男の娘が魔女になって大変な目に遭う話   作:クエクト1030

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2話「魔法学園アストヒク」

「ちょーっと狭いけど、我慢っして、ね~」

 

「むぐぐぐ!?」

 

 

 家を出て人目のつかないところに移動すると、リーベさんはそそくさと僕をコートの内側に押し入れて、ぶつぶつと何かを唱え始める。

 なんだこれ。桃、桃か?頭に重さを感じてとにかく甘酸っぱい匂いが鼻を満たして頭がくらくらする……!

 というかこれ頭がおっぱいに挟まってるでしょ、気にしてないの!?

 

 

「えーっと、《転移起動》。魔法世界を指定で……あ、これか。」

 

 

 リーベさんは何かを取り出したのかゴソゴソと何かを操作していて、それのせいか、途端にぐるぐると回るような感覚を覚える。

 回る力が強いのとコートの内側にいるせいで外が見えないので、振り落とされないように必死にリーベさんに抱き着いて耐え忍ぶしかない。

 

 

「うぅぅぅ……!」

 

 

 流石に酔いそう、もう弾き飛ばされる……と覚悟したところで。リーベさんがコートを開けて、嬉しそうな顔で僕を覗き込んだ。

 眩しい笑顔とさっきまでの回転でぐらぐらする。

 

 

「もう出ても大丈夫だよ!」

 

「はい……あ。ご、ごめんなさい!」

 

「ふふふ、何も謝らなくてもいいよ?さ、ほら見てみて!」

 

 

 コートから出て周囲を見回すと、そこは見知った日本の住宅街とは全く変わっていた。後ろには巨大な門が聳えていて、周囲にはテントや石造りの家々が立ち並ぶ。

 

 僕たちは西洋、それも中世時代の街並みといった雰囲気の場所にいた。

 

 

 

 

 

 

「魔法世界へようこそー、お帰りなさい、関所を行き来する方はこちらで手続きをお願いしまーす。魔法世界へようこそー、お帰りなさい──」

 

 

 街並みを眺めつつも周囲の音に耳を向けると、テントで立っている人がそんな事を繰り返し呼びかけているに気がつく。彼女言う通りここは関所、なのだろうか。

 

 

「もうここ、魔法世界って場所なんですね」

 

「うん。ささっと手続きしちゃおっか」

 

 

 リーベさんと受付のお姉さんに説明を受けながらだけど、僕たちは案内に従って手続きを終える。受付の人の呼びかけ通り、どうやらこの……魔法世界に出入りする際には手続きが必要らしい。

 

 後で聞いた限りだと、国の入出国とかと同じで出入りの管理が必要とのこと。

 

 

「さーて。次はいよいよ学園へと出発しまーす!学園の名前は、魔法学園アストヒク! 色んな子が集まる魔女の学び舎なんだよ~」

 

「どうやって行くんですか?」

 

「幾つかあるけど、馬車が基本かな?一台予約してあるからすぐに出発出来るよ。さ、こっち。乗り込んで〜!」

 

 

 準備がいいなぁと僕は何も油断をせずに乗り込んだ。

 そこは御者さんの荷物もそこそこ載せられているせいか、とても狭かった。

 まぁつまり、リーベさんとかなり近しい距離で。

 

 

 

 僕はその事に気がついたら瞬間、全身が熱くなった。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 馬車の荷台に揺られて僕は目を覚ます。

 ……リーベさんの膝の上で。

 

 

「おはようミコちゃん。大丈夫?よく眠れた?」

 

「んん……ほあ、おはようございますリーベさ……んぐぐぐ!?」

 

「よかった〜〜!!」

 

 

 起き上がろうとする僕を、リーベさんは上からその豊満な胸で抱きしめる。うわぁふかふかムチムチしてる。こんなイイ事があっていいんだろうか。ちょっと苦しいけどイイかも……。

 

 

 

 ……あれ、息が苦しくなってきた。うぐ、息が出来ない!?

 え……僕はこれで死ぬのか……?こんなバカみたいな死に方で……?

