ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVSゴーストコンサート : missing Songs ユニバースライダー大戦 作:ボルメテウスさん
喫茶店は城の奥にあった。
いや喫茶店という表現が正しいのかどうかわからない。中世の城の応接室に紅茶のテーブルを置いたような空間だ。壁には絵画が掛かっている。調度品は古いが手入れされている。窓から差し込む光が木目のテーブルを照らしていた。
「どうぞ」
歳月澪は言った。穏やかな声だ。さっきの「ぶっ潰してやるわぁ」が嘘みたいな口調だ。
禽次郎は椅子に腰を下ろした。ふかふかだ。パリピ高校生の身体には贅沢すぎる椅子だ。
目の前にティーカップが置かれる。琥珀色の液体が揺れている。香りが鼻をくすぐる。
「アールグレイです。お口に合うと良いのですが」
「あ、ども」
禽次郎はカップを持ち上げた。一口啜る。渋い。だが香りが良い。ハイカラな味だ。
「美味しいです」
「ありがとうございます」
歳月は向かいの席に座った。ドレスの裾を整えてから。丁寧な所作だ。お嬢様の教科書みたいだ。
沈黙が落ちた。
禽次郎はカップを置いた。紅茶は確かに美味しい。だが状況を整理しないと。さっきの漆黒のライダーが目の前の女性だとしたら、話を聞かなきゃならないことが山ほどある。
「あのさ」
「はい」
「自己紹介、まだだったよね」
「まあ、そうですね」
歳月は頷いた。白手袋の手を膝の上で組む。
「歳月 澪と申します。ここではお客様として滞在しております」
「歳月澪さん、ね。禽次郎です。猛原禽次郎。」
「ご丁寧にありがとうございます、禽次郎さん」
歳月は頭を下げた。深々と。お辞儀の角度が美しい。習ったのか天然なのか。
禽次郎はカップを手に取りながら、聞きたかったことを口にした。
「澪さんってさ。霊?」
直球だった。パリピ高校生は回りくどいのが苦手だ。
歳月は首を横に振った。
「いいえ。霊ではありません」
「じゃあ、霊能力者?」
「それも違います」
「は?」
禽次郎は眉をひそめた。霊でも霊能力者でもない。じゃあ何なんだ。この彷霊界で生者でもない。なら何。
歳月は笑った。ふわりと。楽しそうだ。
「ライドウォッチの力です」
「ライドウォッチ?」
「はい。気づいたらここにいました」
歳月はティーカップを口元に運んだ。一口啜る。動作が優雅だ。
「気づいたらって、それ不安じゃなかったの?」
禽次郎は聞いた。正直な疑問だ。見知らぬ場所に放り出されたら、普通は焦る。パニックになる。俺だってそうだった。いや俺はパリピなので即ノリましたけど。
だが歳月は首を横に振った。いや違う。首を横に振った後に、顔を上げて笑った。
嬉しそうに。
「嬉しかったです」
「え」
「だって」
歳月は言った。目が輝いている。お淑やかな顔のまま、子どものように目を輝かせている。
「ここならば音楽を存分に楽しめますから」
その言葉に、禽次郎は目を瞬かせた。
音楽。
確かに。この彷霊界には、外から音楽が聞こえる。MiucSの音楽だ。あの呪いの音楽。だがそれ以外にも、霊たちの声がある。祈りの声。歌の声。怨嗟の声。この世界は音で溢れている。
「ここに来てから、色々な音が聞こえます。人の声も、祈りも、歌も。全てが音です。だから」
歳月は紅茶を一口啜った。微笑む。
「嬉しいのです。ここなら、音楽を聴き続けられますから」