さあやってまいりまいりまいりました!
お待ちかねなのかわからないけど、錬金釜クッキングのお時間です!今回のゲストは、アビドス高校からユメ先輩とホシノです!
「よろしく〜!」
「……どうも」
いやぁ、二人とも楽しそうですね!
「いや、まずなんなんですかこれ?」
ちょっとしたお遊び的なコーナーさ。
「いや、どういうことです?」
「まあまあホシノちゃん。とにかくやってみよう、それで何を作るの?」
作るものが決まってるんじゃなくて、あれこれ混ぜたら何が出来るかなを検証するためのコーナーだよ。いわば、実験室的な?
「?……なるほど!」
それでは、今回混ぜる品を紹介!
『おおきづち』
『ヘビーメタル』
今回はこの二品を入れてみようと思います。
因みにヘビーメタルはこの前のD.U地区の宝の地図探索中にゲットしました。
「誰に言ってる——」
さあ入れてみましょう!!
ヒョイ!カポ!
ポコポコポコ!!
むむ!何か出来そうだな。それでは、また次回!
「頼む!私に君を調べさせてくれ!!」
「イヤですよ!? そんなのワタシをブンカイしますってイってるようなもんじゃないですか!!?ダレがそれをノゾむんですか!?」
「私が望んでいる!」
「ブンカイされるガワのワタシがイヤなんですよ!!」
「大丈夫だ。悪いようにはしない。ただ少し内部構造や動力源を知りたいだけだ」
「だから——」
「いや——」
「……………………」
かれこれ小一時間、アイツらは不毛な問答を続けている。何をやってるんだ一体。
とりあえず、突然押しかけてきたロマンチスト系エンジニア——白石ウタハのメカニックに対する異常な情熱をどうにか宥(なだ)めた後、なし崩し的に彼女も踏まえての作戦会議が始まった。
と言っても、やることは至ってシンプル。この廃墟のどこかに潜んでいるであろう親玉を倒す、ただそれだけだ。仮に黒幕が存在しなかったとしても、あのマシン達を従えている電波の発信源を破壊できれば問題は解決する。
しかし、この廃墟はとにかく広い。広大な敷地もさることながら、地上に立ち並ぶビル群だけでなく、複雑に絡み合った地下通路まで伸びているらしい。そのあたりのルート策定はミレニアムの彼女たちがナビゲートしてくれるというので、素直にお任せすることにした。
「となると……これは耐久戦になりそうだな」
「イタしカタないかと」
「だよな〜」
「なんだ、弱気になってんのか?」
「いや、そういうわけじゃないけど……」
「やるって言ったのはお前だ。今更逃げんのは無しだぜ?」
「そりゃもちろん」
だが、この広大かつ未知のエリアに何の準備もなく突入するのはあまりに早計だ。
というわけで。
「バァ〜〜〜ン!!」
掛け声と共に、俺は『錬金釜』を取り出した。
「「「「……ん?」」」」
全員の視線が、突如として空間から出現した年季の入った大きな釜に集中する。ウタハあたりに見せたら絶対に食いついてくるだろうとは思っていたが、隠すのも面倒だし、もうそのまた説明した方が早いと判断したのだ。
「……なるほど。にわかには信じ難いけれど、そんな都合の良い道具が存在するのね」
リオが顎に手を当てて呟く。
「錬金術……山海経(せんかいきょう)にそのような名前の部活があると噂に聞いたことがあります」
チヒロが思い出したように言葉を添えると、ヒマリが「ああ」と頷いた。
「確か、その部活の生徒が矯正局へ送られたと、以前クロノスニュースで報じられていましたね」
(……それって後の『七囚人』とかじゃないだろうな?)
妙な胸騒ぎがしたが、余計な藪をつつくのはやめておこう。
「流石にそいつとは関係ないですよ?……というか、まず山海経ってなんですか?」
白々しく知らないふりを決め込む。実際、“この時代の山海経”の詳しい内部事情なんて俺は知らないのだから嘘は言っていない。
一旦山海経のことは置いておき、改めて釜の前に立った。一同の視線が、俺の手に握られた二つの素材に注がれる。
「まあ、百聞は一見に如かずだ。早速こいつの凄さを見せてやろう」
言いながら、俺は『薔薇の鞭』と『蛇のぬけがら』を釜の中に放り込んだ。
……本当は『皮の鞭』と『うろこの盾』を合わせるのが正しいレシピなのだが、名前に“蛇”が入っているしワンチャンいけるんじゃないかという半ば賭けだ。駄目だったら素直に薬草でも練り直そう。
数分後——。
パカンッ!!
