ハピエン教団(団員1名)信者の俺、魔法少女アニメの世界に招かれたのでハッピーエンドを死守するため戦っていたらいつの間にかクソデカ感情を向けられていた   作:pfk

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23話 不意に毒蛇

「病弱設定を付与することでここぞという場面でしか登場しない理由付けを行ったわけですか」

「最強キャラのコントロールはこの手に限る」

 

 戦いを終えて自宅へ帰った俺に猫が早速絡んで来た。

 

 他にも最強キャラに枷を与える手段はあるけど、赤羽根歩の再起を図るという意味ではこれが一番効くだろう。

 気軽に頼れない、それどころか頼ってはいけないかもしれないと考えてくれれば、私がやらなくちゃという使命感を思い出してくれるはず。

 

「病弱設定にするならもう少し詳しく説明しても良かったとは思いますが」

「説明しすぎないからいいんだよ」

 

 実は私の魔法は強力過ぎるあまり、短時間にノーリスクで使えるのは2回まで。それ以上の使用は大きな反動があり、だからいざという時しか戦えないのです。

 

 なんてそんな如何にもな設定を語り出したら言い訳っぽくなっちゃうだろ?

 そもそもがハッピーエンドキーパーって魔法少女は謎多き存在で通ってるんだから、後はご想像にお任せしますが一番なのだ。

 

 特に天邪鬼で疑り深いような奴には、尤もらしい説明をわかりやすくするのは逆効果だ。それが逆に怪しいと更に疑いを深めるだろうからな。緑川翠香とかは未だにハッピーエンドキーパーを信じ切ったりしてないだろうし。

 

「そういうものですか。そういえばその緑川翠香とはどうなのですか?」

「とりあえずこないだ考えた言い訳を返信したけど、その後はとくに動きないな」

「ふむ、興味を失ったのでしょうか」

「その可能性はある」

 

 秘密を暴くのが趣味の緑川翠香なわけだが、今は俺のようなモブではなくハッピーエンドキーパーという存在の方がよっぽど興味を惹かれているだろう。

 言い訳も若干苦しくはあるけど矛盾はしてないし、こっちのことはとるに足らない内容だと判断したのかもしれない。

 

「つまらないオチですね。ちゃんとお金は返してくださいね」

「死ぬまで借りるぜ!」

「死んでも取り立てますが?」

「……冗談です。バイト頑張ります」

 

 世界猫ならそれも出来てしまいそうで怖い。

 

 せっかく新しいスマホ買ったけど、緑川翠香には証拠見せろとか言われることもなかったし、これなら猫に借金してまで2台目買う必要はなかったかもな。心配しすぎだったかな。

 

「モブ自」

「お決まりのように略すのやめようか」

 

 たしかにまたモブの自意識過剰だったかもしんないけどさ!

 

 

 

 

 

 などと油断したのも束の間、翌日の放課後になって俺は大ピンチに陥っていた。

 

「こんにちわ尾張先輩」

「え!? お、おー、緑川さん。誰か待ってるの?」

 

 特に何事もなく学校を終えて帰宅しようとしていた俺は、校門を出たところで緑川翠香に声をかけられた。

 偶然なのか、それとも出待ちされてたのかわからないけど、いきなり話しかけられると思ってなかった俺はそれはもう驚いて動揺しまくっていた。

 

「はい、尾張先輩を待ってました」

「それなら連絡してくれれば良かったのに」

「ふふ、サプライズというやつです。びっくりしましたか?」

「すげーびっくりした」

 

 通学路を歩いてたら不意に毒蛇に遭遇したってくらいびっくりした。

 まだ俺のスマホの件を探るつもりだったのか。

 

「先輩、今日は空いてますか? 良かったらお付き合いして欲しいところがあるんです」

「予定はないけど、それってこないだ言ってたスマホの買い替えの話?」

 

 ケータイショップにでも連れて行かれるんだろうか。

 

「いえ、それはもう大丈夫です。先輩も話しづらい部分があるみたいですし、買い替えは友達に相談することにしたので、スマホの件はもういいんです」

 

 一応元の世界から持ってきたスマホは試供品のテスターとして使っていると言い訳し、守秘義務があるので詳しいことは説明できないと主張して、それ以上の情報は一切渡していない。だからスマホの件を追求するのは諦めたのかもしれない。

 けどだったら何の用だと言うのだろうか。流石にあのスマホだけで俺の正体にまではたどり着けないよな。

 

「そう言って貰えると助かるけど、だったら付き合って欲しいところって?」

「先輩、甘いものはお好きですか?」

「好きか普通か嫌いで言えば大好き」

「それは素直に大好きと言えば良いのではないでしょうか……?」

 

 話が見えない。

 ただ、あの緑川翠香が何の企みもなしに俺に関わって来るとは考えにくい。俺の秘密(・・)を探ろうとしていることは確かだ。

 

「いきなり大好きなんて言ったら告白みたいに聞こえちゃうじゃーん」

「ふふ、先輩は面白いですね。っと、話がそれてしまいました。甘いものがお好きであれば損はさせませんので、善は急げです! 行きましょう先輩!」

「えっ、ちょっ、マジでなに? なんなの!? 怖いお兄さんとか出てこない!?」

 

 有無を言わせず俺の腕を掴んで緑川翠香が歩き出す。

 振り払おうと思えばもちろん振り払うことはできるけど、何を企んでるのか、どういう思惑があるのかが気になって逃げるのも不安になってしまい、俺はズルズルと引きずられるように緑川翠香に連行されるのだった。

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