……皆様、こんな作者の妄想爆発な作品に付き合ってくださって本当にありがとうございます!
これからも頑張ってまいります。誤字脱字報告もありがとうございます。
では、お楽しみください! 暇つぶしに見てってください!
「どうぞ鈴音先輩。熱いので気をつけてください」
「……ありがとうございます」
僕は目の前のテーブルに出された湯呑を持ち一口すする。それを見ながら黒髪の女性――酒寄 彩葉さんは僕の向かいに座り同じように湯呑を傾ける
ふぅ、と湯呑を置きお互いに一息入れる
「……酒寄さん」
「彩葉です」
「酒寄さん、あの」
「彩葉」
「………「彩葉」まだ僕何も言ってないですよ!?」
酒y「彩葉」…………彩葉さn「彩葉」……なんで心の中にまで反応できるんですか!?
「言ったでしょ? 鈴音先輩の事を間違えるわけないって。ほら、私の名前を呼んでください」
「……彩葉s「あ?」い、いろは!? 」
「はい、彩葉です。どうしたんですか?」
こ、怖すぎる…っ、名前を呼ぶだけでここまで精神が擦り減らされるとは思わなかった!
「え、えーと……」
正直、聞きたいことしかない。何故僕の事を先輩と呼ぶのか、昨夜の件は一体なんだったのか。そもそもどうして家主の僕ではなく彩葉が人数分のお茶を用意しているのか
いや、本当になんでだ? 湯呑はともかく茶葉の場所なんて教えてないのに……まるで何度も入れたことがあるかのように動きに無駄がなかった…
話が逸れてしまった。とりあえず、目下の目的は――
「この人どうにかしてくれませんか?」
「
僕を膝の上に抱え込み、首元に顔をうずめる金髪少女――かぐやからの解放である
……それとかぐやs「
~~~
『え、えっと……そちらの、金髪少女?……はどちら様、で?』
僕がそう言うと、金髪の少女はピタリと固まった
そして―――
『………え?」
一瞬の沈黙
『……鈴音?』
次の瞬間、少女の瞳がみるみる揺れ始める
『……嘘、だよね? かぐやだよ? ……覚えて、ない?』
――なんかデジャヴ
昨日も似たようなやり取りをした気がする
『す、すみません。本当に人違いだと思うんですけど―――』
『嘘だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?』
突然飛びつかれた。しかも昨日よりも勢いが強い!
『ねぇ鈴音嘘だよね? 私の事忘れちゃった? 彩葉のことも忘れちゃったのっ? もしかしてヤチヨの事も!? ……ねぇ、ねぇってば!!』
『ちょ、ちょっと落ち着いてください!? 近い!近いですって!!』
ぐいぐいと顔を押し付けてくる少女をどうにか引き剥がそうとするが、びくともしない。というか力が強い。見た目どう見ても華奢なのに、なんで酒寄さんもこの子もこんなにホールド力が高いんだッ!?
『誰か助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?』
『聞いてるの鈴音ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!』
~~~
結局、彩葉が仲裁してくれるまでかぐやによる尋問が続いた。その後、かぐやは不貞腐れながら何故か僕を膝に抱きかかえた。身長差もあって背中に何か柔らかい感触もあるし、何かいい匂いがしてきたため、初めはどうにか逃げ出そうとしたが、絶対に離さないとばかりに拘束が強くなったため早々に脱出を断念した
てかかぐや、もう顔をうずめることについては何も言わないから匂いを嗅がないでください。深呼吸もしないでください。気のせいか少しずつ息が荒くなってきてません? 彩葉も次は私の番だからとか言わないでください。行きませんよ?
