TS転生人外ロリ、厭世魔法少女の使い魔になる 作:蓋然性生存戦略
「セラフ」
認可とかが下り、俺は初めて外に連れ出され、セラフの任務に同行した。
したのだが。
「なに?」
「多くない?」
なんか数が異様に多いのだ。
それはもう軽く100を超える数がいる。
初めての戦場にしてはかなりヘビィじゃない?
「数だけはね。旧オート禁足地ではそれなりに見るタイプよ。群体型の魔物で、エスカにちょうどいいと思って連れて来たの」
「……私、戦いは素人なんだけど」
「素人でも能力さえあればどうにでもなるって言ってんの。初めて会った時みたいな馬鹿みたいにデカい剣で薙ぎ払いなさいな」
「わかった……」
だが、セラフが可能というのなら可能なのだろう、きっと。
ほんまか?
強い人の言うことって全然参考にならないからな……強い人の基準で言いやがるし。
とりあえず言われたとおりに薙ぎ払ってみるが……あれ?
ホントに薙ぎ払っちゃってるぞ?
え?弱くね?
「魔人級ですらない群体型の魔物なんてこんなものよ。足切り性能はそれなりにあるけど、一定以上の殲滅力を持つ存在には一方的にやられる。その程度」
「……私って強かったんだ」
「能力だけ見ればね。技術面は雑魚なんだからしっかり鍛えなさい」
「うっ……」
いやでもご主人、向き不向きってあると思うんすよ。
遠距離から固定砲台ができるなら俺はそっちの方がいいっす。
「別に格闘のエキスパートになれって言ってるんじゃないの。強みを生かせる程度には身体を動かせるようになれって言ってるの」
「……心、読んだ?」
「分かりやすいのよ」
すげーな、この無表情フェイスがデフォの身体に対して心理学成功させるのは。
俺より心理学高そうだな、多分90くらいある。
「お前の強みは骨によるバカみたいな制圧能力。ある程度形も自由にできるみたいだから、非殺傷設定もできる優れものね。そんな設定私たちが使うことは無いけど。お前に必要なのは相手を近づけさせずに一方的に制圧する盤面制御力。分かるでしょ?」
「それは、そうだけど」
確かに、俺の能力と基礎身体能力を考えれば、相手を近づけさせないのが正解だ。
その立ち回りを覚えるほかないというのは御尤もな話で、であれば今回の魔物退治はちょうど良い練習相手なのかもしれない。
弱いとはいえ、数が多くて討ち漏らしも多い。
つまりは、だ。
「ところでセラフ」
「なに?」
「手伝ってくれたりは……」
「お前が負けそうな時だけ手伝ってあげる」
「鬼、悪魔、喪服女っ」
俺は死に物狂いで処理しないといけないわけだ。
ウォォォォォオン!!
――3分後――
「ジャスト3分。遅いわね」
「がんばったのに」
「ま、単独で倒せるだけ褒めてあげる。並の魔法少女じゃ単独討伐はできないしね」
「ん……」
倒し終わった俺に下された判定は
御主人からすれば遅いが、世間一般的にはすごいこと、らしい。
もっと褒めて欲しい。
褒めて伸びるタイプなんだ、俺。
「ま、言いたいことは色々あるけど、ひとまず良しとするわ。脅威度A下位を単独撃破できるなら、私の足手纏いにはならないでしょう」
「脅威度って?」
「魔物の危険性を端的に表す指標よ。A下位、というか脅威度Bからは単独討伐を想定されてない」
「……セラフ、バケモノ」
「お前もだから、エスカ」
俺がバケモノ?
違う、俺はTS転生人外ロリだ……。
それはともかくとして。
「私以外の脅威度B以上の単独撃破は、数えるほどしか例がないわ。禁足地を根城にしているのは私だけだし」
「社会不適合者のセラフでも生活して行けるわけだね」
「うるさいガキね。養っているのはどこの誰かしら」
「これからは私も仕事を手伝う、無職ではない」
「お前も同類よ」
「ひどい」
必要最低限しか働かなくても良い理由が、この時点で分かった。
ご主人本当に強過ぎる。
俺も相当強いスペックであることも判明したが、だからこそこの女強過ぎる。
なんだこいつ……なんだこいつ!?
