BLUE QUEST 〜青春を駆ける戦士〜   作:松花 陽気

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今回はだいぶ駄文な気がしています。
何か指摘があれば、コメントでどうぞ。

再度編集しました。後半のホシノとルイの邂逅を加筆修正しました。あと、展開を早めるために最後のシーンも変えました。
五月三〇日10:40分

ルイの夢のシーンは、四月ごろ近くをイメージしてます。なので、始発点の進みがそこまでです。そして、始発点制覇後に事故死して転生という流れですね。
お気に入り減っててめちゃ悲しい松花陽気です。コメントだけが、俺のモチベの救い。マジ、投稿するたびコメントしてくれてありがとう!


第十六話:幸福を喰らうモノ

ー―起きなさい。

 

――……起きなさい。

 

カーテンから差し込む光を合図に、そんないつもの言葉が流れてくる。

俺はそれに耳を塞ぎながら声とは反対方向に寝返りを打つ。

 

「さっさと起きなさい!!遅刻するわよ!!」

 

「うわぁーー!!!??」

 

次の瞬間、やかましい程の声量で耳元で怒鳴りつける声により俺は目を覚ました。

 

「全くいつまで寝てるの!学校遅刻するわよ!」

 

「えっ!?もうそんな時間!!?」

 

俺は慌てて時計を見る。

 

「ほら、さっさと降りて来なさい。朝ごはんできてるから、すぐ食べて出れるようにしなさい」

 

「はい!」

 

俺はベッドから飛び出し、せっせと制服に着替え始めた。

俺の名前は瀧本ルイ。もう既に自己紹介したような気がするが、中学三年生である。

 

「あ、おはよう」

 

「……おはよう」

 

2階から降りると、弟と遭遇する。

俺と弟の会話はそれのみ。まあ、だからと言って仲が悪いわけではない。一緒にゲームだってするし、困った時はよく相談にも来る。最近はその頻度も少ないが、まあ俺が受験勉強で忙しいのを気遣っているのだろう。

 

「兄貴、受験はどう?」

 

「ん?」

 

弟がそんな方を聞いてくる。俺の進路を聞くのは、多分自分の未来を考えてのことだらう。だが、正直何も考えていない。だから、どう答えようか悩んだ。でも、何も思いつかないので。

 

「まだ考え中だな」

 

と、返すだけだった。

 

――――――――――――

 

「よぉ類!」

 

「よっす楠雄!」

 

学校に来ると、友達の江川楠雄(えがわくすお)に声をかけられた。俺と「ドラゴンクエスト」の話で盛り上がれる貴重な存在だ。ドラクエは国民的RPGなんて言われているが、今の世代でその深い設定や裏ボスについて語り合える仲間に出会える確率は、はぐれメタルに遭遇するより低い。

 

「そういやお前、新作のモンスターズはやらねえのか?」

 

「俺は根っからのナンバリング派なんでね。よっぽどのことがない限り、外伝には手を出さないポリシーだ」

 

「妙なこだわりだな」

 

「悪かったな」

 

でも、そういう譲れないラインってあると思う。別にモンスターが嫌いなわけじゃない。むしろドラクエ5の仲間モンスターシステムは大好物だし、かつての旅ではゴレムスやピエールにどれだけ救われたか分からない。ただ、某ポケットなモンスターみたいに、モンスターだけで戦わせるのがどうにも落ち着かないのだ。

え? 8のバトルロード? あれは育成というより、その場その場で強い奴をスカウトしてくるプロ野球の補強みたいなもんだから、微妙にニュアンスが違う。

とにかく、俺はナンバリングの「勇者と仲間たちの物語」が好きなのだ。まあ、いつか気が向いたらモンスターズもやるかもしれないけど。

 

「なぁ、話は変わるけどよ。ブルアカの方はどこまで進んだ?」

 

楠雄が声を潜め、オタク特有の早口で聞いてくる。

 

「今、ようやく『あまねく奇跡の始発点編』に入ったところ。そういえば、もう第4章まで配信されてるんだっけ?」

 

「俺はもうガチでクリアしたぜ。涙で画面が見えんかったわ」

 

