ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVSゴーストコンサート : missing Songs ユニバースライダー大戦   作:ボルメテウスさん

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名探偵、蜂の巣をつつく

机の上が埋まってる。

 

書類と地図と写真。印刷物の山だ。角乃が昨夜一晩かけて広げた捜査資料が、拠点のテーブルを占領している。俺は壁に寄りかかりながら、その山を眺めていた。

 

「ここ。ここ。そしてここ」

 

角乃の指が地図の上を跳ぶ。三箇所に赤い丸がついている。襲撃事件の発生場所だ。

 

「被害者三名。いずれもTERA周辺の協力者。共通点は二つ」

 

角乃は資料をめくり、指先で一行をなぞった。

 

「一つ目、全員が霊的感知能力の持ち主。二つ目、全員が過去五日以内に祈祷所を訪れている」

 

「祈祷所?」俺は眉をひそめた。「あの古い祈祷所か?」

 

「そう。三カ所の祈祷所を回ってる。被害者三名とも別々の祈祷所を訪れてるんだけど、一つ共通してる祈祷所があるのよね」

 

角乃は地図に四つ目の丸を描いた。三つの赤い丸の中心にある、黒い丸だ。

 

「ここ。茨城支部から三キロの祈祷所。三名全員がここを訪れてる」

 

「三名とも同じ場所を」俺は腕を組んだ。「偶然じゃねえな」

 

「偶然じゃないでしょ。ハイクラス名探偵の推理によるとね」

 

角乃はにやりと笑った。いつもの自信たっぷりの笑みだ。だがその目は笑っていない。真剣に資料を読み込んでいる。この女、口は軽いが仕事は早い。

 

「次の標的はここを訪れた他の能力者ってことか」

 

「推定よ。断定はできない。でも確度は高いわ」

 

角乃は地図の周辺に散らばる点を指した。能力者の居住地だ。TERAのデータベースから引っ張った情報らしい。

 

「この祈祷所を過去一カ月以内に訪れた能力者は七名。うち三名が既に襲われている。残り四名」

 

「四名か」俺は顔をしかめた。「全員保護する必要があるな」

 

「そうね。手配をするわ。朱莉さんに頼んで」

 

村山朱莉。TERAの通信担当官だ。俺と同じくTERAに所属している。小柄な体で大きなヘッドセットを被っている。通信技術には定評がある。

 

「朱莉に連絡する。お前は資料をまとめろ」

 

「はいはい。吠くんに指示されるとは思わかったけどまあいいわ」

 

角乃は手を振って資料の山に向き直った。俺は携帯を取り出して朱莉へ連絡を入れる。

 

「あ、吠くん? 今、四名の保護リスト送ります。なるはやで」

 

朱莉の声がヘッドセットから聞こえる。早口だ。いつものだ。

 

「頼む。襲撃パターンから推測すると次は早いかも」

 

「了解です。現場班に回します。杏子さんにも伝えますね」

 

園田杏子。TERAの現場班長だ。実戦経験が豊富な女性だ。保護手配なら任せて問題ない。

 

「それと、左くんにも警戒を」

 

左隼人。TERAの戦闘員だ。杏子の部下で、現場での護衛を担当する。連絡網は朱莉が回してくれる。

 

「左くんにも回します。安心してください、吠くん。私たちがやります」

 

「ああ。頼む」

 

通話を切ると、角乃がこっちを見ていた。資料の上に顎を乗せて、妙にニヤニヤしている。

 

「なに?」

 

「いや、吠くんが人に頼むの珍しいなと思って」

 

「うるせえ。借りは返すって言ってるだろ。今回は俺が借りてる側だ」

 

「ふふ。成長したじゃない」

 

「成長してねえよ」

 

俺は壁に寄りかかったまま鼻を鳴らした。成長だと? 野良犬が成長するわけがねえ。ただ少し、人に頭を下げるコツを覚えただけだ。

 

*  *  *

 

保護手配を済ませて一時間。夕方の光が窓から傾き始めた頃、拠点のドアがノックされた。

 

控えめなノックだ。三回。ゆっくりと。

 

「はい」

 

角乃が答える。ドアが開いた。

 

