BLUE QUEST 〜青春を駆ける戦士〜   作:松花 陽気

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最後まで屋外戦か地上戦かで迷いましたが、地上戦にしました。まあ、海また別の場所で戦うことだって、いずれあるでしょう………多分。

atekutoさん sumisanさん 夜市よいさん評価していただきありがとうございます。


第三二話:地上戦・クラーゴン

無人島に降り立ち、鬱蒼とした原生林をがむしゃらに駆け抜ける。すると、唐突に視界が開け、そこは眼下に大海原を臨む断崖絶壁だった。

遥か下方の岩肌に打ち付けられる荒波が、どどうと腹に響く重低音を響かせている。絶景とは程遠い、緊迫した空気。

なぜ俺たちがこんな場所を選んだのか。答えは至極単純だ。奴との決着をつけるため。巨躯を誇るクラーゴンとの戦闘において、足場の確保と回避スペースを兼ね備えたここは、絶好のポイントだ。間違っても海に落ちることは無いだろう。

 

「はぁ……はぁ、ここなら良さそうか?」

 

「こ、ここ……? 何を考えて?」

 

「もちろん、クラーゴン退治のためだよ。アイツをここで倒す」

 

ここに来るまでの間に、何度もクラーゴンにはサクラコの弓矢で攻撃しているので、ここまでの誘導は出来ているはずだ。

 

「ゲレちゃんとスラりんちゃん大丈夫かな……?」

 

「先程、浜に私の学園の治安組織が居られましたし、恐らく大丈夫かと思いますが……」

 

サクラコは整った眉を潜めつつも、努めて冷静に言葉を紡ぐ。

 

「今は考えても仕方ありません。とにかく、あの巨大イカに集中しましょう」

 

「……それもそうだな」

 

俺は手に取った『魔法の小瓶』の栓を抜きながら、低く呟いた。

全員に薬草や魔法の小瓶を手渡して素早く体力を回復させ、刻一刻と迫る開戦へ向けて完璧な準備を整える。

 

そして——数分間の静寂の後。奴は、来た。

 

ザバァァァァァァンッ!!!!

[プギシャーーーーー!!!!]

 

「「「っ!!?」」」

 

海面が爆発したかのような激しい水柱と共に、巨体が水面を破って飛び出した。

不気味な咆哮を轟かせながら、数メートルはあろうかという絶壁の縁へと、クラーゴンがその巨大で粘質に濡れた身体を力任せに乗り上げてくる。

 

「本当に来た!?」

 

「ほら言ったろ?」

 

クラーゴンの血走った巨大な眼球が、ギラリと俺たちを捕捉し、殺意を込めて睨みつけてくる。

直後——絶壁全体が微震した。

 

[プギー!!]

 

「先輩危ない!」

 

標的を絞ったクラーゴンが、空中でウネウネと漂わせていた太い触手を、容赦なく振り下ろす。

生臭い風圧と共に迫る質量。だが幸いにも、間一髪のところでホシノがユメ先輩の身体を突き飛ばすようにして退避させ、直撃を免れた。

 

「わわ!? あ、危なかったぁ……」

 

「ユメさん!? ご無事ですか!」

 

「うん。ホシノちゃんのおかげで無事だよ」

 

「サクラコ! 次来るぞ!」

 

別の触手が、今度はサクラコを狙って落とされる。

長年の鍛錬による条件反射で寸前に跳躍したサクラコだったが、叩きつけられた触手が巻き起こした凄まじい衝撃波と土煙に煽られ、その身体が空中で大きく吹き飛ばされた。

 

「きゃっ!!?」

 

「サクラコ!」

 

「大丈夫です!」

 

体勢を立て直したサクラコの無事に胸を撫で下ろした瞬間。視界の端を、疾風のような影が駆け抜けた。

ホシノだ。彼女は先ほど地に叩きつけられた触手を伝って走り、敵の顔面まで一気に到達する。

 

「喰らえー!!『鉄甲斬』!」

 

踏み込みと共に放たれたホシノの一撃が、吸い込まれるようにクラーゴンの顔面へと炸裂する。

肉を断ち切り、骨を砕く鈍い手応え。奴の頭部に深々と鮮血が飛び、深い傷を残した。

 

ホシノ、いつの間にかぶと割りを鉄甲斬に進化させていたのか……。鉄甲斬は、かぶと割りを強化した技で威力も1.5倍と高い。そんなもん喰らえば、いくら強いクラーゴンといえど大ダメージだろう。

 

[プギー!!]

