますが、あなたが考えているものとは違います。端的に言えば、ここは『魔法少女戦隊フラグメント』の世界です」
「え!? それってあのアニメの!?」
魔法少女戦隊フラグメントといえば、俺の最押しアニメだぞ!!
メインである5人の魔法少女を筆頭に、サブキャラ的魔法少女たちも魅力たっぷりで、世界を侵略しようと攻めてくる悪魔たちと戦う熱い物語だ!!
なにより深夜系魔法少女アニメとしては珍しい完全無欠のハッピーエンドなのが最高で、ラストバトルの胸アツっぷりと言ったらもう! 涙なしには語れない!
あっ!! よく見ればこの公園も作中に登場してた場所じゃないか!
俺としたことが、そんなことにも気づけないなんて!!
「ウッヒョヒョイ聖地巡礼だぜー!」
「待ちなさい、話を――」
浮かれに浮かれてスマホを取り出し写真を撮りまくり始めた俺に猫ちゃんは何か言おうとしたようだけど、直後に響いた轟音によってその先は聞こえなかった。
「うわあああ!?」
まるで隕石のように、空から凄いスピードで何かが落ちて来て公園に激突する。
それが続けて5回。爆風とも言えるほどの衝撃、風圧によって猫ちゃんはどこかに吹っ飛ばされてしまった。
砂ぼこりが盛大に舞い上がって、何が落ちて来たのかまではわからない。
引きの写真を撮るために出入口付近まで移動してたから助かったけど、あと数秒遅ければ巻き込まれて死んでいた。
しかし恐怖はなかった。なぜならこの展開もまた、俺には見覚えがあるからだ。
恐らくこれは第六話のシーン!
第五話までは一話ごとに一人魔法少女が増えていく、いわゆるメンバー集めのお話で、戦闘もその回で加入する個人にフィーチャーする内容だった!
つまり5人揃ってのちゃんとした戦闘はこの第六話から! でも魔法少女戦隊のメンバーは全員が元から知り合いだったってわけでもなくて、最初はウマが合わない相手もいたりしてチームワークはてんでバラバラ! 出てくる敵もここからちょっと強くなって、最初はピンチに追い込まれてしまう!
だけど! この世界を守るっていう正義の心だけはみんな同じ! ピンチに追い込まれたことでそれがわかって、心の底からわかり合うことはまだ出来なくても、協力して戦うようになって、最後はピンチを覆す! 魔法少女戦隊の団結の第一歩になる重要回なんだ!
これは見逃せない!
「あれ!? スマホが、スマホがない!?」
土煙が晴れると、予想通りそこには片膝をついて苦しそうに倒れ込む魔法少女たちの姿があった。
そして少し遅れるように、全身真っ黒な如何にも悪魔という見た目の敵が空から飛んでくる。
ああああ! スマホがないから映像が撮れない! 俺としたことが、さっきの騒ぎの時にスマホも吹っ飛ばされてしまったらしい。こうなったら網膜に焼き付けるしかない! 野次馬も集まってきたし、映像は後でネットにでもアップされるだろうからそれを見ればヨシ!
「幸人! それどころではありません! 早くしなければ!!」
「うんうんそうだね早くしないとねわかったわかったうんうんそうだねわかるわかるそれなうんうん」
風圧で吹っ飛ばされていた猫ちゃんがいつの間にか戻って来ていて、しきりに何かを訴えかけてくる。
しかし俺は魔法少女たちと悪魔の戦いを見るのに夢中でいつの間にかうんうんBOTと化しており何を言っているのかはよくわからなかった。
「私たちは、絶対に負けない! 負けてはならない! 私たちの背には! 力なき民草の命がかかっている!! 立ち上がれ魔法少女共!! その血は何のために流れている!!
やっぱり『鉄血』の魔法少女スカーレッドアーミーはリーダーの器……。序盤は借り物の力でイキっているというような悪い評価もあったけど、こういう場面では真っ先に奮起する不屈の心を最初から持っている。
彼女の姿に感化されたように、他の魔法少女たちもそれぞれの魔法を活かして慣れないながら役割分担をし始め、最後には見事に悪魔を撃破した。
素晴らしい。尊い。我が生涯に一片の……
【バッドエンド警報! バッドエンド警報! 変身要請!! コード:――】
「っ!? なんだこれ!?」
魔法少女たちの勝利姿に酔いしれていた俺の脳内に、突如として大音量のアラームと共にそんな声が鳴り響いた。
「ええい! 変身コードを唱えなさい! そうしなければ、彼女たちはバッドエンド直行です!!」
バッドエンド直行、だと……?
二次創作は、許す!!
カップリングも、許す!!
オリキャラもオリ主も、まあ許す!!
だけどバッドエンド改変だけは許さない!!
「