TS転生人外ロリ、厭世魔法少女の使い魔になる 作:蓋然性生存戦略
「うそ、うそっ……エスカ、えすかぁ!!逝かないでよぉ!!」
ご主人が、俺を抱いて泣きじゃくっている。
いやね、俺生きてるけどね。
喋れないんだわ。
首から下が無くって、うん。
そのうち回復すると思うんだけど、
いやほら、ね?
首だけじゃ動かすモノも動かせないというか。
まいったね、このままじゃごすずん闇落ちしちゃう。
さて、どうしてこうなったか。
時は少し遡る。
それは唐突だった。
大規模侵攻第二段階が終わろうという時。
俺は突如として拉致された。
……WTF!?
何が起きたか、俺はよく分かっていない。
足元がピカッとしたら、気付けば知らん場所だった。
瞬間移動か何かさせられたか。
それとも帰りになんか変なもんでも踏んだか。
いずれにせよ、だ。
「……こいつが?」
「……間違いない」
「……だがしかし」
魔人に囲まれてる!助けてご主人!!
……いや、まじでご主人どこ……?
俺このままだと敵を踊り食いしながら戦わないとなんだけど……。
「……どちらさま?」
とりあえずコミュニケーション。
戦わずに済むというのならその方がいい。
というかこの数の魔人は無理!!無理無理!!
魔人って最低でも脅威度Aに知性を持たせたような激ヤバなんだぞ!!
やってられるか、俺は逃げたいぞ!
逃げ場がないぞ!!クソが!!
「アスラン、エギル、コータス。下がりなさい」
「っ、魔王様、いらしてたのですね、失礼いたしました」
しかもなんか魔王とか呼ばれてる人来たんだけど!!
黒髪ロングのナイスバディな人間フォルムの美人さんだ。
って、ん?どっかで見たことある顔だな。
どこで見たんだったか。
いや、こんなナイスバディじゃなかったような……。
あっ、神様モドキに似てるんだ!!
は?なんでここで神様モドキのそっくりさんというか、成長した姿っぽいのが出てくんねん。
「やっと会えたわね。
よし、狙いは俺だな?
逃げるぞ、全力で!!
推定生け捕りが目的だろうからとにかく暴れるぞ!!
「っ!!」
「あら、思い切りが良いのね」
魔王とやらの体内の骨に干渉。
内側からハリセンボンにしてやる。
オラァ!!
俺の第六感が全力で警鐘を鳴らしてんだよテメエ!!
絶対ロクな奴じゃねえ!!
「ふふ、えげつないわ」
「チッ!!」
クソ、これで無事っぽいのなんなんだ!!
並のA脅威ならとっくにくたばってるぞ!!
しかも下がらせてた魔人も前に出てきてる!!
「多少は傷つけても構わないわ。無力化なさい」
ざっけんなばーか!!
ここがどこだか分からねえけどなあ!
ご主人がいる方角はわかるんだわ!!
だって使い魔契約ってそういうものらしいからあ!!
「螺旋槍!!」
ここが洞窟だろうと関係ねえ!!
ドリルで掘り抜けば良いだけだあ!!
「ふふ、可愛いわね。逃げられると思っているの?」
ふっ、ヴァカめ!!
やれるかどうかじゃない、やるんだよ!!
それはそれとしてご主人助けてーーーー!!
普通に手に余るーー!!
なんてことがあったわけだ。
激しい抵抗虚しく、俺は四肢を切り落とされ、首だけでも生存できるのではと見抜かれ、首チョンパされて更に連れ去られようとしていた。
そんくらいの時にご主人突入。
俺の状態を確認した瞬間、ストンと表情が抜け落ちた。
次の瞬間には俺の首を持ってた魔人が細切れになって、俺はご主人の腕の中にいた。
暖かい、温もりの温度……。
正直俺はこの辺でもう疲労困憊だったのでご主人の腕の中でスヤスヤ眠っちまったわけだ。
で、今に至る。
まあ十中八九俺が悪いな!!
