ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVSゴーストコンサート : missing Songs ユニバースライダー大戦 作:ボルメテウスさん
夜の街に異変が起きた。
正確には起きかけていた。
路地裏。街灯の明かりが届かない薄暗い場所。そこに白い悪魔が立っていた。
仮面ライダーエターナル。左隼人。あいつだ。
前回と同じだ。黒いマント。白い装甲。青い炎の模様。頭の横倒しの「E」。無限大の目。
だが今回は逃げねえ。こっちに向かってきやがった。
「来るわよ!」
角乃が叫んだ。Wの装甲を纏っている。緑と黒の複眼が暗闇の中で光っている。
瑠花も構えている。アギレラの紫と黒の装甲が闇に溶け込んでいる。
俺は二人の前へ出た。
野良犬は縄張りを守るもんだ。今の縄張りはここだ。あいつらを行かせるわけにはいかねえ。
「下がってろ!」
俺は叫んだ。
エターナルが突進してくる。エターナルエッジが俺を狙う。白い刃が夜の空気を切り裂く。
俺は避けなかった。避ける必要がねえ。
「エンゲージ!」
センタイリングを掲げる。テガソードの光が俺の体を包み込む。
『クラップユアハンズ!ゴジュウウルフ!』
銀色の光が溢れ出す。体が変わっていく。野良犬から狼へ。荒々しい力が全身を駆け巡る。
ゴジュウウルフ。
低い姿勢から一気に距離を詰める。ウルフデカリバー50を抜き放ちエターナルエッジを受け止める。
ガキィン!
火花が散った。金属音が路地裏に響く。
「くっ…!」
重い。こいつの力は本物だ。押し返そうとするが膠着状態だ。
その間に角乃と瑠花が動いた。
Wが右から回り込む。アギレラが左から回り込む。挟み撃ちだ。
「朱莉! 人を頼む!」
俺が叫んだ。朱莉は頷いた。被害者の男の手を引いて路地の奥へ走っていく。安全な場所へ移動させるためだ。
エターナルはそれを見た。
無限大の目が一瞬だけ奥へ動く。
(逃がさねえってか)
俺はウルフデカリバー50に力を込めた。押し返す。少しだけだが刃が逸れる。
その隙で俺は後ろに跳んだ。エターナルと距離を取る。
エターナルは追ってこなかった。
その代わり懐から何かを取り出した。
細長い器具だ。
金色の六角形の形体をしている。中央にボタンがある。
「…ウォッチじゃねえ」
俺は呟いた。
あれはライドウォッチじゃねえ。もっと無骨で鋭角的な形だ。何だありゃ。
エターナルがその器具をボタンで起動した。
『HEAT!』
電子音声が響く。
熱?
エターナルはその器具を腰のジクウドライバーではなく装甲の右腕のスロットに差し込んだ。
カチリ。
その瞬間だ。
エターナルの右腕から熱気が噴き出した。
目に見えない波動だ。だが肌でわかる。空気が沸騰してやがる。
「熱い…!」
角乃が声を上げる。
ただの物理攻撃じゃねえ。熱波だ。触れただけで火傷しそうな熱気が俺たちを襲う。
エターナルが動いた。
右腕を振るう。熱波が衝撃波となって俺たちを薙ぎ払う。
「ぐあっ!」
俺は腕で顔を覆った。熱気が装甲越しに伝わってくる。息が苦しい。
Wとアギレラも吹き飛ばされた。壁に叩きつけられる音が響く。
(攻撃の性質が変わった!)
俺は気づいた。さっきまでのエターナルエッジによる物理攻撃とは違う。あの細長い器具を使うことで攻撃の性質が変わる。
エターナルがゆっくりと近づいてくる。
右腕からはまだ熱気が漂っている。青い炎の模様が一層激しく揺らめいている。
「お前は…」
俺は息を吐きながら言った。
「何なんだよ」
エターナルが止まった。
無限大の目が俺を見ている。
「左隼人(ひだり・しゅんと)」
声が聞こえた。落ち着いた声だ。だがその奥に暗い炎がある。
「元刑事だ」
「元刑事?」
「母を殺された」
短い言葉だった。
それだけだ。それ以上の説明はねえ。だがそれだけで十分だった。こいつの目の奥にある暗い炎の正体がわかった。復讐だ。家族を殺された人間の目だ。
「怒りはわかる」
朱莉の声が聞こえた。路地の奥からだ。被害者を庇いながらこちらを見ている。
「でもそれは人を殺す理由にはならない」
エターナルは朱莉を見た。
「…殺す?」
「あなたの目は殺意に満ちている」
朱莉の声は静かだった。だが揺るがない。
「怒りは正当な感情よ。でもそれを他者に向けたら罪になる」
エターナルは答えなかった。
ただ右腕を上げた。熱気が再び集まっていく。今度はもっと強い波動になりそうだ。
「させねえ!」
Wが動いた。
アギレラも動いた。
二人が同時にエターナルへ突っ込む。Wが左からキックを放つ。アギレラが右から斬撃を放つ。
連携攻撃だ。
だがエターナルは動じなかった。
懐から別の細長い器具を取り出す。さっきとは違う色だ。
『ACCEL!』
起動音声が響く。
エターナルは左足のスロットに器具を差し込んだ。
カチリ。
その瞬間エターナルの姿がブレた。
速い!