 

 

 

「んんんーーーー!(は、はなして……!)」

 

「あ、ごめんね!えへっ、安心してついつい」

 

「死ぬかと思った……」

 

 

 やっと離してもらって息を大きく吸う。ふぅ、空気がおいし──あああリーベさんの匂いがする!これじゃあんまり状況が変わらないぞ!

 

 

「け、けほん。失礼しました。えっと、ちょっと離れてもらって……っ。その私、どれだけ寝てましたか?」

 

「うーん。2時間くらいかな?でもしょうがないよ、ここまで面倒な手続きも多かったし、何よりミコちゃん酷い熱だったからね。急にことんって眠った時はびっくりしたよ。倒れたのかと思っちゃった」

 

 

「熱があったのにここまでよく頑張ったね、えらいえらい」

 

 

 頭を撫でられる。ちょっと涙が出そうで胸がしくしくする。

 抱きしめられるのは遠慮したいけど、撫でられるのはしばらく甘んじた。誰かに受け入れられるっていうのはすごく心地いいものらしくて、身体が離れようとしてくれない。

 

 あと膝枕で目覚めたってことは……ほとんど2時間の間、ずっと膝枕してくれてたのかな。

 

 

「その、足とか痺れてないですか?膝枕してくださって」

 

「全然平気だよ、心配御無用!」

 

 

 僕はそのまま見上げて問いかけるけど、リーベさんは眩しい笑顔で答えてくれた。世の中には他人にここまで優しさを向けられる人がまだいたらしい。

 

 

「あれ……そういえば調子がいいような?」

 

 

 しばらく撫でられていると身体の異変に気が付く。

 身体の調子が、かなり良い。

 いや調子が良いのを異変と言うのはおかしい気がするけど、体調悪い方が普通だったからなんだか変な感覚がする。

 

 

「寝ている間に回復魔法をかけておいたんだ。といっても私はあんまり適性無いから気休め程度だけどね」

 

 

 熱が引いてる。身体の怠さがない。

 空腹で相変わらず力は入らないけど、風邪での腹痛も吐き気も無くなってる。これで適性が無いちょっとしたもの?嘘だぁ、リーベさんはすごい魔女なんだな。

 

 

「いや、すごいですよ!こんなに調子が良いのなんていつぶりだろ……本当にありがとうございます!」

 

「あ、あれ?そんな効いたんだ?……まぁでもミコちゃんが元気になったなら何でもいっか!」

 

 

「(前に別の子に使った時は擦り傷が治ったりちょっと頭痛が和らぐ程度で病気が治るレベルじゃなかった気がするけど……もしかして私、回復魔法がいつの間にか上達してたのかな!)」

 

 

「~♪」

 

 

 何か考え込んでいるリーベさんをよそに、思わず鼻歌を歌ってしまう。健康な身体っていうのは本当に素晴らしい、気分は清々しいし、心無しか全てがキラキラして耳も鼻も冴えている気がする。

 歌でも一つ歌いたくなるようないい気分だ。

 

 冴えた五感は目の前のリーベさんがより一層麗しく見せて、あといい匂いをより強く感じ……あ、これむしろ逆効果かも。余計に意識するわこれ。天丼だぞこれ。

 

 

「こ、こほん。そういえばあとどれくらいで到着するんですか?」

 

「えーっとね。あ、そろそろ着くかな?到着したらまずは校長先生に挨拶しに行くよ~、その後に服と杖の支給を受けて、寮を決める流れだね」

 

 

「あ。寮は私と同じお部屋に入ろうね~」

 

 

「なるほど、わかりま……はいぃ!?」

 

 

 さり気無く何言ってんだ!?出会って当日に同棲、じゃなくて同室の部屋に決めるって何!?え、女子ってほんとにこんな距離感?いや僕は男だから拙いと思うんだけど。

 

 

 

 お、女の子って恐ろしい……

 

 

 

「私ミコちゃんの事気に入っちゃったから一緒に生活したいんだ~!丁度私も一人で寂しかったし!」

 

「ダメですよ!?そもそも──」

 

 

 言いかけた所で荷台がガタンと揺れる。馬車が止まった。

 学園に到着したらしい。

 

 

「ざーんねん。先に到着しちゃったね~。同室の事は校長先生に挨拶した後で、またお返事頂戴ね!」

 

