皆さんおはようございます。お久しぶりです猫バロンです。
第十話が書きあがったので、久しぶりにハーメルを開いてみたら、評価バーが赤くなっていて大変驚きました!
応援、誠にありがとうございます!また、現段階においてこの小説をお気に入り登録してくださっている129名の皆様及び、私の拙い作品を閲覧してくださっている皆様!
誠にありがとうございます!!!!(クソでかボイス)
さて既に気づかれている読者の方もいらっしゃると思いますが、
今回も一万字以上の文章になっております。
筆者としては、一話ごとの文章を減らして二話に分割するべきか非常に悩んでいます。
長文だと読みにくいと感じられる読者の方もいるでしょうし、どうするべきでしょうか?
更に、完成して直ぐに、投稿するのではなくある程度まとまったストックを確保してから、投稿するのではどちらがよろしいでしょうか。
皆様のご意見を聞かせていただけますと非常に嬉しいです!
コメント・ご意見等心よりお待ちしております!長文失礼いたしました!
帝国歴478年 軍務省 第39会議室 出征直前
ゴットフリート・フォン・マッケンゼン
自分自身がオフレッサーの母方の甥であるということ知ってから、一ヶ月が経過した。早速、ウルフェンベルク准将の副官として業務を行いながら自分にできる精一杯の仕事を行っていた。
副官の業務は、かなり業務量が膨大だ。事務作業からスケジュール管理や、関係各所と調整から身辺警護にまで及ぶ。当初は慣れない業務内容から、准将には多大な迷惑を掛けてしまった。身辺警護や事務処理作業ならともかく、非協力的な参謀長や参謀達との連携不足や、旅団隷下の大隊指揮官達とのやり取りで俺は四苦八苦していた。
大隊指揮官達の三名の内に二名は協力的でスムーズに調整を行うことが出来たのではあるが、そのうちの一名はバルトシュタット上級大将の子飼いの部下であるレーム大佐という人物が大問題だった。年齢は、40代後半で軍服の上からでも分かる程、肥満体系の人物で、以前はじめて装甲擲弾兵総監部の建物を訪れた時にすれ違ったあの肥満体系の士官だ。
門閥貴族の傍流に属する家柄の人物で、太鼓持ちの達人だ。性格は臆病であり思慮が浅く、残忍で部下に対して、口答えを許さずに私的制裁を加えるで有名であり、ゴールデンバウム朝末期の貴族のお手本の様なクズだ。
帝国騎士の俺と会話することがよほど気に障るのか終始、不機嫌そうな表情を浮かべて卑しむ視線を向けてきている。バルトシュタット上級大将が装甲擲弾兵総監に就任すると同時に、装甲擲弾兵に転属されてきた人物でこの男は今回初めて陸上戦闘指揮官として戦場に出征することになる。
何故か今回の出征に対して非常に自信があり、敵を自分自身が殲滅すると息巻いているようであるが、バルトシュタットからの覚えはいいとは言えない人物で今回の出征で活躍して武功を挙げて、派閥の上位に立とうとしているようだが使い捨ての無くなってもよい駒の様に扱われているようだ。しかし、バルトシュタットに煽てられるとそれすら気付かない男だ。
この様な忠誠心…いや…功名心過多で思慮深さに欠ける人物は何をするのか分からないという怖さがある。レームがバルトシュタットに何らかの形で准将に妨害活動や暗殺を策謀しているのか、分かったものではない。
俺は准将が割り当てられた、124旅団の旅団長の執務室で端末を操作しながら事務作業を行っていると連絡事項が伝達されてきた。そのため俺は准将に対して、以前から開催が予定されていた、本日行われる出征前の作戦会議に参加する軍人たちが確定を申告した。
出征前に行われる作戦会議は、錚々たる軍人が参加することになった。
宇宙艦隊司令長官、グレゴール・フォン・ミュッケンベルガー元帥と宇宙艦隊総参謀長と参謀複数名。
統帥本部と情報部から今回の作戦会議に出席を命じられて参加した参謀複数名。
装甲擲弾兵総監、バルトシュタット上級大将と門閥貴族一門の参謀複数名。
装甲擲弾兵副総監、オフレッサー大将と彼の子飼いの参謀達複数名。
そして、我らが第124旅団からは、旅団長ディートリヒ・ウルフェンベルク准将。及び、124旅団の参謀長、旅団麾下の大隊指揮官三名、副官の俺、さらに補給、通信、情報、作戦、を専門に取り扱う幕僚複数名という編成になっている。
