ハピエン教団(団員1名)信者の俺、魔法少女アニメの世界に招かれたのでハッピーエンドを死守するため戦っていたらいつの間にかクソデカ感情を向けられていた 作:pfk
どこまでも続いてるんじゃないかと思うほど長く続く田園風景を視界に収めながら、私は荒い息を吐いて足を動かす。
魔法少女になってから始めた日課のランニングは、今まで授業くらいでしか運動して来なかった私にとっては結構つらいものがあるけど、何もしないでいるよりはずっとマシな気分になれる。
空ちゃんは何をやっても人並み以上の成果を出せる天才肌で、黄海さんは運動が凄く得意で戦闘センスもピカ一だってピーちゃんに褒められてた。緑川さんは人のことを良く見ていて気遣いのできる子で、回復役にぴったりだし、紫先輩はいつも冷静で頭も良くて、私じゃ気づけなかった作戦の問題点を指摘してくれる。
みんな秀でてる何かがあって、それを魔法少女として戦いに活かしてる。だけど私には何もない。私は何をやってもダメダメで、どんくさくて、友達だって少ないし、学校の成績も悪い。だから、その分私は頑張らなくちゃいけない。みんなの一歩よりも小さい歩幅かもしれないけど、私はその分歩数を増やす。それがきっと、魔法少女としてこの世界を守ることにも繋がるはずだから。
千里の道も一歩からって言うしね!
【悪魔警報! 悪魔警報! 変身要請!!】
早朝のランニングを片道分終えて一息ついていたところで、頭の中に警報のアラームが鳴り響いた。
出現場所は、ここ。今私が休憩してる大きな自然公園の一角。
「
赤と黒の軍服のような魔法少女衣装を身に纏って、悪魔の出現反応地点へ急行する。
一人で駆け付けるのは危険なのはわかってるけど、みんなを待ってたらその間に犠牲になる人がいるかもしれない。幸い、空ちゃんの家は近いから、一人で倒せなくてもしばらく持ちこたえれば援軍は来てくれる。
「『鉄血』の魔法少女! スカーレッドアーミー!
悪魔との戦いの日々やトレーニングを経て新しく習得した3節魔法を発動する。
兵器を創造する効果自体は変わってないけど、魔法は詠唱が1節増えるごとに格段に強くなる。
今回創造したアサルトライフルも、今までとは比べ物にならない威力に上がってる。
「あら、お一人? 私は」
今まで見たことないタイプの、女性型悪魔。だけどやることは変わらない!
周囲に人気はないことを確認してから、相手の言葉を待たずに引き金を引いて銃撃を始める。
「独りよがりなのは良くないわねー。前戯は相手のことも考えてあげないと」
……っ、効いてない! 手が蛸足みたいな触手に変化して、それで全部受け止められてる!?
魔力が切れるまで弾切れにはならないけど、このまま撃ち続けても効果は薄いかもしれない。
だったら別のアプローチを!
「
「はーい、そこまでー」
「んー!?」
兵器を換装するために銃撃が途切れた瞬間を狙って、女悪魔が凄い速度近づいてきて、触手の腕で口を塞がれた。
抵抗しようとした腕も、足も簡単に触手に掴まって、空中で大の字に拘束されて身動きが取れない。しかも拘束される時についでのように衣装を破かれて、素肌に直接触手が触れてる部分も多い。
ヌメヌメして気持ち悪い!
「んー! んんー!!」
「あはは、甘噛み可愛い! それとも本気噛み? それはそれで惨めでか~わいー!」
駄目だ、全力で暴れようとしてもびくともしないし、本気で噛み千切ろうとしても全然歯が立たない。それどころか変な汁がにじみ出て来て気持ち悪い!
悔しいけど、私一人じゃこの悪魔には勝てない……!
でもどういうつもりかわからないけど、この悪魔は私をすぐに殺すつもりはないみたい。だったらみんなが来るまで耐えれば、勝機はまだある!