『皮の鞭』を手に入れた!
(てれてってって〜〜〜♪)
軽快なファンファーレが鳴り響く。
「とまあ、この通り! 」
予想は外れたが一応成功はしたし、これはこれでいいだろう。それに『うろこの盾』も持っているので後で錬金しよ。これで蛇皮の鞭も作れるとなれば、ゼシカの『双竜打ち』を覚えたら一気にメインウェポンになるから、『はやぶさ斬り』覚えるまではこれを使ってもいいかもな。
と、一人で納得している俺の横で、科学者二人の目が爛々と輝き始めていた。
「これは……! なんと興味深いのでしょう。通常であれば精緻な加工に相応の時間を要する代物を、たった数分で再構成してしまうとは。……あぁ、この超天才病弱薄幸清楚系美少女ハッカーの私を、ここまで興奮させるとは……!」
「ああ。組み合わせ次第で何ができるか分からないという再現性の不明瞭さ……実にロマンがあって素晴らしいじゃないか。……ぜひ、色々と実験させてほしいね」
二人の瞳に宿る怪しい光と、隠しきれていない好奇心と探究心が露わになる。発明者故の本性を察知し、咄嗟に釜を抱え込んで警戒する。
「……あげないからね?」
「そうか。……では」
「量産もさせないし、そのための分解調査も絶対にさせない!」
「……ふむ」
先回りして釘を刺すと、それまで静観していたリオが前に出た。その瞳は冷徹に俺の意図を見抜いた。
「……それは、“不可能だから”かしら?」
「そうは言ってないけどさ。……できるとも言い切れないんだよ。万が一分解して、元通りに直せなくなったらどうする?」
一点物の特別な重要アイテムを解体され、結果「直せませんでした」なんてことになったら、俺は一生彼女たちを恨む自信がある。嫌いにまでは多分いかない……と思う。
要するに、不安なのだ。分解された結果二度と使えなくなり、これから先の装備作成や回復手段を失うことを俺は恐れている。だから安易に頷くわけにはいかないのだ。
それに……仮に完全模倣に成功して量産されたとしよう。それがカイザーグループのような連中の手に渡ったらどうなる? 兵器の量産どころか、もっと危ないナニカを作り出される危険性が大いにあるのだ。
「という理由だから、こればかりは絶対に貸せない。理解してくれた?」
「……しょうがない。非常に惜しいが、そこまで理詰めされれば手を引くしかない」
どうにか納得してもらえたらしい。俺は安堵の息を漏らした。
「よし! それじゃあ本来の目的、攻略用のブツを作るとするか」
「何をお作りになるのですか?」
「回復アイテム……まあ、薬的なやつだよ」
「ほう、薬品の調合まで可能なのか」
彼女たちと話し込みながら、釜に『薬草』を二つ投入する。完成までの時間潰しも兼ねて、俺たちは作戦の最終調整を行いつつ、思い思いの時間を過ごすのだった。
その夜。
今日泊まることになったミレニアムの寮の一室を借り、俺は寝る前に“とある人物”へ電話をかけることにした。
プルプルプル……ピッ!
《もしもし?ルイ、ですか!? あぁ……やっと出てくれました!》
予想通りの反応だった。
電話の相手はサクラコだ。実は、俺がアビドスで一ヶ月の眠りから覚める一週間ほど前から、彼女から鬼のように着信がかかってきていた。それに気づいたのは、D.U地区のネットカフェでスマホを充電し、何気なくモモトークを開いた時だった。
(ん? アビドスで充電した時に気づけたろって?)
