男の娘が魔女になって大変な目に遭う話   作:クエクト1030

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3話「着せ替え人形ミコちゃん」

「ここが私たちの寮だよ~!ミコちゃんは私と一緒の……」

 

「いや同室しませんからね!個室がいいです!」

 

「む~~~」

 

「膨れてもダメです!」

 

 

 校長先生に挨拶をした後、僕たちが寝泊まりする事になる寮に案内してもらった。

 寮は学園内に……教育棟って言えばいいのかな?勉強するでかい建物と隣接した場所に建てられていて、アクセスは悪くなさそうだった。

 

 ……あと、寮全体に甘い香りが漂ってる。

 

 

「校長先生に貰った鍵の番号は……ここか」

 

「ちなみに私の部屋はこっち~」

 

「……近くないですか?」

 

 

 リーベさんの部屋は隣の部屋だった。

 

 

「もし同室がダメだったら近くに来るようにお願いしたんだ~」

 

「そんな時間ありました?」

 

「馬車で寝ている間にちょちょっと、ね」

 

 

 確かに2時間近く寝ていたからその間にしていてもおかしくないのか。

 後から聞いた話だと、魔法にも通信技術があるらしくて、距離の制限はあるけど遠距離でも一定のやり取りが出来るみたい。距離とか制度は術者の力量による所が多いとか。

 

 まぁ、それはともかく部屋……隣人ってだけならいい、かな?

 距離感でバレる可能性ある、と思うのは考え過ぎだろうか。でもよくしてくれる人だし、頼りになるのは確かだから嬉しい気持ちもある。

 

 

「貰った教材を置いて……これくらいかな、持ってきたものもないし」

 

「荷物の整理終わったらまた言ってね!ミコちゃんに紹介したところがあるんだ~!」

 

「あぁ、もう大丈夫です。教科書は置きましたし、持ってきたものもないですから」

 

「じゃあついて着て。こっちこっち!」

 

「わっわっ、引っ張らないでください──!」

 

 

 今日の中でも一番の笑顔で僕の手を引きながら、リーベさんはその紹介したい場所へと僕を案内する。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「ここ、入るよ~!」

 

 

 連れられた場所は寮棟から少し離れた場所にある一室。

 中には女性が3人いた。全員がそれぞれ魅力的な女性に見える……というか校長先生に向かうまでにすれ違ったどの人も、殆どみんなが魅力的だった。

 

 こう言っちゃ失礼だけど、普通集団の中にはある程度醜美の差があるものじゃないのかな。女性の魔女のフェロモンに当てられてそう見えてる、ってわけじゃないよね?

 

 

「えっと、失礼します」

 

「リーベか。何だそいつ、新入りか?」

 

「圏域の外で拾ってきたんですか? 髪の毛ぼさぼさだし、服もなんか変ですよこれ……」

 

「ちょ、ちょっと、この前先輩が案内人の任務を受けたって言ってたじゃないですか、この子がきっとそうなんですよ……!」

 

 

 そういえばそうだった、身だしなみとか皆無だよね僕。

 入界した時の受付の人も校長先生もリーベさんも、よく普通に接してくれてたな。

 

 

 

 あと男の魔女を襲ってた人たちもそうか。

 

 

 

「紹介しまーす、今日から圏域外(けんいきがい)派に参加する、ミコ・マレガカリちゃんでーす!」

 

「え?あ、よ、よろしくお願いします。ミコと言います」

 

「ここは圏域外(けんいきがい)派のロビー。男の子っぽい口調の人がムネメ先輩で、ちっちゃい子がアンちゃん。そっちの黒いローブの上から白衣着てメガネかけてる子がフレスノちゃんだよ」

 

 

 リーベさんの紹介を受けて、僕も咄嗟に挨拶をする。それに反応してアンとフレスノという人は一切に喋り出した。

 

 

「あ、アンです!」

「ぶ、物理世界から来たのなら私が説明しますっ。あのね、魔女には派閥っていうものがあって、部活動とかサークルみたいなものでね、私たちは魔女の圏域っていう魔法世界の安全な土地の、外を探索しようっていうサークルなんだっ。だから圏域外(けんいきがい)派って名前なの!」

 

 

「あ!ちなみに派閥っていうのは──」

 

 

 アンさんは綺麗な若緑色の髪の毛で、かなーり毛量が多いみたい。ちょっとボサっとしてるけど全然可愛い。身長は僕と同じくらいかな、親近感湧くよね。

 

 

「派閥っていうのはこの子の言った部活動、サークル?みたいな特定の目的のために集まるタイプと、あとは特定個人を中心にしてる女子グループタイプの二つがあるんですよ!前者の方は学園側に許可を取って活動するので、資源面だったり人員だったり規模が大きいんです!後者の方は規模が大きくなる事は滅多にないですね!」

 

 

「ちなみに私の本名はフレスノ・セニサです!フレスノお姉ちゃんって呼んでくださいね!」

 

 

 フレスノさんは灰色がかった髪色で、やっぱり髪の毛が長い。綺麗に降ろしてて見てて感動する。でもなんか目線が怖い。あとローブの上に白衣ってどういう事なんだ?

