ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVSゴーストコンサート : missing Songs ユニバースライダー大戦 作:ボルメテウスさん
「いきなり、勝負を仕掛けるのかよ」
「部長もまた、勝負を行った後に、演技が上手くなったのでね、試してみたいのさ!」
「・・・なんか、色々と無茶苦茶じゃなか」
「変身」
多良場の低い声と共に、彼の手の中のライドウォッチが起動した。表面のディスプレイが回転し、鋏の刃のような意匠が赤く発光する。そして、彼の腰に、ベルトのバックルが現れた。回転機構を持つ、銀色のジクウドライバーだ。
「おい、待て!」
俺が叫ぶ間もなく、多良場はライドウォッチをドライバーのスロットへと叩き込んだ。
『ライダータイム!仮面ライダーシザース!』
電子音声が境内に響き渡った瞬間、ドライバーの中央部が回転を始める。赤と銀のエネルギーが多良場の全身を包み込み、蟹の甲羅を思わせる重厚な装甲が次々と形成されていく。
頭部には、鋏の刃を閉じたような不気味な形状のバイザー。その全体からは、身を守ることだけを考えたような、頑固で狹量なオーラが立ち昇っていた。
禽次郎が、竹刀を構えながら後退った。その顔から、いつもの軽薄な笑みが消えている。
「マジかよ。蟹男、本気でやり合う気か?」
「俺は本気だ。最初からな」
シザースとなった多良場は、低い姿勢で俺たちを睨みつけた。その視線は、敵を品定めするというよりは、すでに決めつけている。お前たちは邪魔だ、と。
そして、奴は右腕をゆっくりと上げた。シザースのライドウォッチのボタンを、親指で押し込む。
多良場は、シザースのライドウォッチのボタンを、さらに二度、三度と押し込んだ。
『シザースバイザー!』
まず、奴の左腕が光に包まれた。現れたのは、巨大な鋏の形をした召喚機――シザースバイザーだ。周囲を威圧するように、ギチッと刃を鳴らす。
「一気に来る気か!」
禽次郎が一歩後退するが、多良場の変身は止まらない。
『シザースピンチ!』
今度は右腕だ。先ほどのシザースバイザーよりもさらに巨大な、蟹の鋏そのもの――シザースピンチが召喚される。鋭利な刃と、獲物を逃さない挟み込みの機構が、鈍く光った。
「ふざけやがって…!」
俺はテガソードに手をかけたが、まだ抜かない。まずはあの蟹の武装の全容を見極めないと、無駄に手を出すわけにはいかない。
多良場は、続けざまに最後の装備を召喚した。
『シェルディフェンス!』
今度は奴の左腕、シザースバイザーの上から覆い被さるように、分厚い甲羅型の盾が展開された。まさに鉄壁。
「フルアームズ…」
芹亜が、解説するように呟く。
「仮面ライダーシザースの、全武装を同時展開する固有能力、ですね」
「てことは、一から順にカードを使って装備してく隙がないってことかよ」
禽次郎は、竹刀を腰だめに構え直した。だが、その顔にはもう恐怖はない。むしろ、面倒な相手に当たったといわんばかりの、挑戦的な笑みが浮かんでいる。
「守りに特化した蟹さんってわけね。で、その先輩への『守りたい』って気持ちが、力に出ちまってると」
シザースは、無言で一歩、踏み出した。
「朱莉、下がってな」
禽次郎は、竹刀を片手でポンポンと軽く肩に当てながら、シザースの前に進み出た。
「ここは僕の出番でしょ、硬い蟹相手にはね」
禽次郎はそう言って、不敵な笑みを浮かべた。その足取りは軽く、まるでこれからダンスパーティーにでも向かうかのようなステップだ。だが、その目は笑っていない。俺は知っている。こいつがこういう風にふざけた態度を取る時こそが、一番気を張り詰めている時なのだと。
「おい、禽次郎。あいつのフルアームズ、ただの防御力じゃねえぞ。隙がないんだ」
俺が声をかけると、禽次郎は振り返らずにヒラヒラと手を振った。
「わかってるって。だからこそ、だよ。遠距離から穴を開けるのが、一番手っ取り早いでしょう?」
彼は腰のテガソードを掲げた。そして、左手でセンタイリングを取り出す。鷲の翼を模した紋章が刻まれた指輪。大空を駆ける戦士の力だ。
「エンゲージ」
『クラップユアハンズ! ゴジュウイーグル!』
テガソードの音声が響き、禽次郎の身体が緑の光に包まれる。軽やかな風が境内を吹き抜け、塵と落ち葉を巻き上げた。光の中から現れたのは、緑と白の軽装な装甲。背部に折り畳まれた翼のようなブースター。そして右手に握られた長銃身の銃――イーグルシューター50。
名乗りを上げた禽次郎は、一足飛びに境内の屋根へと跳躍した。まるで本当に空を飛ぶ鳥のように。
「さあ、蟹さん。甲羅の硬さ自慢といこうぜ。僕の弾丸が貫くか、あんたの甲羅が砕け散るか」
見下ろす位置から放たれた挑発に、シザースは無言でシェルディフェンスを構え直した。その姿はまさに動く城塞。だが、どんな城塞にも、必ず落とし穴はある。それを見つけるのが、こいつの役目だ。