勝利の女神:NIKKE 時空を超えた鬼神は何を成す 作:イオハ
そのうえ勢いのせいでいきなりよくわからない解釈が生えたりします。
NIKKE側は準拠します。
シオリの神機は
・アメミト双刃型零
・アメミト狙撃型零
・アメミト大盾型零
になっております。
それと、前回のアンケートで見たいとの意見が多かったので立ち絵をこちらに乗せます。
【挿絵表示】
タグ一つ増やしました。
――――――少し時間をさかのぼり、シオリの世界にて。
エルヴァスティの奇跡から少し後、ハウンド部隊はある依頼を受けて車両にて渓谷に向かっていた。
ミナトの航路が複数隣接するポイントに灰域種のラーが確認されたので討伐してほしいという依頼だ。
灰域種を相手に油断することはないが、新種ではなく以前から確認されている個体。特にラーは幾度となく討伐してきたためか、ハウンド部隊は特に緊張することなく出現ポイントに向かっていた。
「そういえば今回の討伐目標であるラーは、見た目は通常のラーと変わらないがどうも挙動に不自然な点が多いらしい。」
「不自然な点?いったいどうゆうことだよユウゴ。」
ブリーフィングで伝え忘れたと言わんばかりに、目標地点に移動中の車両内で話し始める運転席のユウゴと助手席で話の催促をするジーク。
「今回の個体は俺たち人間を見つけても襲うそぶりもなくその場で佇んでいるそうだ。一定距離まで近づけばさすがに動き出すそうだが、攻撃も牽制ばかりで大技を使うそぶりはなく、捕食行動もとらないんだとさ。」
「変なの。でももしそうなら通常のゴッドイーターでも討伐できるんじゃない?」
「相手がこちらを殺す意思がないのなら殺せるかもしれないが…何がきっかけで暴れ始めるかわからないからな。リスク管理の観点から討伐実績豊富な俺たちに話がきたってことさ。」
経緯を話すユウゴに納得するジーク。相手が攻撃してこない保証がどこにもないうえに、曲りなりにも灰域種。万が一攻撃を受けたらひとたまりもないことは想像に難くない。
「どちらにせよ、私たちがやることは変わりないわ。ね、シオリ?」
「そうだね。私たちはいつも通りラーを倒すだけ。」
後部座席にいるクレアとシオリの言葉に頷くユウゴとジーク。
念のためにラーの行動パターンを再確認しながら、ハウンド部隊は目的地へ移動していった。
――――――
ハウンド部隊の面々は、渓谷に到着し目標ポイントへ移動した。
指定ポイントにはラーが動くわけでもなく、その場で静かに浮遊している。まるで瞑想をしているかのようだ。
「事前情報通りだな。ジークは接近してハンマーのブーストを利用して攪乱。クレアは何時でもカバーに入れるようにやや後方で射撃支援。」
「ユウゴはそのまま指揮をお願い。遊撃は私が行う。」
「ああ、それでいい。さぁ、作戦開始だ!」
『了解!』
散開するハウンド部隊。まだ動く素振りすら見せないないラー。
配置につき、まず最初に口火を切ったのは前衛を任されたジークだった。
「オラオラいくぞぉ!」
ブーストを起動し、ハンマーで殴りつつ離脱を繰り返しラーの動きを翻弄し始める。
クレアはジークが動きやすいように位置を調整しつつ銃形態にて牽制射撃を行う。
これだけ攻撃したら反撃を始めると思っていたが、ラーは微動だにしない。
不自然にも動かないラーに警戒心を持って観察に徹するユウゴ。
「ユウゴから聞いた話と違う……?でも、動かないなら今のうちに仕掛ける!」
シオリもラーの動きに違和感を覚えたが、攻撃するチャンスと判断しラーの背後に回り込み攻撃を仕掛ける。
彼女がラーの背後に回り込もうと動き始めたその時―――
ラーがシオリを目で追ったのを、ユウゴは見逃さなかった。
「っ!?シオリ下がれ!ラーはお前を狙っているぞ!」
咄嗟にシオリに対して叫ぶユウゴ。
しかしラーはユウゴが叫ぶとほぼ同時に、目にも留まらぬ速さでシオリの方に旋回し、捕食の態勢を取った。
「―――っ!?」
シオリもユウゴの声でラーの動きに気付いた。
がしかし、鬼神と言われるほどの苛烈な剣戟と速度。既に攻撃態勢に入っていたがために、気付いていてももう止まらない。
加えて、シオリはラーの背後から強襲するために飛び上がっており、回避する方法がない。
ユウゴやジークがこちらに来ているが間に合わない。クレアの射撃もラーは怯まない。
完全に八方塞がり、せめて神機を振りかぶる前であれば……強襲を仕掛けるために飛び上がる前であれば……。
「シオリィィィイイイーー!」
ユウゴの叫びも虚しく、シオリは捕食された。
――――――
「うっ……っ!?」
シオリは鈍い痛みと共に意識が覚醒した。ぼやけていた思考の輪郭もはっきりとし、直前の状況を思い出して飛び起きる。
それと同時に腕の可動域に制限がかかっているのに気が付く。よく見てみると腕輪は起動し、拘束されている状態だった。
(拘束が復活している!?なぜ?それにここはいったい……?)
