ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVSゴーストコンサート : missing Songs ユニバースライダー大戦 作:ボルメテウスさん
数日後、俺たちはまたしても奇妙な依頼に巻き込まれていた。
ことの発端は、雪庭の奴が「中華料理専門店に妙な霊的気配がある」などとほざき出したことだ。前回のフランス風異界といい、今度は中華料理店といい、この胡散臭い坊主は俺たちを世界中の飯屋に派遣するのが趣味なのかと疑いたくなる。もっとも、芹亜の霊感がそれを肯定した以上、行かざるを得ないのだが。
「吠さん、あの店、美味しそうな匂いがしますね」
「…ああ」
正直、腹が減っていた。店の前に立っただけで、八角や花椒の独特の香りが鼻腔をくすぐり、胃袋がぐうと鳴る。竜儀が隣で呆れたようにため息をついた。
「吠、私達は食事に来たのではありません。霊的異常の調査です」
「わかってる。だが、腹が減っては戦はできねえって言うだろ」
「それは平時の話です」
「うるせえ。俺は今、腹が減ってるんだ」
芹亜がくすりと笑う。この小娘、最近やけに余裕が出てきたな。ジャンヌの魂を宿してから、どこか度胸が据わったというか、俺の前でも怯えなくなった。それはそれで悪い気はしないが、妙に小恥ずかしい。
俺たちは、暖簾をくぐって店内へと足を踏み入れた。
途端に、異様な空気が肌にまとわりつく。昼時だというのに、店内に客の姿はない。厨房からも物音がしない。ただ、八角の香りに混じって、何か別の――そう、腐った血のような、鉄臭い気配が漂っている。
「…来たか」
竜儀が、ぼそりと呟いた。その視線の先には、店の奥のテーブルに座り込む、一人の男。
年齢は十八、九といったところか。筋骨隆々の巨躯を、黒いタンクトップとロングコートで包み、長い黒髪をオールバックにしている。一見、ただの強面の若者だ。だが、その背後に、俺は確かに見た。
黒い靄。それが、男の肩に絡みつくように揺らめいている。
「怨霊…」
芹亜が、小さく声を漏らした。彼女の瞳の奥で、金色の光が警戒するように瞬く。胸の内のジャンヌも、この気配に反応しているのだろう。
「ようやく来たか」
男が、ゆっくりと顔を上げた。太い眉の下で、鋭い眼光が俺たちを射抜く。その声は、店内の空気を震わせるほどに重く、大きい。
「噂には聞いていたぞ。異界から来たというユニバース戦士どもが、この街をうろついていると」
「てめえ、何者だ」
俺が一歩前に出ると、男は口元を歪ませた。笑っているのか、怒っているのか、それすらもわからない不気味な表情だ。
「名乗るほどの者ではない。だが…」
彼は、懐から一つのライドウォッチを取り出した。表面に刻まれているのは、黄金の王冠と銀の甲冑を思わせる紋章。仮面ライダーサウザーの力が宿る、変身アイテムだ。
「貴様らの願いとやらを、ここで確かめさせてもらう」
「願い…?」
芹亜が首をかしげる前に、男はライドウォッチを起動させた。
「変身」
『ライダータイム! 仮面ライダーサウザー!』
瞬間、店内に金色の光が溢れた。男の巨躯を、金・銀・黒を基調とした重厚な装甲が包み込む。頭部には、コーカサスオオカブトとアルシノイテリウムを思わせる五本の角。紫色の複眼が、冷徹な光を放つ。そして、その背後で、黒い怨霊の靄がさらに濃さを増し、まるで王のマントのように広がった。
「仮面ライダー…サウザー!」
芹亜の声が震える。俺は、テガソードの柄を握りしめながら、変身した男――サウザーを睨みつけた。
サウザーが、ゆっくりと俺に向き直った。
「貴様の願い、聞かせてもらおう」
「願いなんてもんは、ねえ。ただ、借りを返すだけだ」
「ふん、つまらんな。だが、その借りとやらにどれだけの価値があるか、この俺が確かめてやる」『サウザンドジャッカー』
サウザーは、長大な槍型武器――サウザンドジャッカーを召喚し、その切っ先を俺に向けた。怨霊の黒い靄が、槍の穂先に絡みつき、不気味に揺らめいている。