TS転生人外ロリ、厭世魔法少女の使い魔になる 作:蓋然性生存戦略
ご報告ありがとうございます。
作者はポンコツなので、今後ともよろしくお願いします。
「セラフ、ご飯できたよ」
「毎日毎日飽きもせずよくやるわ」
「セラフの生活が不健康すぎるのが悪い。三食コンビニ弁当で済ませないで」
「楽でいいじゃない」
「美味しくない」
「随分と舌が肥えてるのね。好きにすれば?」
拝啓、きっと輪廻転生の輪を潜っているであろうお父様、お母様。
俺は今、転生した先のご主人に、ご飯を作っています。
いやほんとさぁ、お前さァ。
隙あらばコンビニ弁当で済ませようとするのやめろよ。
疲れ切ったOLかよ。
過去に何があったかは知らないけどな、飯はちゃんと食え。
作れば食べてくれるだけマシだが……。
あの日、初めて任務に赴いた日。
鬼の形相でどっか行ったと思ったら、疲れ切った顔でセラフは戻って来た。
表情に自己嫌悪を滲ませながら、やはりソファに沈みこんだのだ。
何があったのかは知らない。
知る由もない。
だが、きっと何かあったのだろうことだけは察せられた。
とは言え、俺に出来る事なんて多くは無い。
精々が、出来るだけ旨い飯を作るくらいだ。
何も知らない俺が口出しなんて、おこがましいにもほどがあるからな。
「前から思ってたけど、やけに手馴れてるわね」
ギク。
ま、まあ?俺は前世でも自炊派だったし?
当然と言えば当然というか?
ちなみに今日はカルボナーラだぞ、麺から作った。
「……見ればわかる」
「その範疇を超えてない?」
「(目逸らし)」
「……まあ、どうでもよかったかしらね」
ごすずん!!
キミのように察しの良いご主人は大好きだよ。
「そういえばなんだけど」
「うん」
「次の任務決まったから」
「早くない?まだ三日だよ」
「お前が高スペックパソコン買ったり据え置きゲーム機買ったりゲームを買い漁ったりしたからだけど?貯金が6億シジルを切りそうじゃない」
「おかげさまで毎日楽しい」
ちなみに、1円当たり3シジルくらいだ。
つまりこいつは2億円の貯蓄がある。
つつましく暮らせば一生働かずに済むじゃねえかコイツ。
だがしかし、俺はそんなことはどうでもいい。
この過去に何かあった系美少女を放っておく理由は無い。
今こそTS転生人外ロリの利点を生かす時。
そう、俗世との(うわべは)かかわりの無さ!!
スレてない純粋な言葉が届くってワケ……。
まあ、今はまだその時ではないが。
まあでもお小言は一つ。
「セラフはもうちょっと楽しんだ方がいいと思う」
「なによ」
「あらゆるものが必要最低限。そんなんじゃ、いつかできることもできなくなっちゃうよ」
「……肝に銘じておくわ」
そういって、セラフはカルボナーラを食べ始めた。
心なしか、いつもより味わっている気がする。
うむ、余は満足じゃ。
うまうま。
などと日々は過ぎていき。
定期的に魔物をお掃除する生活。
そんなある日、とある報せが入った。
「魔人の特異個体?ウチのエスカじゃなくて?」
『はい。なんでも、魔法少女と接敵しても攻撃してこないどころか、武器を構えると一目散に逃げるそうでして。旧オート外縁部で目撃例が出ているので、巡回をお願いしたいのですが』
「たかが魔人級一体に私を駆り出すなんて、余程慌てているのね。《セイル・ルミナス》にでも任せればいいじゃない」
『それが……』
「なによ」
『《ヴェスペルベル》と顔が酷似していたそうです』
「……良いわ、その任務受けてあげる」
そろそろ一緒に暮らし始めて3か月になるが、その報せを受けたセラフは、いつになく真顔だった。
「セラフ、任務?」
「ええ。荒事になるかどうかは、向こう次第だけど」
《ヴェスペルベル》という単語を聞いてからだ、様子がおかしいのは。
きっと、過去に遭った何かが関係しているのだろうが。
「……セラフ」
「なに」
「一回落ち着いてから行こう」
「……言われるまでもないわ」
あんまりにも動きが硬い。
今なら勝てそうなくらいだ。
「少なくとも、今は行かせられない」
「は?」
「えい」
「!?」
ありゃりゃ、本当に勝てちゃうぞこれ。
心ここに在らず、能力を使ったとはいえ、あっという間にマウント取れちゃった。
「いつものセラフならこうはならない。分かった?」
「……わかったわよ……少し、頭を冷やす」
セラフは俺を押しのけて、ソファに横になった。
こいついっつもソファで寝てんな。
ベッドあるってのに。
まあいいか。
買い出しに行こう。
確か色々と心許ない物資が多かったはずだ。
ここ3ヶ月で習得した、角と翼を一時的に消す技能を用い、人間に変装。
セラフに一言かけて、俺は外に出た。
俺たちの拠点は、旧オート禁足地から程近いところにある。
元々禁足地は旧オート中央くらいの位置に座しているが、俺たちの拠点は禁足地から見て東側の中程の半ゴーストタウンだ。
禁足地が発生したことから、安全性の問題で引っ越すものが続出。
今もなお電気水道ガスなどは通っているが、住民は数えるほどしかいない。
こんなところによく住めるな……と思ったが、禁足地はホームの狩場である。
ある程度近い方が対応しやすいのだろう。
知らんけど。
まあそのため、買い出しも旧オートから外に行かないといけないのだが。
とんだ遠出だ。
外に出ないと気が滅入るからいいんだが。
俺は元気だと歩きっぷりで示さなければ。
えいえい、o「ど、どいてくださああああああ!?」WTF?!
