少し、加筆修正しました。
クラーゴンの移動を確認してから数分。俺たちは全速力で船を走らせ、無為ヶ浜の海岸線を目指していた。
だが、こちらの意図を見透かしているかのように、海面から次々と魔物が這い上がり、船の上へと侵入してくる。
〈対象『クラーゴン』、浜への到着まであと5分です〉
「わかってる! だが、相手の数が多すぎる……!」
浜辺で倒したマーマンが混ざっていないのだけが救いだったが、それでも船体が軋んで傾くほどの密度で敵が押し寄せていた。
真っ赤な甲殻を持つ『ぐんたいガニ』、浮遊する『シーメーダ』、愛らしい見た目に反して攻撃的な『プクプク』、さらに頑丈な『マリンスライム』や『だいおうキッズ』の群れ。先ほどまでの様子見とは異なり、明確な殺意を剥き出しにして襲いかかってくる。
「はあぁ!!『オノ無双!!』」
銃を『鉄の斧』に持ち替えたホシノが、回転の勢いを乗せた強烈な横薙ぎを叩き込む。
彼女の高い腕力から繰り出された一撃は、先頭のぐんたいガニ二体を瞬時に粉砕した。しかし、削りきれなかった残りの二体がハサミを振り上げ、勢いを殺されたホシノへ襲いかかる。
「喰らうか!」
だが、さすがはホシノだ。襲い来る攻撃を見極めると、手にした『鉄の盾』と斧の柄で的確に受け止め、そのまま力任せに弾き返して二体まとめて叩き潰した。
「危ない、ホシノちゃん!」
間髪入れず、上空からシーメーダとプクプクがホシノの死角を突いて急降下してくる。しかし、間一髪で駆けつけたユメ先輩が盾を滑り込ませ、その奇襲を完璧に遮断した。盾からを顔を出し、すぐにハンドガンを構えて連射する。
・ミス! プクプク達には当たらなかった!
「うわっ、当たらないよ〜!?」
その隙に続けて襲おうとした魔物達だったが、『うけながしの構え』を使いカバーして立ち回った。
情けない悲鳴を上げつつも、隙を狙って襲って来た敵の攻撃を、『うけながしの構え』へと素早く移行し、追撃を見事に返した。
一方の俺は、パトリシアに船の操作を全面的に任せ、サクラコと共に群がるマリンスライムとだいおうキッズの対処にあたっていた。
『バギ!』
『バギ!』
二重に巻き起こる小さな竜巻の刃が、飛びかかってきた魔物たちをまとめて吹き飛ばし、切り裂く。俺はその隙を逃さず、ハイブーメランを投擲する。
「『スライムブロウ!』」
スライム系に対して絶大な効果を発揮する技だ。硬い巻貝を持つマリンスライムを優先的に打ち砕いていく。だんだんと闘い慣れした俺には、この程度喰らわないぜ!
だが、それでも敵の勢いが衰える気配はない。
いくら倒しても、海から次々と新たなモンスターが船板へと這い上がってくるからだ。この海域は奴らにとって完全なホームグラウンド。故に、底が尽きない。
「ちくしょう!倒しても倒してもキリがねえ! パトリシア!後どれくらいだ!?」
〈こちらの浜辺の到着時間は、後5分です!〉
クラーゴンの到達予想時間とほぼ同時刻か。速度はこちらが勝っているとはいえ、最初の足止めによるロスタイムが重く響いていた。
「みんな! 浜に着くまでなんとしても持ち堪えるぞ!」
俺の叫び声に全員が強く頷く。
目標地点まで、あと5分。その間、俺たちは怒涛の如く押し寄せる魔物の群れと、生き残りをかけて闘うのだった。
□□□ナギサ視点
無為ヶ浜に辿り着いた瞬間。そこに鎮座していた怪物の姿を目にした私は、あまりの光景に絶句いたしました。
「な、何ですかアレは!!?」
「うてぇ!!」
戦車隊長の号令とともに、勢いよく発射される大口径の砲弾が巨大イカ目掛けて放たれる。
[プギシャー!!]