入ってきたのは、十六歳くらいの少女だった。

 

静かな子だ。黒髪を肩まで伸ばし、地味な色のパーカーを着ている。表情が薄い。だがその目が妙に深い。底なし井戸みたいに深い目だ。俺は一瞬で気づいた。この子、普通じゃねえ。

 

「真冬瑠花です」

 

少女は名乗った。声は小さい。だが淀みがない。マイペースというか自分のリズムを持っている子だ。

 

「あなたが資料を回した四名のうちの一人です。保護手配を受けましたが、それより先に確かめたいことがあって来ました」

 

「確かめたいこと?」角乃が首を傾げた。

 

瑠花は角乃をじっと見た。深い目だ。その目は探っている。何かを。誰かを。

 

「推理は正しいと思います。祈祷所を訪れた能力者が標的にされている。それは間違いない」

 

瑠花は淡々と言った。感情がねえわけじゃない。ただ無駄な感情を出さないだけだ。

 

「でも力を預ける相手は選びます。あなたがこの力に見合う人間かどうか、確かめたい」

 

「力を預けるって」俺が口を挟んだ。「お前、何を持ってるんだ」

 

瑠花は俺を一瞥した。一瞬だけ。それからまた角乃に視線を戻した。

 

「それは後で。まずは答えをください、一河角乃さん」

 

角乃は笑った。いつもの自信たっぷりの笑みだ。だがその目は笑っていない。瑠花の言葉の重みを量っている。

 

「確かめたいことって何?」

 

「決闘です」

 

瑠花は言った。平坦に。まるで「お茶を飲みに行きましょう」と同じくらいの調子で。

 

「私と戦ってください。あなたが力を預かる責任を引き受けられるか。それを確かめたい」

 

拠点が静かになった。角乃の笑みが固まる。俺は眉をひそめた。決闘だと? 保護を受ける側が保護する側に決闘を申し込むのかよ。

 

「瑠花、お前、今保護されてるんだぞ。決闘してる場合じゃ――」

 

「吠くん、黙って」

 

角乃が手を上げた。俺を止めた。その目は瑠花を見ている。真剣な目だ。ハイクラス名探偵の目だ。

 

「いいわよ。やりましょう」

 

角乃は言った。迷いがない。即答だ。

 

「角乃!」

 

「吠くん。この子は真剣よ。力を預ける相手を間違えたくないの。それは私だって同じ」

 

角乃は立ち上がった。テーブルの上の資料を一つにまとめ、腰のテガソードを確認する。

 

「民間人のいない場所がいいわね。空き地を使いましょう」

 

「移動します」

 

瑠花は踵を返した。静かに。パーカーの裾が揺れる。

 

俺は舌打ちした。従うしかねえ。角乃が決めたことだ。だが万が一のことがあれば、俺が割って入る。そう決めて、二人の後をついていった。

 

*  * *

 

空き地は広かった。

 

TERAの敷地外にある荒地だ。雑草が生い茂り、崩れたブロック塀が点在している。人影はない。夕日の赤が地面を染めている。

 

角乃と瑠花が向かい合った。十メートルの距離。俺はその外側、二十メートル離れた位置に立った。口出しはしねえ。だが目は離さねえ。

 

「名前、教えてもらえる?」

 

角乃が言った。穏やかな声だ。だが手はテガソードに掛けている。

 

「真冬瑠花。十六歳」

 

「十六歳か。若いわねえ」

 

「あなたより若いだけです」

 

「はは、やっぱり? ま、見た目はね」

 

角乃は笑った。軽口だ。だがその目は笑っていない。瑠花の全身を観察している。立ち方。重心の位置。手元に何を持っているか。全てを見ている。

 

(さすがだな)

 

俺は角乃の観察眼に感心した。この女は口は軽いが目は鋭い。相手の隙を見抜く能力は、探偵としてのそれだけじゃねえ。戦闘でも使える。

 

瑠花が腰に手を回した。ジクウドライバー。そこにライドウォッチを装填する。

 

「ライドウォッチ」

 

俺は呟いた。見覚えがある。白玖が使っていたのと同じ系統の変身道具だ。だが色が違う。黒と赤。表面に蜂を思わせる紋章が刻まれている。

 