「は、はい」

 

 

 リーベさんは幕を開けて荷台から乗り出した。僕もそれに続いて荷台から降りる。馬車を降りた先には、断崖絶壁の上に築かれた巨大な城壁と橋が広がっていた。

 空には何人もの魔女が箒に跨ったり別に跨ってなかったりして空を飛んでいて、遅い人やとんでもなく速い人まで千差万別。

 

 

 

 ……あと時折、壁内から爆発音とか聞こえる。

 

 

 

 

「しばらく歩くから頑張ってね。あ、もし歩き疲れたらおんぶしてあげるから。その時は言ってね!」

 

「だ、大丈夫です。頑張ります」

 

 

 おんぶされるわけにはいかないので、僕は何とかして足を動かしてリーベさんについていった。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 異変……いや、魔女にとっての「常識」、日常。

 それを知ったのは正に今日、学園に入って校舎を進んでいる時だった。

 

 

「何か聞こえませんか?」

 

「あぁ〜」

 

 

 どこからか妙な音が聞こえる。艶かしいような声……?

 リーベさんは既に何かを察したらしい。ニヤニヤと笑いながら僕の手を優しく引いてその声の根源へと寄り道をした。

 声の源は周囲に何個もある様な小さい教室、あるいはその予備用の部屋からで、扉が完全に閉じ切っていない事から漏れ出て聞こえていた。

 

 その少し開いた扉から僕たちは覗き見る……。

 

 

「も、もう許してくれ!」

 

「え〜どうしよっかな〜」

 

「もういつものノルマは出しただろ!?これ以上は……いやああああ!!」

 

「ダメ〜♡あはは、女の子みたいな声出しちゃって〜。私に口答えする人はお仕置きであと1Lでーす!」

 

「ずるい〜、ねーそれ私にも分けてよねー?」

 

「やーだよーん!自分でやればいいじゃーん」

 

「……それもそっか!じゃあキミ、私の分までもう1L頑張ってね!」

 

 

 そこには身体を拘束された、牛の乳搾りという単語を想起させられずには居られない状態を呈する、下半身にイチモツをぶら下げて──というか筒状の何かで扱き上げられている上に、お尻に魔法陣を展開している棒を突っ込まれている、幾分か中性的な容姿の男の人がいた。

 

 

「ヒッ!?な、なんですかこれ、止めなくていいんですか!?」

 

 

 思わず腰を抜かして倒れる。何だこれは!?

 

 

「これでこの子の自由全部奪われてるなら止めないとだけど、多分そんな事ないだろうし。止める必要はないかな?」

 

「助けて!誰か助けてくれええええええええ!」

 

 

 怖い、怖すぎる!何、どういうこと!?

 川に捨てられたエロ漫画に書かれていたような事が現実で起きている!目の前でこんなの見せられたら興奮するどころじゃない、早く逃げ出さなきゃ!

 

 そう僕がパニックに陥った時。

 

 

 『助けなければいけない。一方的に搾取を受けるのは悪しき事だから』

 

 

 「私」の声が、僕を支配した。

 

 

 

「リーベさん、それでも助けてってあの人は言ってますし。止めてあげる事は出来ないんですか?」

 

 

 私はこの場で最も相応しい発言者をリーベであると認識し、止めることを申請する。

 

 

「んー、混じりに行く事はあっても止める必要はないしなぁ」

 

「この学園は、あんな目にあってる人を止める事も出来ない場所だなんて思いたくないんです。そんな所で生活するなんて私、考えるだけでも怖い……お願いします、リーベさん」

 

 

「ダメ……ですか?」

 

 

「う、うぐっ(真っ直ぐな瞳が突き刺さる!)……け、けほん。しょうがないなぁミコちゃんは」

 

 

 私の願いをリーベは聞き届けてくれるようだ。

 リーベは軽く咳払いをしてから扉を開けて、挨拶する。

 

 

「やほー、やってるね〜」

 

「あ、リーベ先輩!先輩も聞きつけて混ざりに来たんですかー?」

 

「や、今回はこの子。新入生ちゃんの送迎でねー。でもこの子、“これ”にちょっと怯えちゃてさ。今回はそこら辺で終わりにしといてあげられない?」

 