「かぐや。そろそろ真面目な話をするから、鈴音先輩を解放して」
「
「……このままでも、大丈夫です……」
「…はぁ~……分かりました。このまま話をさせてもらいます………あいかわらず、かぐやには甘いんですね」
? 最後あたりよく聞こえなかったけど……
「改めまして、昨夜の件でご迷惑をおかけしました。帰りにタクシーも呼んでいただいて……あの時は私も冷静じゃなくて、ほぼ不審者だったと思います」
「自覚あったんですね……」
「なので、お礼とお詫びとしてこちらをご用意しました。お納めください」
「あぁ、これはどうもご丁寧に………でも、
謝罪を受け取ってはい終わり……なんてある筈がない。それならばわざわざアパートまでこなくとも楽な方法はいくつもあっただろう。少なくとも、僕とは初対面(僕視点)のはずの彩葉とかぐやのあの過剰な反応の理由を知りたいと考えてしまう
「――先輩」
そんな事を考えていると、彩葉は真っすぐに僕の目を見つめてくる。その姿に自然と背筋が伸びるのを感じる
「……やっぱり、何かあr「お昼ご飯にしませんか?」……は?」
えっ? お昼ご飯?
「時計を見てください。もうすぐ正午になります。腹が減っては何とやら、です……なので、お昼にしましょう」
「いや、あの……確かに、時間はちょうどいいですけど……それよりも聞きたい事が……」
おかしい。今の流れは僕と彼女らの関係を聞き出す流れのはずだったのに……何故こうなった?
戸惑う僕を他所に彩葉は僕の後ろに回り込む
「かぐやも準備して。買い出し行くよ」
「…フー…フー……えっ、買い出し? ……あ! かぐやも行く!」
「しかも我が家で自炊する気でいらっしゃる!? そもそも材料なら冷蔵庫の中に……」
「三人分の食材、あります?」
「……………」
「鈴音先輩も準備してください。手伝ってもらいますよ」
「ほら! 鈴音行こっ!」
「…………はい」
――本当に、何故こうなった?
~~~
「これと、これと、これと……あ! それも欲しい!!」
「かぐや~、あれも忘れないようにね」
「黒毛和牛……伊勢海老……野菜も傷物じゃなくてブランド物……見たことすらない調味料……」
「彩葉! 珍しいもの見つけた!!」
「あっちでは最高級本マグロが入荷されたって」
「……金の音が聞こえる……」
~~~
「そういえば鈴音先輩。トイレットペーパーが切れそうでしたよ。そこのドラックストアで買っていきませんか?」
「……ゼロが5つ……ゼロが6つ…………えっトイレットペーパー? 確かに無くなりそうだったかも……」
「シャンプーも無くなってたからついでに買ってくるよ! 鈴音は○○会社のだよね?」
「あ、はい。 それでお願いします………何かおかしくないですか?」
「予備の詰め替えも忘れないでよ―」
「合点招致!!」
「やっぱりおかしいですよね、何で僕の家の貯蓄を知ってるんですか!? あ、あと食費は出させてください……!」
~~~
「――完成っ! おあがりよ!!」
「何なんだ…うますぎるじゃないかよ……やべぇよあんた……初めての高級料理で身体が喜びに満ちていく………天使?」
「天使じゃないよかぐやだよ!」
「私が作ったパンケーキもどうぞ。先輩の好きな生クリームもたっぷりでふわとろですよ」
「………女神?」
「女神じゃないです 彩葉です」
~~~
「あ、鈴音先輩。今日泊まっていくのでよろしくお願いします」
「了解です。色々準備しないt………は?」
「今日は泊まらせてもらいます。もちろんタダとは言いません。夕食も期待しててください」
「お泊りセットも持ってきたんだよー!」
「それは本当に楽しみです!! ………って、いやいやいや!?!?!? 流石にそれは不味いですよ! 男の家に女性だけで泊まるなんて……!」
「かぐや」
「……鈴音、お願い。かぐやと彩葉のこと助けて ……泊まらせて?」