瑠花はライドウォッチのボタンを押した。

 

『ライダータイム!』

 

電子音声が響く。夕方の空き地に似つかわしくない音だ。

 

『仮面ライダーアギレラ!』

 

変身だ。黒と赤の光が瑠花の身体を包む。装甲が形成されていく。黒いスーツの上に赤と黄色の装甲が重なる。女王蜂を思わせる姿だ。頭部に触角状の突起が伸び、大きな複眼が光る。胸部や四肢に蜂を連想させる模様が走る。腰のジクウドライバーにライドウォッチが収まっている。

 

(仮面ライダー…アギレラ)

 

俺は目を細めた。名前は知らねえ。だがあの姿は蜂だ。女王蜂。蜂の群れを率いる者。十六歳の少女が纏うには、重すぎる名前だ。

 

アギレラの右手に武器が現れた。ニードルクナイだ。針のように細い刃が光る。左手には別の武器。ゲノムウェポン。蜂の毒針を思わせる形状の打撃武器だ。

 

二刀だ。右手に鋭い刃、左手に重い打撃。距離によって使い分ける気だ。近距離はニードルクナイ、中距離はゲノムウェポン。そしておそらく、遠距離は――

 

「来るぞ」

 

俺は直感した。アギレラの左手が動いたからだ。ゲノムウェポンから何かが飛んだ。

 

蜂蜜だ。

 

黄金色の粘液が空を切り裂いて飛んでくる。角乃に向かって。角乃は横に跳んで回避した。蜂蜜が地面に着弾する。

 

プチュ。

 

粘液が地面に広がる。俺は目を凝らした。蜂蜜が広がった瞬間、表面が泡立ち始めた。数秒。数秒で液体が硬化していく。黄金色の固体に変わっていく。

 

(硬化する…!)

 

数秒で固まる。つまり着弾してから数秒以内に離脱しないと、足を取られる。あるいは蜂蜜が直撃すれば、その場所で固定される。罠兵器だ。通常攻撃じゃねえ。戦場をコントロールするための武器だ。

 

角乃はそれを悟ったみたいだ。蜂蜜が固まった地面を見て一瞬だけ目を細めた。それからニードルクナイの射程を測るみたいに、アギレラとの距離を確認する。

 

「なるほどね。蜂蜜で動きを封じて、針で刺す。蜂の戦法そのものってわけ」

 

角乃は言った。分析だ。戦いながら相手の戦法を分析している。

 

アギレラは答えない。ただ静かに構えを変えた。ニードルクナイを逆手に持ち、間合いを詰める。

 

速い。

 

十六歳とは思えねえ速度だ。低い姿勢で滑るように接近する。ニードルクナイの刃が夕日を反射して閃く。

 

角乃はテガソードを構えた。ゴジュウユニコーンのまま戦う気か。いや、そうか。まずは今の姿で相手の力量を測るつもりか。

 

ギキン!

 

金属音が響いた。テガソードがニードルクナイを受け止める。だがアギレラは止まらない。左手のゲノムウェポンを振り上げる。重い一撃だ。

 

角乃はテガソードでそれを受け流した。受け流して距離を取る。だがアギレラは追ってくる。

 

(角乃、変わったな)

 

俺は角乃の動きを見て思った。前の角乃なら、もっと突っ込んでただろう。真正面からぶつかって、力で押し切ろうとしただろう。だが今は違う。受け流して距離を取る。相手の動きを見る。観察してから動く。

 

探偵の戦い方だ。推理してから行動する。力で押すんじゃなくて、相手の隙を突く。角乃の戦い方が変わっている。

 

アギレラが蜂蜜を放つ。ゲノムウェポンから黄金色の粘液が飛ぶ。今度は二発。左右に散らすように。角乃は後方に跳んで両方を回避した。

 

「射程は十五メートル前後ね」

 

角乃が呟いた。計算している。蜂蜜の射程を。硬化までの時間を。ニードルクナイの間合いを。全てを頭の中で計算している。

 

