ハピエン教団(団員1名)信者の俺、魔法少女アニメの世界に招かれたのでハッピーエンドを死守するため戦っていたらいつの間にかクソデカ感情を向けられていた 作:pfk
謎の魔法少女、ハッピーエンドキーパーに助けられた日から早三日。
ここ数日は何もない穏やかな日々が続いてて、私もちょっと退屈な授業を受けながら午後の睡魔と戦ってるところだった。
この時間帯はどうしても眠くなっちゃうよね。
【悪魔警報! 悪魔警報! 変身要請!!】
うつらうつらとし始めちゃったそんな時、脳内に悪魔発生を知らせるアナウンスが大音量で鳴り響いた。
ピーちゃんは悪魔を探知する力も持っていて、町内に悪魔が出現したらこうして私たちに教えてくれることになってるんだ。
このアナウンスは魔法少女の脳内に直接聞こえてるものだから、他の人には聞こえないみたい。
「
「
同じ教室で授業を受けてた空ちゃんと一緒に変身して教室を飛び出した。
私たちが魔法少女であることはトップシークレットなんだけど、ピーちゃんのサポートで認識阻害の魔法がかかってるらしくて、人前で変身しても正体はバレないようになってるんだ。
毎回二人揃ってお手洗いに、ってわけにもいかないしね。
「現場はさほど遠くないようです。急ぎましょう、先輩方」
「うおー! 今度こそ勝ーつ!!」
「基本陣形は作戦通りで大丈夫ね?」
エメラルドメディック、サンフラワーゴースト、バイオレットトキシンと空中で合流して、簡単に言葉を交わしながら空を飛んで現場へ急行する。
学年こそ違うけど、私たち魔法少女戦隊は全員同じ高校に通ってるから、平日は合流しやすいんだよね。
そうして5分ほども飛行すれば、街中で暴れまわってる悪魔の姿が見えてきた。
「……先手必勝。
「
「
「
遠距離攻撃を持たないサンフラワーゴーストを除いて、全員で一斉に攻撃魔法を放つ。
私は銃火器を創造する魔法で生み出した爆弾をぶん投げて、スカイブルーアーチャーは長弓による射撃、バイオレットトキシンは毒蜂を魔法で生み出してけしかけて、エメラルドメディックは大きな宝石の槍を投擲した。
悪魔はまだ私たちの存在に気づいてなかったみたいで、迫りくる攻撃に驚いた様子を見せたけど回避は間に合わなくて、全ての攻撃が命中した。
「クッ、不意打ちとは卑怯な……! 我こそは魔界貴族が一人! 騎士爵のメンヌヴィル! 名を名乗れ魔法少女ども!」
多少はダメージを受けてるみたいだけど、ピンピンしてるなぁ。
ピーちゃんから聞いた話によると、魔界貴族っていうのは魔界の中でも強い悪魔のことだったはず。でも騎士爵は魔界貴族の中では最弱の爵位だから、私たちでも何とかなると思う。
「『鉄血』の魔法少女! スカーレッドアーミー!」
「『天穹』の魔法少女、スカイブルーアーチャー」
「『鮮烈』の魔法少女! サンフラワーゴースト!」
「『翠玉』の魔法少女、エメラルドメディック」
「『蛇蝎』の魔法少女、バイオレットトキシン」
「「「「「魔法少女戦隊、フラグメント!!」」」」」
これ、普通に恥ずかしいけどバフの効果がある一種の魔法だから、相手が待ってくれるならやるに越したことないんだよね。
「ククク、やればできるではないか。いざ尋常に、参る!」
腰に差した刀のような武器を抜いて悪魔が私たちに迫る。
これまでの戦いで悪魔の中にも個人差っていうか、個体差があるのはわかってる。
今回の悪魔は一見武人みたいな感じだけど、だからって本当に正々堂々勝負する気とは限らない。
油断させておいて今度は向こうが不意打ちって可能性もあるし、警戒はしておかないと。
それに、ハッピーエンドキーパーちゃんっていう不確定要素もある。味方だとは思うけど確信はないし、そっちにも意識は割いておかないとだよね。
「メディック!」
「はい!
エメラルドメディックは防御と回復が得意な魔法少女で、宝石で作り出した身長よりも大きい盾で敵の攻撃を受け止めて、傷ついた仲間がいれば治癒の魔法で癒してくれる。
前回の戦いを経て、私たちはそれぞれバラバラに戦うんじゃなくて、お互いの長所を活かすように連携した方がずっと大きな力を発揮できるってわかった。
だからこの数日は、陣形を考えたり作戦を立てたりしてトレーニングしてたんだ。
エメラルドメディックは真っ先に敵の攻撃を受け止める盾の役割。
「ふん、こんなもの!!」
悪魔の振り下ろした刀と宝石の盾がぶつかり合って甲高い音を響かせる。
盾には傷一つついてないけど、パワーで悪魔に負けてメディックは少しずつ押し込まれてる。
でも、そうはさせない!