声がする方向を察知、移動速度を計測、猶予は1秒。
0.1秒の間に弾き出されたシミュレーションの結果、出した答えは……即座に避ける!!
俺の肉体強度はそんなに高くないの。
見た目相応しかないの。
だから
1秒後、ズガーンと音を立てて、俺がいた地面に、足が2本、逆さまに生えてきた。
犬◯家みたいになってら。
生きてる?生きてるよな?
足がぴくぴく動いてるからきっと生きてるはず。
「抜いていただけると幸いです」
「どうやって発音してるのそれ」
「人ではないので……」
とりあえず、骨を使って抜いておいてあげよう。
嘘みたいにスポンって抜けたな。
出てきたのは、夕焼け色の髪をした、150㎝くらいの女の子。
「すみません、助かりました~。いやぁ、逃げてたらブレーキ利かなくなっちゃって」
「……何から逃げてたの」
「えっと、魔法少女……あっ!!」
なんでや!!普通に買い物くらいさせてーや!!
「ご、ご迷惑をお掛けするわけにはいかないので失礼します!!あ、私《ヴェスぺルベル》と申します!!またどこかでお会いしましたらよろしくお願いします!!」
あ、嵐のように去って行った……。
とりあえず買い物しに行こうか。
ん!?今あの子《ヴェスペルベル》って名乗らなかったか!?
ご主人の様子がおかしくなった単語じゃなかったか!?
ちょっと待って、もどってこーい!!おーい!!
ぜぇ、ぜぇ……。
この身体は本当に見た目通りの身体能力しかないんだ、勘弁してくれ。
息が切れた、はぁ、はぁ。
「あ。あなたはさっきの」
「ぜぇ、はぁ……さっき、ハァ、ヴェスペゲホッ」
「まず息を整えませんか?ね?」
ふぅ、ふぅ。
よし。
「さっき、《ヴェスペルベル》って名乗ったよね?」
「あ、はい、そうですが」
「魔法少女《エンドロール》って知ってる?」
「……もしかして、先輩の関係者か何かで……?」
こいつご主人の後輩か何か?
でも魔人だしな……どういうこっちゃ?
とりあえず自己紹介しておくか。
「私はエスカ。セラフの使い魔」
「改めまして、《ヴェスペルベル》です。ちょっと事情があって人間界でコソコソしてるのですが」
「とりあえず、さっき任務を言い渡された。《ヴェスペルベル》に似た顔の魔人が出没するから巡回してくれって」
「うっ……ま、まあ、渡りに船です。先輩のところ、連れてってくれませんか?」
「……セラフ、多分今情緒不安定だから、何が起きるか分からないよ」
「その時はその時です。こう見えて私、ちょっと強いんですよ」
「ほんとに……?」
「まあ、先輩には勝てませんが」
「誰でも勝てないよ、あれは」
よし、買い出し中止!!
こいつを連れて帰るぞ~~!!
ところでここ何処?