だがこの会議に参加する軍人の人員表を最後まで確認した時に、俺は言葉を失った。
地上兵力の護衛を担うことになる三千隻の艦隊司令官は、ミヒャルト・ジギスムント・フォン・カイザーリング少将並びに、参謀長としてクリストフ・フォン・バーゼル准将だった。
俺はその時、驚きのあまり人員表を凝視して固まっていた。准将の声でようやく通常通りに戻ることができるほどだった。
ミヒャルト・ジギスムント・フォン・カイザーリング…。
俺が彼の名前を聞いた時に最初に浮かんだのが、帝国歴483年に行われたアルレスハイム星域会戦だ。前世の記憶によるものではあるがアルレスハイム星域会戦の敗因は、待ち伏せを行っていたカイザーリング艦隊において気化したサイオキシン麻薬により大敗を被った戦いだ。この戦いは当初は奇襲をかけるために帝国軍は圧倒的な優位な状況であった。しかし、この奇襲は失敗した。
理由は、後方主任参謀であったバーゼル少将が持ち込んだ、サイオキシン麻薬が気化したことにより奇襲は失敗して艦隊の半数以上が壊滅するほどの損害を被った。
アルレスハイム星域会戦が起きる帝国歴483年までまだ時間があるとはいえ、あの惨状が今回の遠征で発生しない保証は何処にもない。地上戦が主目的ではある以上、装甲擲弾兵は艦隊戦は専門外なので宇宙艦隊から非正規艦隊、約3千隻の指揮官が参加することになっている。この艦隊を指揮するのがカイザーリング少将である。
この状況は非常にまずい…。階級から言えばカイザーリング少将が上位ではあるが、今回の作戦は地上戦が目的であり実働部隊の指揮はウルフェンベルク准将がとることにはなっている。
彼のことを副官の権限で調べられるだけ調べてみたが、驚かされた。現段階における彼の評価は男爵家の当主でありなが爵位によって獲得した地位ではなく、派手さはないが実直で堅実な用兵を行う指揮官として知られていた。
軍務省データによると正規艦隊の司令官は難しいかもしれないが、一個艦隊までならそつなく指揮統率を行う人物であると考えられている様だ。
俺自身は、カイザーリング少将に対して外伝の影響からか、そこまで悪感情は持っていない。確かに私情で動き真実を隠していたのは事実だ。しかし、最後には自らの責務…とでも言えばいいのだろうか。それを苦しみながらも全うする貴族…いや男だからだ。だが、一個人として好感が持てることと、軍人として信用できるというのは別だ。何よりも彼の艦隊には、バーゼルがいるからだ。
麻薬というものを用いて、利権を得る人物にろくな人間は存在しない。前世において、警察署の事務ではあったが度々、麻薬や違法薬物の利用者を観る機会があった。薬物の怖ろしい所は、依存性と副作用にある。…勿論、我々装甲擲弾兵も原作で触れられていた様に、薬物を使用することがある。装甲服を着用しての戦闘はどんな猛者であろうとも二時間が限度とされているからだ。しかし、使用するのは興奮剤などの依存性と危険性が低い薬物に限られる。
装甲擲弾兵となってから准将の教えや勉強会で、サイオキシン麻薬などの危険な薬物に対する危険性を教わったからだ。陸上戦闘の恐怖は艦隊戦とは比べ物にならない。だからこそ我々、装甲擲弾兵は薬物の利点を認めながらもその危険性を充分に理解しているといえる。
俺の様に外部から任官してきた士官と、厳しい選抜をくぐり抜けて任官が許される生粋の陸戦士官と士官以下の兵たちとでは大きく異なっている。そんな彼らでさえも、戦闘においては多大なる恐怖心などでストレスを受けるのだ。しかし、徴兵されて艦隊勤務を命じられた兵士たちの恐怖心は彼ら以上になるだろう。
そんな恐怖心を喰い物にして、利権を得るバーゼルの様な唾棄すべき輩は何があろうとも俺は許容することは絶対に出来ない。今回は決して油断することはできない。何があろうとも准将を御守りしなくてはならない。初陣になる俺に何が出来るかは分からない。それでも最善を尽くそう…。会議室に向かう道中の俺は自然と拳に力が入った。
定刻よりも早く准将と俺は共に、元帥や他の士官たちが会議室に参集する前に入室した。
円形のテーブルが置かれた会議室の指定されている席に着座した。俺は准将の横の席に腰かけると同時に話しかけられた。
