ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVSゴーストコンサート : missing Songs ユニバースライダー大戦 作:ボルメテウスさん
セイントゴジュウウルフの青緑色の複眼が、僅かに歪んだ。白いローブを翻しながら、ウルフデカリバー50を構え直す。
「へぇ…面白い。君は本当に飽きないね」
声には喜びが滲んでいた。俺の新しい姿に対する驚きと期待が混ざった声だ。だがその瞳の奥に、ほんの少しの焦りが見えた。錯覚かもしれねえが、それでも俺を滾らせた。
「褒め言葉と思っておくぜ」
俺はテガソードを握り直し、左手のテガジューンを構えた。銃口は真っ直ぐにセイントゴジュウウルフを狙っている。だが撃たない。撃てば奴は次元斬りで弾を消し去る。だからこそ、撃つタイミングを見計らう。
俺は地面を蹴った。苔の湿り気が靴底を滑らせるが、構わねえ。低く、獣のように飛び込む。目標はセイントゴジュウウルフの胸元。だが真正面からは行かねえ。斜めから入り込む。
右手のテガソードが閃光を放つ。上段からの振り下ろし。セイントゴジュウウルフはそれをウルフデカリバー50で受けた。金属音が朝の庭に響き渡る。
「君の荒削りな攻撃じゃボクには通用しないよ!」
セイントゴジュウウルフが反撃に出た。剣を巧みに操作し、俺のテガソードを弾き返そうとする。だが俺は引かねえ。弾かれそうな瞬間、腰を捻り体全体で体重を預ける。テガソードの刃に力を込めて押し込んだ。
「ぐっ…!」
セイントゴジュウウルフの白い装甲に亀裂が入った。浅いが確かに傷がついた。奴の表情が一瞬強張る。
「ほう…なかなか」
「まだまだだ!」
俺はテガソードを引き、即座に第二撃を繰り出す。下から上への切り上げ。だが今度はセイントゴジュウウルフも冷静だった。白いローブを翻し後方に跳躍、斬撃を紙一重でかわす。
「君の近接戦闘は確かに向上した。でもね…!」
セイントゴジュウウルフがウルフデカリバー50を逆手に持ち替え、こちらへ投擲しようとする。刃を捨てて接近戦に持ち込む気か? いや違う。投げるフリだ。投げる瞬間に俺の意識が刃に集中した隙を突くつもりだ。
俺は即座に左手のテガジューンを発射した。
純白の光弾が轟音と共に放たれる。セイントゴジュウウルフは予期していたようで、軽やかに体を捻り弾道を避けた。だが俺の狙いは命中じゃねえ。牽制だ。
光弾がセイントゴジュウウルフの視界を覆い隠した瞬間、俺は地面を蹴った。光と煙の裏から飛び出し、再び接近する。死角からの奇襲。
テガソードを水平に薙ぐ。セイントゴジュウウルフはそれをギリギリで回避するが、完全には間に合わない。赤いマントの端が切り裂かれ、布切れが宙を舞う。
「くっ…!」
「どうだよ? 当たれば痛いだろ?」
「生意気だね!」
セイントゴジュウウルフが吼えた。青緑色の複眼が鋭くなり、ウルフデカリバー50を鋭く一閃させる。衝撃波だ。空間を切り裂く白い斬撃がこちらへ迫る。
俺はテガジューンを連射した。放たれた光弾が斬撃と衝突し、相殺する。白い霧のような衝撃波が散り、視界が開ける。
俺はテガソードを逆手に持ち替え、腰の位置で構えた。獣の姿勢。飛びかかる準備だ。
一方、セイントゴジュウウルフはウルフデカリバー50を両手で構え直した。騎士の姿勢。迎え撃つ構えだ。
「決着をつけるよ!」
「望むところだ!」
俺たちは同時に地面を蹴った。
鋼鉄と鋼鉄が再び激突する。
互いの攻撃が交差し、火花が散る。息が詰まるほどの速さで剣と剣がぶつかり合う。どちらも一歩も譲らない。いや、俺の方がわずかに押している。ガリュードの鎧が、俺の力を底上げしてくれているからだ。