死んだように眠ってる生首とかさ、そりゃ死んだと思うじゃん。
仕方ないよね。
なので一生懸命瞬きでアピールしてるんだけど、ヴェスちゃんすら悲しみに暮れて気付いてくれない。
お願い、気付いて、気付いてぷりーず。
俺生きてるから!!再生できるから!!
出来ればそこに散らばってる俺の身体とくっつけてくれないかな!!
たぶんその方が直りが早い!!
お願い気付いて!!
カルシウム操作も上手くいかないんだ今!!
流石に頭だけじゃだめらしい!!
「……せめて、身体は持ち帰ってあげましょう、先輩」
「……ぁ、あ……」
あ、でも身体が順調に集まってる!!
っしゃぁ!!これで勝つる!!
くっつけ、俺の身体!!うぉぉぉおおお!!
「……あれ?先輩、エスカちゃんの様子が!!」
「……っ!!ヴェス!!身体を集めて!!早く!!」
「あ、はい!!」
きたきたきた!!
胴体、接続!!
呼吸機能および発音機能、復活!!
「せ、らふ……」
「エスカっ、生きてるのよね!?」
「か、らだ……に、く……」
「分かったから!喋らないで!!」
まあ粘った甲斐があったぜ。
ご主人が来るまで軽く15分くらいあったからな。
採算度外視で粘ったせいで中々再生できないけど。
それよか全身痛いわ。
死ぬほど痛い。
よくショック死しなかったな俺。
神様モドキの善意か?
だったらちょっとは痛覚和らげてくれませんかね!!
俺今痛みでガチ泣きしてるからね!!
「わたしはもう、うしないたくない……」
……うっす、今度から気を付けます。
気を付けるんで、あの、その。
「……だして」
「ダメ」
拠点の俺の部屋に軟禁するのは違くないかなあ!!
ねえご主人!俺使い魔!!
ご主人の手足なの!!お世話しないとなの!!
俺がお世話されてどーすんねん!!
そりゃ死ぬほど痛かったしまだ体上手く動かないけどさあ!!
違うじゃん!?なんかこう、違うじゃん!?
そっち側に立つんは、俺や!!
働かせろ!お世話させろ~~!!
俺が休んだら誰がお前らバブちゃん共のメシを作るんだ、言ってみろ!!
あ、こらご主人、俺のベッドに入りこま、あったか、スヤァ……。
エスカが連れ去られた。
これは確定事項だ。
エスカが罠を踏み抜いたというわけではなく、あの一瞬、ほんの一瞬、作戦が終わろうという、気が緩んだ隙に、敵はエスカをピンポイントで転送した。
こんな神業的な芸当ができる存在など、私は一匹しか知らない。
そして、その一匹は確かに殺したはずだ。
トドメを刺し、確実に殺し切ったはずだ。
だが奴に違いない。
あのエネルギーの波動には覚えがある。
「生きていたのか……ウロヴォロス=リィン=カルナート……」
3年前の悪夢の一端。
私が相対してきた中で、最も危険だと感じた魔人。
魔王を名乗り、数多くの魔人と魔物を従えてスタンピードの渦中にいた存在。
おそらく、魔人の中でも最強と言っても過言ではない、災厄の中の災厄。
奴が生きているだけでもマズいというのに、奴が明らかに目的を持ってエスカを攫ったのがさらにマズい。
奴が何を考えているかなど分かったものではないが、何か目的を持っているという事実がもうマズい。
「ヴェス、動ける?」
「もちろんです。居場所は?」
「問題ないわ。行くわよ」
あの魔王を野放しにすることはできない。
どこの誰が阻もうとアレは必ず始末しなければならない。
3年前のあの日と同じように。
されど同じ轍は踏まぬように。
「《エンドロール》さん!?勝手にどこへ!?」
「お前達には関係ない。さっさと帰れば良い」
エスカを起点に精査。
やはりいる、ウロヴォロスが。
取り巻きと共に姿を見せているらしい。
だが私とヴェスがいれば事足りる。
ウロヴォロス以外は雑魚だ。
そして奴は私が止めるし、ヴェスなら取り巻きを全て殺せる。
「《
急がなければ。
エスカに何かが起きる前に。
もう、二度と喪わないために。
点と点を線で繋ぎ、一直線にエスカの元へと急行する。
物理的、概念的な道筋は関係ない。
私は私の望む場所へと向かう。
間に合って欲しい。
間に合ってと願う。
もう二度と、あんな思いはしたくない。
この手から零れ落ちる想いなど、二度も。
だが。
駆けつけた私の目に映るのは、首だけとなった、エスカの姿だった。
視界が、真っ赤に染まる。
お前はいつもそうだ。
力を持っていながら、
いつだって手遅れだ。
だから、その刃を振るうのだろう?
