ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVSゴーストコンサート : missing Songs ユニバースライダー大戦   作:ボルメテウスさん

119 / 119
探偵の力は何処に

爆煙が晴れると、そこには白衣の男が無様に転がっていた。変身は強制解除され、男の手から滑り落ちた紫のライドウォッチが、石畳の上でカツンと乾いた音を立てる。

 

俺は無言でそれを拾い上げた。ルパンライドウォッチ。歴史を盗み、英雄気取りで暴れ回った男の力。だが、悪くねえ。これで義経の刀も取り返せた。

 

「ふう…」

 

杏子が変身を解除した。緑と黒の装甲が光の粒子となって飛び散り、そこにはまた、お団子頭のミントグリーンの目をした少女が立っていた。ただ、その顔色は少し蒼白で、膝が微かに震えている。一人でWの力を使った反動か。やっぱり無理をしてたんだな。

 

「大丈夫か?」

 

俺は声をかけた。

 

「はい! なんとか!」

 

杏子は弱々しく笑って見せたが、その手はしっかりと腰のジクウドライバーに添えられていた。そして、彼女はドライバーからライドウォッチを取り出した。

 

俺はてっきり、彼女がそれをしまったと思った。だが、杏子はその歩みを、角乃の方へ向けたのだ。

 

「あの…角乃さん」

 

「何よ? 痛い目に遭ったならおぶってあげるわよ?」

 

角乃は髪をかき上げながら、いつもの高飛車な態度で応じる。だが、その目は杏子の蒼白な顔を気遣うように細められていた。

 

杏子は首を横に振り、差し出した手のひらに二つのライドウォッチを乗せた。

 

「これ、使ってください」

 

「はあ?」

 

角乃の眉がつり上がった。

 

「あんた、何言ってんの? これ、あんたの変身アイテムでしょ? なんで私に渡すわけ?」

 

そりゃそうだ。俺も驚いた。こいつ、必死に「仮面ライダー」の正体を追って、手に入れた力だろ? それをポンと渡しちまうのか?

 

杏子はミントグリーンの瞳を真っ直ぐに角乃へ向けた。

 

「仮面ライダーWは、二人で一人の仮面ライダーなんです」

 

「二人で一人?」

 

「ええ。風と闇、二つの記憶と力が重なって初めて完全になる。私一人じゃ、どうしても半分しか使いこなせない。さっきの戦いで、それがよくわかりました」

 

杏子は自嘲気味に笑った。さっきの変則的な弾道や、時折生じていた動きのズレ。あれは全部、一人で二つの力をねじ伏せていた代償だったのだ。

 

「でも、角乃さんなら…」

 

杏子は言葉を続けた。

 

「ガッチャードの錬金術で、混ぜ合わせることができる。二人分の力を、一人で無理やり押さえつけるんじゃなくて、ちゃんと調合して使えるのは角乃さんです」

 

「…ふん」

 

角乃は腕を組み、鼻を鳴らした。だが、その視線は杏子の手にあるウォッチから離れなかった。

 

「あんた、バカじゃないの? 自分の力を手放してどうすんのよ。名探偵の資格を返上する気?」

 

「探偵はやめません! でも、力は使う人を選ぶんです。この子たちが選んだのは、私じゃなくて角乃さんかもしれません」

 

杏子はにっこりと笑った。その笑顔には、迷いがなかった。

 

俺は黙ってそのやり取りを見ていた。こいつ、ただの元気なガキじゃねえ。自分の限界を知って、より良い形に導くことができる。それは探偵としての勘だけじゃねえ。何かもっと深い、優しさみたいなもんだ。

 

「わかったわよ」

 

角乃はついに観念したように、手を差し出した。その指先がウォッチに触れようとした瞬間、彼女はピタリと止まった。

 

「でも、なんで私なわけ? 吠くんとか瑠衣ちゃんじゃダメなの?」

 

鋭い問いだった。確かにそうだ。俺だってテガソードは使えるし、瑠衣だって霊獣を使いこなしてる。

 

杏子は首を振った。

 

「吠さんは獣です。直感で動くから、二つの力を同時に制御するより、一つの力をぶつける方が合ってます」

 

うぐっ。言い返せねえ。

 

「瑠衣ちゃんは霊を扱うのが得意です。でも、この子たちは霊じゃない。記憶の風と闇です」

 

なるほど。霊媒師に風と闇は荷が重いってことか。

 

「そして角乃さんは…」

 

杏子は少し言いよどんだ。

 

「誰かと一緒にいるのが上手ですから」

 

その言葉に、角乃の動きが止まった。「誰かと一緒にいるのが上手」。ハイクラスを気取るあの女にとって、それは一番屈辱的で、一番図星な言葉だったのかもしれない。

 

「…チッ」

 

角乃はウォッチを掴み取った。

 

「勘違いしなさいよね。あんたが使えないから私が引き受けてあげるだけなんだから!」

 

「はい! よろしくお願いします、相棒!」

 

「相棒じゃないわよ! バカ!」

 

罵りながらも、角乃はウォッチを丁寧にポーチに収めた。

 

俺はルパンウォッチを弄びながら、ふと思った。

 

力は持ち主を選ぶ。そして、持ち主も力を選ぶ。

 

それが正解かどうかはわからねえ。だが、あいつなら案外、使いこなすかもしれねえな。

 

「さあ、帰るぞ。雪庭の爺さんも待ってるだろ」

 

俺は背を向けた。

 

「あ! 待ってくださいよ、お犬さん!」

 

「狼だって言ってんだろ!」

 

奇妙なチームの、まずは最初の仕事は終わった。だが、俺の背中には、まだ重い借りが残っている気がした。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。