 

 

「お前ら長い。簡潔に説明しろ」

 

「えっと……つまり、サークル部活動とクラスの女子グループで規模の違う集団のことを派閥って分類で一緒くたにしてるってことですか?」

 

「ほぉ……賢いなお前」

 

 

 つまり、そう言うこと……で合ってるようだ。

 ムネメさんは甘い香りのする……タバコ?を吸ってる。全然嫌な匂いじゃない、結構好きかも。黒髪のショートヘア。口調的にも男らしいけど女性、だよね。多分。

 

 

 

 あとリーベさん、今まではローブの内側に入ってて見えなかったけど髪の毛長いみたい。お尻辺りまで伸びてるに今さら気がつく。

 

 

 

「ふー……リーベ。先ずは新入りのその髪の毛整えて着替えさせろ」

 

「ふふっ、はーい。じゃあミコちゃん、あっち行こうね~」

 

「え、あっはい。お二人ともありがとうございま──うわっだから引っ張らないでくださいよー!」

 

 

 お礼を言いきる前に、僕は別の扉に連れ込まれるのだった。

 

 

 

 

 

 

 部屋はどうやら衣裳部屋らしくて、姿見の鏡が置かれていた。残りは部屋を覆い尽くすレベルの色んな服が掛けられている。

 ちょっとした服屋くらいなら上回るレベルの量なんじゃなかろうか。

 

 

「ここに座って~、髪の毛を綺麗にしていくからね~」

 

「は、はい」

 

 

 椅子に座るとリーベさんは後ろに立って指を鳴らす。

 すると僕の頭の周りに魔法陣?が幾つも出現する。

 

 そしてなんか髪の毛が勝手に持ち上がったり湿ったり暖かくなったりして洗われて……なにこれすごーい、気持ちいい~!

 

 

「とりあえず洗って乾かしてー……ふむ、前髪と後ろ髪が不揃いだね」

 

「自分で適当に切ってたのと、伸びるの早いから途中で面倒になっちゃって……」

 

「勿体ないよ!私が綺麗に揃えてあげる!」

 

 

 今度はハサミを取り出して切りそろえてくれる。そこは自分の手でやるみたい。

 でも手際がよくて、時折櫛で梳かして全体を観ながらテキパキと髪の毛を手入れしてくれる。

 もしかしてムネメさんたちの髪の毛も手入れしてあげてたりするのかな、すごい。

 

 しばらくすると前髪は下ろしてもきちんと前が見えるようになって、真っ直ぐに……ぱっつんヘアって言うのかな。とにかく綺麗に揃えられていて、後ろ髪もぼさぼさで長さも不揃いだったのが、綺麗でなだらかな弧を描くようになってた。

 

 

 

 すごい……え、僕の髪の毛ってこんな綺麗だったんだ。

 というか、髪の毛ってこんな綺麗な存在なんだ。

 

 

 

「どうかな?艶も出るようにちょちょっと魔法をかけたけど」

 

「こ、これ本当に私の髪の毛なんですか?」

 

「そうだよ!女の子は髪の毛が命だからね。これからは私がお手入れしてあげるし、色々やり方も教えてあげるからね!」

 

「おぉ……!ありがとうございますっ!」

 

 

 これは本当に、素直に嬉しい。

 いや、こういうと女々しいかもしれないけどね?言い訳はさせてほしい。

 髪の毛っていう分かりやすいものをこうやって手入れするのはなんて言うか、自分を大切にしているっていう気持ちになるんだよ。

 しかもそれを他人に心配してもらって、しかもしかも上等にお世話して貰うっていうのは……他人に大切にされているって実感するんだよ。

 

 

 

 ……あ、僕は女の子じゃなくて男だった。

 まぁ女の子な事否定するわけにはいかないから言わないけど。

 

 

 

「じゃあ次はいよいよお着換えだね!」

 

 

 

 ……やべ。

 

 

 

 そうか、そうだよね。ムネメさんは髪の毛整えて「着替えさせろ」って言ってたもんね。そりゃそうだ。しかも今着ているこれ、小学五年生くらいから着続けてるパジャマだし。

 

 

 

 拙い──とても拙い。

 

 

 

 尊厳としても拙い。

 幸い奥の方に試着用のボックスが見えるから、着替えを見られることはないだろうけど。

 