 

「わぁ!?」

 

だが、怒りに狂った奴の反撃は速かった。

突如、別の触手が影のように伸び、ホシノの足首をガッチリと締め上げる。そのまま一瞬で宙へと引きずり上げられ、逆さに吊るし上げられてしまった。

 

「ホシノ!? テメェ!『ヒャド』!」

「ホシノさん! 『マジックアロー』!」

 

サクラコが素早く弓を番え、光矢を放つと同時に、俺もヒャドを放つ。

寸分の狂いもなくホシノを拘束していた触手へ突き刺さった矢と氷の痛みで締め付けの力が一瞬緩んだ。その隙を逃さず、ホシノは身を捩ってスルスルと拘束を抜け出し、華麗な跳躍で地面へと舞い戻った。

 

「ありがとうございます」

 

「無事でなによりです」

 

[ぷぎぎぎ……!!]

 

クラーゴンの瞳に、ドロリとした明確な憎悪と怒気が宿る。やられまくっていることが気に入らないのか。先ほどまでとは明確に質の違う咆哮を上げ始めた。

 

[すぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜]

 

周囲の酸素すら削ぎ落とすかのような、狂暴な吸気音が耳腔を刺す。

 

「っ!……まずい!!」

 

奴が次にする行動に気づいた俺は、真っ先にサクラコの下へと向かう。そして、彼女を守るように盾を構えた、次の瞬間。

クラーゴンの大砲のような口から燃え盛るほどの炎が噴射された。

 

「「「「うわぁぁぁぁぁぁ!!!?」」」」

 

視界の全てが真っ赤な炎に染まった。

燃え盛る火炎の嵐が、津波となって容赦なく俺たちを飲み込んでいく。次元の違う圧倒的な熱量に耐えうる装備を持っていても、攻撃の全てをいなせるわけではない。

 

あまりの火勢に、俺たちの背後に生い茂っていた林にまで火が燃え移り、黒煙が上がり始める。

ようやく火が止まり猛烈な熱さが徐々に冷める。なんて威力の火だ。これは絶対、火の息なんていうレベルじゃねぇな。全身が赤く腫れ上がっているのを見て、俺は自身のステータス画面を確認する。ふむ、サクラコを庇ったからか体力が半分も削れていた。

先程の痛みを思い出す。皮膚が焼き切れるような凄まじい激痛だった。俺とユメ、ホシノは炎耐性を高めてくれる盾を身につけているからなんとか耐えられているが、その耐性装備が無いサクラコは大ダメージになる。

 

「ルイ!?」

 

「大、丈夫……なんとか無事だ」

 

「ほっ。助けてくれたのは嬉しいですが、すぐ治せるとはいえあまり無茶をしないでください」

 

「ごめんごめん」

 

サクラコの叱責を軽く流しながら、他のみんなはどうかなと周りを見る。

 

「みんな大丈夫か!?」

 

「はい。……ユメ先輩が盾になってくれてなんとか」

 

「ホシノちゃん! 待ってて、今回復するから!?」

 

足元から立ち上る黒煙と不快な熱気で著しく視界が遮られるが、彼女達の声はしっかりと聞こえた。

 

「サクラコちゃんは無事!?」

 

「あぁ!俺が守った!」

 

「よかったぁ! ルイ君も無事だよね?」

 

「今更この程度で焼け死にはしねぇよ」

 

その弱々しくも力強い返答に安堵しながら、サクラコにベホイミをかける。そして、再びクラーゴンへ意識を向けようとした——その瞬間。

 

「「きゃぁぁぁ!!!」」

 

全員「っ!!?」

 

女の子の悲鳴が、炎上する原生林の奥から届いた。俺たちは一斉にそちらへ振り向く。

 

「あの悲鳴はいったい……!?」

 

「なんで!? ここには私たち以外、誰もいないはずなのに……!」

 

予想外の事態に、俺の頭の中にも困惑が広がる。

 

「まさか、誰か迷い込んでたのか!?」

 

〈ルイ様〉

 

その時、懐のスマホからパトリシアの冷静な音声が響いた。

 

〈緊急報告です。近くで生態反応を検知、どうやら正義実現委員会の隊員が、島に生息する魔物と接触、火の中で戦闘中と思われます〉

 

「なんだって!?」

 

よりによって、なぜこんな場所に……。

 

〈恐らく、私たちの動向をを探るための隠密調査、もしくは監視が目的かと〉

 

「……どちらにせよ、彼女たちがピンチなことに変わりはない!」

 