「えー……あ、新入生ちゃんってキミかな?」

 

「えーーー可愛い!先輩めっちゃいい子の案内人になったんじゃないですか!いいな〜!」

 

「えへん。この子ミコちゃんって言うんだけど、ほら、最初の印象は大事でしょ?それにまた今度、一式分の服代持つからさ!」

 

「やった!リーベ先輩ってば太っ腹〜!」

 

「ね!じゃキミは今回はここで終わりにしてあげる〜、じゃあまた今度ね〜」

 

 

 男を犯していた女性二人はウキウキでその場から立ち去る。

 道具や男をその場に残して。

 

 

「はぁ……はぁ……助かりました」

 

「あの子たちと何でこういう関係になったのかは知らないけど、やめて欲しいなら決闘でもして自由勝ち取る事だよ。今回は〜?私のミコちゃんのお願いで〜?解散させてあげただけだからね〜」

 

 

「ね〜、ミコちゃん」

 

「……はい、ありがとうございます」

 

 

 私はリーベの──『うるさい、黙れ』。

 

 

 

 「僕」はリーベさんの後ろに隠れながら返事をする。

 男の人はいそいそと自分に突き刺さったままの道具を引き抜いて、服を纏い、それ以上は何も言わずに一目散に部屋から逃げていった。

 

 

 

 はぁ、これで良かった……はずだよね。

 余計なお節介ほど嫌な事はないし、それで敵を作るなんてことも多いと思うけど……全部リーベさんのお陰で何とかなった、と思いたい。

 

 とんでもないハプニングと遭遇したけど、その後は何事もなく校長先生の部屋に行く事が出来た。それが不幸中の幸いだったのかもしれない。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「はーいここが校長先生のお部屋でーす。ミコちゃんすごい頑張ったね!」

 

「はぁ、はぁ。ありがとうございます……」

 

 

 死ぬかと思った。橋も長かったけど、学園内も広い!

 おまけに内部は入り組んでいるわ、昇り降りには階段しか使えないわ!

 他の人は空飛んでるけど!くそぅ、魔法式エレベーターとかないのかな!

 

 何事もなかったのはその通りだけど前言撤回させてもらう。

 何事もなくてもここは大変な場所です。僕も早く空飛ぶ魔法覚えたいな。

 

 

「じゃ、私は部屋の前で待ってるから。校長先生に失礼のないようにだけね!」

 

「はいぃ……」

 

 

「すー、はー……」

 

 

「よし。」

 

 

 コンコン。

 息を整えてノックをする。すぐにも中から……女の子の声が帰ってきて、僕は恐る恐る扉を開けて入室する。

 

 

「よく来ましたねミコさん。さ、そちらにかけて。お茶を淹れましょう」

 

 

 校長先生は少女だった。

 いや、少女って言っても僕と同じくらいの歳、中学生にしてはちょっと大きいかな?もしかしたら高校生くらいかもしれない。金髪で紫色の綺麗な瞳をしている人だった。

 

 

「失礼します」

 

「そんなに畏まらなくても大丈夫ですよ、ミコくん(・・)

 

「は、はぁ」

 

 

 あ、この人は僕のこと男だって知ってるのかな。

 校長先生だから入学する生徒の事は把握してる的な?

 

 

「色々と他の子には話す事もあるんだけど、君の場合は何よりも優先してお話する事があります」

 

「……ゴクリ。」

 

 

 深刻な面持ちで校長先生は語る。

 一体、どのような話があるというのだろうか。

 

 

「君は、男性の魔女という珍しい魔女です。より詳した事はこの後受けることになる初授業で教わることになりますが……」

 

 

「一点。自分の身を案じるため、守るために、気をつけた方が良い事があります」

 

 

「それは……?」

 

「それは、自分が男の魔女であることを隠すということです」

 

「……どうしてですか?」

 

 

 脳裏に寄り道をした時に目撃してしまったあの教室が浮かぶ。

 まさか、まさか。もし露呈した場合──

 

 

「端的に言うと、男が女の、女が男の体液や魔力を摂取すると、通常よりも極めて高い効果で発揮されます。薬とか魔法がそうですね。男の魔女は稀な存在です。そして、男性が出せる基本的(・・・)な精液の量は限られている。ここまで言えば分かりますか?」

 

「……素材として搾り取られる?」

 

「正解。」

 

 

 うんうん、と頷きながら満足げに校長先生は頷く。

 正解したくなかったこんな問題!!