「さて、仲良しごっこはここまで。まだ依頼目標は残ってるから、ここから手分けね。何かあったら連絡よろしく。任地用の端末は渡したわよね?」
「うん」
「よろしい。北側をよろしくね、私は南を片付けてくる」
そして当然のように単独撃破報告の少ない魔物がうじゃうじゃいるエリアで手分けと来た。
ナチュラル最強ムーブ止めてね。
俺カタログスペックだけなの、高いのは。
「……やるしかない、か」
しかしやるしかない。
何故かというと、サボった時が怖い。
噴火寸前の火山みたいに不機嫌になるのだ。
それ以上踏み込むのは怖いので、俺はそうなる前に対処したい。
トボトボと歩いて北側に向かう。
任地用に貸与された端末のナビに従って歩くこと10分。
ああ、やっぱりいやがりましたよ、魔物の群れが。
距離にして約500mくらい。
まずは制圧射撃から開始する。
遠距離主体なのだ、まずは先制攻撃で大きく数を減らして、そのあと近づかれる前に全てを倒す。
魔物はなんか落とすらしいけど、ドロップ率は低いし回収は後ででいいって言ってた。
なので骨ガトリングをぶっ放す。
うっひょ〜、トリガーハッピー!!
「あは、あははは、フフフフフ」
楽しくなってきちゃった。
でも倒したらやめておかないと。
体に引っ張られてんのかな。
蹂躙が楽しいぞ、気をつけないと。
俺は強いらしいから、基本的に蹂躙になりそうだし。
あーでも、強めの個体とも戦っておきたいな。
対ボス想定とか組みたいしな。
探すか?
まあ、サーチアンドデストロイだからどうせ見つけるんだが。
今回の任務、殲滅任務だからね……あないあれーしょん。
資源になるけど、ほっておくと災害だからね、仕方ないね。
飛ぶのは最終手段として取っておきたいので、やはり徒歩だ。
身体能力は一般人のそれと大差ないので、結構広い面積を歩き続けるのは重労働だ。
しかもチビなので歩幅が狭い。
だが後悔はしていない。
欲望に勝るほど優先するものなどないのだ。
そうやって散歩気分で殲滅していること1時間。
思わぬ来客が来た。
「……魔人級?聞いてないんだけど」
「さすがに《エンドロール》でも取りこぼすかもしれないから、時間稼ぎしてくれって言われたけど……」
「その辺のB上位の魔物はともかく、確定でA超えてる魔人級とか相手にできないよ?」
魔法少女?セラフ以外に?
セラフからそんな話は聞いていないが。
すぐに連絡を入れる。
だって口ではどうしようもないみたいなこと言いながら武器を構えてくるんだもの。
剣、槍、銃……銃!?
さすがに銃弾は怖いってばよ。
『なに?』
「魔法少女、3人。勘違いされてそう」
『は?私たちのほかに派遣されるなんて聞いてないんだけど?』
「《エンドロール》でも取りこぼしがあるかもしれない、だって」
『チッ、無能上層部が。私が出てる戦場に有象無象を送ってくるんじゃないわよ。そもそもエスカの存在は開示してるのに共有されてないのはどういうこと?』
「とりあえず、助けてほしい。問答無用で攻撃されそう」
『はぁ……3分耐えなさい。一応言っておくけど、殺さないように』
「わかった」
――キィン!
まずは一発。
銃の魔法少女の先制攻撃を骨で防ぐ。
形状はマスケット型。
魔法少女なので先入観はいけないが、連射性はないと思いたい。
俺が一発防いでいる間に、距離を詰めてくる剣と槍。
骨で障害物を突き立てて時間を稼ぎ、バックステップと一時的な飛行で距離を取りながら、牽制射撃で遅延する。
ここ一か月の訓練でできるようになったことだ。
「やっぱり強い……!」
「でもやるしかないんでしょ!!」
しかし、思ったより弱いな。
ご主人なら突っ込んでくるぞ。
比較対象がよくないのか?
ご主人やっぱ強すぎない?何?特異点?
「しかたない、《エンドロール》が来るまで遊んであげる」
なんか話は聞いてもらえそうにないので遊んであげるしかないが。
せめてなんか話を聞こうよ。
魔物も倒さなきゃいけないのにさ。
あ、魔物発見!!デストロイ!!
よし、余裕出てきたな。
魔法少女に向けて〜、トリガァ~ハッピィ~!!
非殺傷にしたから大丈夫!!