「少尉。仕事には慣れたかな?」
「はっ。己の無能さを思い知らされております。小官の不徳の致すところであります」
「謙遜する必要はない。卿はよくやっている事務作業では大いに助かっているし、以前まで反抗的だった士官たちが多少はおとなしくなったからね。卿が控えているだけで大分やりやすくなった」ウルフェンベルク准将は穏やかな笑顔を浮かべて言った。
准将は、参謀としても陸戦指揮官としても極めて有能な人物だ。しかし、このゴールデンバウム朝銀河帝国においては有能な軍人であったとしても、平民というだけで命令を軽んじる貴族士官が多く存在している。
…どうやら俺の目論見は成功しつつ、あるようだ。貴族士官達の反感を俺自身に集めて、准将の作戦指揮がよりよく行われやすくなる様に行動していたことが良い方向に向かうといいのだが。人間は自分よりも体や声、態度が大きな人間に威圧されていると感じると、例え相手が正論を口にして、正しい行いをしていると分かっていても反感を持つ生き物だからな。
特に傲慢でプライドが高い貴族士官達にしてみれば身分も階級も下の俺に、背が高いからと言う理不尽な理由でも、見下ろされていれば面白くないだろう。更に准将に不遜な態度を取る輩に対してはそれを言葉で指摘したり、態度で不快感を表したからな。…勿論、上官に対する最低限の礼儀を厳守しながらではあるが。
貴族士官の中には准将に協力的な者達も存在しているのだが、圧倒的に少数だ。更に出征までの限られた時間ではあるが准将と共に旅団内の見回りと、練兵を行った。平民階級出身の兵達や中級士官や下士官たちには、准将自ら声を掛けた掛けたり俺自身も彼らと交流したことで友好的な関係性を構築できたと思う、上級士官以外からの反感はないとは思うが…。
「…少尉。卿には苦労をかけるな…」ウルフェンベルク准将は視線を伏せながら全てを理解しているように俺に語り掛けた。
「…何をおっしゃいますか。副官が上官をお支えするのは当たり前のことです。…こちこそお見捨て無きようお願いいたします」俺は深く頭を下げた。それに対して准将は温和な笑みを浮かべてから頷いた。そして、いつもの様な狼の様な雰囲気に戻った。
そんなやりとりをしていると、124旅団の幕僚たちが入室してきた。彼らよりも上位者である准将が先に入室していたことに驚き謝罪してきたが、准将は気さくに謝罪して笑いかけていた。銀河帝国の軍人の不文律として、高位軍人であればあるほど遅れて入室することになっている。
准将は度々この不文律を平気で破る。勿論、上位者よりも早く入室するのだが自らは部下たちよりも早く入室される。俺はむしろこの行いを好意的に見ることができた。准将は部下思いの方で、気さくに話しかけては、困ったことは無いかと語り掛けるのだ。俺はそんな准将の人柄が好きだ。身分や階級で判断することはせずに、一人の人間として扱ってくれる軍人は軍社会…いやゴールデンバウム朝銀河帝国では非常に稀有な存在だからだ。
もしかしたら、シュナイダー少佐はメルカッツ提督に対して生涯、この様な敬愛を向けていたのかもしれないな。そんなことを考えると、自然と心が暖かくなった。
そして定刻が近づくにつれて、参加者が続々と揃ってきた。階級が上位の軍人が入室するたびに、全員が起立敬礼をして答礼を受けてから着席するという行為を複数回繰り返した。
カイザーリング少将、バーゼル准将が入室し、オフレッサーが子飼いの参謀達を伴って入室してきた。一瞬、俺と准将を見つめてから軽く頷いてきた。
そして、バルトシュタット上級大将が、レーム大佐と門閥貴族一門の参謀達を伴って入室してきた。
バルトシュタットは門閥貴族に属する伯爵家の当主ではあるが門閥貴族である、ブランシュバイク公やリッテンハイム侯の間を巧妙に渡り歩き自らの権勢を拡大してきた長身で、やや小太りの五十がらみ軍人だ。
俺と准将は敬礼をするが、バルトシュタットは忌々し気に一瞥してから、ぞんざいに答礼をしてきた。
…横目でオフレッサーを見ると、さっさと着席して腕を組み不愉快そうな表情を浮かべていた。
そして、最後に、銀河帝国軍における実働部隊の長である、宇宙艦隊司令長官、グレゴール・フォン・ミュッケンベルガー元帥と宇宙艦隊総参謀長と参謀複数名が入室してきた。