因みにだがこいつの推しは……ユウカ、ホシノ、ヒナ、ネル、コハル、フウカ、モモイ、アリス、ユズ、セリカ、ミヤコ、サオリ、ミサキらしい。

なんだか危ない気配がするな。

おれ?俺は……セリカ、アヤネ、ユウカ、イオリ、アリス、カリン、ネル、アズサ、アツコ、サキ、ツルギ、サクラコである。

因みに俺たちに最推しはいない。

吾輩たちは、優柔不断な先生である。最推しはまだいない。

 

そんな吾輩は猫みたいな文面は置いといて。

 

「あー!幸せになってくれ!」

 

「なんだよ急に叫ぶな!」

 

「はい」すん

 

「うわぁ!?急に落ち着くな!!」

 

めんどくさい友達である。まあそのノリに乗る俺も俺か……。

 

「つか、誰に言ったんだそれ?」

 

「それはもちろんシ……そういやお前、始発点のどこ行った?」

 

「え?……先生がヴァルキューレに拉致られたところ」

 

「そうか……結構最初だな」

 

と話し込んでいた間に、チャイムの音が鳴る。

 

「と、そろそろ座らんとな。んじゃまたな」

 

「おう」

 

俺たちはそう返しお互いの席に戻り、授業を受けるのだった。

 

□□□ホシノ視点

 

「……お前、なんでルイの名前を」

 

なぜ、黒服がその名前を知っていたのか。私はそれに疑問を浮かべていた。

でも、そういえばこいつは何故か私の名前も知っていたし、こいつがそれを知ってるのは別に不思議ではないと納得した。

 

「なんでと言われましても。……私が彼に接触したからです」

 

「っ!?……まさか、ルイのこの状況はお前の!」

 

「それも違います。確かに私は彼と契約を結びましたが、それはお互いの利害が一致した故のこと」

 

「……なに?」

 

衝撃の事実だった。

あの、少し抜けていて、でもどこまでも真っ直ぐで優しいルイが、こんな不気味な大人と契約を交わしていたなんて。信じていた。ルイのことだけは、完全に信じきっていたのに。裏切られたような、置いていかれたような、ドス黒い感情が胸の奥からせり上がってくる。

 

「私がここに来た目的は、ルイさんとの契約で交わした約束を果たすため……ですが、今のルイさんは非常に不味い状態です」

 

「……どういうこと」

 

黒服の口から心配のような言葉が出る。だが、その言葉には優しさというものは感じられず、奇妙に興奮を露わにしていた。非常に気持ち悪くて気分が悪いが私はそれを聞くことにした。

 

「ルイさんの状態は今、非常に危ういです。説明不能な禍々しい概念的な気の籠った、恐怖(テラー)に近しい力が働いているようです。私でも説明不能な非科学的な力が作用し起こった事」

 

黒服の言ってる意味がわからない……でも、何かの作用でルイがこの状態に陥った事は少なくとも理解できた。

 

「事実としてわかるのは、これくらいですかね。私はこれからも彼と契約を続けたいのです。故に、彼を起こす為ここに参りました」

「どうですか?これで理由になりましたか?」

 

「…………ルイが交わした契約ってのは?」

 

「……私がそれを話すとでも?」

 

「っ!」(すちゃ)

 

即座に拳銃を出し、奴の顔面スレスレに向け発砲する。これで少しは、話す気になると思っての発砲だった。でも、黒服は今も余裕そうに口元のヒビを不気味に歪ませて笑っている。

 

「…………余裕がありません。私の契約のためにも、ここは話しましょうか」

 

黒服は少し考え込んだ後、納得したようにそう答えた。急に承諾した黒服に私は逆に困惑した。

 

「何を不思議がっているのですか?ルイさんからは別に口止めはされていませんから、私が話す事に違和感はありませんよ?それよりも、一刻も早く私は彼を救いたいのです」

 

「な……んで」

 

「時間が惜しいです。向かいながら話してもよろしいですか?」

 

「…………わかった。でも、少しでも怪しい動きをしたら撃つから」

 

「……わかりました」

 