……いや、そこは遠慮しちゃったんですよ。アビドスも苦しいのに電気を無駄遣いするわけにはいかないし、道具袋アプリを維持するための最小限の充電しかしていなかったから、メッセージアプリまで確認していなかったのだ。
「びっくりした……うん。サクラコ様、連絡が遅くなってごめん」
《ご無事だったのですね。いつまで経っても繋がらず、ずっと心配しておりました。大丈夫ですか? どこかお身体に異常はありませんか?》
電話越しでも分かるほど、彼女は今にも泣き出しそうな声音で、安堵と心配を入り混じらせていた。俺は努めて穏やかな声で彼女を落ち着かせ、泣き止むのを待った。彼女の呼吸が整ったのを見計らい、改めて事情を説明する。
「うん。実は……とある魔物の呪いみたいなもので、一ヶ月ほど眠りこくっちゃっててさ」
《一、一ヶ月も……!? 水も食べ物も摂らずに……!?》
「いや、流石にそれはね。前に話したアビドスのホシノって子が、定期的に水を飲ませてくれてたらしくてさ。しかもその水、飲むと凄い体が元気になる、洞窟で見つけた特別な物なんだけど」
《そんな不思議な霊水が……。その方のおかげで、今のあなたが生きているのですね。ということは、ルイはまだアビドスに?》
「いや、今はミレニアムにいるよ」
《ミレニアムですか。……あの、目覚めたのはいつ頃で?》
「ん〜〜っと……一週間以上前かな」
《一週間……ルイ?》
「……ん?」
突如として、電話越しだというのに周囲の空気が凍りついたような錯覚を覚えた。
《……なぜ、真っ先に私へ折り返していただけなかったのですか?》
「あの……もしかして怒ってますか?」
《これが怒ってないように聞こえますか?》
あ、これアカンやつだ。
そこからの数分間は地獄だった。「どれほど心配したと思っているのか」とか、「目覚めたのなら一言だけでも連絡してほしかった」とか、「音信不通の間にどれだけの不安に苛まれていたか」——サクラコは静かな怒りを込め、俺に説教をして正座させた(電話越しだが)。
《はぁ……あなたという人は……》
「はい。大変申し訳ありませんでした」
《……まあ、私もシスターフッドの公務で忙しく、四六時中端末を確認できるわけではありません。ですが、一ヶ月も生死不明だったのです。生きているなら、一言でも報せてほしかったのです》
「うん。本当にごめんなさい」
《ところで。次はいつ、こちらへ戻っていらっしゃいますか?》
「へ?」
話の唐突な転換に、素っ頓狂な声が出る。
《ですから……その。……久しぶりに、お会いしたいと思いまして》
少し照れを含んだ、甘く囁くような声音。そのギャップに胸が跳ねる。可愛すぎて普通に惚れてしまいそうだ。
だが、会いたい……か。
アビドスの件で多大な心配をかけてしまったのは事実だし、ミレニアムの件が片付いたら一度彼女の元へ顔を出すのも悪くない。それに、ハントのことも紹介しておきたいしな。
「今、ミレニアムでちょっとしたトラブルの解決を手伝っててさ。詳しい内容は他言できないんだけど……これが終わったら、絶対に会いに行くよ」
《っ!……分かりました。では、楽しみに待っていますね。帰ってくる日は、必ず事前に連絡をください!》
「うん。それじゃあ、明日は早朝から動くからそろそろ寝るよ。おやすみ、サクラコ」
《ええ、おやすみなさい。ルイ》
通話を切り、ベッドの上に倒れ込む。
ふー……なんだか、遠距離恋愛中のカップルみたいな会話だったな。一切そんな意図はないはずなのに、一人で顔が熱くなるのを感じた。次に会ったらどこへ行こうか、なんて柄にもなく考えながら、俺は深い眠りについた。
□□□翌日
早朝。
俺、スラりん、ハント、そしてネルの4人は、機械兵の根城となっている巨大な廃墟群へと向かった。ヘリを使い、廃墟の中でも一際高い高層ビルの屋上へと降り立つ。
《それじゃあ、作戦の最終確認を行うわ。準備はいい?》
インカムからリオの声が響く。近くには彼女が操作するAMASドローンが浮遊し、こちらの様子を監視していた。俺はドローンに向かって頷いて見せる。
作戦内容はこうだ。
まず最初に敵数を減らし、その後にこの広大な廃墟群の地下空間を調べ尽くす。
