歌姫達の奮闘をめちゃくちゃにする系AI憑依オリ主 作:鈴木颯手
それと今さらですがサカモトではなくてマツモトだったことに気づいたので修正しました。誤字報告してくれた方ありがとうございます。
「前回はAIと人間の軋轢を無くすために動きましたが今度は違います。AI産業の停滞を狙いますよ」
最近は大人しくしている事が多かったマツモトの言葉にヴィヴィは静かにうなずいた。未来で起こるAIによる人間の虐殺を止めるべく5つのシンギュラリティ・ポイントを是正する役目を持ったマツモトはここ最近の世界情勢を鑑みていくつもの修正を行った結果、その結論に至ったらしい。
「現在、アラヤシキを建設中のOGCが総力を挙げて築き上げているメタルフロートですがあれが建設された暁にはAIの技術は大幅に進歩する事になるでしょう。具体的には20年程でしょうね。あれが正史で建設されるのは今から20年後になりますので」
「メタルフロート。話は聞いたことがある」
ニュースでも連日取り上げられているメタルフロートはヴィヴィの耳にも届くほどに期待が高まっている。何しろ画期的な技術がふんだんに使用され、稼働した暁にはサイバーダイン社相手に互角に渡り合えるだけのAI製造が可能となると言われているのだから。
「確かあれ一つでサイバーダイン社の全工場に匹敵する生産力を持っているとか」
「まぁ、流石にそれだけの規模はないでしょうが衰退するOGCの経済を右肩上がりに上昇させてその勢いのままに日本からサイバーダイン社の影響力を完全に駆逐する事が出来るだけの爆発力は得られるでしょうね」
そう聞けば聞くほどメタルフロートがいかに凄まじい施設かを認識させられるがそれだけにAIが過剰に発達してしまう危険性についても理解できた。しかし、それと同時に懸念点もヴィヴィには湧いてきた。
「ですが確かメタルフロートはOGCが総力を挙げて建設している施設です。機能を停止させればOGCは倒産してしまうのではないですか?」
今、メタルフロートが稼働を停止すればOGCは確実に倒産するか致命的な打撃を受けて大きく傾く事は想像に難くなかった。当然それによるテロにも警戒しており一般人はおろか関係者でさえ安易に立ち入ることは難しい状態になっていた。
「無論、その点については理解していますよ。なので今回はただただ目標を破壊するのではなく妨害のような形で完成を遅延させるように動こうと思います。流石にここでメタルフロートが使い物になら無くなればどうなるかは理解しているつもりですので」
正直なところOGCがどうなろうとマツモトにとってはどうでもいいことだ。AIは既に人類にとってなくてはならない存在であり、OGCがつぶれたとしてもその代わりの企業がいくらでも出てくるだろうしこの世界にはサイバーダイン社が存在する。彼の企業の特異性や正史での様子を見る限りAI産業を彼らの独壇場にさせておくのは危険すぎると考えていた。
それだけにOGCには今は潰れてもらう訳にはいかないのだ。無論、そんなことを馬鹿正直に伝えれば目の前の歌姫がどのような反応をするか長年の付き合いで分かっているマツモトが言う事はない。彼だって予測が難しい不測の事態がこれ以上続いてほしくはないのだ。
「そのためのメタルフロートへの立ち入り許可証、と言っても正確には視察委員としての身分ですが用意してあります。これならメタルフロートへの立ち入りは可能ですしある程度の中枢までは簡単にたどり着けるでしょう。そして、そんなメタルフロートに詳しい人物についても既に把握済みですよ」
そう言ってマツモトは一人の男性のプロフィールを画面上に映す。その人物についてヴィヴィは心当たりがあった。メタルフロートの陰に隠れているが彼もまた世間を騒がせた人物だったからだ。
「冴木タツヤ。ヴィヴィも知っての通り最近AIと結婚したと世間を騒がせた人ですよ。そしてメタルフロート開発の責任者でもあります」
「この人が……」
人類史上初の出来事だったとは言えスキャンダルのように報道されていた為に何かしらの重要な役職に就いている人だとは予想していたがまさかメタルフロートの責任者とは考えてもいなかったヴィヴィは素直に驚いた。
「もともと、シンギュラリティ・ポイントは彼とAIの結婚を止める事が目的でした。まぁ、ここまでAIが浸透した以上彼らの恋路を邪魔する重要性も薄れましたからね。馬に蹴られる役目は放棄しましたよ。何が悲しくて人の恋路を意味もなく邪魔する必要なんてありませんからね」
ヴィヴィとて人の恋路を邪魔する趣味などない。ましては人間の為にと作られたAIであるヴィヴィがその幸せの一つである恋愛の邪魔をする事など例え必要だったとしても行うのは忌避感が強かっただろう。やらなくていいのであるならそれに越したことはない。
因みに、彼らの結婚報道後、ヴィヴィは何度か客として来ている人たちに告白をされる機会が増えている。見目麗しい容姿と心をどこまでも魅了する歌声に惹かれたと彼らは言うがヴィヴィには残念ながら恋愛というものが理解できず、全て断っていた。最近ではその対策としてスタッフが気を付けてくれるようになったために減ってはいるがそれでも気を抜いた時を見計らっているかの如く告白を受ける事があったりするが完全なる余談である。
「そんなわけですので直ぐにでも冴木博士の元に向かいますよ。幸か不幸か彼はメタルフロートの近くに住んでいるようですので経由する形で向かう事が出来るでしょう」
「……わかったわ」
マツモトの急な予定に対してヴィヴィは素直に応じた。今回の一件で既に3回目。マツモトが前もって教えてくれるのではなく突然言ってくることは理解できており、言われた時点で覚悟を決めていたヴィヴィはその準備に取り掛かるのだった。
話にある通りこの作品では冴木博士はグレイスと結婚済みです
それによってヴィヴィはお客から告白されるようになりました。前例が出来たし見た目は超美人なヴィヴィなら告白されてもおかしくはないなと思ったので