互いの刃が弾かれ俺たちは一度距離を取った。
荒い息が口から漏れる。肋骨の痛みはまだ残っている。だがそんなもんは関係ねえ。今の俺には兄から貰ったこの鎧がある。ガリュードの力が全身を駆け巡り血管の中を沸騰した鉄みたいに熱い。
セイントゴジュウウルフもまた息を整えていた。白いローブの端がボロボロになり青緑色の複眼の光が僅かに揺らいでいる。だがその構えは崩れていない。ウルフデカリバー50を右手にテガソードを左手に。二刀流の構えだ。
「いいねいいね。やっぱり君は面白い。ボクの半分じゃ収まらないね」
「うるせえ。そろそろ幕引きだ」
「ああそうだね。決めようか。全力で」
俺は右手のテガソードを上段に構えた。左手のテガジューンをセイントゴジュウウルフに向ける。銃口が微かに震える。いや震えているんじゃない。中に溜まるエネルギーが脈打っているだけだ。
セイントゴジュウウルフも両手の武器を構え直した。ウルフデカリバー50を右斜め上にテガソードを左斜め上に。二つの刃がクロスする構え。あいつも必殺を出す気だ。
風が止まった。庭の木々が息を止めたみたいに静かだ。朝の光だけが二人の間に横たわっている。
俺はテガジューンのトリガーに指をかけた。掌の中で銃身が熱を帯びていく。紫色の光が銃口の奥で凝縮され弾丸となっていくのがわかる。同時に右手のテガソードに力を注ぎ込む。刃の表面を赤いエネルギーが這い回り漆黒の鎧と共鳴して鋭い輝きを放つ。
紫の銃弾。赤の斬撃。二つの力を同時に叩き込む。それが俺の答えだ。
「行くぞ…!」
俺はテガジューンのトリガーを引いた。
ドォン!
紫色の光弾が放たれた。純白の銃身から噴き出す紫の奔流は真空の道を切り開きながらセイントゴジュウウルフへと殺到する。
同時に俺は地面を蹴った。テガソードを振り上げ赤い斬撃を纏った刃が弧を描く。紫の光弾の直後を追うように赤い刃が空を裂く。紫の弾丸が先に着く。そして赤い斬撃がそれを追い抜き弾丸と融合する。
紫と赤。二色の光が螺旋を描きながら一つの奔流となった。
「いただき!」
セイントゴジュウウルフが叫んだ。両手の武器を同時に振り下ろす。右のウルフデカリバー50と左のテガソード。白い光を纏った二つの刃がX字の軌道を描きこちらへ向かってくる。
白い十字斬撃と紫赤の螺旋。二つの必殺技が空中で激突した。
衝撃波が庭を叩きつけた。苔が剥がれ石灯籠の残骸が吹き飛び朝露が蒸発する。轟音が鼓膜を破りそうなほど響く。俺とセイントゴジュウウルフの間で二色の光がせめぎ合う。
「くっ…!」
セイントゴジュウウルフの声が軋む。白い十字斬撃が紫赤の螺旋に押され始めていた。俺の力が上回っている。いや俺の力じゃない。兄から貰ったこの鎧の力だ。ガリュードの力だ。そして俺の中の光も闇も全部ひっくるめた力だ。
「おおおおおっ!」
俺は吼えた。遠吠えみたいに喉の奥から絞り出した叫びと共にテガソードに残りの力を全て注ぎ込んだ。
紫赤の螺旋が白い十字を砕いた。
「しまっ…!」
セイントゴジュウウルフの両手の武器が弾き飛ばされた。ウルフデカリバー50とテガソードが別々の方向へ宙を舞う。そして紫赤の奔流がセイントゴジュウウルフの胸板を直撃した。
ドゴォォンッ!
白い装甲が砕け散った。亀裂が全身に走り白いローブが引き裂かれ舞い上がる。セイントゴジュウウルフの身体が後方へ弾き飛ばされ庭の地面を削りながら転がっていく。
俺は着地した。テガソードを地面に突き刃を支えにして膝をつく。息が切れる。全身の力を使い果たしたみたいに指一本動かせない。だが勝った。
紫と赤の残光が朝の空気の中に溶けていく。