ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVSゴーストコンサート : missing Songs ユニバースライダー大戦   作:ボルメテウスさん

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建築家の逆鱗と蜥蜴の背中

音楽を楽しめる場所。

 

その言葉が禽次郎の胸に沁みた。パリピ高校生にとって音楽は呼吸と同じだ。吸って吐いての間に必ず音がある。日常に音がなければ窒息する。だからあの言葉がわかる。わかりすぎる。

 

「わかるよ澪さん。音楽ないと息できねえもんな」

 

「ええ。ここでは音が溢れています。だから嬉しいのです」

 

歳月は微笑んだ。お淑やかな笑みだ。だがその目には真摯な光がある。音楽を愛する者の目だ。禽次郎はそれを見て、この人とは話が合いそうだと思った。

 

ふいに空気が変わった。

 

紅茶の香りが消えた。いや香りが消えたんじゃない。空気が重くなって香りを運ばなくなった。霊的な圧力だ。肌が粟立つ。

 

「澪さん」

 

「わかっています」

 

歳月はティーカップを置いた。静かに。だがその手は微かに震えている。

 

窓の外が暗くなった。影が伸びてくる。いや影じゃない。怨霊だ。

 

「来たか」

 

歳月の声が低くなった。さっきの「ぶっ潰してやるわぁ」の声質に近い。だがまだ穏やかさは残っている。仮面が落ちかけている感じだ。

 

禽次郎は席を立った。テガソードに手をかける。

 

「数は?」

 

「十……いえ、二十以上。それに」

 

歳月は窓の外を見た。目が細くなる。

 

「指揮官がいます」

 

「指揮官?」

 

禽次郎も窓の外を見た。

 

怨霊の群れが城の中庭へ押し寄せている。灰色の身体がうねりとなって迫ってくる。だがその中央に何かがいる。

 

大きい。

 

怨霊よりデカい。いや怨霊じゃない。何か別のものだ。

 

蜥蜴だ。

 

巨大な蜥蜴だ。体長三メートルはあるか。灰色の鱗に長い尾。赤い目が二つ。その背中に乗っている。

 

男だ。

 

男が蜥蜴に乗っている。

 

「……え」

 

禽次郎は目を瞬かせた。

 

蜥蜴に乗っている。蜥蜴に。乗っている。

 

「あの人蜥蜴に乗ってるんですか」

 

「乗っているようですね」

 

「いや乗ってるじゃなくてさあ、なんで蜥蜴なんですか。馬じゃないの? 馬の方がかっこよくない?」

 

「禽次郎さん今それを突っ込む場合ですか」

 

「いやでもさあ、蜥蜴ですよ蜥蜴。トカゲ。爬虫類。あのぬるぬるしたやつ。なんで乗ってるの」

 

「私に聞かないでください」

 

禽次郎は窓の外を凝視した。

 

蜥蜴に乗った男が近づいてくる。速い。蜥蜴が石畳を這う速さが速い。四つの脚が器用に地面を蹴り城の中庭を横切ってくる。

 

男の姿が見えてきた。

 

灰色がかった髪だ。長めの髪が重く垂れている。前髪が右目を覆っている。左目だけが覗いている。細い目だ。目の下と頬には深い皺が刻まれている。頬がこけている。面長の顔だ。そして顎髭。尖るように伸びた顎髭。

 

白い襟付きシャツに暗い赤色のネクタイ。黄土色がかった茶色のベスト。その上から幅広い襟のある黒に近い濃灰色の上着を羽織っている。

 

建築家みたいな格好だ。いや実際に建築家なのかもしれない。その雰囲気がある。設計図を広げて緻密に線を引くような、そんな人の格好だ。だがその手には設計図ではなく蜥蜴の手綱が握られている。

 

「出るぞ」

 

歳月が立ち上がった。ドレスの裾を翻す。

 

「待ってください澪さん。僕が」

 

「一緒に行きましょう。ここにいても壁が崩れます」

 

「壁が?」

 

「あの人は建物を操ります。ここにいれば崩れてきます」

 

歳月はドレスの下からジクウドライバーを取り出した。いつ隠していたのか。いやこの人の場合、いつの間にかあるのが普通なのかもしれない。

 

二人は喫茶室を出た。城の廊下を駆ける。壁が震えている。石が軋む音が響く。

 

中庭に出た。

 

怨霊の群れが待っていた。二十体以上。灰色の身体が城を取り囲むように並んでいる。そしてその中央に。

 

蜥蜴に乗った男がいた。

 

男は蜥蜴の背中からこちらを見下ろしている。左目だけが覗いている。右目は前髪に隠れている。その左目が細められた。

 

口元が動いた。

 

「私はアントニ・ガウディ」

 

声は低かった。静かだ。だが重い。石を削るみたいな声だ。

 

「この城の設計には興味がある。だがその前に、邪魔者を片付ける必要がある」

 

ガウディは蜥蜴の手綱を握り直した。左目が禽次郎と歳月を見据えている。

 

「壊すのは得意だ。造るのも得意だが、壊すのも得意だ」

 

その言葉と共に、ガウディの左手が上がった。

 

指が動いた。何かを指揮するみたいに。いや設計するみたいに。空中に線を引くみたいに指が動いた。

 

城が震えた。

 

壁が動き出した。石が石の上から滑り落ち、組み替わっていく。ガウディの指に従って城の構造が変わっていく。

 

「うそだろ」

 

禽次郎は目を見開いた。

 

城の壁が崩れて建材となり空中に浮いた。石がガウディの指に従って並び変わり、巨大な槍の形を作っていく。

 

「建物を操るってそういうことかよ!?」

 

「来なさい」

 

ガウディが指を振った。

 

空中の石の槍が回転し、禽次郎と歳月に向かって突進してくる。

 

「飛ぶ番っしょ!」

 

禽次郎は叫んだ。テガソードを構える。イーグルシューター50を呼び出す。

 

歳月のジクウドライバーが光を帯びる。

 

二つの影が石の槍へ向かって跳んだ。

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