そうして、私は黒服の前を歩きルイの元へと連れていく。正直、聞きたい事、確かめたい事、不安な事はたくさんある。……だが、黒服は先ほどルイが危ないと言った。それもいつものあいつらしくない焦った感じで……。それだけルイが危険なのだとわかりやすく伝えていた。迷っている時間はない。だから、私は黒服のそれに乗る事にした。黒服はルイと交わした契約を話しながら進んでいた。

黒服から聞いた事は、ルイがとある情報を受け取るのと引き換えに、ルイの持つ珍しい品をルイの一人で月に一度だけ渡すという物。たったそんだけだと言われた。ルイが持ってる品は時々不思議なものばかりだ。それにアイツが興味を持つのは納得というものだった。まあ、ルイと黒服の契約は、正直どうでもいい。私はただ、ユメ先輩を救えたらそれで……それだけでいい。そのために、ルイを使う。だから、起きてもらわなくては……。

 

しばらく歩いて、黒服と私はルイのいる教室に入った。そこにいるゲレゲレやスラりんが、突然現れた黒服に威嚇する。私はそれを宥めながら、黒服にルイのことを見させた。なにか怪しい動きがないか見ながら。

 

「ふむ。体は至って普通のようですね。ですが不思議です……一ヶ月も眠っているのに何故ここまで正常なのでしょうか?」

 

振り向いて私にそう問う黒服。

 

「定期的に水を飲ませていたんです」

 

「水……ですか?」

 

「……はい」

 

そいつは、何とも不思議そうに顎に手をやり考え込む。だが、私は奴の思う疑問に興味はなかったため、それを遮るように問いた。

 

「それで、ルイはどこが悪いですか?体は正常なんでしょ?だったら、どう危険なのさ?」

 

「…………未だ完全に解明できていない事象ですので、詳しくは語れませんが。……呪い、という言葉を聞いたことは?」

 

「……呪い?」

 

「ええ。科学では説明のつかない、負の因果。ルイさんは何者かによって『精神の深層』に取り憑かれ、呪われている状態にあります。オカルト的な表現を使うなら、幽霊に取り憑かれている、と言った方が伝わりやすいでしょうか」

 

幽霊。呪い。その現実的ではない単語に、私の頭の中の疑問符は増えるばかりだった。けれど、目の前で眠り続けるルイの奇妙さが、それが紛れもない事実だと物語っている。

 

「その呪いを、このまま放っておいたらどうなるの」

 

「恐らくですが……魂を喰われ、肉体もろとも、死に至るかと」

 

死。

その決定的な単語に、息が止まりそうになった。あのルイが、死ぬ?

魂を喰われるという現象のシステムは理解できなくても、それが取り返しのつかない終わりを意味することだけは分かった。

 

「それって、治せるの?」

 

「方法はあります。ですが、正直に申し上げて賭けといっても過言ではない。とはいえ、迷っている時間がないのも事実」

 

「っ……だったら、その方法を教えなさいよ!」

 

「簡単ですよ。……『呪いの素』を、直接叩くだけです」

 

「つまり、倒せばいいの?」

 

「えぇ」

 

あまりにもあっさりと方法を提示する黒服。何かの罠ではないか、こいつの思い通りの展開に誘導されているのではないか、という疑念が頭をよぎる。だけど、今ルイを救う手立てを持っているのは、世界中でこの不気味な黒い影だけだ。

 

「じゃあ、その素はどこにいるの?」

 

「それは――」

 

黒服は、長い指をすっと伸ばし、眠るルイの胸元を指し示した。

 

「彼の中です」

 

「………え?」

 

「ルイさんが深い眠りに落ちる少し前、私は彼と接触していました。彼が去った後も観測を続けていたのですが、その直後だったのですよ、彼が何者かに『侵食』されたのは。……いやはや、あのビナーを相手にあれほど見事な戦いを見せた彼が、まさかこのような搦め手で足元をすくわれるとは! クックック、実に興味深い……!」

 

「……おい」

 

「おっと、話が逸れましたね。とにかく、彼の精神に異常を検知した私は、すぐに専用の測定器で調べ、この結論に至ったのです」

 