周囲を確認すると先程までいた渓谷とは異なり、荒れ果ててボロボロの家屋の中だ。
(部隊の誰かが避難させてくれたのだろうか?)
とりあえず腕に力を入れてみるものの、案の定拘束は解除されない。気を失う前との差が大きく戸惑いを隠せない。
周囲の状況からしてミナトではないことを把握したシオリは、自分が所持していた神機が近くにないか探し始める。
神機はほどなくして見つかった。がしかし―――
「半壊している……。ラーに捕食されたときに壊れたか。」
シオリの言葉通り、シオリの神機は壊れていた。
近接攻撃を仕掛けようとしていたからか刃が半ばほどから欠けており、位置が悪かったのか盾も半分がない。
辛うじて銃身は無傷だったが、この半壊している剣形態から銃形態に切り替えても問題ないのかはわからない。
「任務で持ち込んでいたアイテムと携帯食料は……ある。なら、ひとまず周辺状況を確認しよう。」
ここで呆けていても何も始まらない。周りにユウゴたちがいないかを確認するためにも、シオリは廃屋の外に出た。
渓谷周辺にいると思っていたがそんなことはなく、辺り一面荒廃した大地が見渡す限り続いていた。
目標ポイント道中のエリアに似ているが、捕食痕が見当たらない。
「こちら灰域踏破船クリサンセマム所属ハウンド部隊。応答せよ。」
無線通信を試みるも反応はなし。
「ユウゴ、ジーク。応答して。クレア……。」
部隊内の短距離通信にも応答は返ってこず、ただただノイズが流れるばかり。
これからどうするかを考えていると、ふと視界に違和感を感じる。
「灰嵐が見当たらない……?」
捕食痕が見当たらない時点で違和感はあったが、灰嵐が遠巻きにも確認ができない。
それどころか、灰域特有の体を蝕んでこようとする外部圧力も感じられない。
「一体ここは……っ」
まるで現実感のない状況に呆気に取られていた時、遠くで銃声がわずかに聞こえた。
聞こえた銃声の方向を見ると、土煙が確認される。
さらにその位置を凝視すると、うなだれている人物が複数人とそれに襲い掛かろうとしている機械でできたような怪物が見えた。
「ヒトと…アラガミ!?まずい、この距離から助けられるか!?」
シオリは壊れかけの神機を携えて全力で駆け抜ける。
しかし距離が遠すぎる。間に合わない。そのうえ腕輪の拘束が解除されない。
拘束されている状態で無理やり神機を銃形態へと変形させようとしたが、普段では考えられないような抵抗があり上手く変形ができない。
(銃なら余裕で届くが、見たことのないアラガミに有効打になりえるか?それにこの拘束状態はどうやったら解除される?この割れ欠けた状態でも変形は可能なのか?うまく変形ができないのに無理やり変形させて良いのか?仮に変形できたとして正常に動作するのか?自分が捕食されないか?)
状況に余裕がなく、思考がまとまらない。それに呼応するかのように神機も不安定に蠢いている。今にも暴走するのではないかという雰囲気を出している。
そして、大型のアラガミが男性的な背格好の人物を殺そうとしたのが見えた。
(クソッ!……後悔するならやって後悔したほうがいいに決まっている!)
頭の中で何かスイッチが入る。
先ほどまでの雑念で埋まっていた意識が思考が一つに統合される。
彼らを助ける。
煩雑としていた思考ノイズが消え、頭がクリアになっていく。それと同時にバキンッ!と拘束が解除される音が聞こえた。
研ぎ澄まされた思考は意志の力へと繋がり、それに呼応するかの如く神機は淀みなく銃形態へと変形した。
「距離約3キロ、偏差不要。」
―――ここで少し神機の話をしよう。神機の銃身は4種類存在する。ショットガン、アサルト、レイガン、そしてスナイパー。
前3つは意識を集中させると狙った相手を視線から離さずに立ち回る能力が向上する。散弾や連射、照射といった近~中距離で相手と立ち回るために神機と神機使いが最適化した技術といってもよいだろう。
ではスナイパーは?
スナイパーは狙撃を主とした立ち回りを要求される。必然的に相手との距離が離れるわけだ。となると狙いが小さくなり、当てるには技術が必要になってくる。
つまり、神機と神機使いの間でどういう最適化が起きたかというと―――
「照準補正、8、エイム……ファイア。」
視覚倍率の変動と、弾丸命中地点へのレティクル付与つまり―――
超長距離での狙った場所への精密照準が可能となる。
ガアァンッ!