まさか使わないといわれてたのに使う羽目になるとはね……これがフラグってやつか。
「え、ちょ!うぎっ?!」
「かはっ」
「こふっ」
ふっ、他愛もない。
やはりご主人が強過ぎるだけで俺は十分に強いらしい。
ふははははは、ご主人だけは怒らせないようにしよう。
そんなこんなで。
「エスカ」
「セラフ、無力化したけど、よかった?」
「いいわよ、別に。正当防衛だから。南は全部片付けたし、北もあらかた片付いてるみたいだから帰るわよ。そこの足手纏いを連れてね」
「わかった」
ご主人合流。
無力化した魔法少女は引き摺って帰還。
ご主人は相当おかんむりのようで、俺を家に帰した後、どっか行った。
正直怖かった……その矛先が誰に向くのかは知らないが、合掌はしておこう、南無。
「用件はわかってるわよね。担当者を出しなさい」
魔法少女協会本部にて。
怨嗟を隠さない魔法少女《エンドロール》が、ズカズカと突き進んでいた。
「え、《エンドロール》さん!し、しばしお待ちを!!今回の件については重大なエラーとして今緊急会議を……」
「黙れ。担当者を出せと言ってるのが分からない?早く出して」
「しかし、私の権限では……」
「出せ」
先日の任務。
彼女の使い魔であるエスカを連れた、初めての任務で、彼女の知らない増援がやってきた。
それだけですでに怒りが湧いているが、それに飽き足らず、認可が降り次第、情報公開したエスカの情報が認知されていないという、ていたらく。
結果としてエスカは無事だったが、味方であるはずの存在から自らの使い魔に攻撃が行われた。
また、上層部からの情報共有も怠慢が確認できるほか、今回の担当者は明確に『《エンドロール》と協会間で定められた規約』を破っている。
とても看過できるものではなかった。
怒り心頭に発すると言っても過言ではない。
しかし、そんな彼女を制止する声がひとつ。
「《エンドロール》。そこまでにしておいてもらえませんか?殺気で彼が死んでしまいます」
魔法少女協会会長、エブラナ=アルドミラージュ。
《エンドロール》の専属担当者でもあり、彼女の怒りを理解する存在でもある。
「黙れエブラナ。お前が3年前と同じ轍を踏みたいというのであれば止めはしないけれど、その代価はお前の命で支払ってもらう」
しかし、《エンドロール》の怒りは収まらない。
たとえエブラナが相手であろうと、その怒りを振りまくことをやめない。
そんな《エンドロール》に対し、エブラナはそよ風のように受け流して続ける。
「分かっています。貴女の怒りは尤もです。ですが、私刑に処しては世は回りません。どうか怒りを鎮めていただけると幸いです」
「じゃあ、世が回る処遇ってやつを聞かせてちょうだい。まさか懲戒免職で終わりだなんて言わないわよね」
「無論です。独断専行、規約違反、任務情報の過不足。懲戒免職で済ませるには些か重すぎます。厳密には調査が終わらなければ確定しませんが、札付きとして公表することになるでしょうね。それから、魔法少女たちのほうも、情報収集の不足としてランキングの降下処分を下します。これで手を打ってはいただけないでしょうか」
公表。
つまるところ、社会的な死。
今後、今回の担当者はまともな仕事に就くことはできなくなる。
その者はそれだけのことをしたし、誰もその存在を憐れまない。
そこまで聞いて、《エンドロール》はようやく矛を収める。
「……チッ、まあいいわ。次はないわよ」
「分かっています」
終焉を告げる嵐は去る。
その名の通り、物語の終幕。
例外なく、彼女と対峙した敵のすべてが終わっていく。
ゆえに《エンドロール》。
そんな彼女が去り、エブラナは力なく近くのソファに倒れるように座り込んだ。
「……生きた心地がしませんね」
注視してみれば、エブラナの額にはびっしょりと汗が流れていた。
さもありなん。
殺気だけで人を殺さんばかりの圧力を、真正面から受け止めたのだ。
常人であればとっくに倒れているダメージを受けていた。
「会長、すみません……」
「いえ、私の仕事ですから……しかし、やってくれたものです。もともと協会と彼女の関係は良好ではないというのに……」
「3年前の惨事のせい、ですか?」
「……ええ、彼女は当事者かつ、被害者ですから。もともと、彼女はあんな子ではなかったのですよ。才気あふれる、快活な子だったのです……」
「にわかには信じられませんが……」
エブラナは語る。
今の《エンドロール》になってしまったのは、協会の責任だと。
狂ったように高難度の任務しか受けない、捨て鉢な存在になってしまったのは、過去の自分のせいだと。
「しかし、あれほど怒りを見せるのは久しいですね……あるいは、あの使い魔の子が、あの子を救ってくれるのでしょうか」
もしそうであれば、エブラナは願わずにはいられない。
自らの尻拭いをさせてしまう恥を忍んででも、エブラナは《エンドロール》に立ち直ってほしいのだ。
「どうか、命を捨てようとしないでください……」