アギレラが突っ込んでくる。蜂蜜の着弾地点を踏み台にして加速する。固まった蜂蜜の上を滑らないで走る。鞋底が奇妙な音を立てるが、足取りは崩れない。

 

(すげえな)

 

十六歳の少女が蜂の装甲を纏って、自分の作った罠の上を走る。慣れてる。自分の力に完全に慣れてる。それがどういう意味か、俺にはわかる。この子は何度も戦ってきたんだ。自分の力を使い込んできたんだ。

 

ニードルクナイが閃く。三連撃。右、左、右。角度を変えながらの連続突きだ。角乃はテガソードで一撃目を弾き、二撃目を体を逸らして回避し、三撃目を――

 

受けなかった。

 

テガソードの刃をニードルクナイに沿わせて滑らせた。刃を滑らせて、アギレラの手首を狙う。武器ごと弾き飛ばす気だ。

 

「!」

 

アギレラが後退る。だが遅い。角乃のテガソードがニードルクナイを弾き飛ばした。黒い刃が宙を舞い、地面に突き刺さる。

 

(やったか!)

 

いやまだだ。アギレラは武器を失っても止まらない。左手のゲノムウェポンを振り回す。だが単発だ。二刀じゃねえ。片手だけなら角乃が上だ。

 

角乃はテガソードを逆手に持ち替えた。構えが変わる。今までのゴジュウユニコーンの構えじゃねえ。もっと低く、もっと鋭い構えだ。

 

「ここからは私の番よ」

 

角乃が言った。その声には今までと違う響きがあった。ゴジュウユニコーンの戦士じゃない。別の力を使う声だ。

 

テガソードの装填部に、新しいリングが嵌められる。銀色のリング。表面に二つの顔が刻まれている。左右に分かれた仮面の意匠。

 

(あれは…!)

 

俺は目を見開いた。見覚えがある。以前入手したライダーリングの一つだ。名前は知らねえ。だがあのリングが何か別の力を宿していることはわかる。

 

『ライダーリング!ダブル!』

 

テガソードが音声を発した。ゴジュウユニコーンの黒い装甲が光り出す。光が粒子となって剥がれ落ち、新しい装甲が形成されていく。

 

右半身が緑。左半身が黒。中央を銀色の線が分ける。額にW字形の触角。赤い複眼。右側の首元から銀白色のマフラーがなびく。

 

(二つの色が一つの体に…!)

 

半々の配色。右と左。緑と黒。二つの力が一つの身体に宿っている。妙な姿だ。だがその姿には何か芯のようなものがある。二つでありながら一つ。分かれていながら全体。そんな印象だ。

 

「名前は知らない。でもあんたの力を借りる。それが私の答えよ」

 

角乃の声が響く。だが声が二重に聞こえた気がした。緑の側と黒の側。二つの声が重なっているみたいに。

 

アギレラは弾かれたニードルクナイを呼び戻した。手元に戻る。磁石みたいに。二刀の構えに戻る。

 

「来なさい」

 

瑠花が言った。静かに。だがその声には力があった。決闘を申し込んだ時の声と同じ。自分の意志を確認する声だ。

 

角乃が動いた。

 

速い。ゴジュウユニコーンの時とは違う速さだ。いや速さだけじゃねえ。動き方が違う。右半身が緑の力で風を切るみたいに動き、左半身が黒の力で地面を踏み込む。二つの力が噛み合って、一本の動きになる。

 

(なんだこの動きは…!)

 

俺は息を呑んだ。右足と左足が違うリズムで動いているみたいだ。だが全体としては一つの動きになっている。不思議な戦い方だ。二人で一つの動きをしてるみたいに見える。

 

アギレラが蜂蜜を放つ。二発。角乃の左右へ。角乃は右半身を前に出して風みたいに回避する。緑の力だ。風を操る力か。身体が風を切るみたいに滑る。

 

着弾した蜂蜜が硬化するまでの数秒。その間に角乃は距離を詰めた。テガソードを横に構える。

 

アギレラがニードルクナイを突き出す。速い突きだ。だが角乃はそれをテガソードの側面で受け流す。流しながら前へ。前へ進む。

 

ゲノムウェポンが振り下ろされる。重い一撃。角乃は左半身でそれを受け止めた。黒の力。受け止めて弾く。力で力を返す。

 

「くっ…!」

 

アギレラが初めて声を上げた。後退る。だが角乃は追わない。一歩引いて、アギレラの構えを見る。観察している。

 

(攻撃を誘ってる…!)

