機動戦士ガンダム まじかる☆バスク・オムくん 〜俺のゴーグルは全てを『みるみるー』している〜 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
宇宙世紀0087年5月。エゥーゴによるジャブロー侵攻作戦の余波が残る中、ティターンズ内部では、組織の肥大化に伴う『エリート意識の歪み』が、最も愚かな形で露呈し始めていた。
俺バスク・オム大佐の忠実な僕を自認するジャマイカン・ダニンガン少佐。公式記録における彼は、バスクの権威を背景に傲岸不遜に振る舞いながらも実力は伴わず、最後にはエマ・シーンやシロッコからも軽蔑される『腰巾着』の典型として描かれる。だが、アレキサンドリアの執務室に現れた彼のスラックスに向かって俺が呪文を唱えた瞬間――
「ジャマイカン。貴様、その軍服の下で……一体何を『企んでいる』ッ! みるみるーッ!」
ぬぉぉぉっ。透けた先に鎮座していたのは、ティターンズの誇りである『黒の規律』とは対極にある、あまりにも派手で、あまりにも無節操な、けばけばしい『花柄トランクス』であったッ。
「ぬわーッ!! は、花柄じゃ〜〜〜っ!!! しかもトランクスゥーッ!! 貴様、正気かッ!」
「は、はいッ、バスク大佐ッ! これからはエリートも『遊び心』が必要かと! 大佐の好まれる高級な柄を取り入れ、私も一皮剥けた男に……」「黙れッ! 貴様のそれは『遊び』ではないッ! ただの『腐敗』だァーッ!」
ゴーグルの出力を絞っても、そのどぎつい色彩が網膜を焼く。ジャマイカンは、俺が『パンツ』にこだわっていることを聞きかじり、あろうことかクワトロの金ピカのような『贅沢』こそエリートの証だと勘違いしたのだ。だが奴が選んだのは、ホールド感ゼロの、ただ『高いだけ』のダサ柄トランクス。
「みるみるー、視える、視えるぞッ! 貴様のその、重力に負け、だらしなく遊泳するトランクスの裾がァッ! 貴様のような男が、いつかエゥーゴの『自由』という毒に中てられ、背後から撃たれる様が手に取るように分かるぞォーッ!」
「そ、そんなッ、私はただ、大佐に気に入られようと……ッ!」
「軍人が求めるべきは『密着(ホールド)』だッ! 急激なGの変化に耐え、皮膚の一部となる『ピチッとした』やつこそが、ニュータイプを凌駕する絶対領域を創るのだッ! 貴様のような『トランクス派』に、この宇宙を統治する資格などないァーッ!」
「今すぐそれを脱ぎ、官給品の『黒』に戻せッ! さもなくば、貴様の次なる戦場は……このゴーグルのピントすら合わぬ、暗黒の虚空だと思えッ!」ジャマイカンが青ざめて走り去る。
「……孤独だ。エマ君。君の、あの面白みのない、しかし誠実な『白』が、今ではこの宇宙で最も尊いものに思えてくるよ……」俺は鼻血を拭うことさえ忘れ、遠ざかるアーガマの影を、ただひたすらにみるみるーで追った。だが、笑い事では済まなかった。この『花柄トランクス革命』は、やがてティターンズ全体を覆う『見栄っ張りパンツ』の伝染病の、ほんの序章に過ぎなかったのである――ッ!