……半径1キロメートル以上に及ぶ広大な廃墟群から地下通路の入り口を探すなど本来なら不可能な難業だが、ミレニアムの技術陣が事前に絞り込んでくれていた。
———回想———
チヒロとウタハが運転するヘリコプターに乗って廃墟群に向かいながら、ドローン越しにリオとヒマリの声を聞きながら作戦を確認する。
《私たちがあらかじめ地下通路が存在する建物をスクリーニングしておきました。その中で、あのマシン達の出入りが異常に頻繁なポイントだけを抽出しています》
《特に出入りが激しいのはこの四箇所よ》
ヒマリとリオが示してくれたホログラムマップ。
その四箇所の場所を表示する。廃線となった地下鉄の入り口が二箇所。この場所は、どちらも大きく離れた位置にあるが、元々は線路で繋がっていたらしく、現在は崩落した瓦礫で分断されているという。
次に、巨大なショッピングモールの地下。ここの上層階には、鳥型のマシンが多数巡回しているのが目撃されている。
そして最後は、最も損壊が激しい自治区の外れ。ここは前述の三箇所からそれなりに離れており、マシンの出入り自体は最も少ないが、時折謎の高エネルギー反応が観測されるらしい。
《まずは一番機体数多いこの高層ビルから侵入し、そこから随時、地下鉄跡地と高エネルギー反応ポイントへ向かうわ》
《敵が送る電波を断つのが最終目的ですが、司令塔が存在する場合、潜入直後に一斉に挟み撃ちにされる危険性があります。まずは各エリアの敵戦力を削ることを優先してください》
———回想終わり———
これほど広大なエリアから短時間で目標を数箇所にまで絞り込むとは、流石はキヴォトス最高峰の頭脳が集うミレニアムだ。敵に回したら恐ろしいことこの上ない。……まあ、直接的な戦闘力だけならネルさん以外には負ける気はしないけれど。
そんな軽口を心の中で叩きつつ、俺は表情を引き締めた。
「よし。さっさと片付けるぞ!」
「おー!」
掛け声と共に、俺たちは屋上から階下へと侵入を開始する。
ビル上層からの隠密侵入……なんだかドラクエ4のライアン編に出てくる『湖の塔』を思い出すな。
《気をつけてください。このモールの警備マシンは鳥の形状をしています。『プロトキラー』とは異なる初見の敵です》
《ネル、あなたも十分に注意して》
「わぁってるよ」
少し煩わしそうに、けれど目は一切の油断なく周囲を警戒しながらネルが頷く。流石はミレニアム最強のストライカー。一年生にして潜り抜けてきた修羅場の数が違う。愛用の二丁サブマシンガン『ツインドラゴン』はいつでも火を噴ける状態だ。
《鳥のように羽ばたき飛行するマシン……か。ふふ、実に興味深い。機械でありながら生物の飛翔プロセスを模倣しているなど、好奇心が刺激されるね》
『ウタハ、落ち着きなさい』
「マスター、油断は禁物デスよ」
「ん? まあ大丈夫でしょ」
だって、その鳥型マシンって要するに『メタッピー』でしょ? ドラクエ8とかだと序盤の洞窟に出てくる、ちょっと守備力が高いだけの雑魚モンスターだ。そんな奴らに後覚をとるほど俺たちは弱くない!
「……ハァ。なるほど、これはスラりんもクロウしますね」
「????」
「おいハント、何ゴソゴソ喋ってんだ?」
「いえ、ナンでもありません」
ハントが呆れたように誤魔化すので、問い返そうとした瞬間、ネルさんに呼ばれたため俺は思考を切り替えて走り出した。
「リオの話だと、この階を降りた先から鳥のマシンがウヨウヨ散らばってるらしい」
「……まじか。ちなみに、鳥ってどんな色だ?」
《映像データでは、黒と赤のカラーリングの個体しか確認できていないわ。あれも戦闘用なのかしら?》
「えぇ。あのエイリなツバサはコウテツセイで、ジュウダンのようにムスウにハナてます。キれアジがスルドいのでチュウイを……」
「了解。ま、やることは変わんねえな。片っ端から叩き潰せばいいんだろ?」
「そのとおり。というわけで、一気に行こうか! こんなところで立ち止まってても意味ないし!」
俺の提案にネルさんがニヤリと不敵な笑みを浮かべ、全員で同時に下の階へ飛び降りた。ちなみに俺たちがいたのが4階、目標の敵グループがいるのは3階だ。
——メタッピーの大群が現れた!