しかし、巨大なイカは不快な雄叫びを上げると、丸太のように太い触手を力任せに横薙ぎに振るいました。
瞬間。
たったそれだけの動作が生み出した凄まじい風圧は、迫りくる砲弾の群れはあっけなく軌道を逸らし、吹き飛ばした。
「た、弾がこちらに……!?」
「っ!?」
逸れた砲弾のいくつかが直線上に迫るのを見て、私は思わず死を覚悟して目を瞑った。
「ナギサ様ー!!」
直後、私を呼ぶ叫び声とともに、空気を切り裂く澄んだ金属音が耳腔を叩きました。次の瞬間、強い衝撃とともに体が押し倒され、誰かが私を庇うように上に覆いかぶさった。
恐る恐る目を開けると、そこには衝撃で焦げついた剣を手に、私を見下ろす小さな影がありました。
「ご無事ですか、ナギサ様!?」
そこにいたのは、私よりもはるかに小柄で、どこか愛らしい緑色のスライムに跨った頑丈な鎧を全身に包んだ騎士——『スライムナイト』のピエールさんでした。右手に握られた剣の刃先からは煙が上がっており、先ほどの砲弾を至近距離で叩き斬ったのだと理解した。
「大丈夫ですピエールさん。……それで、あの豹柄の猫さんと仲間の青いスライムは?」
「はい。なんとか無事に治療して今は遠くで休んでもらってます!」
「よかった……っ! それよりもピエールさん、剣が!?」
「この程度の焼きつき、大したことありません! ダメになったらその時は新しいものを探すだけです!」
私たちキヴォトスの生徒とは明らかに異なる容姿を持つピエールさん。私がこの子と出会ったのは、ついさっきの出来事でした。
無為ヶ浜へと向かう道中、道端で力尽きて倒れていた彼を発見し、私の判断でここまで応急手当を施しながら搬送してきた経緯がありました。
当初は、昨今世間を騒がせている夜間の怪物の一種ではないかと疑いもいたしましたが、彼は極めて礼儀正しく、助けた私に深々と感謝の意を示してくれました。怪しい存在ではないと判断した私は、移動中の車内で彼をお茶会にお招きしたほどです。
……まあ、その歓談の最中、彼から爽やかな笑顔で「自分は魔物です」と告げられた際には、さすがの私も紅茶を喉に詰まらせかけました。
その後、彼は「助けていただいた恩を返したい」と、私たちの作戦への協力を申し出てくださったのです。もちろん、怪我人を危険に晒すわけにはいかず何度もお断りいたしましたが、一度言い出したら引き下がらない頑固さをお持ちのようで……最終的には「お体に差し障りのない範囲で」という条件付きで折れるほかありませんでした。
そんな紆余曲折を経て、私たちは今、ピエールさんの力を借りてあの巨大なイカの化け物と対峙しているのです。
「そりゃあ『火炎斬り』!」
いつの間にか前線へと躍り出ていたピエールさんは、愛馬(?)である緑のスライムの弾力性を活かして空高く跳躍しました。そして、先ほど洗車の砲弾を弾いた剣の刀身に激しい炎を纏わせ、巨大な敵へと一直線に斬りかかります。
——スパァンッ!!
[プギーーーー!!?]
巨大イカは再び太い触手を掲げて防御を図ろうとしましたが、今度は実りませんでした。炎を帯びた一閃は触手の強靭な皮膚を容易く切り裂き、その巨腕を一刀両断してみせました。
「よっしゃー!」
と一矢報いるピエールさんを横目に苦悶の声を上げる巨大イカへと視線を映しながら、私は要請資料に添付された写真そのままの存在に改めて圧倒された。
すぐさま気を取り直して戦車部隊へ次なる指示を飛ばそうとした……次の瞬間でした。
ピューーンっ!!!
[ぷしゃー!???]
甲高い風切り音とともに現れた白く輝く光の弾が、巨大イカの胴体を捉えます。予想外のダメージを受けた巨大イカが悲鳴のような唸りを上げました。化け物はすぐさま弾の飛んできた方向へ向き直り、私たちもつられるようにそちらへ視線を向けます。
「よっしゃー! ハァ、ハァ……ヒットだ!」
そこには、船の先頭でガッツポーズを取る少年と三人の女の子の姿でした。
(先程のアレは……まさかあの人の?)
「大丈夫ですか、ルイ!?」
「大丈夫……少し疲れるだけだ」
一瞬頭をよぎった疑問を、私はすぐさま首を振って否定しました。
そうこうしているうちに、巨大イカの標的は完全にあの船へと切り替わり、船は旋回して逃走を開始します。ですが、その速度は先ほどまでに比べて不自然なほど遅く、まるで意図的に相手を誘い込んでいるかのようでした。
「こっちだクラーゴン! イカさんこっちら、波立つ方へー!」
「なんですかその独特な煽り文句は」
「私も! イカさ〜〜ん! こっちだよ〜!」
[プギーーーーー!!!!!]
