「いったああああ!!」
「う、動かないで……!」
「ごめんよミコ」
「冷たい森」での依頼で目標の引き渡し後、圏域外派のロビーでアン先輩の治療を受けている。再生のポーションが抉れた肩に染みて滅茶苦茶痛い。というか時間経ってアドレナリン?が無くなってきたのかどんどん痛くなる。やっぱ傷は痛いよ。
「これでよし……いち、ううん二時間くらいは安静にしてて。い、いや一日は安静にしててっ!とにかく動いちゃダメ、あと人助けもダメ……!ここで大人しくしててね……!」
「はぁい……」
ぐるぐる包帯が巻かれて抉れた左の肩を動かなくされる。処置が終わったアン先輩は更に動きを封じるために膝に寝っ転がりお腹に抱きついて動かなくなる。
「これは光属性をベースにした再生か、この濃度と質なら三十分で再生出来るんじゃないか?きみの先輩は凄まじい調合の知識と技術を持ってるな、真昼の位階並みの仕事だぞこれは」
「えへん」
お腹から可愛い返事が返ってくる。
「そういえばあの主を神って言ってたけどさ、本当に神なの?」
「分類上は神ではないね。ただ奴が実行可能な行為の中に神でしか為してないものがあるから、神みたいなもの、というのが正確な言い方になるだろう」
「プロトの判定的には神っぽいのでもアウト、と」
「……けほん。あんまり虐めないでくれるかな、まぁアウトだが。特に世界と同化出来るのがダメだ。やろうと思えばあの熊は自分と一体化している土地を幾らでも改竄出来たろうな、奈落の谷なり、より極限環境な極寒なりに」
そんなやばいのに挑もうとしてるとか、やっぱりプロトもどこかネジが飛んでるなぁと思っていたらお腹に頭突きが押し寄せる。
「やっぱりまた危ないことしてた……!」
「ま、待ってください最初はただの遭難者の救助だったんです」
ぐいぐいと今度は横っ腹に頭が突き刺さった。
「いや、アン先輩どうかミコを責めないでください。実はぼくが油断していた所に魔法生物の凶刃が迫り、彼女は身を挺してぼくを──」
「あ、待ってそれ以上は言わなくていいから!?」
誰がどこで盗み聞いているかもわからないので慌てて口を塞ごうとするも、時すでに遅しか。ガチャ、音を立てて扉が開く。そこには笑顔のリーベさんとそれを見て後ろで顔を青ざめさせているフレスノ先輩がいた。
「へぇ、デートなの?」
「ちがっ……」
「身を挺して庇っちゃったんだ〜」
「いやその……お、怒──」
「怒ってないよ」
「り、リーベ先輩。お噂はかねがね──」
「ちょっと黙っててくれる?」
「し失礼しました」
「足が……」
「痺れるね……」
その後、また自己犠牲で誰かを助けようとしたという事でみっちりお説教を受けることになった。僕とプロトはフローリングの上で正座をして無事に足が痺れ、まともに動けるにはまた小一時間かかった。
なお「あんまり自己犠牲させないでね」という注意を受けて付き合ってもいいんじゃない?と、許可?が降りた。デートでもないしそういう仲ではないのだけれど、これ以上口を挟んで蛇を出しても怖いので僕とプロトは引き続き口を噤むのであった。
あまりにも辛すぎてどのルートでも必ず妹を生還させてしまう。