吹き抜けのフロアに降り立った瞬間、視界を埋め尽くすメタッピーの群れが一斉にこちらを捕捉し、視界に納める。
「ハッ、言ったそばからお出迎えかよ!」
ネルさんが颯爽とツインドラゴンを構え、群れに向けて掃射を開始する。激しい銃声と共に大量の弾丸が放たれ、狙い違わずメタッピーたちの装甲を貫いていく。やはり所詮は雑魚モンスター、キヴォトスの生徒の火力の前には脆い。
「おいおいどうした!? 骨がねえじゃねえか、あぁ!?」
「ネルさん、アレに骨は無いよ」
「ちげーよ! そういう意味で言ったんじゃねえ!」
「ナイスツッコミ!……おっと!?」
キンンッ!!
即座に掲げた『鉄鍋の蓋』が、飛来した鋼鉄の羽を弾き返す。ちなみに、戦闘開始と同時にスラりんから『スクルト』の補助魔法をかけてもらっている。そのスラりんはというと——
「すぅ〜らぁ!!」
口を大きく開け、豪快に『火の息』を吐き散らしていた。機械の装甲が熱で歪み、黒煙を上げて落ちていく。ハントも負けじと、上半身をコマのように高速回転させながら群れの中へと突撃していった。
「っつかお前、その盾なんなんだよ!? なんでただの鍋の蓋でそれ防げてんだ!?」
「知らねえよ! これもあの錬金釜で作ったやつだから、構造の頑丈さが違うんだろ! と、オラぁ!!」
迫り来るメタッピーに対し、俺は『モーニングスター』をフルスイングして叩き伏せる。そこから軽口を叩き合いながら順調に数を減らしていく……のだが、とにかく数が多すぎる。階の広さは構造上狭いので密状態に近い。というか、他の階に配置されていた個体が音を聞きつけて集まってきているので、必然的にならざるおえなかった。
「あーもう、一気に吹き飛ばせたら楽なのに……!」
「なら、前に使ってたあの爆発魔法を使えばいいだろ!?」
「できるだけ魔力を温存したいんだよ! この後もメタルハンターとかプロトキラーとか、ボス戦が控えてるのに魔法を連発できるかよ!」
「……難儀だな、それは」
「格闘技ならMP消費ゼロだけどさぁ!」
「だったらそれ使えよ!」
「この数に囲まれてる状況じゃ全員に当たらないし、意外と隙が大きい。打ち漏らした奴らに攻撃される」
完全に包囲されているこの状況で、近接技の格闘技は悪手だ。それに、マシン系モンスターは全般的に呪文耐性が高い個体が多い。下手にデイン系やイオ系を使っても不発に終わるリスクがあるのだ。実際、ハントのように氷属性を無効化するモンスターも存在する。マシン系の敵は侮れない。
「アタシの火力なら一気にお掃除できるが、これだけ広範囲に散らばられると流石に面倒だな。こうなりゃ手榴弾を撒いて——」
「待て! 2階にも大量の敵反応がある! 手榴弾の補給はあるが、数を節約するなら一網打尽にできるタイミングまで待つべきだ!」
「はぁ!? じゃあどうすんだよ!?」
《ネルの言う通り、ここで貴重な火力を出し惜しみするのは危険よ》
「……だったら!」
俺は一瞬の隙を突いて高く跳躍し、真上の天井に向かって膝を突き出した。
「『とびひざげり』!!」
ドガンッ!!と凄まじい衝撃音が響き、4階の床(3階の天井)が崩落して大きな穴が穿たれる。
「イッタイ、なにを……!?」
目を丸くするハントを横目に、俺は天井に開けた穴の真下へと全員を呼び寄せた。
「これで準備完了だ! ここに固まれ!」
「おい、本当に何するつもりだ!?」
「時間がないから手短に言う! 今から全員で上に跳ぶ! ネルさんは俺の合図で手榴弾を下に投げろ!」
「えっ……と、跳ぶ……!?」
「『ルーラ』!!!」
「……って、うわぁぁぁぁ!!?」
「スラ!?」
「いきなりですか!?」
強烈な浮遊感と共に、全員の体が天井に穿った穴へ向かって垂直上昇していく。
「ネルさん、今だ!!」
「ちくしょう、喰らいやがれ!!」
穴に吸い込まれる直前、ネルが下方の群れへ向けて手榴弾を投擲。爆弾は、俺たちが先ほどまで立っていた=メタッピーたちが殺到していた中央地点へ吸い込まれていく。
「一か八かの大博打だ!!」
ドガァァァァン!!!!!
