この素晴らしいステータスに祝福を!   作:ガラッシア

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ついにここから物語が始まります。エロ本に埋もれて死んだ彼がどんな人生を繰り広げるのか楽しんでもらえたら幸いです。


1話 アクセルへの来訪と初期ステータス

眩い光が収まった時、幸助の鼻を突いたのは、乾いた土の匂いと家畜の混じったような、どこか懐かしくも生々しい生活臭だった。

視界が開けると、そこには石畳の道と、レンガ造りの建物が並ぶ光景。行き交う人々は中世ヨーロッパのような服を纏い、腰に剣を下げた者や、奇抜な杖を持つ者までいる。ゲームやアニメでよく見た光景だ。まさかこうして実際に目にできる日が来るとは。

 

「……マジか。本当に来ちまったんだな、異世界」

 

周囲から聞こえてくる話し声は、意味の分からない呪文のようなものではなく、はっきりと日本語と同じように理解できた。なるほど。どうやら頭がパーにはならずに済んだみたいだ。

とりあえず日本での生活への別れ、新しい世界への挨拶はしておくか。

 

「さよなら、日本での生活。こんにちは、異世界での新しい人生。……よし、挨拶も済んだし、まずは状況把握だな。女神はギルドに行けと言っていたな。とりあえず街の人に場所を聞いてみるか」

 

初めての異世界人との会話だ。なかなか緊張するな。僕は人との会話は得意なほうではないが、普通に話すことくらいはできる。ただ別世界の人との会話など初めてで、少しドキドキする。

 

僕は少し緊張しながら、荷車を引いていた恰幅の良いおじさんに声をかけた。

 

「あの〜、この街にギルドってありませんか?冒険者とやらになりたいんですが…」

 

「お、兄ちゃん、冒険者になりにきたのかい!度胸あるねぇ! ギルドならこの道を真っ直ぐ行って、大きな広場を右に曲がったところにある、一番デカい建物だ。酒場も併設してるからすぐ分かるぜ!」

 

「わかりました。ありがとうございます。」

 

とりあえず異世界人とのファーストコンタクトは成功だな。さて、早速ギルドに行ってみるか。

教えてもらった通りに歩みを進めると、やがて活気あふれる大きな建物が見えてきた。どうやらここらしい。とりあえず入ってみるか。

 

僕がギルドの重い扉を押し開けると、そこには荒くれ者たちの怒号と、酒の匂い、そして期待と不安が入り混じった熱気が渦巻いていた。

 

「ここがギルドか。...おっかない連中が多そうだな。日本ではまずお目にかかれない奴らばかりだ。」

 

身を縮こまらせていると、ジョッキを両手に抱えて忙しなく動き回っていた一人の女の子が、明るい声をかけてきた。

 

「いらっしゃいませー! お食事ですか?冒険ですか?お仕事探しですか?歓迎いたします!」

 

「あ、ああ。仕事を探しに来たんだが……どうすればいいですか?」

 

「てことは、冒険者になりきたんですね!それならあっちのカウンター、受付までどうぞ! そこで登録の手続きをすれば、今日から貴方も冒険者!頑張ってくださいね!」

 

元気な声に背中を押され、僕は深呼吸をして、意を決してギルドの奥へと歩みを進めた。

 

幸助が導かれるように向かったカウンターには、見事な金髪のウェーブをなびかせた、胸の大きな美女が座っていた。こんな美女には日本では滅多に見られないのでドキドキする。

 

「はい、こんにちは! 今日はどうされましたか?」

 

眩い笑顔を向けられ、僕は一瞬だけ言葉に詰まるがドキドキを飲み込み話し出す。

 

「え、え〜と…冒険者とやらになりたくて、ここに来たのですが…」

 

「あら、新規登録ですね! かしこまりました。私は受付のルナと申します。ではまず、登録手数料が必要になりますが、よろしいでしょうか?」

 

女神が言ってたやつだな。でも金なんかどこに…。あ、腰のあたりに小さな革袋がぶら下がっていた。中を確かめると、数枚の硬貨がジャラリと音を立てる。これか。袋から硬貨を取り出し、カウンターに置いた。

 

「これで足りますかね?」

 

「あ、一枚多いですね。こちらはお返ししますね。…はい、これでちょうどですね。ありがとうございます。それではまずは冒険者について説明しますね。」

 

そこからルナさんは冒険者というものについて説明をしてくれる。彼女によると冒険者には各職業があり、レベルが上がるとスキルをもらうためのポイントがたまるらしい。水晶を使って、まずは初期ステータスを見て向いている職業を判断するらしい。

 

(まっ、ここに来る前は普通の高校生だったしな。あんま期待はしてないけど、どうなることやら)

 

水晶に手をかざすと、そこから細長い光が出て下に設置されては冒険者カードに記載されていく。ルナさんは水晶から吐き出された薄い板状のカードを手に取り、まじまじと眺めた。

 

「えーっと、そうですね……。うん、なんというか、とっても『健康的』な数値です! 全体的に見事なまでに平均的というか……。強いて言うなら、少しだけ『器用さ』が高いみたいですけど、それ以外は本当に、ザ・一般人といったところでしょうか。」

 

「……ああ、やっぱりそうだよな。知ってたよ」

 

内心で苦笑いした。異世界に来たからといって、いきなり筋肉モリモリになったり魔力が溢れ出したりするはずもない。元はただの高校生なのだ。こうなるのは必然だろうな。

 

(……にしても、『無限上昇』の文字はどこにもないな。隠しスキル扱いなのか?)

 

自分の凡人っぷりを改めて突きつけられ、ほんの少しだけ肩を落とす僕。そんな僕に、ルナさんは励ますように身を乗り出した。

 

「あ、でもガッカリしないでください! 冒険者はレベルが上がればスキルポイントが貯まりますし、それで新しい技を覚えれば立派に戦えますから! さて、このステータスだと……なれる職業は器用さを生かせる生産職系か、一番基本の『冒険者』になりますね」

 

「『冒険者』? それって職業の名前なのか?」

 

「はい! いわゆる下級職で、突出した能力はありませんが、その代わりどんな職業のスキルでも覚えられるという器用貧乏……あ、いえ、万能な職業なんですよ!」

 

ルナさんのフォローが逆に突き刺さるが、僕はカードを受け取り、自分の名前が刻まれたそれを指でなぞった。

 

「……まあいいさ。平均的なら、あとはここから積み上げていくだけだ。僕には『限界』がない。どこまでも強くなれるんだからな。」

 

僕はギルドに飾られてる騎士像を見ながら考える。想像していた通りのチートスキル持ちの無双英雄譚にはならなそうだが、それを嘆いても始まらない。どん底からのスタートだが、せっかくの第二の人生だ。一度死んだなら、前の世界で生きれなかった分だけ思い切り泥臭く頑張るのも悪くないかもな。

 

「まぁ、まずは宿探しと食事だな。」

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