ハピエン教団(団員1名)信者の俺、魔法少女アニメの世界に招かれたのでハッピーエンドを死守するため戦っていたらいつの間にかクソデカ感情を向けられていた   作:pfk

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8話 モブの自意識過剰

 いやたしかに、マンションの外観とか部屋の内装とかどっかで見たことあるような気はしたよ?

 でもアニメでは外観が全部描かれてたわけじゃないし、内装も家具の配置次第で全然違って見えるし、気づけなくても仕方なくない?

 

 お隣さんが魔法少女だとは思わんて! それは違うじゃん! 猫お前マジでふざけんなよ~!!

 

「あの、何か御用ですか?」

「いや俺じゃなくて、うちの猫が、ですね……」

 

 目ぇ見て話せねー!

 ハッピーエンドキーパーの時はなんか自分が自分じゃないって思えるくらい舞い上がっちゃったり全能感があったりで余裕で話せたけど、変身前の素の自分でアニメキャラと話すのは難易度ルナティックですって~!

 

「はぁ? 何言って」

 

 視線が定まらずキョロキョロしているのを不審がってか、元々冷たさを感じるような声がさらにトゲトゲしくなる。

 

 あっ、ちゃんとドアチェーンかけてる。防犯意識がしっかりしてて偉い! じゃなくて!

 

 ピンポーン!

 

 俺が答えに窮していると、猫が再び壁キックをお見舞いしてインターホンのチャイムを押し、着地狩りしようとした俺を回避して、僅かな隙間を縫ってシュタタっと紫蝶の家に入り込んだ。

 

「え? え?」

「馬鹿! 猫! 戻って来い! ねこー! バカな真似はやめろー! お前は完全に包囲されている! 大人しく出てこーい! 今ならまだ許してやるぞー!」

 

 あまりの急展開に困惑している紫蝶を尻目に、俺は猫に向かって呼びかける。

 あの上位存在猫、遅かれ早かれいつかはこういうことをしでかすつもりだったな……! じゃなきゃわざわざ魔法少女の隣に住居を構える必要なんてない!

 

「え~っと、お姉さんすみません。うちの猫が悪戯でインターホンを押してしまったみたいでー。猫アレルギーとかじゃねければですね、ほんとに申し訳ないんですけど捕まえて引き渡してくださるとありがたかったりするかなーと。あと警察には通報しないでくれると助かるかなーと。いや本当に申し訳ございませんがよろしくお願いいたします。保健所なら通報してもいいです」

 

 最後はおふざけも大概にして誠心誠意頭を下げた。

 いや紫蝶って一人暮らし設定なのよ。うら若き乙女の家にさぁ、夜も更けてきた時間に見ず知らずの怪しい男が猫を出汁に訪ねて来るとかさぁ、マジ怖いじゃんね。JK。

 

「猫! 3秒間だけ舞ってやる」

「ふっ」

「え?」

 

 それは、思わず漏れてしまったというような笑い声だった。

 顔を上げれば、紫蝶が口元を手で隠して恥ずかしそうに視線を下げていた。

 

「にゃー!」

 

 このくらいにしておいてやろうとでも思ったのか、猫はわざとらしくにゃーなどと鳴いて再び隙間から姿を現し、俺の足元にすりすりと擦り寄って来た。

 

「お前この猫だからってやっていいことと悪いことがあるんだからな! 本当にうちの馬鹿猫がすいませんでした!」

「いえ、猫のやったことですから」

「そんな子供のやったことですからみたいに」

「ふふっ」

 

 再び漏れる笑い声。手で覆われる口元。

 テンパってて忘れてたけど、そういえば紫蝶って笑いの沸点低いキャラだったか。

 

「ほんと突然すいませんでした。あ、俺はちょっと前に隣に越して来た尾張って言います。怪しい者ではございませんので、失礼させていただきたく……」

「ああ、お隣さんだったんですか。……あの、一つだけ聞いてもいいですか?」

 

 最初の不審者を見るような目ほどではないけれど、キラリと視線を鋭くした紫蝶が言った。

 まさか、正体がバレた…!?

 

「は、はい、なんでしょう」

「その子、ねこって名前なんですか?」

 

 かと思ったけどそんなことはなかった。

 

「あ、あー、いやそうなんですよー。良い名前が思いつかなくて仮でね! 猫って呼んでたらそれが名前として定着しちゃった! みたいな感じですねー、はい」

「猫にねこって、ふっ、変な人ですね」

 

 この人にだけは言われたくなーい!

 中盤までマスコット妖精を鳥と呼んでいた紫蝶に言われるのはあまりにも心外。

 しかしただのお隣さんがそんなことを知る由もなく、ツッコミを入れるわけにもいかん。

 

「ほんとですよね! では!」

 

 気が変わって通報されてはかなわないので、早々に話を切り上げて、俺は逃げるように自宅へと駆けこんだ。当然猫も連れて。

 

「バカアホマヌケネコ!」

「罵倒の語彙が小学生ですね」

「どういうつもりだ!」

 

 紫蝶に聞こえるとよくないので若干声量を落しつつ猫を問い詰める。

 

「はて、なんのことでしょう?」

「お前! お前! お前ー!」

 

 人差し指で猫の全身をふにふにとめった刺しにしてやる。

 

「くすぐったいのでやめてください」

 

 やめろと言いつつ満更でもなさそうで癪なのでやめる。

 

「……彼女たちのハッピーエンドを本気で守る気があるのなら、戦隊メンバーの近くに居を構える方が合理的だと思いませんか? これならなにか異変があってもすぐに駆け付けられますよね」

「だからって私生活で関わる必要はないだろって言ってんの!」

 

 拠点を戦隊メンバーの近くに置くというところまでは百歩譲って理解できる。バッドエンド警報頼りってのも少し不安はあるしな。でも私生活で関わる必要は絶対にない!

 

「原作との乖離を気にしているようですが、ハッピーエンドキーパーに変身していない状態のあなたはただのモブです。モブがちょっと魔法少女の私生活に関わったからと言って、原作の流れを変えるほどの影響があると思いますか?」

「……そう言われてみると、たしかに大した影響はない気もする」

 

 チート能力を手に入れたせいで自意識過剰になってたんかも。

 よくよく考えてみれば、猫の言う通り変身前の俺が世界に与える影響なんてたかが知れてるよな。

 

「うんうん、そういや俺ってモブだったわー」

「そうですそうです、モブの自意識過剰です」

 

 って誰がモブやねん!!

 わかってても他人に言われるのは腹立つー!

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