ハピエン教団(団員1名)信者の俺、魔法少女アニメの世界に招かれたのでハッピーエンドを死守するため戦っていたらいつの間にかクソデカ感情を向けられていた   作:pfk

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2話 謎の魔法少女 Side:赤羽根歩

 今回の敵は今までとは比べ物にならない強さで、魔界貴族って呼ばれる悪魔の中でも強大な存在だってことは妖精から教えて貰ってた。

 

 だけどそんな相手にも私たちは勝てた!

 最初はみんなバラバラだったけど、最後はほんの少しだけ心が通じ合ったような気がしたんだ。

 まだまだ未熟だけど、これから少しずつみんなで強くなっていけば、きっとこの世界を守れるはずだって、そう思ってた。

 

「なんの、冗談だ」

 

 信じられない、信じたくない光景に思わず乾いた声が漏れた。

 

 全員で力を合わせて、死力を尽くしてなんとか倒したはずの悪魔が、魔法の力で浄化されて消えていくはずだった靄みたいな黒い何かが、唐突に蠢いて形を取り戻し始めた。

 

「……今回ばかりは流石に死んだかと思ったが、何だ? 力が湧き出るようだ! クックック、魔王様の計らいかわからぬが、これは僥倖!」

 

 楽しそうに笑い声をあげる悪魔が放つプレッシャーは、さっきまでよりも更に大きくなってる気がした。ただ復活しただけじゃなくて、ずっと強くなってるのがわかった。

 ただでさえ、全力以上を出し切ってようやく勝てたっていうのに、みんな消耗してる状態でこんなのとどう戦えばいいの?

 

「さっきはよくもやってくれたな魔法少女ども! 自ら死を懇願するほどの苦痛を味合わせてくれる!」

 

 疲労とダメージで立っているのもやっとだっていうのに、追い打ちをかけるように絶望が心にのしかかる。

 

 だけど、それでも、諦めるわけにはいかない。

 

「ふん! 笑わせる! 復活するというのなら、何度でも叩き潰してやろう!! 私は魔法少女スカーレッドアーミー!! 冠するは『鉄血』!! 闘争こそ私の本分だ!」

 

 そうだ、私は魔法少女なんだ。

 私たちの後ろには守るべき人たちが沢山いるんだ!

 たとえみんながもう戦えなくても、たとえ魔力を絞りつくしたとしても、最期まで戦ってみせる!

 勝てなくても、少しでも時間を稼ぐんだ。みんなが逃げるのに必要な時間を!

 

 その時、空気が震えた気がした。

 

――ハピエンハピエンハッピーエンド!

――ハピエンハピエンハッピーエンド!

 

 え、なに? この、歌?

 

――ハピエン以外は認めない!

――バドエンなんざクソくらえ!

――メリバもビターも許さない!

 

「む!? なんだこの馬鹿みたいな歌は!? 」

 

 唐突に大音量で流れ始めた聞き覚えのない歌に思わず困惑してたら、悪魔もキョロキョロ辺りを見回し始めた。

 私だけ聞こえてるってわけじゃないんだ。

 

――ハピエンハピエンハッピーエンド!

――ハピエンハピエンハッピーエンド!

 

「死ねオラァァァ!!」

「ゴファアッ!?」

 

 気が付いたら、悪魔の背後に見たことのない少女がいた。

 悪魔と対面してる私でさえ、彼女がいつの間にそこにいたのかわからなかった。

 そしてその少女は振りかぶった巨大なハンマーを盛大に振り下ろして悪魔を地面に叩き落した。

 

 天に浮かぶ姿はまるで天使みたいに可憐で美しくて、ほんの一瞬だけど戦いの最中だってことを忘れて見惚れちゃってた。

 

「魔法少女ハッピーエンドキーパー、参上!! バドエン改変はゆ゛る゛さ゛ん゛! 喰らえ! リヴ(邪悪)エクソ(祓う)イロー(聖なる)レイ(光の)アリン()!」

 

 3節魔法……? でも、なんか違う気がする。

 私たちの2節魔法よりも、ずっと規模が大きい。

 

 神々しさを感じるような光線が雨みたいに降り注いで、それを浴びた私の傷が癒される。

 それだけじゃなくて、消費した体力や魔力も回復して、体に力が漲るのがわかった。

 みんなもそれは同じみたいで、何が起きたかわからないって顔をしながらも、戦う意思を示すように立ち上がってくれた。

 

 あのハッピーエンドキーパーって名乗った子が何者なのかはわからないけど、魔法少女を名乗るなら援軍だと思っていいんだよね?

 

「支援感謝する!! 色々と聞きたいことはあるが、まずはあの悪魔を倒してからだ!」

 

 地面に叩き落とされた悪魔に視線を向けつつ声を張り上げる。

 

 魔法の効果から推察するに、多分あの子の魔法は回復・支援型の光属性。うちのエメラルドメディックと似たタイプだと思う。

 さっきのハンマーの一撃を見れば一人でも十分に戦えることはわかるけど、協力したほうが確実に悪魔を倒せるはず。

 

 と思ったんだけど、返事が聞こえなかったからチラッと空に視線を向けたら、ハッピーエンドキーパーと名乗った魔法少女はいなくなってた。あんまり最前線には出たくないタイプかな。頼り切りになるつもりはなかったけど、あの子がいてくれたら心強かったんだけどな。

 

「バ、バカな……! ありえん、この私がこうも容易く……!」

 

 自分の考えが間違いだったことはすぐにわかった。

 土煙が晴れて姿を現した悪魔は全身穴だらけになってて、体の消滅が始まってたから。

 さっきの光の雨は、味方を回復するだけじゃなくて、悪魔への攻撃にもなる魔法だったんだ。

 

「何者だ……! ハッピーエンドキーパー……!」

 

 最後にそう言い残して、悪魔は完全に消滅した。

 何者だって、そんなのこっちが聞きたいよ。

 とりあえず帰ったらピーちゃんに聞いてみなくちゃだけど、でも少なくとも敵ではなさそうだし、そんなに警戒する必要はないよね。本人も魔法少女だって名乗ってたし。

 

 ほんとにどうなることかと思ったけど、無事に乗り切れて良かったぁ。

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