「……分かった。事情はもういい。ルイの中にそいつがいるとして、どうやってそこに行くのさ」

 

すると、黒服は歪んだ空間から、一つの『物体』を取り出した。

だが、それを見た瞬間、私の顔から緊張が消え、代わりに怒りが沸き起こった。

黒服が出したのは、深皿のようなアルミホイル二つを、連結して作った子供の工作みたいなモノだった。馬鹿にされてるようで血が昇ってくるが、ここで暴れればルイやゲレゲレ、スラりんに被害が及ぶため深呼吸して我慢を促す。

 

「なに……それ?バカにしてる?」

 

「至って真面目です。これを使い、ホシノさんにはルイさんの深層意識に入っていただきます。本当はしっかりとした機器を作りたかったのですが、時間がなかったため、このようなものになりました」

 

「それってさ、私も寝るってこと?」

 

「……はい。そんな顔をしなくても、何も致しません。ここで誓約書を書いても構いませんが?」

 

「……いや、いい」

 

今は書いてる時間も惜しい。さっさと始めよう。ルイからも色々と聞きたいことがある。黒服が話した契約だって、きっと全部ではないだろうし話した全部が真実じゃない可能性だってある。起きたら、絶対問い詰めてやるし……眠ってた分ユメ先輩を探すのも手伝ってもらいます。それで……黒服の件についてはひとまずチャラにしてあげますよ。だからーー

 

「……絶対に、死なせませんよ」

 

「それでは、隣に寝てください」

 

「そういえばだけど……私今は眠くないんだけど。どうやって寝ればいいの?」

 

「これを使います」

 

黒服は、紫色の百合の花のようなものを出し見せてくる。

 

「それは?」

 

「これは『ゆめみの花』と呼ばれるものでして。ここから放たれる甘い花粉が、あらゆる精神を深い眠りへと誘うのです。芸術を愛する私の友人が、快く譲ってくれましてね」

 

黒服の世間話など耳に入らなかった。やるなら、さっさとやってほしいんだけど。

 

「では……行きますよ」

 

黒服が花を軽く振ると、甘く、どこか懐かしい香りが鼻腔を満たした。

それを吸い込んだ瞬間、急速に意識が引き剥がされていく。ここ数日、まともに眠っていなかった身体の疲労も手伝って、私の意識はあっという間に底のない暗闇へと落ちていった。

 

□□□

 

次に目覚めたのは、どこともわからぬ町の中だった。さっきまで夕方過ぎくらいだった世界には、朝日が登っており、空を見上げるとそこにあるはずの降臨がない、とても澄んだ青が広がっていた。

 

「ここは、いったい?」

 

通り過ぎる人達を見ると、頭上に光輪のない私とあまり変わらない人間が歩く。自分の頭上を触るが、私のヘイローはいつも通りそこにホログラムのようにある。だけど、周りの景色があまりにも異質だった。ヘイローを持たない人々が、当たり前のように生活している。私の住む世界と酷似していながら、決定的に違う世界。

 

とにかく、歩き出してみる。たくさんの家々が並ぶ町の中を、私はただひたすらに歩き続ける。しばらく歩くと、一際目立つ私たちと似た形の校舎を見つける。

ちょうど下校時間だったらしく、門からはたくさんの生徒たちが笑顔で溢れ出てくる。

 

その人混みの中に――私は見つけた。

 

「ルイ――っ!!」

 

私は全力で駆け出し、その名前を叫んでいた。

 

□□□

 

「!?」

 

突然、背後から突き刺さるような高い声で名前を呼ばれ、俺と楠雄は同時に足を止めて振り返った。

校門を出てすぐの交差点。そこに、息を切らせて立っている女の子がいた。

鮮やかなピンク色のショートヘア。どこかの学校の制服らしきものの上に見慣れないベストを羽織っている。髪も目立つが、何より目立ったのはその左右で違う青とオレンジ?のオッドアイ。その中学生くらいだろう僕と同じ身長の小柄な彼女は、今にも泣き出しそうな、それでいて心底ホッとしたような、けれど一歩引いたそんな複雑な目でまっすぐに俺を見つめていた。

