男の娘が魔女になって大変な目に遭う話   作:クエクト1030

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4話「女装に目覚めさせられる」

「持ってきたよ~!どうかな、あんまり女の子女の子してるって感じじゃないのを持ってきたつもりなんだけど!」

 

 

 早々に戻ってきて、リーベさんは持ってきた服と下着を目の前に浮かべた。服の方は僕がお願いした通り、あまり露出の多くないものを持ってきてくれたようだ。

 厚い程ではないけど透ける事もない程度の厚さの生地で、ベージュ色をしているワンピースだったり。あるいは長めのスカートにシャツっていうシンプルな感じの上下が揃ってる。

 

 スカートは……恥ずかしいけど、でもヒラヒラな感じじゃなくて纏まっている……キュロットパンツ?スカート?

 確かそういう感じの名前のパンツに似たデザインで、恥ずかしくないかで言えばワンピースよりもこっちの方がいいかもしれない。

 

 

 

 下着についてはそもそも女子用の下着を身に着けるなんて習慣が僕にはないのですけれど、持ってきてくれたのはこれもベージュ、あとは黒とブラウンの色もある。一個だけピンクのものも混ざってる。どの色も、全体的に装飾は控えめなものばかりだ。

 

 

 

 あと、サイズについてはバラバラ。

 いやまぁ僕のサイズ言ってないし測っても無いもんね。自分でも知らないし。

 

 

 

「い、いっぱいある……」

 

「色は大人しめな色、自然な色にしてみたよ。サイズは分からなかったから幾つか持ってきた感じね、寸法したいけど……人に肌見られるの好きじゃないもんね?」

 

「そう、ですね。ごめんなさい」

 

「大丈夫大丈夫!代わりに下着を幾つか試着してもらって、どれがきついかどれが緩いかって言って貰えればこっちで計算するからさ!……あ、これも気持ち悪かったらごめんね?」

 

「い、いえいえ!お気遣いありがとうございますリーベさん」

 

「えへへ、試着用のボックスはそっち側にあるから、ゆっくり選んでね!」

 

 

 そう言うと手を振りながら一度衣裳部屋から退室してくれる。僕のために服を選んで、絶対に見ないように配慮までしてくれる。

 

 

「……ふー、流石にここまでして貰ったんだから着ないと、ね」

 

 

 べ、別に興味があるわけじゃないよ?髪の毛整えてもらって可愛い服も着たいとかそういう気持ちは無い……そう、無い。ないない……これはリーベさんへの恩返しでもあるんだ、そういう事にしよう。

 

 宙に浮かぶ数着の服と下着を手に取る。いや、実際には掴むとかではなくて、触れようとすると少し弾かれる? 距離が取られる?

 そんな感覚があって、そのまま一定距離をスライドさせると服も移動してくれるのでそうやって持ち込む。

 

 スマホでスライド、スワップ操作するみたいな感じが近いかも。だから一度に大量の服を試着ボックスに持ち込んで……。

 

 

「……ごくり」

 

 

 数年間着回した旧い服と下着を脱ぎ捨てて、全裸になる。

 試着ボックスにも姿鏡はあって……あ、って……。

 

 

「……え、え?」

 

 

 久しぶりにしっかりと自分の身体と顔を見た僕は驚愕する。

 髪型が綺麗に整えられている事自体はさっき驚き済みだ。

 驚き済みって何?

 まぁそれはいいとして、顔と身体つきが変わっていた。

 

 

 

 顔はほっそりとした、女の子らしい目、鼻、口になっている。

 大きさとか位置が変わってるのだと思う。

 

 

 

 元の自分の顔がどんなものだったかは、長い間鏡をまともに見えていなかったから分からない。学校の水道で見ない事もないけど、こんなまともに見る事なんてなかった。

 面影は残してるような気もするけど……とにかく美少女と言っても遜色ない顔になっている。

 

 

 

 身体つきも変わっていて、まぁ下半身にソレ(・・)がある事には変わりないけど、なんというか全体的な骨格が骨ばった感じがしない。柔らかそうな?女性らしい体格になっている。

 

 

 

 肩から腰にかけてが逆三角形と三角形の比率って聞いたけど、男性らしい逆三角形から女性らしい三角形になっている感じって言えばいいのかな。

 

 

 

 ……どういう事だろう。

 

 何これ。

 

 

 

 

 

 

 僕、可愛いんだけど……。

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 無言で白のショーツに足を通す。肌色に近いベージュではなく白を選んだのは……いや、これはあくまでもリーベさんに喜んで貰うためだから。

 見せるわけじゃないけど……でも選んだって事に喜んでくれる、きっと。

 

 

 そうそう、だからこれは僕の意志ではなくて……。

 

 

 

「なんかスースーする……」

 

 

 初めて履いた女性もののパンツは、とてもスースーした。通気性が、良い。そして……そして、とても守られていない感じがする。

 

 はみ出そうな……というか恥ずかしいし変態って感じがして、あっ。

 

 

 

 はみ出る!静まって、お願いだから!!

 

 

 

「あ、あれっ。これどうやって付けっ、んーー!!!」

 

 

 けほん、と咳払いをしつつ次にブラジャーをつけようとする。

 が、思わぬアクシデントが起きる。とりあえず胸の部分をあてがいながら、後ろに手を回してホックを取りつけようとするんだけど……これが難しい。

 

 キツいサイズじゃないんだけど、それでもズレないようにフィットしたサイズって事できちんと後ろに手を回し切って操作しないといけない上に、ホックがある布地部分を伸ばして操る事も出来ない。

 

 そもそもホック自体が小さいから自分の手の位置と今自分が持ってるホックの鉤が、ちゃんと引っかける方に位置しているのかすら分からない。

 

 

「出来た……あ!?違う、これ一段間違えてる!」

 

 

 こんな風に掛けられたと思ったら一段下に引っかけていた、って気が付いて。

 

 

「落ちた……」

 

 

 保持していた手を反射的に話してしまい、ブラジャーが胴から落ちる。

 これを毎日着けてる女性ってすごいんだな……もしかして後ろに目を持っている?

