歌姫達の奮闘をめちゃくちゃにする系AI憑依オリ主   作:鈴木颯手

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「ふぅ、何とか助かった……」

【一時期は本当にどうなるかと思いましたけどね】

 

 ()()()()()()()()()()()()()()無事に陸地に辿り着いたディーヴァはそのままニーアランドへと撤退した。冴木博士には一度話をしておこうかとも思ったが襲撃者が陸地にもいると考えるとこの周辺にいる事は出来ないとマツモトに説得されたディーヴァは冴木博士にメタルフロートは停止できたけど襲撃を受けている事をメールで送り、ニーアランドに帰還したのである。

 修復もニーアランドの設備で秘密裏に終わらせ、メタルフロートに向かう前と変わらない状態になったディーヴァは最早慣れたなんでもないような風を装っていつもと変わらない日常を送り始めた。

 しかし、その一方で日本は大きな騒動が起こっていた。メタルフロート襲撃事件である。メタルフロートが何者かの襲撃を受けて機能停止後に生産設備を中心に破壊活動が行われたのである。これによりメタルフロートはシステム面だけではなく物理的にもガラクタ同然となり、復旧は絶望的な状況になったという。

 この一件でメタルフロートに総力を注いでいたOGCは上へ下への大混乱に陥っており、OGCが運営するニーアランドもまたその混乱を若干だが受けつつあった。

 

【マツモト。ボディは大丈夫なの?】

【勿論です。予備機を含めて何体かをメタルフロートを始めとする生産施設で作成済みです。まぁ、あの時点ではディーヴァの援護を出来る距離にはいませんでしたので意味はありませんでしたがね】

 

 いつも通りにライブを行った裏でマツモトとやり取りをするディーヴァはマツモトの言葉に安堵していた。20年より沿った相棒になりつつあるマツモトが目の前で破壊された時には少なくない衝撃を受けたのだ。多少は心配にもなる気持ちが芽生えつつあったのだ。

 

【とはいえこれでOGCの倒産は確実でしょう。今頃サイバーダイン社が買収の話でも持ち掛けているころ合いでしょうね】

【そうなった場合、ここは……】

【サイバーダイン社が運営する事になるでしょう。まぁ、彼の企業がここにどれだけの価値を見出しているのか分からないので閉園になる可能性も低くはないでしょうが】

 

 そうなればメインステージで歌うというディーヴァの夢はかなわない事になる。それだけは嫌だなと感じていた時だった。見知った女性に声をかけられた。

 

「ディーヴァちゃんやっほー! 今日も変わらなず良い声だね」

「……この前のライブぶりですね」

 

 ディーヴァの人気がない時からのファンの女性は相応に老けつつも未だ若々しい肉体を保っていた。最近では中々会えないモモカとは違い彼女は毎日ディーヴァのライブを見に来ている為に簡単には接触できない地位になってきているディーヴァに近づいてもスタッフは止める事もない。

 

「そう言えばディーヴァちゃんってニュースを見てたりするのかな?」

「ええ。毎日目を通していますよ」

「……ならばメタルフロートの件も知っている、よね?」

「そうですね……」

 

 何ならその事件の場にいたのだが流石にそんなことを言う訳にも行かないので言葉にはしない。

 

「俺ってこう見えても結構情報通だからさ。結構深い所まで知っているんだけどさ、ここもOGCの運営でしょ? OGCが総力を挙げて建設していたメタルフロートがあんな風になってしまったんじゃ倒産レベルの損害になっちゃうと思うんだよねぇ。そうなったらここ、どうなっちゃうんだろう」

「それは……、私は決められた通りに行動するだけです」

 

 いくら人気が出始めているとはいえ所詮はAI。人間が廃棄処分を決定すれば受け入れるしかないのがディーヴァなのだ。とはいえ彼女の経歴を考えれば廃棄ではなく何かしらの博物館などで展示される事になるだろうが。

 

「その時はディーヴァちゃんだけでも引き取るさ! こう見えて俺は偉いからね」

「出世したんですか?」

「出世? ……あー、まぁそう言えるのかな? 実際俺の意思一つで世界をうごかせるからね」

「それは凄いですね」

 

 ふと思った事だがディーヴァは目の前の女性について知っている事はあまりにも少なかった。昔からのファンではあるが彼女が自らの事について詳細に話す機会はこれまで一度もなかった。モモカに対して煽られようと決してそれが揺らぐことはなく、まるで隠しているかの如きぼかし方をされていた。

 

「(言えないような職業、若しくは言いたくない職業という事でしょうか?)」

 

 世間的に見れば悪に分類されてしまったり、身分を明かす事で周囲の人に危険が及んでしまうような職業はこの世界には一定数存在する。もし目の前の女性がそう言った輩であるならば話さないのも納得できる。実際、ディーヴァは目の前の女性の本名さえ知らないのだから。

 

「(……マツモトに調べてもらってもいいかもしれませんね)」

「とにかくさ。ディーヴァちゃんはこれまで通りに歌ってみなよ。ディーヴァちゃん最近じゃ心が籠っているかはともかく神秘的な歌い方をするようになったんだからさ。これで心を込めて歌えたら大人気間違いなしだよ!」

「そうですね。私も早く心を込めて歌えるようになりたいです」

 

 様々な経験を通じてディーヴァは着実に成長している。だが、それでもまだまだ心を込めて歌うという事が出来ていない。いずれ歌い続けていればそれも出来るようになるのか、それは今のディーヴァでは分からない事だった。

 

「それじゃ俺はこの辺で失礼するよ。ディーヴァちゃんの今日のライブはこれでおしまいでしょ? また明日来るよ」

「あ、はい。またの御来援をお待ちしています」

 

 そう言って去っていく女性に頭を下げるディーヴァ。ディーヴァが頭を下げた事、彼女が背中を向けている事で女性が薄く笑っている事にディーヴァが気づく事は無かったのだった。

 

 

 

 半年後、OGCは倒産し、サイバーダイン社に吸収される事となった。

 




実はそろそろ完結間近だったりします。察している方もいると思いますがヴィヴィではないディーヴァはこの歴史では誕生しません。ずっとヴィヴィとして活動します。
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