狙い撃ったアラガミは怯む……ことなくそのまま沈黙した。
あまりの脆さに思考が鈍りかけるが、余計な思考を排除し残りのアラガミに照準を合わせる。
「次、同型4体。位置調整。エイム……ファイア。」
続いて同じアラガミを4体視認したので相手の位置から照準位置を調整し、続けざまに4連射する。
すべて1体目の命中箇所と同じ位置に命中させ沈黙させることに成功する。
「次、小型種。調整不要。エイム……っ。」
大きい個体は制圧したので続いてその周囲にいた小型の個体を狙おうと照準を合わせ、撃とうとした。
しかし、撃つ前に小型の個体は逃げ出している途中だった。
追撃を入れることも考えたが、対象を助けることを最優先していたため、追撃をすることはしなかった。
「……状況終了。ふぅ……。」
研ぎ澄まされていた思考が落ち着き、緊張の糸が少し緩む。
自分のも含めて周囲に敵がいないのを確認し、神機を地面に置き、シオリ自身も地面に仰向けになる。
助けた人物たちと接触を図りたかったが、捕食攻撃を受けた直後に意識を失い、知らない場所で目が覚め、状況の整理が追い付かない状態での狙撃。
それに加えて極限の集中状態で肉体も精神も疲労で休息を要していた。
身体を起こし、座った状態で先ほどの人物たちを見てみると、どうやら応急処置をしているようだ。
しばらくすると数人が動き始め周辺に何かを配置し始めている。
休憩がてらそれを遠巻きに観察していたら、別方向から服数人で構成された部隊らしき人物たちが現れた。
合流しているところから推察するに救援部隊なのだろう。
ついでに私もと、立ち上がった向かおうとしたのはいいが距離が離れているうえに彼らは急ぎ足で撤収してしまった。
……よくよく考えたら味方かどうかも分からない相手に割と疲弊木委の状態で接触するのはややリスクがあると思いなおし、追いかけようとした歩みを止めた。
(おいていかれたわけじゃないし……。リスクマネジメントしただけだし……。)
心の中で言い訳するが、それに突っ込みを入れる相手はいない。
気持ちを切り替えて次にどう行動するかを考える。
先ほど目覚めた廃屋に引き返すか、彼らがいた地点に言って何か物資が落ちてないかを確認しに行くか。
あの廃屋は本当に壊れかけていて崩落が怖いので却下。
となると、消去法で後者になるのだが。
そう逡巡しながら周囲を見渡しているとふと、地平線の付近で家屋が並んでいるような形状が目に入る。
「住宅街か……?」
一先ず身体を休めつつ身を潜める場所を求めて、推定住宅街に向けて歩み始める。
AGEの身体能力故か、思いのほか早く目的の場所へたどり着く。
そこは住宅街でこそあるものの、人がいなくなって長い年月が経っていることが伺える廃墟群でもあった。
「……地上で人が住めなくなったのは間違いなさそうだな。」
シオリは比較的損壊の少ない家屋の中に入り、壁に神機を立てかけ床に座った。
任務で持ち込んでいた携帯食料を口に放り込み自分の身に何が起きたかを整理する。
(少なくとも、ここは私がいた渓谷周辺ではなさそう。それに周辺の土地も廃墟も、捕食痕が見当たらなかった。灰域というわけでもない……アラガミのいないエリア?いや、さっき人を襲っているアラガミはいた。……そもそもあれはアラガミなのか?)
答えの出ない堂々巡りの思考に、疲労からくる睡魔が訪れる。
ここは外だ、一時も油断できない。
しかし、あのサイズでありながら半壊の神機の一撃で仕留めれる脆さ。
少しでも休んで体力を回復させたい気持ちも相まって、シオリは座ったまま仮眠をとることにした。
――――――
何時間眠ったかはわからないが、外から聞こえる話声で目が覚める。
手の位置に違和感があり、視線を向けると腕輪が再び拘束状態になっていた。
(また腕輪が……?いや、それよりも外の声か。)
「指揮官さまー!私たちは周辺を見張っておくわねー。」
「頼んだ。ネオンも、あまり離れ過ぎないように気を付けてくれ。」
「了解です師匠!」
ただの人であるのなら拘束されていても負けることはないだろう。
そう考えて相手が来るのを待ち受ける。
「ねぇ、あなた大丈夫?」
「……誰?」
こうしてシオリはこの世界の住人と接触する。
この先に何が待ち受けているのかはわからない。
ただ、一筋縄ではいかないことだけは今までの経験から察しているのだった。
捕食されておりますが、体全体はバックリいかれておりません。
舞台装置と化したラー
瞬間移動と聞いてこのネタを閃きました