会議室にいる全ての軍人たちが起立敬礼して、威厳に満ちた元帥を迎えた。ミュッケンベルガー元帥は、元帥の証であるサッシュを着用して、マントをなびかせながら答礼してきた。それと同時に総参謀長と参謀達が答礼した。
我々は、元帥が礼を解き着席してから同じ行動を行った。
定刻となり作戦会議が始まった。124旅団の参謀長である、ハルザー大佐の言葉で開始された。
「今回の出征における目標は、ヴァンフリート3-1に建設途中であると考えられる叛乱軍の補給基地の破壊、資材集積地点の破壊さらに、資材の拿捕を想定しております」
コンピュータを操作しながら、参謀長は以前准将と俺がオフレッサーに見せられたヴァンフリート3-1の最大望遠で撮影された映像をメインスクリーンに表示し、さらに詳細に語り続けた。
「動員兵力は、カイザーリング少将率いる約3千隻。地上攻撃部隊はウルフェンベルク准将率いる第124旅団、約3万5千人からなる遠征部隊であります。動員兵力は艦隊の兵力総数を加えると約38万5千人が動員される計画であります」
「ワルキューレの強行偵察によれば、ヴァンフリート3-1に展開する叛徒共の兵力は三万人無いし二万人からなる基地建設部隊であると考えられます。しかし、戦力的に考えて我が軍が有利となることが考えられますが、偵察による情報だけでは叛徒共にどの様な備えがあるのか知るのは困難であります。そこで我が軍は、強襲揚陸艦によって建設途中である敵基地の近郊に強襲をかけて敵に備える隙を与えずに攻略することが目標であります」
作戦を立案する際に俺も参加したのだが、正直に言えば無謀な作戦であると思った。いくら制宙権を確保しているとはいえ地上戦をそのまま行うことは非常に危険だ。本来ならば少数の艦を降下させて地上を攻撃する方が手っ取り早い。しかし、それでは同盟軍の資材を拿捕して彼らの真意を知ることが出来ない。
宇宙は人間が生存するのには余りにも過酷すぎる環境だ。そこで敵の資材や搬入した物資を解析することでヴァンフリート3-1に同盟軍が永久的な基地を建設することを想定しているのかが判明するということだ。
「またカイザーリング少将閣下の艦隊は、惑星軌道上に展開してワルキューレによる索敵を実施することで万が一にも叛乱軍が大部隊を率いて来襲して際は、地上部隊の引き揚げ作業を迅速に行い撤退することになっております」ハルザー参謀長は更に続けてヴァンフリート3-1の詳細な情報から作戦に参加する部隊の情報や直近の同盟軍との間に行われた遭遇戦における詳細な報告を行い一通り作戦を説明すると席に座った。
この参謀長は可もなく不可もない、といった能力を持っている軍人だ。作戦立案も情報畑出身の為か有能である。しかし、如何せん非協力的であ。本来参謀長であるのならば司令官と現場指揮官との懸け橋となり円滑な関係構築の為に動かなくてはならない。ウルフェンベルク准将曰く、同じ平民で士官学校の先輩である参謀長は准将の部下になっていることが面白くないのではないか…とのことだった。この参謀長が非協力的である為に俺は、職務以上の苦労をしているのではあるが…。
一時間ほどで作戦会議は終了した。各々が抱えている思惑が隠れているので作戦会議とはいっても事前に通達されている内容の最後の確認の様な物だ。ミュッケンベルガー元帥とオフレッサー大将には今回の出征でバルトシュタットを追い込む為の一手としての戦い。バルトシュタットにはウルフェンベルク准将を失脚させる為の思惑が。
今回の作戦会議の最大の役割は、相手が何を考えているのかを知ろうとすることにある。カイザーリング少将たちが今回の出征に参加するのはミュッケンベルガー元帥による意向で門閥貴族出身の士官達が反感を覚えず己の職務をしっかりと遂行することが出来るのが彼であるという理由で抜擢された様だ。
正直に言えば不安を感じる。油断は決して出来ない…。レーム大佐に対して気を抜くことはできないが彼だけではない…バーゼルが何かを企んでいるか分かったものではない。
何が起こるかは分からないのが戦場だ。…気を引き締めていこう。
帝国歴478年
ヴァンフリート星域 第三惑星第一衛星軌道上付近 大型強襲揚陸艦ホイベルク
ゴットフリート・フォン・マッケンゼン