「死ね」
気付けば、エスカの首は、私の手の中にあった。
ああ、あと数秒。
いや、あと十秒でも早ければ。
私はエスカを守れたのに。
エスカの瞼が、安らぐように閉じて行った。
ああ、分かっている。
こうなったのなら、やるべきことは変わらない。
『あぁぁぁぁああああああああああああああ!!』
その後の事は、あんまり覚えていない。
ウロヴォロスを撃退して、取り巻きの魔人を殺して。
エスカを取り返すことはできた。
けれど、もうエスカは死体と成り果てて……。
せめて遺体だけでもと、ヴェスに促されなければ、私は動けなかった。
エスカの身体の残骸を集めて、ふとヴェスが気付いた。
エスカの肉体が、まるで元に戻ろうとするかのように動いている。
「……っ!!ヴェス!!身体を集めて!!早く!!」
まだ生きている。
生きてくれている。
ならば救いあげないと。
私の両手は、殺すことしかできないわけじゃないと、証明しないと。
とても、とても痛かっただろう。
怖ろしかっただろう。
エスカは、死にたくないと、そう願う子だから。
静かに流れる涙の理由を悟り、すぐに帰る準備をした。
今エスカに必要なのは、安らぐ場所と時間だ。
作戦への参加は中止だ。
私の使い魔、私の所有物がそもそも狙われているのだから、全容が明らかになるまで引っ込むべき。
どこで誰が何に与しているか信用できない以上、私もこの作戦への参加は強行してでも辞退すべきだろう。
まずは自分と二人の安全が先だ。
蓄えはある、どうにでもなるはずだ。
「先輩、どうします?」
「これ以上作戦には付き合えない。ウロヴォロスが生きている以上、エスカも万全の状態じゃないととてもじゃないけど出てらんない。帰るわよ」
「わかりました……まさかあの悪魔が生きてたとは」
「……あなたに守ってもらって、それでトドメを刺したつもりだったのに……クソ」
「先輩、今は」
「分かってる。ゲート開くわ、着いてきて」
「はい」
一応、作戦に参加している部隊の中枢にも声をかけておく。
奴が生きていた以上、これ以上の侵攻は罠の可能性が高く、危険だと。
だけど、奴の恐ろしさを知っているのは私とヴェスだけだ。
ちゃんと聞く耳を持っていればいいけど。
とにかく。
英気を養うのが第一優先だ。
誰になんと言われようとも、譲らない。
「ヴェス。調子は戻りそう?」
「もう少しです。あとでスパーお願いします」
「分かったわ」
刺し違えてでも、あれは始末する。
あれは、決して存在してはいけない生物なのだから。
・ウロヴォロス=リィン=カルナート
神様モドキにそっくりらしい本作のラスボス(断言)。
自称魔王、ごすずんに凄い警戒されてるヤベー奴。
3年前セラフが追いつめられた原因の9割はコイツ。
残りの1割は人間の馬鹿阿保間抜けの所業。
魔人を従え、魔物も操る力を持つと推定されている。
あと当然のように本体も強い。
遠隔からセラフの傍にいるエスカを一瞬で連れ去るなどの神業を持つほどの実力者。
セラフがほんの一瞬気を抜いた瞬間に連れ去ったので感知能力も高い。
セラフとヴェス以外何の問題も起きるはずのない羽虫だと思ってる。