ハピエン教団(団員1名)信者の俺、魔法少女アニメの世界に招かれたのでハッピーエンドを死守するため戦っていたらいつの間にかクソデカ感情を向けられていた   作:pfk

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10話 いやじゃいやじゃ学校行きTonight

「眠い……。この世界では学校なんて通わなくていいはずだったのに……」

 

 電車を降りて学校への通学路を歩きながら、俺は自宅で留守番している猫に恨みの思念を送る。

 昨日、猫に自分がモブであることを突きつけられた俺は、原作キャラとの関りを過剰に恐れることはないと思い直した。

 そしたら猫が間髪いれず、明日から学校に通うことになっていると言い出しやがった。

 しかも! 案の定その学校は魔法少女たちが通っている桜ヶ丘高校と来たもんだ。律儀に制服も用意済みだった。

 

 いやじゃいやじゃ学校行きTonightと再び駄々をこねてみたのだけど、猫は今更変更できないと言って聞く耳を持たなかった。

 まあ、モブであることを自覚した今となっては口で言うほど嫌でもないから、むしろちょっと楽しみまである。

 魔法少女たちの交流を陰ながら見守ってニチャニチャしてやるぜ!

 

「っすー」

 

 ワクワクした気持ちを抱えつつ学校に辿り着き、雑に挨拶をしつつ教室に足を踏み入れても、とくに誰も反応はしなかった。

 

 猫の言う通り、俺は今日突然登校を始めた生徒ではなく、この4月から桜ヶ丘高校に通っていた生徒、ってことになってるみたいだ。

 

 俺の設定は、4月からこっちに引っ越して来た転入生ってことにしておいた、と猫は言っていた。変に浮かないようにという配慮で転入生の紹介などはされず、クラス替えに紛れる形で新たな高校生活をスタートした、と。

 実際のところここ数日は魔法少女としてハッピーエンドを守護ったり、なくしたスマホを探したり、聖地巡礼をしてみたりと好き勝手に生活していたわけだけど、その期間もちゃんと学校に通っていたという風に猫が情報改変してくれたらしい。

 

 上位存在様様だぜ!

 お陰で悪目立ちすることもなく、モブとしてのびのびと過ごせるってもんだ。

 

 一つ注意するところがあるとすれば、変身時は認識阻害の魔法で正体がバレないようになってるらしいんだけど、魔法少女同士ではその認識阻害が働かないってところだな。魔法少女たちの前で変身することだけはないように気を付けなきゃならん。

 とくに同じクラスの赤羽根歩ことスカーレッドアーミーと、青森空ことスカイブルーアーチャーの二人。

 

「お昼になったら起こして……」

「先生来たら起こすからね」

 

 登校早々机に突っ伏して眠り始めた青森空の姿を見て、赤羽根歩が困ったように眉を八の字にして苦笑している。

 同じ学年ということで猫のやつが気を利かせたのかもしれないが、正直たまらん。

 コミカライズの日常4コマでみたやり取りを生で見れるとは……! モブで良かった……!

 

 俺は教室の中でも比較的後ろの方の席であり、二人は前の方。多少視線を向けていてもバレることはない! あゆそらてぇてぇ~。

 二人は幼馴染で、青森空は赤羽根歩を守るために魔法少女になったんだよな~。もちろん正義感はちゃんとあるんだけど、元が面倒くさがりだから、赤羽根歩が魔法少女になってなかったら多分青森空は魔法少女になってない。

 物語開始前の時点で親友なんだけど、戦いの中でもっと絆を深めていって、最終話では親友以上恋人未満、みたいなじれったい関係性なんだよ~! 萌える~~!

 ちなみにあゆそらに限らず、作中で明確に百合カップル誕生の描写はされてないが、秒読みみたいな関係が多いので、実質百合アニメであるというのが有識者の見解だ。女の子がイチャイチャしてたらそれだけで百合なんだよ! なお、ファンの間ではカップル扱いが定番である。カップリングは許す!