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「
「ぐっ! おのれ小賢しい真似を!」
私の魔法で生み出された5人の血の兵隊に、アサルトライフルを持たせて側面に回らせ一斉射撃を始める。
さらにサンフラワーゴーストが物体を透過する魔法を使ってエメラルドメディックの背後から真っすぐ突っ込んで、盾を通り抜けた瞬間両手に持つ双剣だけ透過を解除して無防備な悪魔の体を切り刻んだ。
私とサンフラワーゴーストは近距離で火力を集中させる矛の役割。
「
「
バイオレットトキシンの毒を付与する魔法で鏃を猛毒に変化させて、そのうえでさらにスカイブルーアーチャーの毒矢の魔法によって悪魔でさえも葬る致死毒と化した一矢が放たれ、意思を持ったように私たちを迂回して悪魔の背中に突き刺さった。
「ちっ、さっきの虫と同じような毒か!? 卑怯者がぁ!!」
バイオレットトキシンとスカイブルーアーチャーは、遠距離から火力支援をする弓の役割。
これが私たちの出した結論。
みんなが好き勝手に戦うんじゃなくて、一つの部隊として戦えば魔界貴族相手にだって引けを取らないんだ!
今回の敵だってこないだの悪魔と同じくらいの強さを感じるけど、負ける気がしない!
「おのれぇぇ! この我が、こんな小娘共如きに……! そもそもよってたかって毒まで使って卑怯だとは思わんのかぁ!?」
「はっ! 卑怯だと? 命をかけた戦いに卑怯もクソもあるものか! 私たちは勝たねばならない! 武人気取りの貴様とは、覚悟が違う!!」
致死毒の矢が刺さってから悪魔は明らかに弱って来てる。
大技でトドメを刺すまでもなく、時間を稼げば倒せると思う。
また前回の悪魔みたいに復活する可能性を考えたら、魔力は少しでも温存しておきたい。
ピーちゃんは悪魔について結構詳しくて色んな情報を事前に教えてくれるけど、前回の戦いで起こったみたいな復活してパワーアップするっていうのはピーちゃんも知らなかった。
妖精のネットワークを活用して他の町の妖精にも確認してくれたみたいだけど、ほとんどの妖精は見たことも聞いたこともないらしい。
ただここ数日、一部の町では悪魔がパワーアップして復活するって現象が確認されてるみたい。しかも大体の場合、その場にいる魔法少女たちでは太刀打ちできないほどに強くなる。
私たちの時のことを考えれば、それは全滅してもおかしくない大ピンチのはず。だけど実際には、全滅した魔法少女はいない。なぜなら、そんな時には決まってハッピーエンドキーパーと名乗る魔法少女が現れて悪魔を倒してくれるから。
それについては妖精ネットワークだけじゃなくて、動画投稿サイトとかでもハッピーエンドキーパーちゃんの各所での活躍がアップロードされてるから間違いない。
ネット上では神出鬼没の謎の魔法少女として敵か味方かなんて激論が交わされていて、基本的にピンチの魔法少女を助ける姿しか確認されてないから人類の味方だって意見が優勢みたい。
まあネットの人たちは、ハッピーエンドキーパーちゃんに魔法の力を与えた妖精が誰なのか確認できてないってことを知らないからそういう認識になるのも仕方ないよね。
「戦いに卑怯もクソもない、か……。このような力を使うのは主義に反するが、それもまた真理。致し方あるまい!!」
「っ!? 避けろメディック!!」
「きゃあぁぁぁぁ!?」
とうとう瀕死にまで追い込まれた悪魔が何かボソボソと呟いたかと思ったら、唐突にプレッシャーが跳ね上がり、さきほどまでの精細を欠いた様子が嘘のように力強く踏み込んで刀を横なぎに振るった。
直感的に受けきれないと理解した私は咄嗟に回避指示を出したけど、間に合わなかった。エメラルドの盾がガラスのように叩き割られて、カバーに入った血の兵隊がまとめて一刀両断された。
幸いにもエメラルドメディックは衝撃で吹っ飛ばれるだけで済んだけど、盾が崩された。
そこから戦線が崩れるのは早かった。
冗談みたいに強くなった悪魔の動きはとても目で追いきれなくて、私は兵隊を出す暇もなく、ゴーストも透過が追い付かずに切り伏せられた。
倒れ伏す私の視界の中で、アーチャーも、トキシンも、メディックも、次々と鋭い斬撃によって血飛沫を撒き散らしながら地面に崩れ落ちていく。
こんなの、こんなのあんまりだ……!
作戦がどうこうなんてレベルの話じゃない!
前回の悪魔とは、結局復活後は戦ってなかったからその強さを正確に理解できてなかったんだ!
だけど、今更わかっても、もう……。
う、うぅぅ、悔しい、悔しいよ……!
こんな、こんな風に終わっちゃうなんて……!
誰か、誰でもいいから、みんなを助けて……
――ハピエンハピエンハッピーエンド!
――ハピエンハピエンハッピーエンド!