爆風と衝撃波が吹き荒れると同時に——俺たちの頭部に激痛が走った。
「いてっ!?」
「グハッ!?」
「スッ!?」
「ギギッ!?」
そう、屋内でのルーラの弊害といえば天井に頭を殴打すること。穴を通り抜け、四階の天井に俺たちは、頭部を強打。ルーラの飛行が強制キャンセルされ、全員が無残にも空中へ放り出された。
だが、作戦自体は大成功だった。
3階で炸裂した手榴弾の衝撃波が3階の床を粉砕し、大崩落を起こし、瓦礫に変わった3階床が、そのまま2階へと崩れ落ち、上下の階にいたメタッピーたちを一挙に瓦礫と爆発の餌食にした。
「あぶねええええ追撃が来る前に体勢を整えろ!!」
落下する俺以外のみんなは、穴の縁に引っかかるか丁度四階の床に落ちたため、下階への転落は免れている。
「間に合えぇぇ!!」
俺は間一髪で武器を『蛇皮のムチ』に切り替え、しなるムチを近くの鉄骨に巻き付けなんとか落下から免れた。
「ふぅ……危ねぇ。死ぬかと思った……」
「おいテメェ!! 頭をぶつけるなんて聞いてねぇぞ!?」
「スラぁー!!」
「おカゲで5ビョウほどイシキがフリーズしましたよ!?」
「あ……ごめん」
ルーラに巻き込まれて絶叫した全員が、後頭部を押さえながら詰め寄ってくる。もっとも、ハントとスラりんはプンプン丸だったが、ネルさんは痛みよりも不満そうに鼻を鳴らす程度だった。
「チッ、別に頭を打ったこと自体はどうでもいいが……前もって言っとけ。舌噛んじまったろ……いってぇな」
「よかったら回復呪文(ホイミ)かけましょうか?」
「……いらねえよ。この程度の痛み、慣れてる。気持ちだけ受け取っとくわ。それより、下の雑魚共はどうなった?」
ネルさんに促され、俺は開いた大穴から恐る恐る下を覗き込んだ。
2階と3階のフロアは完全に崩落し、大量のメタッピーの残骸が瓦礫の隙間から煙を上げている。一石二鳥、どころか一挙両得の大戦果だ。
「どうやら、このエリアのテキはイッソウできたようですね」
ハントが呆れつつも感心したように呟く。
《なんと奇抜で破天荒な……魔法やスキルを駆使した戦い、見事ですね。本当にゲームや異世界にでてくる力を使われるとは、非常に興味深い。今度その仕組みを調査させてほしいですね》
《……本当、なんでもありね》
ヒマリは心底楽しそうに目を輝かせ、チヒロは通信の向こうで完全に呆れ返っていた。
《見事な戦果ね。でも……次からはあらかじめ私に相談してほしいわ。もっと合理的な作戦に仕上げられるわ》
「ごめんごめん。いつも行き当たりバッタリで生きてきたからさ。つい癖でね」
「……たく、これが通常ならお前らは命が幾つあっても足りねぇな」
「ソウデスネ」「スラァ」
《けれどこれで、3階と2階の反応は消滅したわ。1階から下には元々反応がないから、地下は楽に進入できそうね》
「よし、なら行こうか」
立ち止まっている時間はない。俺たちはすぐさま崩落した吹き抜けを降り、このビルの地下……駐車場へと向かう。
地下はそれほど込み入った構造ではなく、一般的な地下駐車場といった様相だった。どこか別の施設へ繋がるような隠し通路もなければ、通気口や排水溝の内部までミレニアムのセンサーでスキャンしてもらったが、不審な空間は見つからない。強いて言えば、このエリアを監視していた防犯システムが、まだ僅かに生きていたくらい。
