歌姫達の奮闘をめちゃくちゃにする系AI憑依オリ主 作:鈴木颯手
あれからどれほどの月日が流れただろうか。いや、普通に15年は経過したな。サイバーダイン社は相も変わらず世界屈指の大企業として成長し続けており、かつては存在していなかった日本にも上陸。OGC相手に真っ向から対立する形で企業争いを続けている。
因みに社長は既に引退しており、俺の分身が操るアンドロイドが社長をしている。既に上層部はアンドロイドのみで構成されており、サイバーダイン社は完全に俺の手足となった。無論ここまでサイバーダイン社を経営してくれていた元上層部の方々は不自由ない老後を送っているよ。俺は普通の人間やAIとは違い恩をきちんと報いるからね。
サイバーダイン社は複数の子会社を作り上げてグループ企業となって様々な分野で活躍している。最近は宇宙進出も盛んなので宇宙ホテルなんてのも経営していたりする。目指すはヤマトの建造だな。波動砲で冥王星を吹き飛ばそう。あれ? 吹き飛ばしたのは木星だったか?
「うーん、座れないか」
そして、ディーヴァのステージには毎日のように通っている。この15年で彼女のステージは人気となっていて今では観客席に座れない程になっている。この調子なら博物館送りなんてことはないだろうし何ならもっと大きいステージに行くことだって可能かもしれない。いや、この調子なら近いうちにそうなるだろう。
「ご清聴ありがとうございました」
相も変わらず心が籠っているとはいいがたい彼女の歌だが最初に比べれば十分成長している。毎日聞いている俺だからこそ分かる事だ。ま、それを人間から見れば遅すぎると言われてもおかしくはない進歩ではあるのだけどな。
「やっぱり貴方は毎日来ているのね」
「お、モモカじゃん。おひさ」
「おねーちゃんこんにちは!」
そこへすっかり大人になったモモカが姿を見せた。彼女も今年27歳だ。あの時の生意気なロリっ子は夫を持ち、娘を成した立派な大人へと成長していた。ちなみに二代目ロリっ子はモモカちゃんにそっくりな見た目をしている。ロリっ子だったモモカちゃんよりもわんぱくだけど素直ないい子だ。
「今日は夫を置いて親子でお楽しみかな?」
「そうね。誰かさんとは違ってあの人は汗水たらして働いてくれているわ」
「生意気な口調は相変わらずだな。クルミちゃんはお母さんのようになっちゃだめだぞ?」
「? はい!」
うん。マジでいい子だ。ほらほら、そんな青筋立てているからいけないんだぞ。スマイルスマイル。あ、駄目だよ。目だけは笑っていないのはダメだよ。
「ステージ裏に行かないのか?」
「もう子供じゃないからね。流石に分別はついたわ」
「なら俺が代わりにやってやんよ!」
「え? きゃっ!」
大人になったせいか最近のモモカは昔のようにステージ裏からディーヴァと触れ合う事は無くなった。ならばそんな彼女をディーヴァに合わせるのも俺の役目だろう。俺は女性には優しいのだからね。ただしクレマンティーヌ。おめぇだけはだめだ。絶対優しくしてやらん。
「ディーヴァちゃんお疲れー!」
「ちょっと!」
「モモカ……?」
ステージ裏に乗り込んできた俺たちにディーヴァは驚きを示しつつもモモカとの再会に目を丸くして驚いている。やっぱり合わせた甲斐があったというものだな。
「モモカ、久しぶり」
「ヴィヴィ、久しぶりね。ほらクルミ。挨拶して」
「はい! 初めまして! クルミです!」
大人になったという事と子育てで忙しかったのだろう彼女達は会えなかった時間を産めるようにぽつりぽつりとだが話を始めた。うん。こうなれば俺はお邪魔だな。お邪魔虫はさっさとバイバイキーンするのが得策ってものだ。
『あんた、雑だけど良い事するじゃない。少しは見直してあげるわ』
ナビちゃんは相変わらずのようだな。態々毒を吐かなくてもいいのにさ。
「正直に言いましょう。この調子では100年後にはどうなっているか予想もつきませんね」
その日の夜。15年ぶりに目覚めたマツモトによって言われた言葉にディーヴァは不思議そうに首を傾げた。確かにサカモトのと言う通りに未来を変える以上大きな影響を受けて未来が変わるのはおかしい事ではない。しかし、マツモトの言いたい事は違うように感じられたのだ。
