ハピエン教団(団員1名)信者の俺、魔法少女アニメの世界に招かれたのでハッピーエンドを死守するため戦っていたらいつの間にかクソデカ感情を向けられていた   作:pfk

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25話 三大公爵

 一片の光すらも差さない闇の中で、三つの巨大な影が蠢いていた。

 

「こちらで送り込んだ手勢は全滅です」

 

 剥き出しの目玉が無数に寄り集まった集合体、邪視公爵イビーリアが楽しそうにコロコロと笑いながら言った。

 

「何が可笑しい、邪視公よ。儂は腸が煮えくり返るような思いだぞ」

 

 いくつもの獣を継ぎ接ぎして形作られたような獣、邪獣公爵デモンリオルは不機嫌であることを隠しもしない声音で唸る。

 

「……要、排除」

 

 唯一異形の見た目をしていない、人間に小さな角と羽、それから尻尾をつけたような見た目をした女悪魔、邪淫公爵ディスキュアは能面のような無表情でぼそりと呟いた。

 

 彼らは魔界三大公爵。

 力こそ全ての魔界において、王に次ぐ強大な力を持つ悪魔たち。

 その実力はたった一体で妖精界を侵略・支配できるほどであり、今の魔法少女たちでは傷一つ付けることさえ叶わない怪物である。

 

 普段は思い思いに自らの欲望に従って行動している彼らが、こうして一堂に会することは珍しい。

 今回集まったのは、ある問題について情報共有と対策会議を行うためだ。

 

「クフフ、妖精界の時はあまりにも相手が弱すぎて興醒めでしたからねぇ。今回は楽しめそうだと思いましてね」

 

 会議の議題は、想定に反して人間界への侵略が滞っている件についてだった。

 現在人間界には、追い詰められた妖精女王が自身の命と引き換えに造り出した妖精大結界が張られており、その仕様は力の弱い存在は素通りさせる代わりに、強大な力を持った悪性存在の侵入を阻むというものだ。

 これにより、悪魔の中でも力の強い魔界貴族と呼ばれる存在は人間界へ侵入できないようになっていた。

 さらに、結界通過時にはランダムで設定された転移と時間減速の罠が仕掛けられており、時間と場所を示し合わせて侵攻することができないようにされている。

 これらは全て、妖精女王が人間に最後の希望を託し、魔法少女として力を蓄えるための時間を確保するために用意したものだ。

 

 ただし、妖精大結界も無敵ではなく、その強度は人間界の秩序に比例するように作られている。即ち、侵入可能な弱い悪魔を送り込み、人間界で暴れさせることで平和と安寧を破壊し、世に混沌を齎すことで、いずれは魔界貴族も侵攻可能となるということ。

 

 現に、魔界貴族の中でも最弱である騎士爵の悪魔は、最初こそ侵入できなかったものの、現在は人間界へ侵攻可能となっている。

 

「しかしこうも一方的に返り討ちにされては、結界の強度を下げられんぞ」

「……ハッピーエンドキーパー、邪魔」

 

 寡黙な邪淫公爵ディスキュアは忌々し気に言葉をこぼす。

 まさに、結界の強度が下がらないのはハッピーエンドキーパーという魔法少女が最大の原因だった。

 騎士爵の悪魔の侵攻に合わせるように突如として出現した魔法少女。

 圧倒的な戦闘力に加え、瞬間移動の魔法によって神出鬼没であり、分身の魔法によって複数の戦況にも単独で対応してしまう。

 

 もちろん、自分たちの手にかかれば赤子の手を捻るように殺すことができるだろうと三大公爵は考えているが、結界の強度を下げなければ直接対峙することは叶わない。

 

「その点については私も同意いたしますよ。ですので、ハッピーエンドキーパーには消えてもらうとしましょう」

「どうやってだ? 報告通りの強さならば、騎士爵程度の悪魔ではどれだけ束になっても敵わんだろう」

 

 悪魔の中には、ほとんど戦闘力を持たない代わりに特殊な能力を持つ者がいる。

 その中でも人間に擬態することが可能な能力を持った悪魔は、短時間ではあるが人間社会に紛れ込んで情報収集が可能であり、ある程度の情報は魔界にも報告されている。

 そのため邪獣公爵デモンリオルや邪淫公爵ディスキュアは、自身の眼で確かめたわけではないものの、ハッピーエンドキーパーという魔法少女が異常に強いことは把握している。

 

「クフフ、実は面白い情報を見つけましてね。どうやらハッピーエンドキーパーは継戦能力に難があるようで、一度に大技を撃てるのは2回までなのだそうです」

「フン、お得意の覗き見で得た情報というわけか。それが事実であれば、やりようはあるな」

「……波状攻撃」

 

 邪視公爵イビーリアは、悪魔の魔力が滞留している空間を遠隔で覗き見、盗み聞きする能力を有している。

 その能力により、先の戦闘でハッピーエンドキーパーが激しく吐血する姿を目撃していた。

 人間界でもその情報は野次馬の撮影した映像によって広がりつつあるが、デモンリオルとデスキュアはまだその情報を把握していなかった。

 

「流石、お二人とも話が早くて助かります」

「いきなり連携しろと言っても難しいだろう。それぞれの配下を集めて、三段階の波状攻撃とするのが無難か」

 

 ハッピーエンドキーパーの存在が邪魔であるという共通認識により、作戦はトントン拍子で決まっていく。

 

「場所は桜ヶ丘」

 

 そうして最後に作戦の実行場所はどこにするかという段階で、ディスキュアが言葉少なに告げる。

 

「妥当ですね」

「異論はないが、例の力についてはまだ何もわからんのか?」

「さっぱりです」

 

 ハッピーエンドキーパーの出現と時を同じくするようにして発生し始めた謎の現象。

 魔界では一時的な仮称として「覚醒」と呼んでいるそれは、本来その悪魔が持つ力や潜在能力を遥かに上回るパワーアップを果たすものだ。

 この現象は魔界では一件も確認されず、人間界に攻め込んだ悪魔にのみ発生していることから、人間界の環境か何かに悪魔をパワーアップさせる要因があるのではないかという仮説が唱えられているが、真相は不明である。

 

 ただし不明ではあるものの、いくつか法則を見出すことも出来ている。

 それは特定の地域に進攻した悪魔が高確率でその力に目覚めるということ。

 その中でも現時点で100%の覚醒率となるのが、日本という島国の桜ヶ丘という町だ。

 

「ともあれ、ハッピーエンドキーパーは特に「覚醒」悪魔を倒すことを目的としているように見えますから、桜ヶ丘に攻め込めば確実に出て来るでしょう」

「ふん、次に出て来た時が奴の最期ということだ」

「死体、ちょうだい」

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