作戦会議より約二か月後が経過してヴァンフリート星系に到着した。この星系は、イゼルローン回廊を同盟方向に進んだ先に存在する八個の惑星から構成されている恒星ヴァンフリートからなる星系である。
戦略的価値が帝国・同盟問わず現在まで低いとされてきた理由は、不毛自然環境と惑星状況及び航行するには余りにも難所である為、この星域でまともな軍人ならば、戦闘行為を行おうとは普通ならば考えないような場所であるとされてきたからである。
これは艦隊戦でも地上戦においても共通していると考えるのが軍事上の常識である。
その最たる理由は、恒星ヴァンフリートが不安定である為に、作戦行動中の通信がほぼ不可能になるからである。
現在、俺は強襲揚陸艦ホイベルクの艦橋の提督席に腰掛けるウルフェンベルク准将の右横に立ち、メインスクリーンに表示されるヴァンフリート3-1を眺めていた。
映し出される星は、赤褐色で緑とは無縁の過酷な荒涼とした大地が広がっている様に思えた。ヴァンフリート4-2とよく似た環境ではあるが、ヴァンフリート3-1の特徴ともいえる北半球の広大な平野に目が留まった。あそこに同盟軍が基地を建設している最中である。
「少尉。降下前の最終確認を行う。参謀長と参謀達の全員を艦橋へ。そして、大隊指揮官達をスクリーンに呼び出してくれ」准将が俺に視線を向けながら命じてきた。
「はっ!」
俺は准将に敬礼してから、遮音力場を出て、参謀達と大隊指揮官達を呼び出すためにオペレーターに声を掛けた。参謀達も大隊指揮官達も一部を除いて、呼び出した際に、面白くないと顔に書いてあった。
本来ならば、呼び出しはオペレーターたちの仕事なのだが今回の出征では資料や会話だけでは断定できなかった敵対的な参謀達や大隊指揮官達を判別する為に、准将の許可を貰ってから行っている事ではあるが、敵対的な彼らにしてみれば、「…忌々しい帝国騎士の新米少尉が余計なことを目障りだ」とでも考えているのだろう。
俺は事務的に、それでいて礼を失することが無い様に、十分注意してから准将の命令を個別に伝達して、大型強襲揚陸艦ホイベルクへの参集を伝え、大隊指揮官達をスクリーンへの呼び出しを伝えた。
このやり取りだけでも、参謀達全員と大隊指揮官1名はこちらに敵対的であることを感じ取った。以前の作戦会議で何となく分かっていたことだがまったく…。俺だって態々顔を見ただけで卑しむ様な視線や、侮蔑的な表情を浮かべるあんたらの顔なんて見たくもない。
俺は軽く溜息をつきそうになるのを、我慢した。そして、准将に参集を呼び掛けたことを伝えた。
「閣下。参謀長、参謀の方々参集及び、大隊指揮官達に伝達しました」
「ご苦労少尉。…その顔を見ると彼らは、相変わらずの様だな」
「…はっ。参謀の方々は軒並み…。参謀長も変わらずどっちつかずと言った印象です。現場で頼りになるのは大隊指揮官三名の内の二名になりそうです。…朗報は幕僚達の全員が敵対的ではないことです」
「…予見していたことではあるがやはり、厳しい戦いになりそうだ。兎に角、会議で決定された作戦を厳守しながら味方間での通信は密に、臨機応変に対処していこう少尉。我々は決められた仕事を確実にこなしながら十分に気を引き締めていこう。…何があるか分からないからな」
「はっ!」
現在までの航路は脱落艦が出ることも無く、予定通りの行程をたどることが出来ている。帝都オーディンから出撃して、早二か月程。途中、イゼルローン要塞に寄港してから故障艦の修理と補給を受け取ってから回廊を同盟側方向に侵攻した。イゼルローン要塞の現在の駐留艦隊司令官及び、要塞防御指揮官は原作には登場しなかった大将二名であったが、寄港の際に、准将と共に挨拶に向かったが少しのやり取りで二人の関係性が険悪であることを察してしまった。
原作において、初めてイゼルローン要塞攻防戦が登場するのは、帝国歴483年の第五次イゼルローン要塞攻防戦だ。五月六日に始まったこの戦いは、翌日には同盟軍の遠征軍総司令官、シドニー・シトレ大将は帝国軍が要塞に後退を始めた際に、迅速な艦隊運用を行い帝国軍に対して並行追撃を行った。これにより要塞主砲トールハンマーは封じられた。