「そろそろ効いて来る頃かな?」
「……? んっ!?」
体力を温存するために一旦抵抗を止めて大人しくしていたら、急に全身が熱くなり始めた。いや、さっきまで全力で抵抗してたから気づかなかっただけで、もしかしたら異変は少しずつ進行してたのかも。
「この子たちの体液は女の子をとーっても気持ちよくさせちゃうの。スカーレッドアーミーちゃんはいっぱいしゃぶしゃぶしてくれたから、もうこれだけでも」
「んんんぅー!?」
両手両足を触手が這いまわる感触が、さっきまでは気持ち悪いだけだったのに、電流が走るみたいにゾクゾクして
「ねえ、今どんな気持ち? どんな気持ちぃ?」
「ふぅっ、ふぅっ、気持ち悪い、だけだ!!」
「あはっ♡ そうよね! 魔法少女だもんね! 気持ち悪いだけよね~~!」
それがなんなのかわからないほどに
「じゃあ今から赤ちゃん産ませるわね!」
「……は?」
「心配しないで! 人間でも触手を産めるように身体ちょこっとだけ改造するから! それだけで壊れちゃう子もいるんだけど……、気持ち悪いだけなら大丈夫よね☆ うちの子は成長早いわよー。仲間の前で出産ショーさせてあげる!」
見せつけるように、グロテスクな触手が目の前に突きつけられて、うねうねと気味悪く蠢く。
醜悪で、気持ち悪くて、悍ましい、化け物。
カチカチって、どこからか音が聞こえた。
小刻みに、固いものを何度も打ち付けるような音が、すぐ近く、自分の口元から。
「……や、やだ」
「えー? なにー? 早くしてって?」
「やだぁ! そんなの産みたくない!! バケモノの子供なんて産みたくないよ!!」
「ちょっとちょっと、言葉遣い変わってるわよ? 私は普段の方が好きだなぁ。強そうな子ほど墜とし甲斐があるじゃない?」
命をかけて戦う覚悟はしてるつもりだった。死んじゃうかもしれないってことはわかってるつもりだった。
だけど! こんなの違う! こんなの嫌だよ!
「いやあぁぁぁ!? 誰かぁ! 助けてぇぇぇ!」
「私はそういうのより嬌声の方が好き」
「ひあぁんっ、あぁっ! やだっ、やめてぇぇ!」
グロテスクな触手が私の太ももを撫でるように這いずりながら、少しずつ登ってくる。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ! 助けて、助けて! 助けて、誰かぁ!!
「
「ぐあぁぁっ!?」
眩い光と共に、私の体は触手の拘束から解き放たれて、悍ましい悪魔が吹き飛んでいった。
あっと言う間のできごとで、何が起きたのかをすぐに理解できない。
「スカーレッドアーミー! 大丈夫ですか!?」
私を守るように立ちはだかってくれたその背中は、もう何度も見たもので。
振り返って心配そうにしてくれる顔は、いつにも増して格好良くて。
「う、うん、……ありがとう」
さっきまで、怖くて怖くて堪らなかったはずなのに、今は胸がドキドキして止まらない。
「少しだけ待っていてください」
私を安心させるように優しい笑顔で、穏やかな声でそう言ってくれたハッピーエンドキーパーちゃんは、私の苦戦なんて蹴っ飛ばすみたいに、いとも簡単にその女悪魔を倒して見せた。
「もう大丈夫です。安心してください」
ちゃんと立ち上がって、お礼を言わなきゃ。
無様な姿を見せちゃったけど、私だって魔法少女なんだから。
心配しないで、もう大丈夫って、言わなきゃ。
そう思うのに、足が震えて、力が入らない。
「……大丈夫、大丈夫です。怖かったですね。よく頑張りました」
ハッピーエンドキーパーちゃんは、何も聞かずにそっと私のことを抱きしめて頭を撫でてくれた。
……ズルいよ。そんなことされたら、無理だよ。強がれないよ。
「こわかった……! こわかったよぉ!! うわあああああん!!」
ハッピーエンドキーパーちゃんは、私が泣き止むまでずっと、ずっと一緒にいてくれた。
警報を受けた空ちゃんが駆け付けて、ようやく落ち着いた私は、恥ずかしさやらなにやらグチャグチャでまともにハッピーエンドキーパーちゃんの顔を見れなかった。