ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVSゴーストコンサート : missing Songs ユニバースライダー大戦 作:ボルメテウスさん
裏山の獣道なんて、普通の人間が歩くもんじゃねえ。蔦が足に絡みつき、腐葉土の匂いが鼻の奥にこびりつく。だが俺は、こういう場所の方がまだマシだ。あの香水臭い本堂よりは、よっぽど落ち着く。
「ちょっと! 遅い! もっと速く歩けないの? 私のヒールが泥だらけじゃない!」
後ろから聞こえる文句を無視して、俺は鼻をひくつかせた。花の香り。それも、甘ったるいジャスミンなんかじゃねえ。どこか冷たくて、人工的な匂い。さっきからずっと辿ってきた、盗人の残り香だ。
「おい、こっちだ」
「わかってるわよ! あんたが鼻先をぴくぴくさせてる方向くらい!」
「犬みてえに言うな!」
「事実でしょ! ほら、瑠衣ちゃんもそう思うよね?」
「…わからない」
瑠衣の短い返事。彼女は虎の剥製を抱え、無表情で俺たちの後ろをついてくるだけだ。
灌木を掻き分けると、突然開けた場所に出た。古びた祠の跡みたいな石積みの広場だ。苔むした石の上に、誰かが座り込んでいた。
「!」
俺は反射的に身構えた。テガソードに手を伸ばす寸前で止まる。相手は、敵じゃなさそうだ。
そこにいたのは、まだガキみたいな少女だった。橙色がかった茶髪をお団子に結って、ミントグリーンの目をしきりに瞬かせている。手にはルーペ。膝にはスケッチブック。まるで探偵ごっこの最中みたいな格好だ。
「あーっ! 泥足跡! 誰よこんな所で土足で踏んづけたの! 証拠隠滅? それとも単にドジ?」
彼女は地面に這いつくばって、何かを熱心に調べていた。俺たちの気配に気づき、顔を上げる。
「あ。こんにちわ」
へえ、随分と物怖じしねえガキだ。俺の剣呑な顔を見ても、一歩も引かねえ。
「あんた、誰だ?」
私が問うと、彼女はルーペをポケットにしまい、立ち上がった。桃色の服と青いスカート。活動的な服装だ。
「園田杏子です! 探偵見習い中!」
胸を張って名乗るその姿に、後ろから冷ややかな声が飛んだ。
「探偵見習い? あんたみたいな子供が? 笑わせないでよ」
角乃が蔦を払いながら出てきた。瑠衣もその後ろからひょっこり顔を出す。
「子供だから何ですか? 真実は年齢に関係ありません!」
杏子は言い返す。元気なガキだ。
「で、探偵見習い様はこんな山奥で何をしてたわけ?」
俺は腕を組んで尋ねた。
「捜査です! 最近この辺で『歴史の影』が消えてるって噂があるんです。それを調べてました」
歴史の影? 何だそりゃ。
「歴史の影って?」
「古い品物に宿る記憶とか思念とか! それが誰かに抜き取られてるらしいんです」
杏子は真剣な目で言った。その瞳には、好奇心と少しばかりの危険な光が混じっている。
「ふーん、くだらねえオカルトだな」
「くだらなくないです! 確かに足跡があるんです! ほら、これ!」
彼女はスケッチブックを俺に突き出した。そこには不規則な足跡と、花のような模様が描かれていた。
俺は眉をひそめた。花の模様。さっきからの匂いと一致する。
「どうしたの? 吠くん」
角乃が横から覗き込む。
「…いや、何でもねえ」
「あ! あなたたちも何か探してるんですか?」
杏子は鋭い。俺と角乃の視線から、共通の目的を読み取ったらしい。
「まあね。盗まれた品があるのよ。ハイクラスな名探偵が取り返すべき品がね」
角乃が髪をかき上げながら言う。
「盗難事件!? 私に任せてください! 探偵事務所の手伝いしてるんで、聞き込みも現場検証も得意です!」
「余計な足手まといはいらないわ」
「足手まといじゃないです! ねえ、お兄さん!」
杏子が俺に向き直る。ミントグリーンの瞳が真っ直ぐに俺を射抜く。
「お兄さんも探偵? それとも…」
彼女はじっと俺を見た。
「…警察犬?」
「………」
沈黙。
「誰が犬だ」
低い声で言うと、彼女は首を傾げた。
「だって鼻ひくひくさせてましたよ? 鋭いですね、私の残した香水の匂いにも気づいて」
「は?」
あ? こいつ、自分が匂いの主か何かみたいな言い草だな。
「違いますよ。私が追ってる犯人の匂いです。ちょっとメモに残り香をつけちゃってて」
杏子は舌を出して笑った。
「まあいいわ。あんたみたいな元気な子供なら、雑用くらいにはなるでしょ」
角乃があっさりと許可を出す。
「やった! ありがとうございます! 園田杏子、精一杯頑張ります!」
「俺は認めてねえぞ…」
呆れる俺をよそに、奇妙なチームが結成された。義経の刀を追う俺たちと、歴史の影を追う少女。こいつの言う「影」とやらが、俺たちの探してるものとどう関わるのか。
杏子がふと空を見上げた。
「ねえ、仮面ライダーって知ってますか?」
唐突な問いかけ。
「仮面…ライダー?」
俺は眉をひそめた。聞いたことのねえ名前だ。
「強いだけじゃない。力を何に使うか選び続ける者…そんな伝説があるんです」
彼女の瞳が遠くを見る。