一万三千隻程の帝国軍駐留艦隊に対して同盟軍は、五万隻を動員したこの戦いは、後一歩の所で陥落していたであしかし、陥落しなかった。理由は悪名高い、敵味方問わずに行われた無差別攻撃にあった。
まだ五年先の話と考えるのか、それとも五年しかないと考えるべきなのか。五年後自分がもしも、イゼルローン要塞に配属されて駐留艦隊に配属されれば、どうなるのか考えると恐ろしくなった。しかし、前世において味方殺しを知った時には愚かなことだと考えたが今生においてはそう断定することが出来なかった。
その時の、帝国軍の最重要事項はイゼルローン要塞の防衛にあった。帝国が外分的にも実利的にもイゼルローン要塞陥落を恐れていたことが分かってしまったからだ。更に、要塞防御指揮官はどの様に考えたのだろうか。
要塞が陥落すれば、高級軍人であるほど重い罰が加えられたことになるだろう。
間違いなく、駐留艦隊司令官と要塞防御指揮官の2人は、軍法会議の後に処刑されただろう。負け方によっては、間違いなく家族にまで、何らかの処罰対象になったことだろう。
それが、ゴールデンバウム朝銀河帝国なのである。銀河帝国において軍人は社会的な地位が高い。成功が続いているうちには、それで問題はない。しかし、一度の失敗で今まで築き手上げてきた成果が崩れ去ってしまう。
軍人としての人生は、登山の様であり登れば登るほど道が、狭まっていくとはよく言ったものだな。
勿論、どの様なやり取りが第五次イゼルローン要塞攻防戦の帝国軍司令官二人でなされたのかは分からない。何故あのような惨状になったのか、要塞防御司令部にも駐留艦隊司令部にも同盟軍の並行追撃の可能性を指摘する軍人はいなかったのだろうか…。俺は彼らを擁護するつもりは一切ない。どの様な状況であれ指揮官が配下の将兵に攻撃を下したのだから。綺麗ごとで勝利を収めることができないのは事実だろう。
しかし、部下を持つ軍人として勝利を得ることは何よりも重要だろう。だがそれと同じ…いやそれ以上に、部下たちを生きて連れて帰ることは責務だろう。どれほど綺麗ごとを言っても用兵家は、効率よく味方を死なせることだ…。だからこそ部下を指揮統率する軍人は、部下を犬死にさせるべきではないと俺は考える。
死ぬにあたって納得できる者はいないだろう…しかし、それが戦争だ。故に、部下は上官がどの様な軍人なのかを、理念ではなく肌で感じ取る。OVA版の冒頭のブリュンヒルトに乗艦した兵士たちが口にしていた様に。
准将は部下からの信頼を得つつある。以前、准将が指揮していた兵士たちと装甲擲弾兵副総監部でやり取りする機会があったが准将は彼らに信頼されていた。さらに、短い間だが尊敬に値する上官であると俺自身思っている。現場の苦しみを知っている准将なら、一人でも多くの将兵を家族に再会させることができるはずだ。
故に、俺は准将から片時も側を離れずに常に、ブラスターをいつでも構えることが出来る様に臨戦態勢を取りながら付き従った。
おかげで補給作業の為に入港した数日間で要塞勤務の兵士たちと目が合ったり、こちらの姿を確認すると彼らは軒並み、恐れた様子で直立不動で敬礼をする様になってしまったが…。
そんなことをスクリーンを見つめながら、考えていると五分程で大隊指揮官達がスクリーンに現れた。大隊指揮官のグロスハウバー大佐、ベルクマイヤー大佐、レーム大佐が一斉に敬礼した。准将と俺は敬礼に答えると准将が語り始めた。
「我が遠征軍は、間もなくヴァンフリート星域第三惑星第一衛星の軌道上に接近する、今回の出征において重要なのは部隊間の連携を密にして、叛乱軍が態勢を整える前に迅速な部隊展開を行うことにある。カイザーリング艦隊からのワルキューレによる支援攻撃が行われその後に、起動装甲車による侵攻を行う。作戦計画に従う様に。卿らの奮闘を期待するや切である」
「「はっ!」」グロスハウバー、ベルクマイヤー両大佐の力強い返答が聞こえてきた。対照的にレームは、面倒な…と言わんばかりの表情で形ばかりの敬礼をするだけだった。准将もそれに対して何か言うことは無かった。
准将は降下に備えてそれぞれの持ち場に就くように参謀長や参謀達、幕僚たちに命じた。参謀長以外の者達が遮音力場を出ると、ウルフェンベルク准将は俺に声をかけた。
「少尉。カイザーリング少将閣下を呼び出してくれ」
