ハピエン教団(団員1名)信者の俺、魔法少女アニメの世界に招かれたのでハッピーエンドを死守するため戦っていたらいつの間にかクソデカ感情を向けられていた 作:pfk
「あ、り、え、ね、ええええええええええ! クソ改変乙!!」
「落ち着くのです、尾張幸人」
「これが落ち着いていられるか! なんだよさっきの復活パワーアップはさあ!? 出来の悪い二次創作かよっ!? えぇー!?」
原作には存在しない展開によって謎のご都合パワーアップを果たした悪魔。その強さは間違いなく騎士爵の域を超えており、あのまま魔法少女戦隊と戦闘になれば、彼女たちの全滅は免れなかっただろう。
そんなバッドエンド改変を見事打ち破った魔法少女ハッピーエンドキーパーこと俺、尾張幸人は、人気のない路地裏で変身を解除し世の不条理を嘆く叫びをあげていた。
「そう、まさにそれです。あれは二次創作なのです」
「えっ? じゃあここは魔法少女戦隊フラグメントの原作世界じゃなくて二次創作の世界ってこと? どう足掻いてもバッドエンドは避けられないってこと? バドエンクソ改変確定の世界に招かれちゃったってことー?」
そんな世界で生きている価値はない。死ぬ。
「違います! まずは落ち着いて話を聞きなさい!」
「……」
「いきなり落ち着くのですね。まあいいでしょう。そもそもアニメの世界などというものが存在することに違和感を覚えはしませんか?」
「しません」
そうだったらいいなと思って。
「……では凄く簡潔に言いますが、人の意思には力があるのです。一人一人の力はとても小さいですが、寄り集まることでその力は膨れ上がり、時に世界すらも創造してしまう」
「そうか! 人の意思を集めて指向性を持たせるのにアニメとか漫画のフィクションはぴったりなんだ!」
「勘の良すぎる人は嫌いです」
待てよ、それとさっきの二次創作発言を考えれば……
「この世界はアニメファンの無意識によって創造されました。しかしそれが故に、そのファンの意思による影響を受けやすい」
「バドエンクソ改変を望んでるアンチ共の影響が表れてるってことかーー!!」
「アンチか否かは知りませんが、バッドエンドや、その、大人向けとでも言いましょうか、そのような展開を望む意思の影響によって、悪魔が強化されたり性質が変わっているようです」
「ゆ、ゆるせねえ~~!!」
チクショウめー!!
これだから愉悦がどうこう言ってる二次創作は嫌いなんだ!!
バドエン作品を楽しむのは勝手だがハピエン作品を改変するんじゃねー!!
大人向けは……、……いや、この世界ではリアルなんだから駄目だろ! エ駄死!
「世界の意思、俺悔しいよ……」
「はい、私も同じ思いです。そしてだからこそ、光の意思を強く持つあなたに呼びかけたのです」
「元の世界から与えられる影響に比して、この世界に存在し直接力を行使できるあなたはより大きな影響を与えられます。どうかあなたのその意思で、この世界のハッピーエンドを守ってください」
「それは望むところなんだけども、なんで俺も魔法少女になっちゃってんの?」
今の説明で言うなら魔法少女である必要性なくないか。
なんかしれっとTSさせられてたけど大丈夫だよな!? あるよな!?
「この世界において特殊な力を行使できる存在は妖精、魔法少女、悪魔のいずれかのみです。いくらあなたに光の意思があっても、それを出力するためにはこの世界に即した形である必要があります。ですので、魔法少女という形にさせていただきました」
「超能力でシュバババーンってわけにはいかないわけね」
世知辛い世の中だぜ。
まあ要するに、バドエン改変厨の妄想のせいでこの世界に悪い影響が出てるから、ハピエン教団(団員1名)信者の俺がその改変をさらに改変してハッピーエンドを守護るわけね。
なんか変な歌が流れたり勝手に口上が口をついたりと思うところがなくはないけど、色物系魔法少女としてやっていくのも悪くはないか……。後で自分の変身姿をじっくり観察しよーっと!
「ちなみに俺が負けちゃったらどうなるの?」
「意味のない質問です。あなたはこの世界において最強の魔法少女となりました。あなた風に言うならチートオリ主というやつです。あなたが望まない限り、敗北などありえません」
うぎぎ……、チートオリ主……、ぐぎぎ……
ガコン
「ふー、なんとか適応して致命傷で済んだか。危うく拒絶反応で死ぬところだった」
「オリキャラやオリ主はまあ許すのではなかったのですか?」
「自分がそれになるのはまた別の話だろ」
ていうか俺それ口に出してないよね。
ファミチキください。
「コンビニは元の世界とほぼ同じものがあるはずですよ。魔法少女戦隊フラグメントは概ね現代に準拠した世界観でしたから。権利の関係で名前は少し変わってるかもしれませんが」
「ナチュラルに思考盗聴してるよな」
アルミホイル買った方が良いかな。
「……ん? てか俺これからどうするの? ずっとこっちの世界にいた方がいいの? 戦いのときだけこの世界に来ればいいの?」
「改変が生じている以上、いつ戦いが起きるかわかりません。できれば、常駐していただきたいのですが……」
「おっけー」
指で輪っかを作りつつにっこり笑顔で応じる。
「よろしいのですか? 原作通りのスケジュールであれば、一年は帰れないことになりますよ。今はまだ二つの世界を結ぶゲートが開いているので帰れますが、今日の内には閉じてしまうでしょう。次に扉を開けるのはハッピーエンドを迎えてからになります」
「後出しすなー! と言いたいところだけど、望むところじゃん! ハッピーエンドを見届けるまでは帰れねーだろ!」
当然を超えた当然。
ハッピーエンドしか勝たん!
「それはそれとしてどうやって生活していけばいいの? 金とか持ってないんだけど?」
財布は鞄に入れてたんだけど、身一つでこっち来てるからな。なくしたスマホも探さなきゃな……。
「その辺りのことは私の方でどうにかしましょう。戸籍の偽造や口座の書き換え程度ならいくらでもできます」
「反社会系の猫?」
「世界の意思です」
大事の前の小事というわけだ。ありがたやー。
「最後の質問だけど、バドエン改変をさらにハピエン改変するのは良いんだけどさ、それって俺が介入する以上原作の流れとは絶対乖離しちゃうじゃん。猫的にはそれってオッケーなん?」
俺は原作至上主義ではなくハピエン至上主義だ。
ハッピーエンドを守るためであれば、多少原作と違う流れになるのもやむなしと受け入れられるけど、猫は原作をもとに創造された世界の意思なわけだろ? だとすると猫は原作至上主義なんじゃないかなーと思ったりもしちゃうわけだが。だがだが。
「この世界はあくまで、魔法少女戦隊フラグメントという作品を媒介として生まれただけで、アニメそのものの世界というわけではありません。こちらの世界で何が起きようが、原作が変わるわけでもありません。あなたが元居た世界と変わらない、一つの世界なのです。最初から、決められた運命など存在しません」
なるほどな。つまり猫もハピエン教団信者だったってわけだ。
「ふっ、そうかもしれませんね」
よっしゃ! そんじゃハピエン教団(団員1名1匹)信者であるこの俺が、ハッピーエンドを守ってやるぜ!
「ハピエン最高! ハピエン最高! 猫もハピエン最高と叫びなさい!」
「ハピエン最高! ハピエン最高!」
意外とノリいいな。