 しかし、もし仮に下着も着替える──いや確定して用意はされるだろうけど。何がいいとか聞かれたら僕はどう答えればいいんだ?知識なんてないから怪しまれるよね。

 上手く、上手く言い訳をしなければ……。

 

 

 

 所でさ、こういうのって女の子が、恥ずかしがりながら相手に「どう?」とか言うイベントじゃないの────

 

 

 

「じゃあ先ずは下着からだね!いっぱいあるよ~!」

 

 

 じゃらん、とカーテンが開いてマネキンに着せられた色んな下着が姿を現す。

 

 

 

 あぁ。いきなりだ。

 

 

 

 ほらあの、田舎でもあるデパートのテナントで堂々と存在感を発しているアレに近い景色が広がってる。可愛いね。せくしーだね。

 水色や桃色、淡いパステルカラーの生地にレースの編み込みとかフリフリとか……ああああ!!

 

 

 

 もう見ているだけで恥ずかしいんだけど!これ以上見るの無理!!

 

 

 

「そっぽ向いてどうしたの?」

 

「え、いやあの、こういうのマジマジと見るの初めてだからなんか恥ずかしくて」

 

 

 何故馬鹿正直に答えてしまったのか。あぁダメだ頭が回らない。

 羞恥心が脳みそを塗り潰してしまっている。

 

 

「可愛い下着、着た事ないの?」

 

「可愛い下着というか、女物の下着も身に着けた事なんてないですよ!?」

 

「……!」

 

 

 あぁ、やばい。ミスった。

 そっぽを向いた自分の顔から、サーッと血の気が引いていくのを感じる。

 これは……早くも僕の人生は終了したのかもしれない。

 

 嗚呼、僕の尊厳は終に無くなり、僕は泣き叫びながらあの男の人と同じように精を吐き出すだけの肉人形になるんだろう。

 ははは……

 

 

「……ごめんね、そうだったよね」

「私舞い上がってた。ミコちゃんがこういうの、選ぶ事も出来ない環境だった事くらい、いくらでも察する事なんて出来てたのに」

 

 

 そう考えていると、想像していた流れと違う様子に流れていく。リーベさんの方が何というか、申し訳なさそうに謝って来る。

 遅れて、リーベさんが僕の環境の方に意識がいった事に気がついた。

 

 本当に優しい人だなぁリーベさん。

 その優しさに付け込むようで申し訳ないけどそこに繋げて言い訳をさせてもらうおう。

 

 

「あ、えっとその……だ、大丈夫ですよリーベさん。ほらその、単純に慣れていないってだけですから!だからあんまり気にしないでください、ね?」

 

「……ありがとうミコちゃん。気遣いまでさせちゃったね、私。ふーダメダメ。気持ちを切り替えないと。今まで出来なかった分まで、いっぱいオシャレさせてあげるーって言いたいけど……それはさっきと同じ意味だもんねぇ」

 

 

「ミコちゃん。ミコちゃんはオシャレに興味はあるの?」

 

 

「オシャレに興味は……あるか無いかで言えばあります。ちゃんとありますよ」

 

 

 でも正直、オシャレよりも優先すべき事はあると思う。服なんて寒さを凌げれば何でもいいし。

 それより大事なのは食事だよ。この世界でご飯ってどうなってるんだろう?美味しくなくてもいいから、せめて栄養素の高いものと空腹を満たせる量を食べたい。

 

 というか正直今もお腹空いてるから何でもいいから何か食べたい……お菓子くらいは家から持ち出しても良かったかなぁ。

 

 

 

 でも今これ言ったら、多分もっとリーベさんを悲しませちゃうよなぁ。

 

 

 

「でも慣れていないのは本当です、あと肌を見せるのもちょっと怖い、です。だから身体を覆えるような服がいいです。出来れば薄くない生地の方が嬉しい、です」

 

「ふむふむ。分かった、初めは少しずつ慣らそうね。下着はどうする?フリフリは恥ずかしいんだもんね。なら無地だったり、あんまり可愛い!って感じのとは離れたものからにする?」

 

「は、はい……それでお願いします」

 

「オッケー!じゃあまずは私がある程度候補を持ってくるから、そこから着てみたいものを選んでね!」

 

 

 そう言うとリーベさんは衣裳部屋を駆け巡りながら何着もの候補を取り出して宙に浮かせながら次々と選び始める。

 ……着てみたいものを選んでね、って。

 その言い方だと僕が女の子の服を自ら着たがっているような意味になるんだけど!

 

 恥ずかしい、いや本当に。服なんて何でもいいって考えたのは僕だけどさぁ!

 

 

 

 

 

 

 うぅー、やだー!恥ずかしい、やっぱり女の子の服着るの恥ずかしいよ!!

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