「はっ」俺はオペレーターにカイザーリング少将との通信回線を開くように伝えた。直ぐに俺はオペレーターにそのことを命じた。三分せずにカイザーリング艦隊との通信が繋がった。カイザーリング少将とバーゼル准将がスクリーンに現れた。准将と俺は敬礼してそれに答える形でカイザーリング少将とバーゼル准将が敬礼してきた。
「カイザーリング少将閣下。地上攻撃部隊は間もなく、惑星軌道に到達致します。我々は降下準備に入ります」
『そうか。通信に問題が生じることが想定されるので、その場合に備えてシャトルの用意をさせておく。武運を祈るぞウルフェンベルク准将』見事な髭を蓄えたカイザーリング少将が准将に語り掛けた。
「はっ!閣下のご武運もお祈り申し上げます」准将はそう答えて、敬礼してそれと同時に俺も敬礼した。スクリーンが消えると思われたがカイザーリング少将は俺に語り掛けてて来た。
『マッケンゼン少尉。卿は初陣であったな。地上戦では何が起きるか分からない。十分に注意しながら、准将を良く補佐して職務を全うせよ』カイザーリング少将は穏やかに声を掛けてきた。
「はっ!承知しました!」俺が敬礼した状態でそう答えると、満足そうに頷いてカイザーリング少将は、答礼して通信を終えた。
カイザーリング少将は、男爵家の当主であるが気さくなところがある人物で、貴族にありがちな階級意識に捉われない人物だ。この様な考え方が出来る人物であるからこそ、ミュッケンベルガー元帥が抜擢したのだろうか。恐らくオフレッサーから、内々でウルフェンベルク准将を妨害する軍人ではなく、職務に忠実な軍人を抜擢して欲しいと打診があったのだろう。
…なるほど。出征前の作戦会議で、バルトシュタットやレームの様にあからさまに対立姿勢を取っていないこと、更に外伝の知識から他の貴族に比べれば遥かに、信用できる人物であることは分かっていた。
クロイツナハ・Ⅲでキルヒアイスによって命を救われていたことで、あそこまで好意的だと思っていたがそれだけではなかったのだな。
…ままならないな。善良な一人の女性を心から愛する古風な騎士が、その誠実さが己自身を陥れるというのは…。
軍法会議で愛した女性の名誉を護る為に、偽りを述べたことは許し難い…しかし、欠点が無い人間なんているだろうか…俺自身もそうだ。どれ程苦しみ抜いてもカイザーリング少将は己で決着をつけた。そう考えると、何とも言えない感情が俺の心を支配した。
そして、また俺は思考の海に潜っていたことに、気づき軽く頭を左右に振ってから准将に話しかける。
「閣下。そろそろお時間です。用意を始めます」
「分かった。準備を頼む少尉」
「はっ!」
俺は艦橋から出て隣室に用意されている横長のケースを二つを取りに行った。降下準備の為に、慌ただしく仕事をしている幕僚やオペレーターの声を聞きながら、准将の横にケースを降ろした。開けて軍服の上着とシャツをを脱いでインナー姿になると、その上から俺は装甲服の着用を始めた。他の帝国軍地上戦部隊とは大きく異なる、重厚な装甲服のパーツを完全に取り付けて用意が終わってから准将に声を掛けた。
「準備が整いました。閣下も装甲服を着用なさって下さい」
俺が声を掛けると准将も頷き装甲服を着用し始めた。地上戦…特に、装甲擲弾兵部隊は副官が保安上の観点から先に装甲服を着用する決まりが存在している。ややこしいことではあるが、装甲服を着用しただけの兵士を、装甲擲弾兵とは呼ばない。俺もこの世界に転生して知ったことではあるが、装甲擲弾兵と装甲服を着用した一般兵では明確に区別されている。勿論、それは装甲擲弾兵側に存在しているプロ意識によるものではあるが、明確な理由が存在している。
練度が大きく異なるのだ。装甲擲弾兵は、厳しい選抜試験を潜り抜けた、一握りの精鋭部隊だ。並大抵の選抜試験ではなく、死者が出る場合もあるほどだ。中でもウルフェンベルク准将やオフレッサーの様に任官してから現在に至るまで装甲擲弾兵であり続けている士官は、他の地上戦部隊から非常に畏怖される存在だ。
兎に角、降下準備に取り掛かろう。各艦から挙がっている報告を閣下に伝えなければならないし、最終確認を行わなければならない。俺は副官の職務に戻った。
一時間後、惑星軌道上に達して、地上降下部隊は降下体制に入ろうとしている。