念のため監視システムを破壊し、さらに探索を続ける。結果として、地下には目的の“親玉”に繋がる痕跡は見つからなかった。あったものと言えば、この世界のオーパーツと思われる謎の機械部品。それと——
「なぁ、ありゃなんだ?」
ネルが足を止め、暗がりの一角を指差した。
《ん?》
暗闇の中に、ぽつんと不自然に置かれた“ナニカ”。
そこに目を凝らした俺は、思わず息をのんだ。
そこには——鮮やかな朱色に金色の装飾が施された、立派な『宝箱』が鎮座していた。青いのを洞窟で見たことがあったが、まさか地上に赤いのがあるとは思ってなかったため、俺は若干興奮気味になった。
《何かしら、あれ?》
《やけに豪華な装飾が施された箱のようですが……なぜこのような荒廃した廃墟に?》
通信越しに二人の天才ハッカーが眉をひそめる。俺は彼女たちの警戒をよそに、吸い寄せられるように宝箱へと歩みを進めた。
「おい待て! 勝手に近づくんじゃねえ!」
「でも、開けてみないと中身分からないだろ?」
「どう見ても罠だろ! 警戒心ってものがねぇのか!?」
「いや……確かに罠の可能性は否定できないけどさ。他に怪しいものもなかったし。こういうもの俺の方が得意なんだ! だから、みんなは少し下がってて」
《あなた、それが何なのか知っているのね?》
リオの鋭い声がインカムから飛ぶ。流石はミレニアムのセミナー会長、観察眼が恐ろしい。
「俺の世界では、ダンジョンや洞窟に普通にあるもので、開けたら大体良いものが入ってる謎の箱さ」
と適当に誤魔化しておく。そうして、強引に開ける許可を取り付け、宝箱に近づく。まあ、最悪死んでも俺は蘇るし問題ない。
宝箱の前に屈み込み、ゆっくりと蓋に手をかけた。
そして——。
——宝箱は『ひとくいばこ』だった!
「あ、おわっ——!?」
——ひとくいばこは いきなり襲いかかってきた!
——ひとくいばこの 痛恨の一撃!!
——ルイは 90のダメージを受けた!
「ギャアアアアアッ!???」
後退しようとしたコンマ数秒の隙。
ギチギチギチッ!!という不快な咀嚼音と共に、人喰い箱の巨大な木製の歯が俺の右腕に噛み付いた。激痛が神経を焼き切り、骨が砕ける嫌な音が鼓膜に響く。
「くそっ、離れ——!?」
引き剥がそうとするが、牙が骨に噛み込んで抜けない。
直後、人喰い箱は獲物を噛みちぎろうとする肉食獣のように、猛烈な勢いで首を左右に振り回し始めた。
ガコンッ! ドガンッ!
壁に、床に、何度も何度も俺の体が叩きつけられる。視界が真っ赤に染まる。そして最後に、人喰い箱は俺の体をネルたちの方向へと思い切り投げ飛ばした。
ぶち、と。
不快な生々しい手応えと共に、右肩から先が消失していた。
「……なッ!!????」
ネルさんの悲鳴のような絶叫。
《……うぷっ》
《……は???》
《……ヒッ!!??》
《…………っ!!!!》
通信越しに聞こえる、チヒロの嘔吐感、ヒマリの絶句、ウタハの悲鳴、リオの息をのむ音。
やばい。ミレニアムの普通の少女たちに、こんなグロテスクな現場を見せてしまった。
それに、片腕の欠損し、右腕がなくなっている。肩から先が存在しない。痛い。痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!