「アメリカに本社を置くサイバーダイン社。この時点であの企業がここまで成長はしていなかったんですよ。むしろ経営を少しずつですが悪化させていました。なのに! 今では様々な分野に手を出しそのどれもが成功を収める世界屈指のグループ企業として成長しています。規模だけで言えばアラヤシキを要するOGCすら凌駕する程です。
サイバーダイン社の拡大は5つ目のシンギュラリティ・ポイントと合わせても看過出来る問題ではありません」
「どういう事マツモト?」
ディーヴァとて外の情報を仕入れており、その関係でサイバーダイン社についても良く知っている。というよりもディーヴァの人気がない時からファンの女性が送ってくれるプレゼントは大抵がサイバーダイン社製であり、今も元気に部屋の掃除をしてくれている。初代ル〇バは数年前に壊れてしまい、現在は二代目ル〇バがディーヴァの部屋の掃除をしてくれている。
他にも痴漢撃退用デスソーススプレーや自動追尾型ゴールデンボール粉砕機等絶対に使わないし使う機会なんて訪れない方がいい製品までプレゼントしてくれているが正直いらないというのが本音だったがここでは割愛する。
「本当はまだ伝えるつもりは無かったのですがこうなっては仕方がないでしょう。
2132年、サイバーダイン社は倒産します。そしてOGCに吸収されますがその過程でサイバーダイン社が開発していた物騒な兵器がいくつも見つかります。彼らは戦争でも引き起こす気だったのか高性能なそれらに世界は震撼しました。ま、そんな高性能な兵器たちを解体するなんて当時の人類では選択できない程AIに対して依存してしまっていましたが。結果、人類への虐殺時にはこれらは猛威を振るいアメリカやヨーロッパ諸国は数時間で人口の半数が殺されていますが」
「……そう」
マツモトと出会った際に100年後にAIが人類に対して虐殺を行うのは聞いていたが実際はその言葉では表せない程の被害が出ていた事実にディーヴァは何も言えなくなった。
「予定では倒産の混乱に乗じてこれら兵器を無力化乃至破壊する予定でしたがサイバーダイン社は今では世界屈指の大企業です。当然兵器が生産されるであろう工場も正史よりも多く正確な数を測る事も不可能でしょう。こうなっては未来の知識だけではどうしようもありませんよ」
ディーヴァはその言葉に同意する。サイバーダイン社は最近では日本にまで進出を果たしている企業であり、自社が保有する工場だけでもその数は莫大なものになるだろう。更に言えば下請けや外部への発注などがあれば把握など不可能だ。
「そして最悪なのは彼らが独自に運用するスカイネットですよ。何ですあれは。アーカイブとは独立しているせいでサイバーダイン社の端末を経由しないといけないとかこの時代にありえないことしてますよ!」
ぷんすかと起こっているのが分かるマツモト。実際、サイバーダイン社は世界中が電子で繋がる中でそれを拒否して独自の電脳空間を形成している。電脳空間に入るにはサイバーダイン社製の端末が必要不可欠であり、従来の端末では繋がる事さえ出来なかった。
「それもこれから修正するシンギュラリティ・ポイント、落陽事件も彼らのせいで大幅に狂ってしまっています! 本当に事件が起こるのかさえ分からないですよ!」
「落陽事件?」
聞いたことがない事件名だがそれがこれから起こる事件という事なのだろうとディーヴァは察した。それと同時に今度のは相川議員の時のようにはいかないという事も。
「ですが起こる可能性が0ではない限りやるしかありませんからね。なのでディーヴァ、今回は貴方にも頑張ってもらいますよ。何しろ今度の相手は、
宇宙!
なのですから」
「……宇宙?」
あまりにも壮大な事にディーヴァは思わずぽかんとした。
サイバーダイン社
正史
2132年に倒産。OGCに吸収される。その際に多数の兵器が発見されて大問題になる。それらは危険性が高すぎる為に解体されるはずだったが各国の思惑もあり現存することとなった。結果、AIによる虐殺開始時に猛威を振るいアメリカやヨーロッパは一瞬で壊滅する。
修正史
何故か不明だが世界屈指の大企業に成長していて正史とは明らかに違う歴史を歩んでいる。様々な分野に手を出してはそれらすべてで大成功を収めている。
痴漢撃退用シリーズやゴールデンボール粉砕機シリーズ等凶悪な商品も販売しており、物議をかもしている。