 

俺は気づいた。角乃は攻撃をわざと受けている。受けて、アギレラの武器の切り替えの瞬間を狙っているんだ。

 

ニードルクナイとゲノムウェポン。二つの武器を使い分けるには、持ち替える瞬間がある。その一瞬が隙になる。角乃はそこを突く気だ。

 

アギレラがニードルクナイを振るう。角乃は回避する。最小限の動きで。右半身の風の力で刃を紙一重でかわす。そのまま懐に入る。

 

アギレラがゲノムウェポンに持ち替えようとした。その瞬間だ。右手のニードルクナイを左手に持ち替えようとする。一瞬の隙。

 

角乃は逃さない。

 

テガソードを突き出す。アギレラの胸部へ。だが殺す気じゃねえ。武器を弾く。左手のゲノムウェポンをテガソードの腹で押し上げ、アギレラの両手を上に弾く。

 

「あ…!」

 

アギレラの脇が空いた。無防備な腹部。角乃はテガソードの柄でアギレラの腹部を打った。打撃だ。切っ先じゃねえ。柄での打撃。痛みは与えるが傷は残さない。

 

「がっ…!」

 

アギレラの身体が折れ曲がる。角乃はさらに踏み込む。テガソードの切っ先をアギレラの喉元へ突きつけた。

 

止まった。

 

動きが止まった。アギレラの大きな複眼が角乃の赤い複眼を見ている。金色の触角が微かに震えている。

 

「終わりよ」

 

角乃が言った。静かに。だがその声には力があった。ハイクラス名探偵の声だ。勝利宣言だ。

 

アギレラは動かなかった。動けなかったんだ。武器を構えようとしても喉元の切っ先がそれを許さない。

 

沈黙が流れた。空き地に風が吹く。雑草が揺れる。夕日が二人を赤く染めている。

 

やがてアギレラが動いた。ゆっくりと武器を下ろす。ニードルクナイとゲノムウェポンが手から滑り落ちる。

 

「…負けです」

 

瑠花の声がした。変身が解除されていく。蜂の装甲が光の粒子となって剥がれ落ち少女の姿に戻る。瑠花は地面に膝をついた。俯いている。

 

角乃はテガソードを下ろした。変身も解除する。右緑左黒の装甲が消えいつもの服に戻る。

 

「立ちなさい」

 

角乃は瑠花に手を差し伸べた。

 

瑠花は顔を上げた。深い目が角乃を見ている。その目に迷いはなかった。あるのは納得の色だけだ。

 

「あなたなら預けられる」

 

瑠花は言った。静かに。

 

「杏子さんの選択を認めます。この力をあなたに託します」

 

杏子。園田杏子か。この力と杏子に何の関係があるのかわからねえ。だが瑠花はそう言った。

 

瑠花は腰のジクウドライバーからライドウォッチを外した。黒と赤のライドウォッチ。アギレラの力を宿したウォッチだ。

 

そのウォッチが光り出した。金色の光だ。光が凝縮し形を変える。円形の指輪へ。

 

ライダーリングだ。

 

アギレラのライドウォッチがリングへ変化したんだ。今までと同じ流れだ。

 

「受け取ってください」

 

瑠花はリングを角乃に手渡した。

 

角乃はリングを受け取った。指先で表面の蜂の紋章をなぞる。

 

「重いわね」

 

「ええ。重いです」

 

瑠花は頷いた。

 

「でもあなたなら持てる。私が保証します」

 

角乃はリングを握りしめた。その顔にはいつもの自信たっぷりの笑みはなかった。真剣な顔だ。力を受け取る者の顔だ。

 

「ありがとう。預かるわ」

 

角乃は言った。短く。明瞭に。

 

瑠花は立ち上がった。パーカーの裾を払い角乃を見る。深い目にはもう迷いがない。

 

「協力します。次の標的を守るために」

 

「ええ。お願いするわ」

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