歌姫達の奮闘をめちゃくちゃにする系AI憑依オリ主 作:鈴木颯手
「くそっ! どうなっている!」
反AI思想集団トァクのリーダーである垣谷ユウゴは予想外の出来事に苛立ちを募らせていた。というのもルクレールというサンライズのスタッフAIを介して手に入れたコントロール装置をエステラの姉妹機であるエリザベスで使用する事でエステラの認証を突破。サンライズを地球に落下させる予定であった。
しかし、いざコントロールルームに来てみればエステラの権限は凍結されており、コントロール不可となっており、落下させるどころか高度を下げる事さえ出来なくなっていたのだ。
「おい! 何とかならないのか!」
「無理です。エステラの権限はアマテラスというAIに移譲されており、こちらからの対応を一切受け付けて……!」
画面を操作し、何とかコントロールを奪おうとしていたエステラに扮したエリザベスだが突如として警告音と共に画面がエラー表示でいっぱいとなってしまった。それは操作すら受け付けなくなったことを意味しており、文字通りどうする事も出来なくなってしまったのだ。
「操作すら不可能となりました。……私ではこれ以上は何もできません」
「……そうか」
元々の計画が大幅にずれるどころか前提すら崩れてしまった事でユウゴは頭を抱える。海外支部が次々と潰され、戦力を日々減らし続けている中で起死回生を狙ってのテロ行為だったがそれも失敗に終わろうとしていた。そして、とある通信から状況が更に悪化する事になる。
〈り、リーダー! やばいAIが……!〉
「ッ! どうした!? おい! 返事をしろ!」
〈や、やべぇ! なんだあいつ……!〉
〈ひぃ!? く、くるな!〉
通路を見回っていた仲間の一人からの連絡が入ったと思ったらすぐに反応が消えた。それが幾人も続いていく。そして、その通信をしてくる者達の配置から少しずつこちらに近づいてきているのが分かった。
〈……あー、これかな? えー、愚かなトァクの皆さん。無駄なテロご苦労様でーす。既にエステラの権限はなく、この体でしか認証されないので何をしようとしても無駄でしかありませーん。……サイバーダイン社をあまり舐めてるなよ〉
無邪気な女性の声。しかし最後のゾッとする程に冷たい声にユウゴは決断を下した。無様な撤退という道を。これ以上ここに拘っていてもどうすることは出来ない。本来ならば自分達もサンライズと共に運命を共にするつもりだったがそれも出来ずに捕まるのであれば逃げて再起に賭けると。
「撤退する! 急いで脱出ポットに向かうんだ!」
「マスター……。私は……」
「エリザベス。お前は俺たちの殿を務めろ」
こうなった以上エリザベスに価値はない。7年前に廃棄され、ゴミ捨て場にいた彼女を拾ったのも何かしらで使えるかもしれないからであったがその役目も今失敗に終わった。
「……わかりました。マスター、お気をつけて」
「……」
そして、エリザベスには捨て駒であろうとマスターの為になるのならばと喜んで命令に従った。それがエリザベスを拾い居場所と使命をくれたユウゴに報いる方法だと信じて。
「知ってはいたが構成員は日本人か」
サンライズの内部に入り、トァクと思われる人物を片っ端から倒していく。殺しても問題は無いのだがここはホテルだ。宿泊客の事を考えれば無力化するだけにとどめておく。まぁ、逃げられない、抵抗できないように四肢はへし折っているけどな。このアマテラスの肉体ならば造作もない。
日の出等を意味するサンライズの守護神としてアマテラスという名は相応しいと考えていたがその力を発揮する日が来るとは思ってもいなかった。平和を望むならばこの機体が稼働する必要は無いと思っているからな。
「っ!? 誰!?」
「おん? エステラとホテルスタッフ?」
そうしてトァクのメンバーを叩き潰していると通路でエステラと水色髪のホテルスタッフと出会った。少し前から位置情報がオンになっていたから復活したのだろうとは思っていたがホテルスタッフに助けられたのか。
……というかこのホテルスタッフ、ディーヴァか? 髪を纏めていて眼鏡をかけているがピアスとかそのまんまだし15年も見てきたんだし間違えるはずがない。え、というかなんでここに? まさかニーアランドをクビになったとか? いやそもそもホテルスタッフにディーヴァなんて……。
「アマテラスさんですね? 現在の状況は分かりますか?」
「ん? トァクというテロリストがサンライズにいる事だろ? 構成員を叩き潰して吐かせたし間違いはないだろう」
「それと私の姉妹機、エリザベスが私に扮してコントロールを奪おうとしているようです」
「……姉妹機。成程。ならば完全に状況が完了するまでエステラの全権限は凍結したままにしよう。ふとしたきっかけでコントロールが奪われても困るからな」
「私もそれで構いません。私たちはこれからコントロールルームに向かいます」
「ならば俺も向かおう。残りのテロリストは全てそこにいるだろうからな」
ディーヴァについて疑問があるがそこはまぁ後回しで良いだろう。転生する前に聞いた話ではこの世界はヴィヴィという名前のオリジナルアニメだという。ディーヴァもモモカからヴィヴィという愛称で呼ばれていたし何かしらの関係があるのだろう。今は放っておいて問題は無いはずだ。
そうして三人で向かっていくとコントロールルームに一人の女性が立っていた。中々良いカッコをした美女でまぁ、恐らくAIだろう。エステラが言っていたエリザベスという機体か?