「うっぐ……うぅ……まあ、今日だけなら……」
「よっしゃ~!!」
「なぜ断れない……なぜ……っ」
「今日はよろしくお願いしますね、鈴音先輩」
~~~
「お風呂溜まったよー」
「ありがとう、かぐや。先輩、お先にどうぞ」
「あ、じゃあ失礼します……………かぐや、何でついてくるんですか?」
「え? 一緒にお風呂に入ろうと思って…」
「何言ってるんですか!? 入らないですよ!!」
「え~!? 一緒に入ろうよっ! 昔は一緒に入ってくれたじゃん!!」
「絶っっっっっ対にそんなことないですよね!?!?!?」
「かぐや」
「いろは! かぐやを止めてください……!!」
「鈴音先輩は私と入るから、かぐやは先に入ってよ」
「貴女まで何言ってるんですか???」
「ダメ―!! 鈴音は私と一緒にお風呂に行くの!!」
「私と一緒に決まってるでしょ。ほら、早く行きなさい!」
「どちらとも入りませんよ!!?」
「……じゃあさ、3人で入ろう?」
「……それが最適解……かも」
「勘弁してください!!!」
~~~
「ん~♪ 鈴音の手、あったかい~~……」
「はい動かないでねー。もう少しで終わるから」
「鈴音先輩。次は私もお願いします」
「順番なので待っててください」
――怒涛の1日だった
現在は皆それぞれ入浴(混浴は死守)を終わらせ、「髪乾かして!!」というかぐやからのお願いを叶えている最中だ
髪を乾かし終えドライヤーを置き、櫛を手に最後の仕上げに取り掛かる
「……かぐやの髪は綺麗ですね。僕の髪と違って羨ましいです」
「えー、かぐやは鈴音の髪も好きだよ?
「ふふっ……ありがとう、かぐや。……はい、できましたよ」
「うはー! この髪型かわいい! ありがとう鈴音!!」
髪を整え緩く三つ編みにしてみたのだが、想像以上に喜んでくれたみたいだ
「どういたしまして。さて、次は彩葉ですね。こちらにどうぞ」
「お、お願いします」
「緊張しなくても大丈夫ですよー。じゃあ始めますね」
僕の前からかぐやが離れ、今度は彩葉が僕の前に座る。再びドライヤーを手に取り、かぐやとは違うが、それでも丁寧に手入れがされている事が分かる黒髪を乾かしていく
「くすぐったい所はないですか?」
「はい……とっても気持ちいいですぅ…」
「それは良かった。………彩葉もかぐやと同じくらい綺麗な髪ですね。本当に羨ましいです」
「……私も、先輩の髪……好きですよ……その紅い瞳も、まるで宝石みたいで……」
「さすがに褒め過ぎですよ。でも、ありがとうございます……おかげで、少し自信がつきました」
――やっぱり、彼女達との時間は心地いい
自分でも可笑しなことを言っているのは分かっている
それでも、昨日まで関りの無かったはずの彩葉とかぐやの二人に振り回された今日は………とても楽しくて、心が満たされて………
――だからこそ、確かめなければいけない
「乾き終わったよ、彩葉」
「ありがとうございます」
ドライヤーを置き、かぐやの時と同様に櫛を手に持って最後の仕上げに取り掛かる
「ねぇ、彩葉」
「? どうしたんですか鈴音先輩?」
「そろそろ、いいんじゃないかな?」
「っ……」
髪を整える手は止めず、できるだけ自然を装って語り掛ける
僕の言葉に彩葉は肩を揺らし、少し先の僕の布団で転がっていたかぐやも動きを止める
「……気づいてたんですか?」
「昔から視線には敏感で……別に、怒っているわけじゃないんです」
櫛を置き、彩葉の前に移動する。そして、顔を俯ける彼女を見上げる形で目線を合わせる
「――彩葉、教えてください。どんな答えでも、覚悟はできています」
僕の言葉に彩葉は俯いていた顔を上げる。隣にはかぐやも座り、不安げに僕と彩葉を見つめている
「……………鈴音先輩、貴方は――」
彩葉の瞳からは、力強い意志………そして、同じくらい悲しみの色が浮かんでいるように感じた