怒りに狂った巨大イカは凄まじい咆哮を上げ、誘われるまま船の後を追って激しく波を打ち立てながら泳ぎ始めました。
「……な、ナギサ様?」
戦車隊の一人が、思わずその場で腰が抜けてしまった私に近づく。張っていた緊張の糸が切れた事で、砂の地面にそのままへたり込みました。ティーパーティーの制服が汚れてしまいましたが、今の私にそれを気にするほどの余裕はありませんでした。誰かの助け舟のおかげで助かった状況に安堵する。
「ナギサ様。怪物があちらに行っちゃいますけど。我々はどういたしましょう?」
「船を出して、あの人達を追って様子を伺ってください。もしピンチとなれば、協力して倒しても構いません」
「いや、その必要はねえ」
「あなたは……!」
そこに現れたのは、ここを管轄している市長さん。私達に助けを要請してくださった方でした。
「その必要はない……とは、どういうことですか?」
「文字通りの意味です。貴方たちの力では、あの怪物は倒せない。追ったところで、逆に足を引っ張るだけです。なので、ここはあの子達に任せてはくれませんか?」
「……なに!?」
戦車隊の一人が、その言葉に反応する。
「悪い。嫌味を言いたいわけじゃないんだ。でも、君達が言ったところでアレには通じない。先ほどやってみてわかったはずです」
「それは……確かにそうですね。……ですが、先程の者たちが無事に退治できるかどうかわかりません。ですので、数人様子を見に向かわせてもよろしいでしょうか?」
しかし、いくら倒せる可能性があろうと負ける可能性もある。どうして乱入してきたのかについても聞かなくてはならない。特に……市長さんのあの言い方は、何か知ってるに違いありません。後で書き出さなくては……。
「……それもそうか。わかった、そうしてくれ」
「ありがとうございます。……では、お願いします」
「「「ハッ!」」」
「ナギサ様、その間我々は?」
「…………ひとまず、ここで待機を。またあのような生物が来てもおかしくありませんから」
「はい!」
指示を飛ばした私は、深く息を整えながら私は砂浜の上で彼らの無事と帰還を祈るように待つことにするのでした。
□□□ルイ視点
戦車隊と交戦中だったクラーゴンの背後から魔法をぶち込み、まんまとターゲットをこちらに切り替えさせた俺たちは、そのまま奴を無為ヶ浜から引き離すべく沖合へと誘い込んでいた。
「それで、一体どこまで引きつけるつもりなのですか!?」
「無人島とか、とにかく足場が良くて戦いやすい場所だ!」
もちろん、具体的な行き先なんて最初から決めちゃいない。行き当たりばったりの無謀な博打作戦だ。
〈ルイ様! 上空から触手が来ます!〉
「影で見えてる!」
パトリシア——ここからはパトちゃんと呼ぶことにするが——彼女からの的確なナビゲーションに従い、舵を右へと急速に切る。
直後、すぐ左手に極太の触手が叩きつけられ、水柱とともに発生した巨大な引き波が船体を激しく揺らした。あわや転覆かという衝撃を必死に踏ん張って耐え切る。一歩間違えれば海の藻屑という状況下、一瞬たりとも気が抜けない。
「当たってください……! 『マジックアロー』!」
その時、弓スキルを上げたばかりのサクラコが、透明感のある魔力を宿した矢を勢いよく放った。
いくら船が揺れていようと、あのクラーゴンの巨体で外すはずもない。矢は見事に奴の眉間へと深く突き刺さった。
ダメージを受けたクラーゴンの体表を青いオーラが包み込み、ゆっくりと下へ下へと侵食していく。
確か、マジックアローの追加効果は「相手の攻撃呪文耐性を下げる」だったはずだ。……つまり、今の攻撃によって奴にはさっきよりもはるかに魔法が通りやすくなったということ。
「そうだ……! サクラコ、さっきの技をそのままクラーゴンに撃ち続けてくれ!」
「……わかりました!」
サクラコは理由を尋ねることもなく即座に頷くと、再び弓を引き絞り、迷いのない手つきで次々と魔法の矢を放ち始めた。俺の言葉の意図を察してくれたのだろう。
その様子を見ていたホシノが、斧を肩に担ぎながら声をかけてくる。
「何か思いついたんですね、ルイくん?」
「ああ。サクラコが撃ったあの技にはな、相手の呪文耐性を下げる効果があるんだよ。だから島に着くまでの間、奴の耐性を限界まで削り落としておく。あとは足場が整ったところで、一気に強力な魔法をぶち込んで削りきる作戦だ」
「作戦は理解しました。でも、その場合の魔法役ってルイですよね? ……魔力、まだ残ってるの?」
「失敗から学ぶ男だぜ俺は。……もちろん対策はしてあるさ」
不敵な笑みを浮かべ、俺は懐のアイテム袋にそっと手を触れる。と、まさにそんな会話をしていたその時。
〈ルイ様〉
スマホから響いたパトちゃんの声に、俺は「ようやくか」と安堵の笑みを深めた。
〈ここから南に行ったところに、条件に合う島を見つけました。現在の速度なら2〜3分で着く場所です〉
言われた方向を向くと、薄らとだがそこに小さな島が見えた。
「よし!ならそこに全速力で向かって降りるぞ!」
スロットルを下まで落とし込み全速全身でその島へと舵を切った。全力の速度を出したからか、1分程度で俺たちはそこについた。
「ユメ先輩! ほら、さっさと降りますよ!」
「ひぃん! 待ってよホシノちゃん!」
「あっちだみんな!あそこの高い岩肌へ!」
船をそのままにし、全速力で向かいながら辿り着いたクラーゴンにもう一発矢を放ち視線を変えさせる。
——そして。……ようやく、その準備は整った——
感想、高評価、ここすきなど、よろしくお願いします!励みになります!本当に!
ルイって、だんだんと戦闘慣れしていくので、なかなか喰らわなくなってくるんですよね。流石に魔法となるとむずいですけど。
でも……単純な力では、生徒に勝つのは無理なんですよね。それを超えてくるので。
即死、ザキ系の呪文、特技の導入 あり?なし?
-
アリ
-
なし
-
どっちでも