機動戦士ガンダム まじかる☆バスク・オムくん 〜俺のゴーグルは全てを『みるみるー』している〜   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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30バンチの惨劇、あるいは『みるみるー、できない』

宇宙世紀0085年7月31日。後に『30バンチ事件』として正史に刻まれる、ティターンズによる毒ガス(G3ガス)注入。公式記録において、この惨劇はサイド4の30バンチにおける反地球連邦デモを鎮圧すべく、ジャミトフ・ハイマンの黙認の下、バスク・オムが断行した『人類史上最悪の粛清』とされる。

 

だが、漆黒に塗り潰された巡洋艦アレキサンドリアの艦橋で、俺バスク・オム大佐は、かつてない虚無感に苛まれていた。

 

「……み、みるみるー……みるみるーッ……! なぜだッ! なぜ、何も視えんッ!」

 

ゴーグルが映し出すのは、静寂に包まれた30バンチの街並みだ。そこには数百万の生命が存在していたはずだった。だがG3ガスに神経を断たれた人々からは、生きた者だけが放つ体温も、鼓動も、そして俺が管理すべき『パンツの温もり』が、まるで伝わってこないのだ。

 

「規律も、迷いも、恥じらいもないッ! ただの『動かないパンツ』に成り下がったというのか、スペースノイドどもめッ!」

 

鼻から溢れる『刻の涙』が、熱を失った冷たい涙に変わる。俺のみるみるーが捉えるのは、生きた人間が苦しみ、汗をかき、その結果としてパンツに刻まれる『生』の脈動だ。だが、今の30バンチはどうだ。透視の先にあるのは、ただ静止した、乾ききったパンツばかり。

 

「衣服だけが残っている。情報の詰まった『中身』が消え、もはやみるみるーする意義すら失われた、空っぽの外殻だけがァッ……」

 

「大佐。全住民の沈黙を確認しました。これで反連邦の火種は消え去ります」ジャマイカンの冷徹な声。だが俺は、震える手でゴーグルを握りしめていた。

 

「馬鹿者がッ! 消えたのは火種ではないッ! この宇宙から、数百万通りの『パンツ(サンプル)』が永遠に消失したのだぞッ……これがどれほどの損失(ロス)だと、なぜ分からんのだッ!」

 

俺は叫び、同時に激しい虚脱感に襲われた。死者はみるみるーできない。俺の求める『恐怖政治』とは、生きた人間が『いつどこでパンツをチェックされているか分からない』という緊張感の中で、自らを律する姿を観測することにある。完全に沈黙したコロニーは、もはや、みるみるーの対象ですらない。ただのゴミ捨て場だ。

 

「……エマ君。君は、この『何も視えない世界』を正義と呼ぶか? 俺は今、かつてない恐怖を感じている。この宇宙が、俺のゴーグルですら何も映せぬ、ただの巨大な『遺骸』に変わっていくことを……ッ」

 

俺はひとり、光を失ったコロニーを見つめ続けた。公式設定から1ミリもズレることなく、バスク・オムは歴史を塗り替えていく。だが、みるみるーの効かぬ死の静寂に、俺の聖戦は皮肉にもその目的を見失いかけていた。生命の熱を失った30バンチの残響が、ゴーグルの奥底で、いつまでも耳鳴りのように鳴り響いていた――そして俺は知らなかった。この日を境に、俺の足元――ティターンズ内部から、笑うに笑えぬ『反乱』の芽が吹き出していたことを――ッ!

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