ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVSゴーストコンサート : missing Songs ユニバースライダー大戦 作:ボルメテウスさん
紫と赤の残光が朝の空気の中に溶けていき、庭には静寂が戻った。砕けた石灯籠の残骸と、苔が剥き出しになった地面。その中心に、白い装甲をボロボロにしたセイントゴジュウウルフが膝をついていた。
「なぜ…!」
光の吠の声が震えていた。青緑色の複眼の光が明滅し、懊悩の色を浮かべている。
「なぜ僕が負けたんだ! 遠野吠として優秀な部分は全て僕のはずなのに! 君はただの不出来な半分じゃないか!」
俺は荒い息を吐きながら、テガソードを地面から引き抜いた。ガリュードの鎧が光の粒子となって剥がれ落ち、ワイルドゴジュウウルフの装甲に戻っていく。さらにそれもほどけて、俺は素の姿に戻った。
「不出来だぁ?」
俺は肩を怒らせて近づいたが、倒れている相手に蹴りを入れる趣味はねえ。
「へっ、優秀な部分だけ集めたって、ロクなもんにならねえってことだ」
「違う! 僕は完璧なはずだ! 君の弱さを除いた光だけの存在なのに…!」
光の吠は地面を叩いた。白いジャケットが泥に汚れ、いつもの輝きは失せている。俺と同じ顔で悔しがるその姿は、どこか滑稽で、そして妙に腹立たしかった。
「吠」
背後からクオンの声がした。黒いウルフデカリバー50を下ろし、俺の隣に並ぶ。その表情は穏やかで、倒れた光の吠を静かに見つめていた。
「吠だから知らないのかい?」
「あ? 何がだよ」
「吠は負け犬だったんだよ」
「はあ?」俺は思わず振り返った。「てめえ、味方のくせに補刀かよ?」
クオンはフッと笑った。余裕のある、兄の笑みだ。
「けれど、それでも噛みつく。だから強いんだよ」
「……は?」
俺は呆気にとられた。負け犬だけど噛みつくから強い? どういう理屈だ。
「おいそれって褒めているのかよ」
俺は眉をひそめて尋ねた。兄貴の言葉はいつも回りくどい。直球で来い直球で。
「褒めているさ」
クオンは即答した。その目は真っ直ぐに俺を見ていた。嘘もお世辞もない、兄が弟を認める目だ。
「負けを知っているからこそ、這い上がる強さがある。光だけの君には、それがなかったのさ」
クオンの視線が、倒れた光の吠に移る。光の吠は地面に手をついたまま、兄の言葉を聞いていた。青緑色の複眼の光が揺れている。
「……なるほど」
光の吠の声が、静かに変わった。先ほどまでの叫びは消え、代わりに諦念のような、理解のような、静かな響きがあった。
「確かに僕は勝てないね」
光の吠は立ち上がった。泥に汚れた白いジャケットを払い、俺の方に向き直る。その表情は……俺と同じ顔なのに、どこかスッキリとしていた。
「君は負けても噛みつく。でも僕は光だから。光は影を知らない。だから、君には及ばない」
「……回りくどい言い方すんな。負けたんだよ、はい負け」
「ふふ、そうだね。負けだ。潔く認めるよ」
光の吠は両手を広げた。その身体が光の粒子となって輝き始める。
「また会おう。僕の半分」
「勝手にしろ。次も負かしてやるからな」
光の粒子が俺の胸元へと吸い込まれていく。温かい。あのジオウライドウォッチの熱さとは違う、もっと馴染みのある温もりだ。
机の上に置かれていた二つのライドウォッチがカチリと音を立て、一つに結合した。ジオウライドウォッチが元通りの形に戻る。
俺はそれを手に取り、ため息をついた。
「……で、結局何だったんだよ今の」
「君の光だよ。吠」
クオンが俺の頭をぽんと叩いた。
「……うるせえ」
俺は掌の中のウォッチを握りしめた。負け犬でも噛みつけば強い、か。褒め言葉として聞きづれえが、兄ちゃんの言うことだ。間違いないんだろう。
朝日が庭を照らしていた。砕けた石灯籠と剥げた苔。
「それにしても、やっぱり僕がいないと何も出来ないのかな、吠」
「・・うるせぇよ、クオン」
「ふふっ、お兄ちゃんって呼んでも良いだよ」