「――記憶が、無いんですね?」
~~~
彩葉SIDE
私の言葉に、鈴音先輩は目を見開いた後に苦笑を漏らしながら顔を俯ける
「……………なるほど……そういうこと、だったんですね……」
「……やっぱり……」
「正解ですよ、彩葉」
顔を上げた鈴音先輩の顔は、笑顔を取り繕っているけれど、どこかぎこちないものだった
「――僕には、昔の記憶がありません」
「ッ……」
「……鈴音……?」
予想していたことだけど、改めて告げられると……辛い
胸の奥をぎゅっと掴まれたような感覚に、思わず言葉を失う
そんな私達を見て、鈴音先輩は少し困ったように笑った
「そんな顔、しないでくださいよ。命に別状があったわけでもないですし……今こうして普通に生活もできていますから」
「………いつから?」
かぐやが震える声で問いかける
その声は、今にも壊れてしまいそうで――
「……はっきりとは分かりません。でも、気がついた時にはもう……“何もない状態”でした」
「何も……」
「はい。名前も、家族も、友人も……全部」
「――っ!!」
かぐやが思わず立ち上がる
そのまま数歩よろめくように後退して、壁に手をついた
「じゃあ……彩葉とかぐや、ヤチヨのことも……全部……?」
「……ごめんなさい」
その一言で、十分だった
かぐやの肩が、小さく震える
「……そっか……そっかぁ……」
笑っているのに、声が泣いている
見ていられない
でも――目を逸らすこともできない
「鈴音先p「彩葉、かぐや」……えっ……」
「――僕の事は、忘れてください」
「は?」
――今、この人はなんと言った?
見れば、かぐやも同じような顔をしている
「色々あったけど……今は、会いに来てくれてとても嬉しいです。でも、君達は覚えていてくれても……此処にいるのは、君達を知らない
そんな私達の様子に気づかず、鈴音先輩は話を続ける。だけど、それは私達ではなく自分に言い聞かせているようで
「――どうか、僕の事は忘れてください。二人には輝かしい未来がある。そんな未来の可能性を……僕みたいな人間のせいで潰したくありません。きっと、過去の僕も同じことをいうと思います」
だったら、なんでそんな顔をするんですか? どうしてそんなに………泣きそうな顔をしてるんですか?
「だから……今日で、最後にしましょう。お二人の幸せを……願ってます」
『――ごめんね、彩葉。君達のハッピーエンドを……心から願ってる』
「――ふざけんな」
その顔が
気づけば、声が出ていた
「……彩葉?」
驚いたように目を見開く先輩
でも、止まらない
止められるわけがない
「僕の事は、忘れろ?」
一歩、踏み出す
驚いた先輩も一歩後退するが、関係ない
「幸せを、願ってる?」
さらに一歩
先輩を壁際に追い詰めて、上から見下ろす
「勝手に決めないでくださいよ」
「……っ」
「私らの未来を、先輩が決める権利なんて――ありません」
先輩の胸ぐらを強く掴む
こんなこと、本当はしたくない
でも――
「また、そうやって一人で抱え込んで……勝手に、いなくなろうとするんですか?」
「いなくなる、って……」
はっきりと、言い切る
逃げ道なんて、与えない
「――先輩は一度、私達の前から消えました」
「……え?」
その瞬間、空気が凍りついた
かぐやも、息を呑む音を立てる
「理由も言わず、何も残さず……ただ、
「…………」
「その結果が、これですか?」
ぐっと、胸ぐらを引き寄せる
「記憶を失って、全部なかったことにして………また、同じ事を繰り返すつもりですか?」
「僕は……そんなつもりじゃ……」
「同じです!!!」
彼に馬乗りになり、叩きつけるように言い放つ
「先輩はいつもそうだ!! 他人には馬鹿みたいにお節介で優しいのに、自分にはすごく無頓着で……自分だけが傷つけばそれでいいって顔して……周りのことなんて何も見てない!!」