どんな理由でここに居ようと、見捨てる選択肢なんて存在しない。一刻も早く助けに向かわなければ。だが、クラーゴンを相手にしながら二人を保護するのは物理的に不可能だ。しかし、見捨てることなんてできるわけがない。……ここはリスクを承知の上で、二手に分かれるしかない。

 

「ホシノ! ユメ先輩! あの子たちの救援をお願いします!」

 

「! わかった! 行こう、ホシノちゃん!」

 

「えっ、先輩ちょっと待って! あのイカはどうするんですか!?」

 

「大丈夫! ルイ君たちなら絶対に持ちこたえる! 信じよう!」

 

「……わかりました。片付けたら、すぐ戻ってきますから!」

 

「うん! 早く行こう!」

 

二人は短い言葉を交わしながら背を向け、一気に原生林の火の中へと突き進んでいった。

その背影を見届けた俺は、ゆっくりと向き直り、再びクラーゴンへと視線を固定する。

 

「ルイ、救助を優先した判断は正しいと思いますが……果たして私達だけで、あれを討ち取れるのでしょうか?」

 

サクラコが弓を握り直し、険しい表情で問いかける。

先ほどまで四人がかりでようやく拮抗していた戦況だ。それが二人へ激減したのだから、彼女が不安を抱くのも至極当然だった。

 

だが、そんな彼女の表情とは裏腹に、俺の胸の奥では戦いが始まって以来、抑えきれない興奮の熱が渦巻いていた。不安が無いといえば嘘になる。死にたくなんてないし、命を失う恐怖だって当然ある……だけど。

それ以上に、強者との戦いが、死闘が命を滾らせ、レベルアップと共に自らのステータスが飛躍的に研ぎ澄まされていく快感が、俺の理性を熱く焦がす。

 

[プギー……ぷぎぃしゃーーーー!!]

 

こちらの戦力が半減したのを好機と見たか、クラーゴンが絶壁を揺るがす咆哮を上げ、無数の太い触手を一斉に繰り出してきた。その高速で突き出される無軌道な連射は、まるで容赦のない拳のラッシュを思わせるた。

 

[プギプギプキプギプギプキプギプギプキプギプギプギプギプギプギプギプギプギプギプギプギプギーーーー!!]

 

直後、空気を切り裂く高速の連打が襲いかかった。一本一発が巨木のような質量を持つ触手の猛攻だ。防具を掲げてガードしようとした体ごと一瞬で宙に吹き飛ばされ、俺とサクラコは反撃の隙すら与えられないまま、文字通りの激しい集中砲火を浴びて地面へ叩きつけられてしまった。

 

「はぁ……はぁ……イカにタコ殴りとは……これ如何に」

 

全身を叩く強烈な打撲に耐えながら、俺は強がり気味に軽口を叩いてみる。

もしここにハントがいれば「ジョウダンをイってるバアイですか!!」ってツッコんでくれるだろう。

 

[プググ…!]

 

だが生憎と、巨大な化け物にそんなユーモアを楽しむ余裕などあるはずもなかった。ブビューと大気を引き裂く風切り音と共に、巨大な凶器が追撃として迫る。

 

ベチンッッ!!!!

「グハッ!!?」

「うっ!!?」

 

立ち上がりかけた直後、真横から薙ぎ払われた触手の鞭が容赦なく身躯を打ち抜き、俺たちは再び凄まじい衝撃と共に地面を転がった。

 

「まだ、です……!」

 

「まだ……やれるぞ!」

 

視界が明滅し、お互い体力が底をつきかける瀕死寸前の状態。それでも、俺とサクラコは歯を食いしばり、岩肌に手をついて泥臭く立ち上がった。

 

その瞬間だった。

 

ブワァッ!

「っ!?」

 

突如として、自分の全身が神秘的な青白い光に包まれた。視界の端で明滅していた体力の限界を塗り替えるように、体の奥底から怒涛の勢いで圧倒的な力が漲ってくる。

 

「これって……」

 

まさか、これは“ゾーン”ってやつか?

スポーツ漫画でよく出る、極限の集中状態にのみ発揮されるもののこと。ドラクエ11に出たゾーンも似たようなもので、一時的に自身のステータスを少し上げてくれるものだ。まさか、ここで発揮されるとは。

 

「こ、これはいったい……!?」

 

戸惑いの声を漏らす彼女へ目を向けると、サクラコの身体もまた、青白く発光していた。どうやらサクラコもゾーンを発動したようだ。

 

……しかし、すでにもうその光も点滅し始め、今にも消えようとしていた。気付けば俺もそうだった。これはまずい! せっかく二人同時に出せたこのチャンスを逃すわけには行かない! 即興にはなるが、サクラコに付き合ってもらおう。

 

「サクラコ! 同時に魔法を唱えるぞ!」

 

「えっ? あっはい!」

 

クラーゴンを観察する。よし!まだ呪文耐性の弱体化は続いているな。

 

「行くよ!」

 

『『連携! メラハリケーーーン!!』』

 

俺たちが放った炎と風の魔法が合わさり、激しい炎の竜巻となってクラーゴンを包み込む。

 

[プギョォォォォォ!!!??]