 

 

「先に言っておきましょう。前立腺とかホルモンがとか、栄養素を取る事でとか、そういった物理世界の優しい方法で行われる事はあまりありません。魔法、魔法道具による強制的な生命力の還元と回復によって大量に製造させ、大量に吐き出させることがメジャーです。そして、その繰り返しです」

 

「……」

 

 

 馬車でせっかくリーベさんに良くしてもらった顔色が青褪める。

 馬車を降りる時、性別を明かす言葉が途中で途切れてよかったかもしれない。ともすれば、あの優しい彼女も豹変して……?

 

 

「あの、ここに来る途中で──ということがあったんですけど」

 

 

 僕は試しにあの現場について校長先生に報告してみた。

 

 

「あぁ、正しくそれですね。魔女社会では完全に行動を支配されておらず自由が認められていたり、あるいは契約に基づいている場合はいちいち罪には問われないので……良くありますよ」

 

 

「魔女を殺すことも、やり過ぎなければ基本的にお咎めなしですから」

 

 

 校長先生は紅茶を含みながら、サラッと言ってのけた。

 嘘でしょ、治安終わってない……?

 平和に生きるには自衛能力必要で、コミュニティ作って抑止力まで考える必要があったり……?いや、流石にそんなことは考えすぎ、妄想か。ははは。

 

 

「なので、研究職に就くことを目指す魔女も最低限の自衛能力は必修科目になっています。殺して研究成果奪うとか、ままあるので」

 

 

 あぁ本当だった。戦慄だ。魔女社会は終わっています。

 また顔を青くする僕を他所に校長先生は更に話を続ける。

 まだバッドインフォメーションがあるんですか。

 

 

「話が逸れましたね。男の魔女に関する話の続きです。魔女は異性に対して、フェロモンのようなものを発散しています」

 

「フェロモン?」

 

「はい。端的に言うと、対処しないと周囲の女性の魔女全員を勝手に発情させたり、性別を明かさなくとも無意識で好意を引き寄せる事が多いです」

 

 

「かくいう私も……♡」

 

 

「!?」

 

「冗談です。私にはすでに相手がいるので。」

 

 

 悪ふざけで上着に手をかけた校長先生はスン。と一瞬で元に戻る。

 心臓に悪いな!?

 というかそうだよね、ここまで喋っておいて襲うって選択肢も先生にはあるわけで。職権濫用の絶好の機会じゃんね。

 

 

「対処法は幾らかあります。完全に防ぐ方法は難しいですが、一番簡単でバレにくく、また効果が見込めるものとして香水があります」

 

「香水ですか」

 

「はい。しかし(いち)で売られるようなものではなく、自作して貰うことになります。買えば、需要があると判断され、男の魔女の存在、その気配を探られる。足がつくというわけですね」

 

 

 なるほど、こうして聞くと違法なものの取り扱いみたいに聞こえるけど男の魔女自体が違法なものみたいな存在だしそんなものか。

 いや何勝手に納得しているんだろうな僕は。

 

 

「さて、お話はこんな所ですね。必要なものをお渡しします。先ほど言った香水も有り合わせですがお渡ししましょう。魔法薬学の授業を受けると簡易的な魔女釜も支給されますので、初授業が終わったら次は魔法薬学を選択して、香水を自作することをオススメしますよ」

 

「ありがとうございます……!」

 

「あとはリーベさんに……まだ性別がバレていないならその事を隠しつつ、説明を受けて一人で頑張ってください」

 

「は、はい……失礼しました」

 

「魔法学園アストヒクはあなたを歓迎しますよ。ミコ・マレガカリさん」

 

 

 僕は校長先生の勧めでその場で香水を振り掛けてから部屋を後にする。校長室を後にする背に祝福を受けて。

 

 

 

 そして不安に満ちる廊下を前に、扉を閉めた。

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