見えねえ速さで動いている。Wとアギレラの攻撃が空を切る。エターナルは二人の間を抜けて背後に回っていた。
「なっ…!」
角乃が驚愕の声を上げる。
エターナルが二人の背中を蹴った。
ドガッ!ドガッ!
二つの体が路地の壁に叩きつけられる。瓦礫が落ちる音が響いた。
(まずい!)
俺は走った。ウルフデカリバー50を構えてエターナルに切りかかる。
だがエターナルは俺の剣を受け流した。さっきまでの熱波攻撃とは違う。速度を利用した打撃だ。
俺は押し返される。壁際へ追いやられる。
(このままじゃジリ貧だ)
俺は二人の方を見た。Wもアギレラも体勢を立て直している。だが完全じゃねえ。
(退路を確保する)
俺は判断した。勝つことじゃねえ。二人を逃がすことだ。
「角乃!瑠花! 下がれ!」
俺は叫んだ。
ウルフデカリバー50を振り回す。当てる気じゃねえ。時間を稼ぐためだ。
エターナルは冷静だった。俺の剣を受け流しながらじりじりと前に出てくる。
だが俺も引かねえ。野良犬は一度噛みついたら離さねえ。
その時だった。
エターナルが動きを止めた。
無限大の目が路地の奥を見ている。
朱莉と被害者がいた場所だ。
もういない。
朱莉が被害者を連れてどこかへ逃げたらしい。あいつ手際がいいな。
エターナルはそれを見ていた。
追おうとしたのだろうか。一歩踏み出した。
だが止まった。
ゆっくりとこちらを振り返る。
Wとアギレラが体勢を立て直して立っていた。俺もウルフデカリバー50を構えて立っていた。
三人に囲まれている状況だ。被害者はもういない。
エターナルは判断したらしい。
懐から別の器具を取り出した。
『ZONE!』
起動音声が響く。
右肩のスロットに差し込む。
カチリ。
その瞬間エターナルの全身から衝撃波が放たれた。
「うわあぁっ!」
俺たちは一斉に吹き飛ばされた。
壁に叩きつけられる。息が止まる。視界が揺れる。
エターナルは追撃してこなかった。
ただ路地の出口へ向かって歩いていく。
背中で語っている。「今回はこれまでだ」と。
出口でエターナルは止まった。
振り返る。無限大の目が俺たちを見ている。
「また会う」
低い声だった。
そして白い悪魔は夜の闇に溶けて消えた。
* * *
路地裏に静寂が戻った。
瓦礫の山の中で俺たちは立ち上がった。
体中が痛い。特に角乃と瑠花はダメージを受けているらしい。装甲にひびが入っている部分がある。
変身を解除した。
俺もゴジュウウルフを解除する。銀色の光が消えて元の体に戻る。
「何だったのよ今のは」
角乃が呟いた。息が荒い。
「あの細長い器具…ライドウォッチじゃなかった」
「ああ」
俺は頷いた。
「あれを使うたびに攻撃の性質が変わった」
「熱波に高速移動に衝撃波…」
瑠花が呟いた。やっぱり息が荒い。だで目は冷静だ。
「それぞれ異なる力ね」
「名前は聞こえた」
俺は言った。
「ヒート…アクセル…ゾーン…だったか」
「記憶してたのね」
角乃が少し感心したように言った。
「あいつ左隼人って名乗ったわね」
瑠花が呟いた。「元刑事で母親を殺された…」
「復讐ってことか」
「かもしれない」
角乃は首を振った。「でもそれだけじゃない気がする」
「どういう意味よ」
「あいつ被害者を追おうとしたけど途中でやめたわよね」
確かにそうだ。エターナルは被害者がいないとわかったらすぐに撤退した。執着がないわけじゃないだろうに。
「何か別の目的があるのかもしれない」
角乃の言葉に俺も頷いた。
結局何もわからなかった。
あいつが何者なのか。なぜ襲撃事件に関わっているのか。あの細長い器具は何なのか。前回の襲撃犯との関係は何なのか。
全部謎のままだ。
ただ一つだけ確かなことがある。
あいつはまた来るということだ。「また会う」と言い残していったからな。