機動戦士ガンダム まじかる☆バスク・オムくん 〜俺のゴーグルは全てを『みるみるー』している〜 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
宇宙世紀0087年3月。グリーン・ノアから脱出したエゥーゴの強襲巡洋艦アーガマは、月軌道へと向かっていた。公式記録では、ティターンズの思想に疑念を抱いたエマ・シーン中尉が、ガンダムMk-IIを奪還してエゥーゴへ亡命した歴史的事件である。だが追撃する巡洋艦アレキサンドリアの艦橋で、俺バスク・オム大佐は、かつてない喪失感に打ち震えていた。
「……計算が、狂ったッ。あの『白パンツの生き証人』が、よりによって反地球連邦組織に流出するなど……ッ」
遠ざかるアーガマへ向け、俺は最後の透視を試みた。「みるみるーッ……!」
エマ・シーン。彼女のパンツは、ティターンズの精鋭に相応しい『黒』への移行命令を無視し続けた、頑ななまでの『白』であった。しかも、着脱の楽さより確実な固定を優先した、鉄壁の三段ホック仕様。
「ぬぉぉっ……あの潔癖すぎる三段ホックッ! あれが、エゥーゴの『自由』という名のだらしなさに耐えられるはずがないッ!」
鼻から溢れる『刻の涙』が制服の襟を濡らす。公式には『裏切り者への怒り』とされるが、俺の絶望は、最高級の観測標本――いわば『連邦の潔白の生きた化石』が、野暮ったいスペースノイドどもの手に渡ったことへの憤りだった。
「みるみるー、視える、視えるぞッ! アーガマの艦内で、クワトロの金ピカパンツに毒され、みるみる柄を乱していく彼女の姿がァッ! クワトロォッ、貴様、あの中尉の質実剛健な白を、貴様の悪趣味な金で塗り替えるつもりかァーッ!」
「大佐、エマ中尉からの通信です。我々のやり方は間違っていると……」ジャマイカンの報告を、俺は拳で遮った。やり方が間違っている? 違う。間違っているのは、エゥーゴの『不規則な洗濯環境』だッ! 劣悪な環境で白パンツが黄ばむことを想像するだけで、俺のゴーグルは過負荷で焼き切れそうになる。
「ジャマイカン。人質(カプセル)を用意しろ」俺は冷徹に命じた。公式記録には『カミーユの母ヒルダを人質にした非道な作戦』と記される。だが俺の真の狙いは、極限の心理戦でエマ・シーンが『正義』という支柱を失った時、その三段ホックにどんな『迷い』が生じるかを、みるみるー観測することにあった。
「エマ君。エゥーゴは君を、ただの戦力としてしか見ない。だが俺だけは違う。君のその、間に合わせの白の下にある『正義』の輪郭を、このゴーグルは永遠に、みるみるーし続けるッ」
アレキサンドリアの主砲が漆黒の宇宙に火を噴く。エマ・シーン。君が亡命した瞬間に、俺の『最高の観測標本』は失われた。残されたのは、規律を失い、派手なパンツに色めき立つジャマイカンのような凡俗のみ。……孤独だ。だがこの孤独こそが、次なる惨劇――俺が生涯で最も後悔することになる、あの『毒ガス作戦』への引き金を引くとは、この時の俺は知る由もなかった――ッ!