「――責任を取ってください。勝手に人の心を踏み荒らして、こっちの事情なんかお構いなしに割り込んできたくせに!! 色々な事に潰されて限界だった私を救ってくれた責任をッ……!!」
先輩の顔が歪む
それでも、言葉は止めない
「自分を救ってくれた人が傷つくのをただ見る事しかできない……残された側がどんな気持ちなのか………一度でも考えたことがありますか?」
「彩葉……」
後ろから、かぐやの声
でも振り向かない
今だけは――止められない
「私達は――ずっと、待ってたんです」
声が、震える
でも、止めない
「貴女が帰ってくるって信じて……ずっと……ずっと……ッ!!」
掴んでいた手に、更に力が入る
「それなのに………忘れてください?」
「……ごめん」
「謝らないでください!!」
弾かれたように叫ぶ
「謝ってほしいんじゃない!!」
「……じゃあ、僕はどうすれば……」
その問いに……一瞬だけ、言葉に詰まる
でも――答えなんて、決まっている
「――忘れないでください」
「思い出せとは、言いません」
一度、手を離す
その代わりに――今度は、彼の両手をそっと握った
「でも、捨てないでください」
「……」
「私達との時間を、
静かに、でも彼の心に少しでも伝わるように
彼の両手を胸に抱き締める
「先輩が覚えていなくても……私達にとっては、
「……彩葉……」
先輩がこちらを見つめる。その瞳は先程のぎこちない笑みの物ではなく、動揺や混乱を含んでいた
「……かぐやも、やだ」
小さな声
でも、はっきりとした意思が言葉に宿っていた
「……かぐや?」
振り向くと、かぐやが俯いたまま拳を握っていた
「忘れるなんて、やだ」
一歩、近づいてくる
「また鈴音がいなくなるのも、やだ」
さらに一歩
「鈴音が鈴音じゃなくなるのも……やだ」
そして――ぎゅっと、先輩に抱きついた
「だから……逃げないで」
「……っ」
「お願い……ここにいて」
涙で濡れた声で、そう言った
「……でも、僕は彩葉やかぐやのことを……」
不意に、かぐやが顔を上げた
涙でぐしゃぐしゃになった顔のまま、それでも前を向いて
「それでもいい!」
「……かぐや?」
「だって、鈴音はここにいるもん!!」
強く、言い切った
「記憶がなくても! 忘れられても! また思い出せばいい!! もし、ダメなら――」
一度は掴めなかった、その温もりを離さないように強く抱きしめて……
「――もう一回、最初からやり直せばいいだけでしょ!?」
彼女は、宣言する
「……!」
その言葉に、鈴音先輩の目が大きく見開かれる
「かぐやは、鈴音のこと好きだもん。だから何回だって仲良くなる!」
「……ふふっ、かぐやらしい」
私は思わず小さく笑った
本当に、この子は――
「――私も、かぐやと同じ気持ち。記憶なんてこれから思い出していけばいいんです。もしもダメだったら……その時は、その時に考えればいい……それに、悪い事ばかりじゃないんですよ?」
「えっ?」
困惑する先輩に対して、少しだけ、意地悪く笑う
「――二度と馬鹿げた行動を起こさないように、私の存在を刻む事ができるんですよ? 今度こそ、離シマセンカラ」
「ヒィッ!?」
? なんでそんなに怯えてるんですか?ただ笑っただけなのに……失礼しますねっ
「彩葉! ダメだよ!!」
「かぐや?」
「かぐや……!」
「『私』じゃなくて、『私達』でしょ!! かぐやとヤチヨの事も忘れないでよ!!」
「かぐや!?」
あぁ……そうだった。二人の事を忘れていた。というか、先輩は何で救世主に裏切られたような反応をしてるんです?
「ごめん、かぐや。じゃあ、これからは私達三人で鈴音先輩を依存させていこう」
「うん! 二度と離れようとか考えられないくらいドロドロに甘やかそうね!!」
「ふ、不穏過ぎる……二人共目が濁ってるよ……!」
……ふふっ、これで少しは自分がどれだけ愛されているか理解できましたか?