 

「類、誰だ?」

 

楠雄が肘で俺を突っつきながら、ヒソヒソ声で聞いてくる。

 

「……さあ? 見覚えがない、と言いたいところだけど……」

 

不思議だった。こんなに目立つ美少女だ、一度でも会っていれば忘れるはずがない。現に、俺の記憶の引き出しには、彼女に該当するデータは一切存在しなかった。

 

「ルイ。やっと見つけましたよ!さあ、早く帰りましょう」

 

突然そんなこと言う少女に、俺達は困惑した。

 

「ちょっと待て!?帰るってどこにだよ!俺の家はあっち方向なんだぞ!?」

 

「知りません!あなたには聞きたいことが山ほどあるんです!黒服のことも全部!なのでさっさと来てください!」

 

袖を引っ張り連れて行こうとする少女に俺は抵抗するも、引き摺られる形で引っ張られていく。それを止めたのは、友人の楠雄だった。

 

「おいこら!類に何やってんだお前!誰かしらねぇが離れろって!」

 

「……なんですか?私の邪魔をするつもりなら、容赦しませんよ?」

 

とんでもない殺気が楠雄に向けられる。あれは本当に、ガチでやる気の目をしていた。だが、楠雄はそれにビビることなく俺とその子を離した。俺たちはそいつを警戒し、睨みつける。目の前の女の子は、なぜそんな目を向けられるのか不思議そうな顔をしていた。

 

「ルイ?……何をしているんですか?」

 

「お前が何してんだよ?急に現れて、急に連れて行こうとして、何がしてぇんだよ!」

 

楠雄が声を荒げて言う。アイツがここまで言うのは少し珍しいなと思いながら女の子の方を見る。

 

「何って……私はただルイを助けようと」

 

「何から助けんだよ?こんななんの危険もない世界で、何から助けようって言うんだ?」

 

「っ……!?それは……」

 

それを言おうとして、彼女は言い淀んだ。少し考え込んだ後、女の子が俺の方を見る。

 

「……ルイ、単刀直入に言います」

 

そして、こう言ったのだった。

 

「私を……ユメ先輩を助けてください!」

 

もはや、ヤケクソのようなその頼みに、俺はただ疑問符しか湧かなかった。だが、それも当然だ。助けに来たと言った、何も知らない人間に急に助けを求められているのだから、意味がわからないと思うのは必然だ。

なのに――なぜだろう。彼女の視線を受け止めた瞬間、胸の奥が締め付けられるように痛むのだ。放っておけない。放っておいてはいけないと、俺の何かが囁いている。

気づけば、俺は一歩、彼女の方へと足を進めていた。

 

「ええっと……君は誰かな? 俺に何か用?」

 

絞り出した第一声は、我ながらあまりにも素っ気なく、残酷なものだった。だけど、本当に知らないのだから仕方がない。ナンパと間違えられたら困るし。

 

「な、何を……私です!ホシノですよ!小■遊ホシノ!」

 

「……ほしの?う〜ん。ごめん、やっぱりわかんないや」

 

「……え?」

 

少女の顔が深刻なものへと変わる。

 

「あっ……嘘、だよね?わた、しのこと……覚えてないの?」

 

みるみるうちに彼女の大きな瞳に涙が溜まっていく。

すると、追い打ちをかけるように楠雄が言葉を続けた。

 

「泣いたら助けてくれると思ってんのか?そもそも、そのユメ先輩がいなくなったのも。……元はお前のせいだろ?」

 

「楠雄!……話も聞かずに決めつけるのはよくないぞ!」

 

やばい、楠雄の一言でガチで泣きそうになってんだけど。ナンパの拒絶どころの騒ぎじゃない。俺は慌ててポケットを漁った。

 

「えっと、ごめんな君!普段楠雄はあんなんじゃないんだけど……泣かすつもりはなかったんだ! あ、そうだ、これあげるから機嫌直してくれ!」

 

差し出したのは、カバンにぶら下げていたガチャガチャの景品――『スライム』のラバーキーホルダーだった。この前、雑貨屋で見つけてテンションが上がって2回回して買ったら、かぶってしまったのだ。