 

 

「ふくくくっっっっ……!!はぁ、はぁ、で、出来たかな」

 

 

 数分かあるいは十数分か、人生初のブラジャーという難解な代物との格闘を繰り広げながら、なんとかこの白のブラジャーに備えられた2対3組のホックの全てを取り付ける事に成功する。

 

 

「……」

 

 

 くるり、と回りながら姿鏡で後ろを確認する。

 いや今くるって回る必要あったか?

 髪の毛が靡いて地味だけど明るい色の下着が髪の毛の下で身体を飾る姿が見えた。

 

 

 

 ………うん。可愛いな、僕。

 

 

 

「けほん。えっと、服、服……」

 

 

 続いてシャツを身に着けてからスカートを履く。

 シャツは野暮ったいわけじゃないけど、これも透けて見えるのをしっかり防いでくれるみたい。

 長袖のシャツで少しぶかっとしているから暑くなったら袖を捲るのもいいかもしれない。

 

 スカートの方はキュロットスカート?で、実際履いてみたら少し薄手のズボンに近い感覚。

 ……何故かちょっと残念な気持ちになったのは何でだろう。

 

 

 

 いや、僕はしょうがなく着ているだけだからね、残念っていうのはやっぱり無し。決して普通のスカート履いてみたかったとかそんな事はない。

 

 

 

「ふむ。」

 

 

 下着、シャツ、ズボンの簡単一式を着終えて鏡を見る。

 鏡には黒髪ロングヘアの美少女が清楚な服装をしている姿が映る。うん、これは誰がどこからどう見たって可愛い。僕可愛いぞ!!

 

 

「……」

 

 

 くるっと回って髪の毛やスカートが靡く感覚をもう一度味わう。

 まずい。癖になるかもしれない。いや、なっているかも。

 ふわっと回って収まる構図が何というか、気持ちがいい。快楽とかそういうのではなくて何というか……そう、気分が上がるんだこれは。

 

 

 

 テンションが上がる、自信がつくみたいな、そんな感じがする。今日は何かいい事が起きそうだなとかそういう感じ。

 

 

 

 

 

 

 まぁ実際は尊厳が破壊されて羞恥心で満たされる波乱の一日なわけなんだけど。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 ガチャリ、と衣裳部屋の扉を開けてロビーに顔を覗かせる。

 

 

「ど、どう、ですか」

 

 

 待っている間にロビーでトランプを始めていた皆さんの手から、一人を除いて全ての手札が零れ落ちた。

 

 

「か、か、か、かわいい~~!!♡」

 

「これは逸材ですよリーベ先輩!似合ってる、めっちゃイイです!!」

 

「か、可愛い……ロリータも似合いそう……」

 

「ほぉ。原石といった所か。いい物を拾ってきたな」

 

 

 一斉に褒められる。嬉しさと恥ずかしさで自分の顔が赤くなっているのがとてもよく分かる。顔が熱い。

 咄嗟に衣裳部屋に隠れたけど、すぐにリーベさんが入ってきて腕を引いてロビーに引きずり出される。うぅぅ。

 

 

「そのカチューシャは自分で見つけてきたの?似合ってる似合ってる!」

 

「えっと……はい。つ、着けてみたいなー……って思って。でも頭が締め付けられて痛いですね」

 

 

 実は何となく似合うかなと思って見つけたカチューシャをつけてたんだけど、こめかみが痛い。これもよく女の子身につけていられるよね。

 

 

「あぁ外す必要なんてないよ!えっと、カチューシャを身に着けても痛くならない魔法……はい!」

 

「あっ、頭が軽くなった」

 

 

 外そうとすると、リーベさんは魔法を唱えて、そうすると途端に頭が軽くなった。え、なんでそんなピンポイントな便利魔法があるの?

 

 

「皆が悩む事だからね、需要ある所に魔法あり!」

 

「ほ、他にもブラのホックを自動で付けてくれる魔法とか、ひ、紐ショーツを自動で綺麗に編んでくれる魔法とか色々あります」

 

「えぇ……?」

 

 

 僕の思っていた魔法って、空を飛んだり炎出したり、あとはワープとかなんだけど。だいぶ日常生活に便利な魔法が普及しているんだなぁ。

 

 

「フッ。これで見苦しくはなくなった」

「次は杖だな。俺たちの派閥には最も必要不可欠。」

 

「魔女なら誰でも必要不可欠ですけどね」

 

「俺は必要としないが。」

 

「ムネメ先輩は例外です!」

 

「杖ですか?でも皆さん持ってないですよね」

 

「それは格納魔法を使っているからです。初授業で教わる事になりますよ」

 

「なるほど?じゃあ初授業っていうのを受けに行けばいい、んですよね?」

 

「そそ!受講はいつでもやってるよ!さーミコちゃん、これも着て──よし。これで晴れて、魔女ミコちゃんの誕生だよ!」

 

 

 リーベさんは僕にオーバーサイズの黒いコートと、とんがり帽子を着せた。

 この部活……派閥のみんな。

 あるいは廊下を歩くみんなが、形を変えても纏っている、魔女としての証。

 

 なんだか多くの人たちの仲間になれたような気がして、僕は意気揚々と初授業に向かった。

 

 

 

 

 

 

 ──のだけれど、僕はそこで魔女の社会という混沌を目の当たりにし、恐怖する事となる。

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