機動戦士ガンダム まじかる☆バスク・オムくん 〜俺のゴーグルは全てを『みるみるー』している〜 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
宇宙世紀0083年11月。『星の屑作戦』は、連邦軍観艦式への核攻撃、そして北米大陸へのコロニー落としという最悪の結果をもって終結した。公式記録では、このデラーズ紛争の隠蔽と、ジオン残党の掃討を名目に、地球至上主義者によるエリート部隊『ティターンズ』の結成は、連邦軍の軍事権力の肥大化を象徴する出来事とされる。
だが、その血塗られた再編の舞台裏。連邦軍本部ジャブローの最深部、ジャミトフ・ハイマン大将の私邸で、俺バスク・オム大佐は、鼻血を滴らせながら一通の極秘計画書を突きつけていた。
「閣下。ご覧ください。これがデラーズ・フリート……ジオンの魂を自称する者たちが、最期に穿いていた『パンツ』のサンプルです」
補給を断たれたジオン残党のパンツは、かつてオデッサやソロモンで見せた誇りを失い、粗悪で、湿って、しょんぼりした灰色に成り下がっていた。「みるみるー」。俺はサンプルに残された残像を透視し、悲しげに首を振った。
「視えます。視えるのです、閣下。パンツの乱れは、即ち思想の乱れッ! 連邦の既存組織も同様。官給品という名の甘えに浸り、白の惰性に溺れた今の連邦軍に、宇宙を統べる資格はありませんッ!」
ジャミトフの鋭い眼光が突き刺さる。俺が主張したのは、単なるジオン残党の殲滅ではない。全連邦軍士官の『パンツの完全統一と全数みるみるー(検閲)』による、徹底した思想統制である。
「バスクよ。貴公の言う『黒』とは、それほどまでに強い規律か」「はい。光を吸い込み、不純物を許さぬ究極の色。ティターンズ・ブラックッ! これを穿く者のみが、重力から解き放たれた真のエリートとなるのですッ!」
俺の脳内では、すでに数年後の宇宙が映し出されていた。全乗組員が俺の承認した黒パンツを穿き、ゴーグルのダイヤルひとつで、いつ、どこで、誰が、どんな気合で任務に当たっているかを瞬時に把握できる、完璧なる『みるみる管理システム』。
「……いいだろう。この組織の洗浄(ランドリー)、貴公に任せる」ジャミトフの決断。宇宙世紀0083年12月4日、ティターンズ結成。公式には「スペースノイド弾圧を目的とした武装組織」と定義されるが、俺にとっては全人類から『野暮ったい隠しごと』を取り除く『地球圏・みるみる庁』の誕生であった。
「……待っていろ、エマ・シーン。貴様のような潔癖な女が、俺の『黒』に染まるその瞬間を、俺はこのゴーグルで一秒たりとも逃さず、みるみるーしてやるッ!」
黒い制服に鼻血が落ち、跡形もなく吸い込まれる。これだ。汚れを隠し、真理だけを透過させる究極の暴力装置。だが――ジャミトフは知らなかった。自らが解き放ったこの男が、やがてティターンズを『パンツ狂いの帝国』へと変貌させることを。グリプス戦役。人類が、服を脱ぐより速く、俺のゴーグルにすべてを晒す時代の幕開けが、今、ここに告げられたのだッ!