準備を整えて三十分程で、カイザーリング艦隊とは別行動を開始した。カイザーリング艦隊は、衛星軌道上展開して制宙権の確保・近隣の偵察活動・地上降下部隊のワルキューレによる支援攻撃を行う。その後、ウルフェンベルク准将指揮下の124旅団は降下態勢に入った。
大気圏を突入した、大型強襲揚陸艦による降下が行われた。同盟軍の建設途中の基地から南へ五十キロ地点に降下、その後速やかに陣形を展開した。
数百隻の大型強襲揚陸艦に分乗した、装甲擲弾兵たちが機動装甲車に乗り込み。後方地帯に指揮所を設けることはせずに直ちに進撃を始めた。
機動装甲車が列をなしてけたたましい走行音を轟かせながら出撃した。俺も准将が乗り込む、起動装甲車に搭乗して敵基地に向かって
帝国軍と同盟軍は荒涼たるヴァンフリート3-1の平野にて対陣した。平野の周りにはこの星特有の岩肌が聳えたっており北半球一帯に広がる平野を取り囲んでいる。同盟軍は帝国軍の来襲に備えてこちらから見て右翼側に簡易的ではあるが塹壕用いた堅牢な陣地を形成していた。俺は機動装甲車に搭載された、望遠カメラで戦場を眺めた。
…なるほど。どうやら同盟軍は兵力差をカバーする為に、わが軍から見て左翼に側に聳える、この広大な平野唯一の峻険な岩山を利用して陣形を展開することで補っている様だ。敵基地が、レーザー連装砲などの対空兵器を多く保有していることがワルキューレによる強行偵察により判明した。そのため残念ではあるが、支援攻撃は行われていない。制空権を両軍が握ることができていない状況なのだ。…まさに地球時代…前世における戦車戦が現在の状況を表すには、一番正しいのではないだろうか。
更に状況をより詳細に説明するのであれば、レーダー等の索敵能力がある計器が使用できないので有視界に頼りざろう得ず、望遠カメラのみでしか戦場全体を知ることしかできない。機動装甲車に乗り込んだ装甲擲弾兵たちは状況に応じて下車して、盾にするようにして前進することになる。。しかし、装甲車では登れないあの岩山が、天王山になるのだろうか。
帝国軍は左翼にレーム大佐、中央にグロスハウバー大佐、右翼にベルクマイヤー大佐、そして、准将は三個大隊のやや後方から全軍の指揮を行う。全軍の指揮と言っても、妨害電波と恒星ヴァンフリートの影響で円滑な通信を行うことは困難だ。故に、大隊指揮官と旅団長の連携が求められる。であるからこそ地上戦においては、一定の裁量権が前線指揮官には与えられている。この戦場ではこれがどの様に作用するのだろうか…。滑稽な話ではあるが、これ程の精密機器に囲まれながら、地上戦においては妨害電波を両軍が使用する為に使用がほぼできなくなる。
その為に、今回の出征においては人間による伝令兵から軍用犬や伝書鳩も使用される。宇宙空間で戦闘行為が行われるが、地上戦ではこうした光景が当たり前に見ることができる。…技術の進歩が戦争を進化させるのではなく退化させているというのは皮肉に思えてならなかった。
そんなことを考えていると別車両に搭乗している作戦参謀が准将に、近距離なら使用できる通信機を用いて意見具申をしてきた。流石に、今回が地上戦の指揮を始めて取るレームでは不安になったのだろう。…自分の命が掛かっていれば彼らも仕事をするようだ。
「確かに左翼には、不安あるが今からの再転換は現場に混乱を来すだけだ」准将は、作戦参謀にそう語り通信を切った。終了後、軽くため息を付きそうになった准将は押し殺す様に押さえていた。
レームを左翼側に展開するように具申したのは、彼だったはずだ。…戦場で協力的になるのは大いに結構だが現場をもう少し顧みることはできないのだろうか。新米少尉の俺でも難しいことだと分かることだ。現場の兵士たちの練度はともかく、高級士官達の練度が低すぎる。准将がため息を付きそうになったのもこうした理由が、あるのではないだろうか。
それでも、3個大隊に配置された全ての車両が同盟軍陣地に向けられ、主砲である百二十ミリレールキャノンの照準が合わされてウルフェンベルク准将の号令を待ち交戦態勢を整えている。
宇宙歴787年 帝国歴478年 標準歴 十二月二日
建設途中の同盟軍基地からに南へ十キロ地点において、荒涼たる平野が広がるヴァンフリート3-1における開戦の火ぶたが切られた様としている。