ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVSゴーストコンサート : missing Songs ユニバースライダー大戦 作:ボルメテウスさん
俺たちが周瑜との対話を終え、これからどうするかと顔を見合わせていた時だった。
「う…」
床に倒れていた男が、ゆっくりと身を起こした。オールバックの黒髪が乱れ、太い眉の下の鋭い眼光が、まだぼんやりと俺たちを捉える。さっきまでサウザーとして戦っていた若者――金剛院玄斎が、意識を取り戻したのだ。
「ここは…」
彼は、破壊された店内を見回し、それから俺たち一人ひとりをじっくりと観察するように見つめた。その目には、敵意はない。だが、警戒も解いていない。まるで、俺たちがどのような存在かを見極めようとしているかのようだった。
「どうやら、俺は負けたらしいな」
玄斎は、ゆっくりと立ち上がった。その巨体が、夕暮れの光を背にして影を落とす。彼は、自分の手を見つめ、それから俺たちに向かって口を開いた。
「ならば、約束通り、俺の思想を聞いてもらおう」
「思想?」
俺が聞き返すと、玄斎は傲岸不遜な態度で腕を組んだ。
「我が世界を征服する。異論があるなら、我より優れた未来をここへ示せ」
その宣言に、俺は思わず眉をひそめた。世界征服? なんだ、こいつは。さっきまで怨霊に取り憑かれて暴れていたくせに、ずいぶんと大きなことを言う。
「俺は、富や名声が欲しいわけではない。ただ、この世界に巣食う邪悪を根絶したいだけだ。弱者を食い物にする者、社会に害をなす者。そいつらを、情状酌量の余地なく断罪する。そのための力が、俺にはある」
玄斎は、自分の拳を握りしめながら続けた。その声は、十八歳とは思えぬほど重く、深い。
「人より優れた者には、社会をより良くする義務がある。俺はそれを果たすだけだ。そして、もし俺自身がその理想の実現に不要なら、命さえ切り捨てる覚悟もある」
困惑が、店内に広がった。芹亜は目を丸くし、凛空は眉をひそめ、俺はただ呆れてため息をつく。世界征服だの、命を捨てる覚悟だの、十八歳の若造が口にすることじゃねえ。いや、十八歳だからこそ、そんな極端な思想に走るのかもしれねえが。
「お前、本気で言ってるのか」
俺が問いかけると、玄斎は迷いのない目で俺を見返した。
「我は常に本気である」
「そうかよ…」
俺は頭をかいた。こいつは、根っからの理想主義者だ。それも、自分の命すら理想のための道具と割り切る、危ういほどの純粋さを持っている。正直、扱いに困るタイプだ。
その時だった。
「同意する」
静かな声が、店内に響いた。全員の視線が、一斉にその声の主に集まる。
竜儀だった。
「私もまた、優れた者にはそれに応じた責務があると考える。そして、その責務を果たすために、命を懸けることも厭わない」
「竜儀…?」
俺が驚いて見つめると、竜儀はいつもの無表情のまま続けた。
「ただし」
彼は、テガソードを掲げた。金色の剣が、夕暮れの光を受けて神々しく輝いている。
「私はそれを実現出来るテガソード様に仕えるのです。私の願いは、テガソード様の幸せ。そのためならば、この命など喜んで差し出しましょう」
一瞬、店内が静まり返った。
俺は、思わず額に手を当てた。芹亜は口元を押さえ、凛空はあからさまに肩を落としている。周瑜だけが、興味深そうに竜儀を見つめていた。
「…竜儀、お前はいつもそれだな」
「当然です。私のすべてはテガソード様のもの。優れた者だの、社会を良くするだの、そんなことはすべてテガソード様の御心のままに」
玄斎が、初めて面食らったような顔をした。さっきまで自分の思想を滔々と語っていた傲岸不遜な男が、竜儀の斜め上の返答に、完全にペースを崩している。
「な…いや、我はそういうことを言っているのではなく…」
「テガソード様は偉大です。お前の言う理想とやらも、テガソード様にかかれば朝飯前でしょう」
「だ、だから、我は自分の力で…」
「テガソード様は、お前よりもずっとお強い」
「う…」
玄斎は、完全に言葉を失っていた。さっきまでの尊大な態度が嘘のように、ただ困惑した顔で竜儀を見つめている。
「竜儀…お前、たまには空気を読め」
俺が呆れて言うと、竜儀は首をかしげた。
「空気を読む? 私は常にテガソード様の御心を読んでいますが」
「そういう意味じゃねえ!」
結局、その場の全員が、深いため息をつくことになった。金剛院玄斎の重厚な思想は、暴神竜儀のテガソード愛によって、見事にかき消されたのである。