 

渦巻く炎熱の暴風に呑み込まれたクラーゴンは、断末魔の悲鳴を上げながら狂乱したように身を悶えさせた。

焼き尽くす竜巻の圧力に耐えきれず、巨体は大きく後ろへと反り返っていき……やがて、凄まじい水飛沫を上げ、下方の海へと崩れ落ちるのだった。

 

「はぁ……はぁ……」

 

「……終わった……のでしょうか?」

 

クラーゴンが波間に消え去ると同時に、全身を包んでいた青白い光もふっと霧散した。激しい徒労感と引き換えに、確かな勝利の感覚が残る。

 

「…………やったか?」

 

「わざとフラグ立てようとしないでくれますか?」

 

後ろから呆れたような返答と同時に、親しみのある足音が近づいてきた。振り向くと、そこには無事に救援を終えたホシノとユメ先輩、そして黒い制服に身を包んだ正義実現委員会の生徒の姿があった。因みにメカクレでは無かった、だよね〜。

 

「二人とも無事だよ〜!」

 

「燃えていた木々も少なく、被害も小さく火消しも早く済みました」

 

「ホッ……よかった」

 

「あの……」

 

正実の子達がこちらに近づく。

 

「助けていただき、ありがとうございます」

 

二人は頭を下げて礼を言った。

 

「いいっていいって!」

 

「……あと、これから少しお願いしたいことがございまして」

 

「ん?」

 

「無為ヶ浜でティーパーティーの方が、直接お話ししたいそうです。今回の件に関してお聞かせ願いたいと」

 

「出来ればついてきていただきたいのですが……よろしいですか?」

 

どうやら、トリニティの生徒会であるティーパーティーから直々のお呼び出しらしい。まあ、浜にティーパーティーの関係者らしき姿を見かけたし予感はあった。それに、もともと今回の討伐はティーパーティー側への依頼だったのだ。それを役所の人からの頼みとはいえ、俺たちが横から解決してしまったのだから、話を聞きたがるのも無理はない。

 

ふと後ろを振り返ると、ホシノが片手で顔を覆い、呆れたように俯きながら視線をこちらに向けていた。どうやら、相当面倒な事態に巻き込まれたと察しているらしい。俺は心の中で謝罪をしながら返答する。

 

「それって……すぐ終わるかな?」

 

俺が苦笑交じりに尋ねると、正実の生徒は真面目な顔で頷いた。

 

「あなたがたの話次第では……穏便に済むと思います」

 

「そっか……うん。わかった、ついていくよ」

 

こうして、激闘を極めたクラーゴン退治は無事に幕を閉じた。しかし、これでようやく念願のバカンス、とはいかないらしい。どうやらもう一波乱、二波乱と待ち受けているようだ。

とりあえず、穏便に済むように敵意が無いことを示さないとな……と。思いながら、彼女達についていく。

 

「……ん?」

 

歩き出そうとして、足が何かを蹴る。

蹴っ飛んでったものを見ると、それは変な水色に焼き焦げた腕輪だった。

 

「なんだ……?」

 

何かのブレスレットのように見えるそれを眺めながら、なんでこんなところに?と思う。さっきの炎で燃えたにしては熱があまり無いし、焦げたにしては色が変だった。

 

「ルイー! どうしましたかー?」

 

考え込んでいると、サクラコが叫んで呼んできた。

 

「ごめん! 今行くー!」

 

とりあえず考えることをやめて、俺はそれをポケット中にしまうのだった。




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○ルイがレベルアップした!
レベル16→17
HP=137→152+15
MP=82 →94 +12
力 =65 →68 +3
早さ=44 →52 +8
守り=36 →46 +10
運良=14 →15 +1
神秘=22 →24 +2
攻魔=59 →66 +7
回魔=61 →71 +10
・スカラを習得 スキルポイント+11p

この後がとにかくめんどくさいぜ。でも、これさえ終わればついにまともなバカンスパートが始まる!
んで、描写の薄い二人の関係も……『これが目的』

即死、ザキ系の呪文、特技の導入 あり?なし?

  • アリ
  • なし
  • どっちでも
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