ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVSゴーストコンサート : missing Songs ユニバースライダー大戦 作:ボルメテウスさん
金色の右手がゆっくりと上げられた。その手は俺に向かってはこなかった。ただ懐へと伸び、何かを取り出した。
俺はテガソードを構えたまま、その動作を見逃さなかった。攻撃じゃない。だが、警戒は解けない。
男の手にあったのは、一つのライドウォッチだった。
だが、今まで見たいかなるウォッチとも違う。黄金の王を模した意匠。まるで男自身を縮小してそのまま閉じ込めたかのような、圧倒的な存在感。金色の輝きが、俺の手にあるテガソードの光と共鳴し、空間の粒子が一層激しく渦巻く。
「その答えは、戦い抜いた者が知るべきものだ」
男の声が響いた。低く、重く、そして絶対的だった。理由を語るつもりはないということだ。俺の問いは、この男にはまだ早いと言わんばかりに。
「理由を教える義理はねえってかよ」
俺は低く唸った。ふざけやがって。原因を作った本人が知らぬ存ぜぬを決め込むとはな。
男は答えない代わりに、その手にあるウォッチを俺に向かって放り投げた。
放物線を描いて飛んでくる金色の塊。俺は反射的にテガソードを持つ左手を伸ばし、空中でそれを捕まえた。
掌に落ちた瞬間、重さが伝わった。金属の冷たさが肌を刺す。だが、その冷たさの裏側から、脈打つような熱さが滲み出ていた。生き物みたいに、手の中で心臓が鼓動を打っているような矛盾した感覚。テガソードの振動が、掌の中のウォッチと共鳴し、腕全体が痺れるほどの熱を帯びる。
「これを使えば、答えに近づく」
男の声が、宣告のように響いた。
「ただし力に呑まれれば終わりだ。お前ごときが、その王の力に耐えられるかは知らぬがな」
警告。脅しにも聞こえるが、この男の口調にはただ事実を述べる響きしかない。使えば近づけるが、使いこなせねえなら破滅するだけだと言うのか。
「脅しかよ」
俺は鼻で笑ってやった。手の中のウォッチを握りしめる。熱さが掌を焼くようだ。だが、握り潰せるもんなら握り潰してやる。
「俺は誰の力に呑まれたりはしねえよ。借りは返すが、主従関係は結ばねえんだ」
男の赤い複眼の光が、わずかに強まった。嘲笑か、それとも評価か。表情は変わらない。だが、その視線は俺の手の中のウォッチと、俺の顔を交互に見定めている。
俺はウォッチを握りしめたまま、男を見上げた。理由は教えてもらえなかった。だが、足掛かりは手に入った。この金色の重みが、俺を答えへと導くのか、それとも破滅へと引きずり込むのか。
カチ。カチ。
背中の大時計が、静かに時を刻み続けていた。
オーマジオウが背を向けた。
ゆっくりと、だが一分の迷いもなく。逃げるための背中ではない。ただ用が済んだから去るだけだ。それが王というものなのだろう。背中に背負った巨大な時計の針が、止まっていた。時すらもこの男の足元にひざまずいているかのように。
「お前に会った理由は一つだ」
男の声が、去り際に響いた。静かだが、俺の胸の奥に骨のように突き刺さる響きだった。
「かつての私に似ていた」
俺はその言葉を喉の奥で反芻した。かつての自分に似ている? 俺がか? 借りも返さず、願いも持たず、ただ野良犬みたいに生きてきたこの俺が、あの金色の魔王と?
問い返そうとした。だが、その隙は与えられなかった。
空間が崩れ始めたのだ。
音はない。ただ、漆黒の闇が白へと反転していく。舞い散る金色の粒子が、雪のように静かに溶けて消えていく。俺の足元から輪郭が薄れ、世界そのものが解けていくような感覚。
「おい、待てよ…!」
伸ばした手は空を切った。
目を開けると、寺の天井があった。
薄暗い。朝の光はまだ入っていない。夜明け前の静寂が、耳の中に残る時計の音をかき消していた。
俺は布団の中で手を握った。掌に、硬い金属の感触があった。
ジオウライドウォッチ。
夢じゃねえ。現実に持ち帰ったのだ。冷たい金属の表面から、内側へ滲むような熱さが伝わってくる。胸ポケットを探ると、ライドウォッチも微かに光を帯びていた。あの金色の王の気配が、まだ掌の中に残っている。
「かつての自分…だと」
俺は天井を見つめたまま呟いた。
意味はわからねえ。だが、嘘ではない気がした。あの男は、俺の中に何かを見た。それが何なのかはまだ答えられない。だが、理由を知るための戦い続け。そう促されたことだけは確かだ。
俺はウォッチを握りしめたまま、静かに夜明けを待った。