 

 推しと同じ空間に存在できるという奇跡を噛み締めながら、俺の異世界学生生活は何の波乱もなく過ぎて行く……、はずだった。

 

 

 

 

 桜ヶ丘高校には学生食堂があり、元の世界で通っていた高校にはなかったこともあって俺はテンションをぶち上げながらA定職(アジフライと謎の小鉢とみそ汁と杏仁豆腐)の食券を購入し、何とか空いている席を見つけて滑り込んだ。

 いやー、結構込んでるし、席空いてる! と思ったら荷物が置いてあって場所取りされてたりで、空いてる席探すのも大変だなぁ。

 

「えっ、お隣さん?」

 

 空いている席しか視界に入っておらず、正面に座っている人のことなんてほとんど見てなかった。

 ファミレスとかと違い、相席も普通のようだったから(多分そうしないと人が溢れるから)気にしてすらいなかった。

 

 まさか、紫蝶(むらさきあげは)の正面だなんて思わないじゃん!

 

「……ヒトチガイデス。セキマチガエマシタ」

「ふふっ、なんでロボットみたいなの?」

 

 なんでと言われれば人違いであることをゴリ押しするためなのだが? だがだが?

 しかしギャグと捉えられてしまっている様子。

 

「シツレイシマシタ」

「先約でもあるのかしら? その席は空いてるけど」

「……いや、あのほんとにストーカーとかではなく、偶然の連続というか」

 

 怪しいナンパ男が学校まで押し掛けて来たと思われたら困る。本当に困る。ポリスメンのお世話にはなりたくない。

 

「さっきの反応も演技とは思えないし、別に昨日のことも気にしてないわ。あなたがうちの学校の後輩だったことには驚いたけれどね」

「……? あー、ネクタイの色ですか」

 

 なんで2年生であることがわかったのか一瞬疑問に思ったけれど、そういえばこの学校ネクタイとリボンの色が学年ごとに違うから、それでか。

 

「そういえば引っ越して来たばかりって話だったわね。あまりこの学校のことも慣れてないのかしら」

「ですねー。いただきまーす」

 

 折角の食事が冷めてしまうというのと、いくら俺がモブとはいえ接触しすぎるのは如何なものかという気持ちもあり、早々に会話を切り上げて黙々と食事を始める。食事中は静かにしないとな!

 見たところ、紫蝶の食器はすでに空のご様子。食後のお冷で一杯やっていたというところだろう。俺が飯を食べ始めれば、食器を片付けて立ち去ってくれるに違いない。

 

「……」

「……?」

 

 黙々と箸を動かしモグモグと口を動かす俺。

 そんな俺をジーっと見つめて来る紫蝶。

 なんすか。

 

「なんすか」

 

 あ口に出ちゃった。

 ちゃんと飲み込んでから話しましたことよ。

 

「……一緒に食事をする相手もいないのなら、慣れない学校を少しくらい案内してあげようかと思ったのよ。お隣さんのよしみでね」

 

 え、これ、言外に友達0人って煽られてる?

 やってやろうじゃねーかよコノヤロー!

 

「おまいう」

「お、おま? え、なに?」

 

 おっとピキピキして心にもないことを。

 

「失礼、噛みました。お隣さんもお忙しいでしょうからお構いなくー。探検するの好きですし」

「……そう。余計なお世話だったみたいね」

「お気遣い感謝しますっ」

 

 やー、にしても紫蝶ってこんな親切なキャラだったっけ? 序盤はもっとトゲトゲしてたっていうか、戦隊にもそんなに馴染めくて、友達もいないしで、結構ツンツンしてた時期だったと思うんだけど。視聴者からも人間嫌いなのかなって考察されてたくらいだし。ま、ほんとは友達が欲しいお笑い好きの女の子なんですけどね! 過去のあれこれで人間関係がちょっと苦手な天然クール笑い上戸なんだよね!

 

(むらさき) (あげは)よ。ずっとお隣さんていうのもね」

「了解っす、紫先輩!」

「それじゃあね」

 

 そう言って、紫先輩はクールに去るぜ。

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