天井を仰ぎながら、私は溜息を吐いた。
身体能力は女児並、体術も付け焼刃のエスカに、変身していないとはいえ、容易く上を取られる。
あまりにも無様だ。
対処できる相手だと豪語しておきながら、このていたらくだ。
……人のことなど、言えたものではない。
「……まだ、こんなにも揺さぶられるなんてね」
《ヴェスペルベル》。
3年前の惨劇で、犠牲になった魔法少女。
そして、私の後輩だった子。
当時、私は14歳。
あの子は13歳だった。
旧オート禁足地が禁足地になる前。
大規模なスタンピードが発生して、その際に色々とあって、私を庇って命を落とした。
私は最強だった。
当時から私は敗北を知らない、常勝無敗の星だった。
私は愚鈍だった。
それで周囲から疎まれていることに気付かずにいた。
私は無知だった。
有事の際にひとの足を引っ張る悪意を知らなかった。
私を妬み、疎んだ者達が、私を亡き者にしようとして蠢いていた。
気付いた時には、もう遅く。
私とあの子は脅威度A上位、そして脅威度規格外の魔物と魔人に囲まれていた。
殺して、殺して、殺し続けて。
徐々に疲弊していく自身の身体。
それ以上に疲弊していく、背中を預けた後輩の身体。
段々手傷が増えて行き、それでも終りが見えて来た、その時。
私を屠ろうとしていた一派が、諸共大規模な殲滅砲撃を行った。
その時、私は一番危険だと感じた魔人にトドメを刺している真っ最中で、対応できなかった。
だから。
「ゴフッ……せん、ぱい……」
「……ヴェス?」
砲撃から、あの子は私を庇った。
守るべきだった対象から、私は守られた。
どう見ても致命傷だった。
どう見ても限界以上の力を振り絞っていた。
どう見ても、命を使い切っていた。
「よか……た……」
あの子は、最後まで誰かを案じながら、この世を去った。
誰も恨まずに。
その後、私は戻った。
ヴェスの遺体を抱えて。
その後は粛清に走った。
加担した者全てを手に掛けて。
気が付いた時には、私は勾留されていた。
有象無象に私が負けるはずはない。
やり遂げて、力尽きたのだ。
そこからはもう、どうでもよかった。
いくら愚鈍な私でも、理解できる。
私刑に走ったのだ。
許されるはずもない。
終われるのならば、それでもいい。
そう、思っていたのに。
「悲壮な覚悟をキメてるとこ悪いけど、キミ14歳だよね。情状酌量の余地ありだし、そもそもこの国じゃ15歳未満に刑事責任無いし……首輪付きだけど、お咎めナシだ。ごめんね」
そんな事を言われて、私は解放された。
何もない。
この空洞に、何も残らない。
だというのに。
この虚ろな身体は、死を拒んでいる。
全く以て嫌になる。
自分で死ねないのならば、仕方がない。
魔物の巣窟に赴いて、死に向かって走るだけだ。
最早遠いあの終着点に、少しでも早く。
そう思って、今日まで歩んできた。
跡を託せる使い魔もいる。
憂うことは何もない。
そんな気がしていた最近だった。
だというのに。
「セラフ。任務目標拾って来た」
「あ、先輩、ご無沙汰してます。魔人になってしまいましたが《ヴェスペルベル》です」
「そうはならないでしょ」
「なってるでしょ」
拾った使い魔が、任務目標を拾って来た。
しかもそいつは後輩を名乗る魔人だった。
もう何も分からない。
ただ一つ分かるのは、この魔人は間違いなくヴェスだということだ。
エスカを拾ってから振り回されっぱなしだ。
なんなんだ。
そんな事を次々と起こせるのなら、起こせてしまうのなら。
「……3年遅いのよ、バカ」
「先輩……」
「????」
分かってないのは当の使い魔だけね。
「エスカ」
「ん」
「私、寝るから。依頼の書類処理しといて」
「えっ」
とりあえず、私は寝た。
情報の威力が高すぎて眠らないとやってられない。
・魔法少女協会
魔法少女を統括管理する組織。
街に出没する魔物や歪みの飽和しそうな魔物などを検知して、的確な魔法少女を派遣するのが仕事の国立機関。
そのため、ここに所属していない魔法少女は違法扱いとなる。
・《ヴェスペルベル》
3年前のムナクソ事件で命を落とした後輩系魔法少女。
《エンドロール》に師事していた。
イコールでとんでもねえ戦闘力の持ち主だったので実は一緒に疎まれてた。
《エンドロール》にとって大事な大事な弟子でもあったため、死んだときに特大の地雷原となって大爆発。
当時の魔法少女協会は実質壊滅状態に陥った。
どっかの誰かがダメージをコントロールしてなければもっとヤバかった。
『全く、人間は愚かだね。少なくともボクはそう思う』