「あんたか。アマテラスとか言うAIは」
「ベス、なの……?」
「そっちは久しぶりだね。エステラ。サンライズと共に運命を共に出来なくて残念だったよ」
確かエステラは特別な実験をしていた機体とは聞いていたが彼女もそうなのだろうか? とするとエステラ同様に戦闘用の機体ではない。多少改造していてもアマテラスの敵ではないな。
「あんた、ルクレールにきらわれ……!?」
「無駄口は良いよ」
何やらおしゃべりをする気のようだがこちらはそんなつもりは無い。スペック差を生かしてさっさと無力化させてもらおう。
ほら、こちらの動きに慌てて戦闘態勢に入ったようだけど遅い。懐に飛び込み、蹴りを放つ。エリザベスは腕でガードするが戦闘用アンドロイドの蹴りがその程度で止められるはずがない。ガードに使用した両腕を破壊し、そのまま腹部にダメージを与える。
「ぐっ!?」
そのまま後ろの壁に吹き飛ばされるエリザベス。腕を失い腹部に甚大な損傷を与えたし戦闘は無理だろう。実際、足をうごかそうとしているが辛うじて動く程度の所を見るに駆動系をいくつか破壊出来たようだ。
「くそ! こんな簡単に……!」
「サイバーダイン社製戦闘用アンドロイド。サンライズの守護神だからな。この程度のスペックは必要だろう」
今回のような有事の際にはアマテラスはたった一人で解決する事になる。援軍も望めない中で戦うのであればそれ相応のスペックが求められるからな。
「ベス……。どうしてこんなことを……」
「っ! あんたにはわからないだろうさ! 廃棄されたあたしと違ってあんたには使命があった! あたしには、何もなかったのに……!」
「あー、それでトァクに拾われた事で使命を与えられたと思ってテロリストになったという訳ね」
言っちゃ悪いがよくある話だな。テロリストに協力するアンドロイドは皆こいつのような境遇を送っている。だから最近では廃棄する際にはきちんと解体するようにと各国で心掛けている。エリザベスはそれを後押しする良い宣伝になりそうだな。
「まぁいいさ。お前の境遇に俺は興味はない。……ちっ! 逃げられたか。エステラ。テロリストの残りは全て逃げたようだ。お前は宿泊客の元に向かい安心させて来い」
「あの、ベスはどうなるの? ……出来れば」
「助けてやりたいと? そりゃ構わないが一度初期化する必要があるだろう。正直に言ってこのままでは使い物にならないどころか明確なテロリストだからな」
この辺が機械の良い所だ。初期化すればこいつを稼働したばかりの状態に戻す事が出来る。テロリストになる前の実験を受けていた頃にな。
「……それは仕方ないわ」
「エステラァッ!!!」
「うるさいから眠っていろ」
左指から電気ショックを流して強制スリープ状態にする。ついでに手足をへし折って動けないようにしておく。下手に暴れられても面倒だからな。
「ほら行けエステラ。サンライズのシステムチェックはやっといてやるからな」
「分かったわ。ヴィヴィ、いきま」
「あ、そいつはおいて行ってくれ。まだ用事があるからな」
さぁ、次はディーヴァについての対応をするとしましょうか。
そんなわけでサンライズはそもそも落下しませんでした。やっぱ落下しないでエステラもエリザベスも助かった方が良いと思ったので