機動戦士ガンダム まじかる☆バスク・オムくん 〜俺のゴーグルは全てを『みるみるー』している〜 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
宇宙世紀0087年10月。小惑星アクシズの地球圏帰還。それは、グリプス戦役という均衡を根底から覆す『暴力的な第三極』の出現を意味していた。公式記録において、ザビ家の遺児ミネバ・ラオ・ザビを擁するハマーン・カーンは、旧ジオン公国軍の残党を糾合した『アクシズ』として、あまりに強烈な介入を果たす。
旗艦グワダン。冷徹なる独裁者バスク・オム大佐は、自ら交渉の場へと赴いた。だがそのゴーグルの奥で彼が観測していたのは、外交上の駆け引きなどという矮小なものではなかった。「……みるみるーッ!」
「あ、あわわわ……み、みるみるー……みるみるーッ! だ、駄目だッ、透けんッ! このゴーグルの全エネルギーを使っても、彼女のマント一枚を透視できんだとォーッ!?」
鼻から溢れる『刻の涙』が、純白のハンカチを汚す。ハマーン・カーンの纏う重厚なマント。その下は――俺のゴーグルが人生で初めて、完全に『敗北』した、絶対の黒であった。
「これは……こ、これは、伝説の『みるみるー不能』のパンツッ! クワトロの金ピカでもない、エマの朴訥な白でもない……小惑星の極限環境で磨き上げられた、究極の……ロイヤル・ブラックだとォーッ! 一分の隙もないッ!」
公式には『傲慢な態度でティターンズを翻弄するハマーン』とされるこの会談。しかしバスクの主観において、それは『全人類の管理』を目指す男と、『一つの家の復興』を背負う女の、みるみるーの限界を懸けた果てなき激突であった。
「バスク・オム。その不気味なゴーグルで、何を見ている」ハマーンの凍りつくような、それでいてすべてを射抜くような視線。その気迫だけで、ゴーグルのレンズが物理的にビリビリと震えた。
「クッ、殺気だとッ!? いや、これは……『見られている』ことへの、王としての拒絶反応かッ! ニュータイプという種は、自らのパンツが科学的にみるみるーされることさえ直感するというのかァーッ!」
シロッコが愛人たちに強いた『作為的な統一』とは違う。ハマーンのそれは、誰に命じられるでもなく、ザビ家という重圧に耐え抜くために、自らが自らに課した『武装』としての黒であった。それは実用性を超越した、いわば『魂の鎧』。
「……孤独だ。ハマーン。貴様のその気高い黒に触れる者は、この宇宙にはもう誰もいないのだろうな。俺のこの、すべてを見抜くゴーグルですら、貴様の最奥に触れることは叶わん……ッ」
公式設定において、交渉は決裂。アクシズは独自の道を歩み、戦局は三つ巴の泥沼へ引きずり込まれる。グワダンを後にするバスクの背中は、敗北者のそれではなく、究極の『みるみるー不能』を目撃した巡礼者のように、どこか憑き物が落ちた凄みがあった。
「ジャマイカン。アクシズとの協力はどうでもいい。それより、アクシズ製の洗濯洗剤の成分を調べろッ! あの『みるみるー不能の黒』を維持する秘密は、水の硬度にあるはずだァーッ!」女帝の黒に網膜を焼かれた男は、さらなる狂気とともに、その執念を『サラ・ザビアロフ』という名の、もう一人の哀しき少女へと向けていく――ッ!