これでドラクエの魅力に目覚めてくれれば一石二鳥、という俺の下心が透けて見えるチョイスだった。

 

「お前なぁ……ドラクエ分からんやつにそれ渡してどうすんだよ」

 

楠雄の呆れ声を無視して、俺はそれを手渡す。

ピンク髪の女の子は、手のひらに乗せられた青いぷにぷにとした物体を、涙目のままじっと見つめた。

 

「これ……スラ……りん……?」

 

その瞬間、俺の脳内に電流が走った。

「スライム」ではない。ドラクエ5の、あの記念すべき最初の仲間モンスターにデフォルトで付けられる、ファンなら誰しもが愛着を持つあのニックネーム。

 

「えっ!? 君、スラりんを知ってるのか!?」

 

「えっ!? あ、はい……そう、ですが……?」

 

彼女は俺の豹変ぶりに困惑しながらも、小さく頷いた。俺は歓喜に震え、一歩距離を詰める。

 

「やっぱり! 君もドラクエファンだな!? 俺には分かる、分かるぞ! いいよなドラクエ! あの王道ファンタジーの世界観、最高だよな!」

 

「そ、そうなんですか……?」

 

困惑を深める彼女に構わず、俺は熱弁する。

あまりの勢いに少し萎縮するホシノと言う少女に俺は間髪入れず話しかける。

 

「あ、えっと……ん?」

 

ふと、ホシノが俺の胸元を見て不思議そうに見ていた。

 

「ルイ、その首飾りは?」

 

「え?首飾りなんて俺してな……い?」

 

言われて首元を見ると、確かにそこにそれはあった。見に覚えのないその十字架のネックレスに手を取り、不思議そうに眺めてみる。あまりに綺麗な装飾だったので、まじまじと見ていると急に頭に大量の情報が流れ始めた。

 

「うっ…………!!」

 

「っ!!しまった!!」

 

楠雄?が何か言っているがそれどころではなかったため、耳に入ってはこなかった。ふと、十字架の側面部分に小さく掘られた文字を見つける。

そこに書かれた名前を、俺は反射的に読み。

 

――サクラコ

 

俺はそこで、全てを思い出した。

 

「っ!……サクラコ!!」

 

瞬間。……世界が崩壊し、俺たちは暗闇の底へと堕ちていく。

 

「「うわぁぁーー!!!??」」

 

[くそ!しくじった!後もう少しだったのに!」

 

堕ちながら、楠雄の姿をした奴がノイズのように体を崩し、その本性を露わにする。

 

[幸せな夢で満たされた貴様を美味しく頂こうとしたというのに!]

 

突然、地面に体を叩きつけられる。暗闇ばかりの世界で、ようやく床に立ち上がる俺たち。

 

[もういい!ここでそこの小娘諸共!喰らうてくれるわぁー!!!]

 

・『ゆめにゅうどう』が現れた!




高評価と感想、ここすき、など良かったらお願いします!励みになります。

ルイの友達
○江川クスオ
 同じドラクエ仲間でナンバリングを全制覇済み、モンスターズやアプリゲーも嗜んでいる。ブルアカもやっている。だが、このクスオは悪魔で夢の世界のルイの記憶から生まれたモノで、クスオ本人ではない。そして、この夢を見せている存在により都合の良いように、この男には目の前のホシノがホシノとして認識できないようになっている。そして、ルイもまた同様に認識阻害を受けており、名前を聞いてもホシノと言う名前に少しピンとくるものの、答えに辿り着かない。

後半のホシノの泣くシーンが納得行かなくて変えました。

○ゆめにゅうどう
 通常ゆめにゅうどうは、こってり?とした夢を好むらしいが、基本的にどんな夢も選り好みはせずなんでも食べるのだが。このゆめにゅうどうは、少し異なり甘ったるい幸福、幸せの夢を好む。そして、取り憑いた者の夢と共に、魂を食い力をつける特殊個体だ。

特殊演出としてドラクエのコマンド戦闘をするか?

  • コマンド式描写
  • 通常通りのリアルファイト描写
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