ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVSゴーストコンサート : missing Songs ユニバースライダー大戦 作:ボルメテウスさん
夜の道路は、街灯の光が等間隔に流れていくだけの退屈な景色だった。が、車内の空気はそうでもねえ。助手席に座る芹亜が、膝の上でぎゅっと両手を握りしめ、窓の外の闇をちらちらと気にしている。まるで今すぐ何かが出てきそうだとでも思ってるような顔だ。
「なあ、芹亜。てめえ、そんなにビビってんなら来なきゃよかったじゃねえか」
俺がバックミラー越しに声をかけると、芹亜は小さく首を振った。
「だ、だって、廃遊園地ですよ? 夜の遊園地なんて、怪談の舞台にしかならない場所じゃないですか。絶対に誰かいますよ、こう、白いワンピースの女の子とかが」
「いんのは、てめえの頭の中だけだろ」
俺は鼻で笑った。心霊スポットなんてのは、だいたいが過剰な想像力の産物だ。まあ、芹亜みたいな霊感体質の奴からすりゃ、冗談じゃ済まねえのかもしれねえが。
「珍しいわね、吠くん」
運転席の凛空が、ハンドルを握ったまま、柔らかい笑みを浮かべて言った。ネオンサインのない夜の郊外だから、車内は計器の青白い光だけが彼女の顔を照らしている。
「あんた、てっきり『遊園地なんてガキの行く場所だろ』って吐き捨てるタイプかと思ってたから」
「別に。行ったこともねえのに、ガキの場所だって決めつけるほどひねちゃいねえよ」
俺がそう言うと、凛空の手が一瞬、ハンドルから滑りかけた。いや、実際に滑ったわけじゃない。だが、彼女はゆっくりとアクセルを緩め、チラリとミラー越しに俺を見た。
「行ったことないの? 遊園地って…小さい頃とか、家族と行くものじゃないの?」
その言葉に、車内の空気が少し変わった。芹亜も怖がっていた手を止めて、恐る恐る俺の方を向く。ああ、面倒くせえ。そういう目で見るなよ。別に、同情されるような話じゃねえんだ。
「家族も何も、俺ぁずっと一人で生きてきたんだよ。気付いたら、野良みてえに、そこらで食いもん漁ってたクチだ」
淡々と、それだけ言った。取り立てて暗いトーンでもない。事実をそのまま口にしただけだ。
「…そうだったの」
凛空が静かに呟く。その横顔には、気の毒がる様子も、過剰な戸惑いもない。ただ、納得したように静かに頷いていた。
「ごめん、変なこと聞いたわね」
「謝るほどのこっちゃねえよ」
車が一際大きな道路から脇道へと逸れる。舗装の状態が悪くなり、タイヤの音が砂利を噛む音に変わる。この先に、目的地である廃遊園地が眠っているらしい。
「吠さん…」
芹亜が何か言いたげに、俺の袖を軽くつまんだ。
「なんだよ、俺は元気だ。それより、てめえこそ足元気ぃつけろよ。女の子の幽霊に抱きつかれても知らねえぞ」
「や、やめてくださいよ! 本当にそういうのダメなんですから!」
「へっ知ってる」
俺は笑って、窓の外へ目をやった。
夜の闇の中に、色あせた観覧車の輪郭が見え始めていた。遊園地。生まれてこの方、入ったことのない場所。
(思ったより、でけえな)
俺は密かに目を輝かせながら、車が停まる前に、遠くのジェットコースターの影を追っていた。