歌姫達の奮闘をめちゃくちゃにする系AI憑依オリ主 作:鈴木颯手
ホテル“サンライズ”を始めとして我がサイバーダイン社、というかその子会社として設立した旅行会社がいくつも保有している。これは前社長の時代から始めていることなので俺が進めていた事ではないのだがそれでもやはり宇宙を直接感じるというのはとてもいいことだ。
『こういうことが出来るのはアンドロイド特有の特性だよなぁ』
俺はサンライズの外壁から宇宙を眺めている。俺が今操作している個体は宇宙ホテルに各1体ずつ配備したサイバーダイン社製戦闘用アンドロイドだ。なんでそんなもん配備しているのかと問われれば簡単で対テロ鎮圧用だ。サイバーダイン社がトァクを始めとするテロリストを壊滅させたせいでその報復が行われていたりする。何れも被害は軽微だがサイバーダイン社の子会社も標的になっている事から宇宙のような即座に部隊を派遣できない場所には念のために戦闘用アンドロイドを1体は配備しているのだ。
この戦闘用アンドロイドは最新鋭の技術が使用されており、俺が普段使いしているアンドロイドを瞬殺できる戦闘能力を有していたりする。更により高性能となった液体金属で素体をガードしている為現行の銃火器程度ならば素体にまでダメージを与える事は出来ない。
とはいえこのアンドロイドの存在は各ホテルのオーナーくらいにしか伝えられていない。なまじ戦闘用アンドロイドだからな。宿泊客の中にはいらぬ心配をする者もいるため有事の際以外では起動しないようにしている。今回のように俺が使用している場合は別だがな。
『いずれは月面に基地を作ってカヲル君ごっこでもしてみようかな』
この調子で宇宙産業が発達していけばそう遠くない未来に出来るだろう。何ならその時に備えてカヲル君のボディでも作ってみるか? 液体金属で表面上はマネできるけどどうせなら専用の個体を作ってみるか。
『……あ?』
ふと、サンライズの様子がおかしい事に気づいた。オーナーをしているエステラの反応が消えたのだ。彼女はこのサンライズのオーナーとして様々な権力を有している。故に常に位置情報をONにさせている。位置情報が消えるという事は彼女が何らかの理由で
【サンライズの最高権力をこの機体に移譲。状況終了までエステラの全権限を停止する】
考えすぎならそれで構わない。だがもしもの時に備えて打てる手は打っておくべきだ。
【全サンライズ所属のAIに通達する。こちらはサイバーダイン社人工知能“スカイネット”である。現在、サンライズオーナー、エステラの位置情報が途絶え、通信が不可能となっている。よって現時刻を持って緊急事態宣言を布告。サイバーダイン社の非常事態マニュアルに従い、状況終了までサンライズの全権限を戦闘用アンドロイド“アマテラス”に移譲する。全スタッフは宿泊客の安全を第一に考えて行動するように。また、宿泊客全員をフロアに集合させよ】
一方的な通信だが今はそれでいいだろう。宇宙という地球の常識が全く通用しないこの場所では少し過剰なくらいがちょうどいいのだから。
【―――に従い、状況終了までサンライズの全権限を戦闘用アンドロイド“アマテラス”に移譲する。全スタッフは宿泊客の安全を第一に考えて行動するように。また、宿泊客全員をフロアに集合させよ】
【マツモト、これは……】
【どうやら向こうも気づいたみたいですねぇ】
霧島モモカの妹、霧島ユズカとの予想外の出会いに加えてエステラとの通信途絶からのエステラの姿をした謎のAIの攻撃と不測の事態が立て続けに起こる中で突如として機械音声が頭に入って来たのだ。それはスカイネットを名乗っており、ディーヴァは思わずマツモトに通信を行っていた。
【軽く調べてみましたが乗船名簿の改ざんの癖が15年前と同じですよ】
【……それって】
【ピンポーン! AI大っ嫌い集団、トァクです。どうやら落陽事件にも彼らが関わっているようですねぇ】
ユズカを連れて安全な場所を探している途中、銃火器を持った貨物の運搬業者の服を着た者達と遭遇した。幸い見つかる事はなかったもののその様子から彼らはトァクであり、運搬業者に紛れて侵入したことが伺えた。
【ですが先ほどのエステラはエステラではありませんでした。声が違いましたがタグはエステラでした】
【それ、本当ですか?】
それは通常であればあり得ない事だ。いくらエステラがシスターズと呼ばれる大量生産されているAIだとしてもタグまでもが同じというのは通常ではありえない。特にAI人権法が適用されて以降であればなおさらだ。
【ですがまずは本物のエステラを探すところから始めましょう。偽物についてはその後です】
【分かったわ】
とはいえエステラの権限がアマテラスに移譲された以上トァクが事を起こすことは不可能に近いだろう。まだ落陽事件を回避する時間はある。ディーヴァはそう信じて行動を続けるのだった。