「鈴音先輩」
「……は、はい」
少し緊張した様子で此方を見上げる先輩に近づき、耳元で囁きかける
「―――私も、大好きですよ」
「ッッッ!?」
先輩は耳を抑えてすごい勢いで後ずさる。よく見れば顔全体が真っ赤に染まっていた
「あー! 二人共なにやってるの!?」
「何も? ほら、もう夜も遅いし早く寝ましょ」
「嘘だ! 鈴音、なにやってたの!!」
「……さ、さーて……僕も寝ようかなー」
「む~!かぐやだけ仲間外れ嫌だ~~!!」
駄々をこねるかぐやを他所に、私は就寝の準備を進める――少し頬に籠る熱を自覚しながら、それが二人にバレないように注意して
~~~
鈴音SIDE
「……なんか、近くないですか?」
「そうですか? 私は気にしません」
「私も鈴音と彩葉と一緒だから大丈夫!!」
……いや、布団二つに三人が眠るのはギリギリではないだろうか?
現在、僕達は二つの布団を並べて敷き、そこに三人川の字になって横になっている。本当は僕は台所や廊下で寝てもよかったのだが、二人に物凄い剣幕で詰め寄られ断念した
布団の順番だが、僕が壁際により二人が広いスペースを使えるようにしたかったが、これも強制的に真ん中に決定。僕の左にかぐや、右が彩葉という位置で就寝となった
ただでさえ狭いうえに、左右を可憐で綺麗な女性二人が密着してくるので気が気ではない
「……鈴音」
「かぐや?」
必死に目を瞑って羊を数えていると、左からかぐやが話しかけてきた
「どうしました? 窮屈で眠れませんか?」
「ううん、違う。鈴音にどうしても伝えたいことがあるの」
「伝えたい事?」
かぐやは布団から起き上がり、僕も身体を起こす。それに気が付いた彩葉も同じく身体を起こしていた
彼女は、真っすぐにこちらを見つめ―――今日一番の笑顔を咲かせる
「―――今度こそ、私が彩葉と鈴音をハッピーエンドまで連れてく! ヤチヨも一緒に!!」
「―――かぐやだけじゃない。私達の幸せには、鈴音先輩が必要なんです。ですから、本当のハッピーエンドまで付き合ってくださいね」
「…………………あ」
『決めた!自分でハッピーエンドにする!! そんでハッピーエンドまで彩葉と鈴音も連れてく!
一緒に!』
『ハッピーエンド要らない。普通のエンドで結構です』
脳内に溢れ出た光景。そこに映る二人の少女は、目の前で笑い合っている彼女達と酷似していて……その光景が、非常に懐かしかった
目尻に浮かぶ涙を誤魔化すように袖で拭い、再び布団に横になる
「………普通のエンドじゃなくてよかったんですか?」
僕の言葉に二人が息をのむ音が聞こえる
「えっ………鈴音先輩、今、なんて……!?」
「鈴音! なんて言ったの!? ねぇ鈴音ってば!!」
二人が身体を揺すってくるが、まだ記憶を全て思い出したわけではないのだ。今日は色々あったし、これで勘弁してほしい
――それに今日は、きっと幸せな夢が見れると思うから
「おやすみなさい」
これ以上話すことはないと悟ったのか、彩葉とかぐやも布団に戻る気配がする
「おやすみなさい、鈴音先輩」
「おやすみ、鈴音」
――どうか、いい夢がみれますように
呼んでいただきありがとうございました。
次回は三人目のあの方を出させていただきます。
ここだけの話、彩葉とかぐやの感情を曝け出すシーンが難しかったです……感想などでアドバイスがあればよろしくお願いします。
今後も自分なりのペースで投稿していきますので、気長にお待ちいただけると幸いです
では、また次回のお話で。さらば~い!
……二度としません、ごめんなさい