ハピエン教団(団員1名)信者の俺、魔法少女アニメの世界に招かれたのでハッピーエンドを死守するため戦っていたらいつの間にかクソデカ感情を向けられていた 作:pfk
「今日は早起きですね」
「赤羽根歩の様子が気になるからな」
休みも明けた月曜日。俺は珍しく早起きしてさっさと身支度を済ませていく。
赤羽根歩と青森空は登校時間が一定でなく、俺より遅かったり早かったりで法則性がない。様子を伺うのなら、早めに登校するに越したことはないだろう。
人が増えてくると露骨にジロジロ見るのも怪しいしな。
「んじゃ行ってくるわ」
「いってらっしゃい」
玄関まで見送りに来た猫に挨拶を済ませて扉を開く。
「あ、おはようございまーす」
「おはよう。今日はいつもと違う時間なのね」
タイミングの悪いことに、家を出たところでちょうど紫先輩と鉢合わせしてしまった。
今まではあえて紫先輩と時間ずらして登下校してたんだけど、そういえばこの時間だったか……。
「いやー、今日は目が覚めちゃいまして! では!」
「ちょっと、どうせ同じ電車でしょう? 一緒に行けば良いじゃない」
「それもそっすね!」
適当に話を終わらせて足早に歩き出そうとしたところを引き止められ、なぜか二人並んで歩くこととなってしまった。
うん、流石に気づいてはいる。好意とかそういう話ではないけど、多分後輩的な意味で多少興味を持たれてる。じゃなかったらこの時期の紫先輩はこんなに人付き合いに積極的じゃない。
俺また何かやっちゃいました?
というのは冗談にしても実際なんもやってなくないか?
猫アクシデントと学食で一瞬相席になったくらいだぞ。
……まあ、後者はともかく前者は俺も衝撃的だったし、なんも知らん奴と比べれば話しかけるハードルは低い、のかもしれない。
「……」
「……」
無言! 気まずい! 誘っておいて話は振らないんかい! 俺だってオタトーク以外の引き出しなんてほとんどないんですけどー!?
「……随分、猫と仲が良いのね」
「へ? あ、まあ、はい」
「さっきも行ってきますの挨拶をしていたでしょう?」
「え!? 聞こえてました!?」
「元気な猫ちゃんの鳴き声もね」
紫先輩はそう言って、くすっと優しい微笑みを浮かべる。
ふむ、猫が喋ってるのを聞かれたかと思ったけど、鳴き声か。
もしかして猫の言葉を認識できるのは俺だけで、他の人にはニャーみたいにしか聞こえないのかも。
「あなたたちを見てたら、私も猫を飼ってみたくなったわ」
「飼えばいいじゃないっすか。ペット可のマンション、ですよね?」
「なんで疑問形なのよ。可だからあなたも飼ってるんでしょう?」
猫が用意してくれた家だから契約書とかなんも読んでないんだよな。
流石にペット可ではあるようで安心した。
「でも、調べて見るとペットを飼うのって結構大変みたいね。あなたは学校の間はご家族が面倒見てくれてるの?」
「いえ、一人暮らしなんで好きにさせてますよ。あいつはめっちゃ賢いので、あんま参考にならないと思いますけどね」
「……そう、インターホンを押せるくらいだものね」
餌も食わんしトイレもしないし、ランニングコストがかからなくて助かるぜ。
一家に一匹世界の意思! 今なら198,000,000円!
(勝手に売り出さないでください)
猫の幻が脳内でツッコミを……!
「羨ましいわ。実は私も一人暮らしなのだけれど、やっぱり自分がいない時のことを考えると……」
「そうなんですね」
知ってるけど、その情報開示してくれるのは助かるー。うっかりボロ出す可能性全然あったからな。
「まあ見守りカメラとかもありますし、本気で飼いたいなら無理ではないんじゃないですか?」
「見守りカメラ……? そういうものもあるのね」
「てか先輩ってそんな猫好きなんですか?」
キャラ設定では特別猫が好きなんて記述はなかった気がするけど。
「人並みには好きよ」
猫狂いじゃないだけで人並みに好き、くらいならキャラ設定に書いてなくてもおかしくはないか。
「飼い始めてから後悔することもあるみたいですし、とりあえず猫と戯れたいなら猫カフェとか行けばいいんじゃないですかね」
「……そうね」
相槌に反して、何か言いたげだ。
うちの猫と戯れたいのかな。でも流石に家に招くような関係性じゃないし。それは先輩もわかってるから言い淀んでいるのだろう。
「私はそういうお店に行ったことがないのだけれど、あなたはあるのかしら?」
「前に1回だけですね。人懐っこい子もいれば全然構ってくれない子もいて面白いですよー。あと服が毛だらけになります」
元の世界での話だけど。
「一人で行くのが不安なら友達誘って行ったらどうですか?」
ないとは思うけど、万が一経験者に付き添って欲しいと誘われたら断るのも気まずいから、先手を打っておく。まあ、モブの自意識過剰だとは思うけどな! ガハハ!
「っ! ……ああ、そういえばあなたは転入してきたばかりで、うちの学校のことは詳しくないんだったわね」
「ですです」
一瞬紫先輩が剣呑な雰囲気を纏いだしたが、すぐに思い出したように言葉を続けた。
だから先輩が氷の女王なんて呼ばれてることはもちろん、友達がいないことだって知る由もないですよー。至極当然の反応ですよー。嫌味とかじゃないですよー。
「残念だけれど、私友達いないの。良かったらあなたが付き合ってくれない?」
「えっ?」
……えっ?