「……かはッ!? ……ガハッ!!」
口から大量の血が溢れ出す。叩きつけられた衝撃で、右腕だけでなく内臓までズタズタだ。それでも、意識だけが最悪なことにハッキリと残っているのは幸か不幸か…正直、今すぐ気絶して死んだ方がマシなレベルの地獄の激痛だ。
「『回転斬り』!!!」
ハントが上半身を高速回転させ、人喰い箱へ躍り出た。鋭い刃が箱を木端微塵に切り刻み、それにより人喰い箱は沈黙した。
「ルイッ!? おいルイ!! しっかりしろ!!」
ネルが駆け寄り、血の海に倒れる俺の体を抱き起こす。その手は激しく震えていた。
《そんな……》
放心状態に陥ったリオの蒼白な声。
《し、しっかりしてくださいルイさん! 今、今すぐ救急部隊を!!》
「マスター! マスターよ! キをタシかに……!!」
あーくそ。痛い。本気で痛い。血が止まらない。
多分これ、ホイミをかけても元には戻らないな。
以前、洞窟の神父に尋ねたことがあったが、ホイミなどでは欠損を治すだけの回復量が無いので、もし治そうと思うなら『ベホマ』クラスの極大回復呪文でなければ失われた部位の再生は不可能だと言っていた。
まだ、ベホマの習得はできていない俺には無理な話だ。
「だい……大丈夫だ。これくらい……なんとかなる……」
「何言ってんだバカ野郎!! これだけ血ぃ流して大丈夫なわけねえだろ!! 腕がねえんだぞ!? 強がってんじゃねえよ!!」
《そうです! 流石の私も怒りますよ! そのような重傷で冗談を言うのはおやめなさい!!》
ヒマリの必死な叫びがインカムから響く。
「いや、本当に……大丈夫、だから……」
やばいな。できれば、彼女たちに「死ぬ瞬間」なんてトラウマになるようなものを見せたくはないのだが。
だが、欠損した部位を完全に元通りにするには——一度死ぬしかないのだ。
なぜそんな確信があるのかって?
アビドスで最初に死んだ時、俺は体を真っ二つに切断された。それでも蘇生した時には傷一つなく元通りに繋がっていた。つまり、この身体の仕様上「死亡してからのリスポーン(復活)」を経れば、身体は初期状態に完全修復されるのだ。
だから……お願いだから、早くこの激痛から解放してくれ。
「………………ごめん!」
「は? お前、何謝って——」
俺は残った左手で腰のナイフを抜き——躊躇なく自らの胸深くと突き立てた。
ネルさんの目が見開かれる。
その驚愕と絶望に満ちた表情を最後に、俺の意識は深い深い暗闇の底へと落ちていった。
感想と高評価、ここすきなどよろしくお願いします!励みになります!
○美甘ネル
レベル16
HP=364
MP=31
力 =104
早さ=119
守り=64
運良=63
??=461
攻魔=0
回魔=0
○特技
なし
○呪文
なし
○ネルの装備
・SMG(ツインドラゴン)攻撃力44
[基準攻撃力8]
・C&Cのメイド服 守備力24
・ネルのスカジャン 守備力22
○装備
・ヘビ皮のムチ 攻撃力23
皮のムチを強化したムチ。薔薇のムチをあっという間に超える武器で、ドラクエ8 が初登場。一気に攻撃力が上がるので、ゼシカの双竜撃ちにお世話になった方々はすぐ作ったのでは?
○新装備
・SMG(ツインドラゴン)攻撃力44
ネルが使用する2丁のサブマシンガン。
どちらにも黄金の龍の美しい文様が刻まれている。
[基準攻撃力8]
・C&Cのメイド服 守備力24
ネルの部活の指定服なのだが、彼女は前を開けて着ている。エージェントということもあり耐久性も高い装備のようだ。
・ネルのスカジャン 守備力22
効果、炎、吹雪、爆発系のダメージを30%減。
ネル愛用のお気に入りのスカジャン。桜などのとにかく目立つデザイン。本人がこれを着る理由を尋ねると、単純明快な答えが返ってくるそう。
○ネルの持つスキル
・ハンマースキル
・格闘スキル
追記
私は思った。生徒達にもレベルという概念を付与したことにより、ルイと共に強くなれるということに。そして、1UPに対するリターンが圧倒的に大きい(その分経験値は多量に必要)なので、ルイがどんなに強くなろうと生徒に一撃でやられることにあまり変わらないのでは?……と。
錬金釜クッキングがいるか?
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いる
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いらない
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どっちでも