ハピエン教団(団員1名)信者の俺、魔法少女アニメの世界に招かれたのでハッピーエンドを死守するため戦っていたらいつの間にかクソデカ感情を向けられていた   作:pfk

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24話 袖振り合うも他生の縁 Side:緑川翠香

 ハッピーエンドキーパーという魔法少女については色々と謎が多く気になる存在ですけれど、現状ではその秘密を切り崩すための手がかりも接点もないので、一先ずは様子見しておくしかありません。

 それに対して、突如学校に現れた面白そうな謎についてはいくらでもアプローチの仕方があります。今はこちらを楽しむとしましょう。

 

 小賢しくも、ネット通販で購入したのは別のスマホの間違いで、紛失していたのは新規参入企業が開発中の試作機であり、自身はそのテスターであると尾張先輩は言い訳してきました。そして守秘義務があるため試作機の件は話せないけれど、スマホの買い替えについて相談に乗ることはできるとのことでした。

 

 その言い訳については矛盾もないですし、受け渡しの日の反応を見ると確かにその可能性もあるような気はしました。あんなに嘘をつくのが下手なのに、例のスマホを通販で買ったと肯定した時は自然体だったのは、本当に勘違いをしていたからだとすればチグハグな演技力にも説明はつきます。

 

 しかし一方で、あそこまで挙動不審になるほどの嘘、隠しておきたい秘密というのが本当に守秘義務のあるテスターだから、なんて些細なものなのかは疑問です。

 

 まあ、いずれにせよ守秘義務があるから詳しくは話せないと言われてしまっては、それが事実にせよ偽りにせよ、スマホの件から切り崩して行くのは難しいでしょう。

 

「こんにちわ尾張先輩」

「え!? お、おー、緑川さん。誰か待ってるの?」

 

 ということで相手を油断させるために少しだけ時間をおいてから直接接触してみることにしました。

 受け渡しの時のことを考えれば、尾張先輩は想定していない出来事に弱く、アドリブは上手くありません。なので事前の連絡はせず、校門前で出待ちすることにしたわけです。

 

 とはいえここまで驚かれるとは思っていませんでしたけど。かなり警戒されているようで、やっぱり怪しいですね。

 

 話している感触から押しに弱そうだなと感じたので、最低限のことだけ確認して後はゴリ押しすることにしました。

 クラスで一番というほど自惚れてはいませんけれど、それなりに美少女である自覚はあります。

 可愛い女子からグイグイ迫られて本気で嫌がる殿方は中々いないでしょう。

 

「付き合って欲しいって、これのことだったの?」

「はい。期間限定でそのうえカップル限定のスペシャルパフェです! 絶対に食べたかったんですけど、中々お相手が見つからなくて……」

 

 先輩を引きづって連れて来たのは駅チカのお洒落な喫茶店で、先輩に説明した通りこのお店ではカップル限定の期間限定パフェを販売しています。

 これを食べたいから恋人の振りをして付き合ってください、という建前を使わせて貰いました。

 本音は勿論、会話の中で失言を引き出して秘密を探ることです。

 

「緑川さんならわざわざ俺に頼まなくても、クラスの友達とかに頼めば付き合ってくれると思うけど」

「袖振り合うも他生の縁と言いますし、それに、あまり身近な方に振りを頼むと言うのは少々恥ずかしくて……」

「そういうもんかね。どうもー。いただきまーす」

 

 運ばれてきた自分の分のパフェをパクパクと口に入れながら、美味しーなどと先輩は笑っています。本当に甘いものは大好きだったようです。

 

 ……それにしても、この人全然デレデレした感じがありませんね。いくら私のことを警戒していると言っても、私ほどの美少女に恋人の振りを頼まれてるんですよ? 少しは優越感とか、もしかして本当に自分のこと好きなんじゃとか、そういう感情はないんですか?

 

「店員さんに疑われるといけませんし、少しそれらしいことをしておきましょうか」

「へ?」

 

 負けたような気がして癪なので、少しだけサービスしてあげましょう。勘違いしてドギマギするがいいです。

 

「先輩、あーん」

「いや同じパフェだし別にいらない。店員さんだって一々疑ったりしないよ」

「……」

 

 黒です。この男には必ずなんらかの秘密があります。そうでなければこんな反応はありえません。

 

「でもこのパフェはほんとにうまいね。何回食べても飽きなそう」

「では、今度は私がお付き合いしてもいいですよ?」

 

 親交を深めてガードが緩くなれば秘密も探りやすいでしょうし、元より今日一日で秘密を暴けるとは思ってません。

 

「マジで? その時はお願いしよっかな」

「期間限定なので、早めに来ないと終わってしまいますので注意しなくちゃですね。他のスイーツも美味しいので、私は別のものでも構いませんけど」

「そうなの? 混んでるし、結構有名なお店だったりする?」

「ウチの生徒なら大体は知ってると思いますよ?」

 

 最寄り駅の駅チカですし、行ったことはなくても名前は知ってるという人も多いはずです。

 

「最近転入してきたばっかりだからこの辺のこと何も知らないんだよね」

「そうだったのですか。先輩がよろしければ、色々ご案内しますよ?」

「あー、うん、まあ、それは追々ということで……」

 

 こうも露骨に袖にされると、苛立ちよりもむしろ興味が大きくなりますね。

 これは私個人と親しくしたくないというよりは、怪しまれてるみたいだからあまり距離を縮めたくないという態度に感じます。

 先ほどは怒りで少々短絡的に黒判定をしてしまいましたけれど、やはり何か面白そうな秘密を抱えていそうですね。

 

 ふふ、ゆっくりと懐柔して詳らかにしてあげます。覚悟していてください。

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